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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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327話 問題、お腹一杯

 山のようになった書類を処理して、寝床に入る。

 恐ろしいまでに、己へと投げてきた。

 本来なら、セリアがやらないといけない事だ。


(あいつ……戦うばっかりじゃないか!)


 国王が、やらないから。下が裁可していたりする。そうなると、力が全てである世界なので勘違いが生まれるのではないだろうか。

 枕を下に敷いた頭の横では、手乗りサイズのひよこと狐がよこになっている。

 

 音を立てないようにして、扉の横に設えた穴から狼が入ってきた。

 そのままベッドに乗っかると。大きく背伸びをして、横になる。

 くつろぎ過ぎではないだろうか。


 ついで、小さな木がちょこちょこと移動してきた。ベッドのそばに置いてあるお椀に飛び込む。

 狼は、自分の場所を譲らない。寝返ったら皮膚に、その毛が突き刺さって痛かったりする。


(動物園になってきたぞ…どうなってるんだ)


 ベッドの下に潜り込んでいるトカゲたちといい、これでライオンだとか兎だとか来た日には匂いが凄い事になりそうだ。狼の手を持って、上下させると睨まれた。噛まれなかったので、続行だ。


 今日は、旧アルカディア王国に侵攻してきたヘルトムーア軍を粉砕した。

 キュルク城は、守れたが戦線が広い。他がどうなっているのか気になるところである。

 

(馬に乗って戦うだけじゃなくなってるんだよなあ)


 普通の、想像しうる戦といえば横と前後の展開で。その前に、情報戦であったり装備であったりが左右する。魔法、魔術が存在する世界なので一騎当千の超人たちが殆ど知略をぶち壊しているような。そんな感じがして仕方がない。


 多少の兵力では、戦さの行方はわからないし。ヘルトムーア軍と旧アルカディア軍は似ている。どちらも近代、現代兵器を導入しているという事だ。空中で遠距離から撃たれると、近距離に特化している騎士たちでは何もできない。


 進む前に、死んでしまうだろう。いくら【盾】を筆頭としたスキルがあるとはいえ。

 

 狼さんは、腕を撫でていたら寝てしまったようだ。


(エンシェントゴーレムを出せば、相手も出してくるかな? そこが、問題だ)


 ミッドガルド王国には、機械の武装が少ない。ゴーレムなんてのは、どうやって動いているのか不明だ。

 浮遊城の下部にある箱に入れると、それで勝手に治るらしい。

 ロシナに言わせれば、「超科学だな」という話だが。


(うーん)


 戦争が起きて困るのは、民衆だ。戦いたいセリアとか戦闘狂は、大歓迎なのだろう。

 困ったことに、戦争は景気を良くしたりする。

 戦争特需という奴だ。食料を買い占めていたりすれば、ボロ儲けができるし。

 

(元は、二つともミッドガルドから独立したっぽいのになあ)


 だからかもしれない。再度、世界統一の野望を隠そうともしなくなったアルたちを打ち破らんと立ち上がった。とも、言えるのだ。

 これでは、悪がどちらだかしれない。


(正義の味方には、なれそうもないか。いや、なるつもりもないけど)


 正義が、己の利益だとするなら。正義が、無私の立ち位置だったとしても。

 人の数だけ、正義があるってよく言われる。

 我を通そうとすれば、すなわち他人にとっての悪となり得るのだ。


 2国との戦いもまた小さな領土侵犯が原因だったようである。

 やってやられてを繰り返しているうちに、決定的な破局へと。

 互いの超兵器をぶつけ合うのだろう。それで、国が瓦礫の山に変貌しようとも。


 狼の手は、なめらかな毛並みでいつまでも撫でていたい。

 ふと、気が付く。狼の姿は、


(真っ裸じゃんよ。これ)


 ひよこも狐も気にした風ではない。


『それって、ロボットになっている時のユウタもそうじゃないかな。ボクは、どってことないけど?』


 なんて、声が聞こえてくる。

 人の心を読むんじゃないと思ったが、考えてみるに服を着たまま変身していたりするし。

 問題ないような気もしてきた。


『そうなのな』


 でも、気にするだろうに。部屋では、裸でいられない。いろんな人間がで入りするのだ。

 瞼を閉じると、すぐに意識が薄れた。





 何かが飛び跳ねている。

 窓からは、明かりが入ってきていた。瞼をこすって、周りを確認すると。

 狼と木は、いなくなっていた。


(瞼が開かない)


 それに、乗っていたのは白い毛玉だった。ひよこと狐の姿もない。

 毛玉は、ぼよんぼよんと飛び跳ねて移動してきた。

 毛玉の背中には、黒い羽が生えている。進化したのかもしれない。


(さて、と)


 顔を洗うべく部屋の隅に設えた洗い場へ歩いていく。

 便利なことに、飲める水だ。隅っこには冷蔵庫まであった。

 誰がもってきたのか知らないが、いつの間にかバージョンアップしているようである。


 扉を開けると、水素水と書かれた容器がある。


(これ、効果あるのかなあ)


 子供なのに、老化を防止する水を飲んで効果があるのやら。水をコップに入れて、喉を潤すと。


(普通の水だよねえ)


 効果は、感じない。美味しいかと言われれば、微妙なところだ。

 屋敷には、電気が通っている。改造されたからだ。

 少し前のユーウが、開墾していた頃に比べると隔世の感がある。


(問題は、沢山あるけれど…。戦争だけをやっている訳には、いかないんだぜ…)


 兵器で破壊された土地は、魔法や魔術でぱぱっと直るかというと。そうではない。

 仮に、土魔術で平らにしたとしよう。そこから、建物を建てるのは大工の仕事だ。

 その材料を運んでくるのは、運送屋の仕事だ。


 ユウタがやれば早いが、その他のこともやらないといけない。


(着替えて、ご飯を食べたら…どうするか考えないとなあ)


 着替えて、廊下に出ると。


「こらっ。最近、サボリ過ぎっ。そんなんじゃ、退学になっちゃうわよ!」


 ルナが立っていた。背丈の頃は、同じくらい。巫女のような白い服に袖を通して、涼しげだ。

 後ろには、視線を向けてくるオヴェリアと俯くオフィーリアの姿が見える。

 対照的な子なのかも。 


「だよね。僕も疲れてるんだけど」


「なら、休めばいいじゃない。学校にそろそろ顔出さないと。試験もあるんだからね」


「うーん」


 歩きながら、つんつんしがちな幼女の様子を伺う。

 彼女としては、学校にいかない己がおかしいのだろう。

 だから、怒っているのだ。このままいっそ学校に行くようにしてはどうだろうか。

 

 それが、逃げだとしても。


「やらなきゃいけないことがあるんだよ。ごめん」


「やらなきゃって何よ。言いなさい」


 戦争に参加して、相手を殺しまくってます。なんて、言えない。

 相手は、子供なのだ。人殺しと変わらない。

 

「うーん」


「マスター。お食事が出来上がっております。皆様、お待ちなのでお早目に着席くださいますよう」


 メイド服が眩しい。桜火は、頭を下げながら言う。


「えー。ちょっと、話は後で聞かせてもらうから」


 なんて、強引なのだろう。鼻息も荒くなって、後ろの2人は困惑していた。

 席に座って、変化がない事を確認しつつ家の種馬は着々と子供を増やしてようだ。

 改めて、中世ということを感じる。


 愛人がバレているのだが、バレているのを継母に伝えるべきだろうか。

 

「ときに、ユークリウッドよ」


「はい。父上」


 グスタフは、ちょび髭顔の顎に手を添えて目を細めた。

 老け顔という訳ではないのに、似合わない髭が癇に障る。


「アルカディア領に、ヘルトムーア軍が攻め寄せたというのはまことか?」


 真実、だろう。だが、それを話してどうなるのか。意図が掴めない。

 本国から、兵隊が参戦するとは思えないし。

 なぜなら、すでにアルカディアには白騎士団が駐屯している。

 単純に、10万を越える騎士と徒歩の歩兵だ。治安維持の為に。

 

「はい」


「ふむ」


 何か隠しているような。そんな感じだ。ひょっとしたら、グスタフは一軍を率いて参戦するとかいう夢を持っていたりするのだろうか。


「何か、ございましたか」


「んん? なれば、その武功の立てようがない現状を如何に見ておる?」


 そんな事を気にしていたのか。武功などと。戦場に引っ張り出されている身になって欲しい。

 言えば、通るかもしれないが。その代わりに何を要求されるのかしれたものではないのだ。

 そんな危険は、ノーセンキュー。


「ヘルトムーア軍は、準備をしていた様子。お味方は、苦戦を免れないでしょう」


「ほう。そうこまでの相手か。お前をしても、かな」


 大分、買いかぶられているようだ。1人では戦えない。寝ている間は、他の人間が戦うのだ。

 となると、セリアや己が出てきたら精鋭を温存して夜中を狙って攻撃する。

 というのが、最善手に思えてきた。


 となれば、夜に強い部隊が欲しい。ロシナのところに、吸血鬼がいたはず。


「はい」


「ふうむ。私には、出陣の声がかからぬ。役目、とはいえな」


 なんとなく、わかる。だが、グスタフが戦場に出られるかというと立場が邪魔だろう。

 貴族の当主が戦場に出るのはよっぽど押し迫った事態のみ。

 なので、昨今の騎士家門が減ったりという話は聞かない。

 借金で、潰れたなんてのは聞くけれど。


「なんとかならないのでしょうか。王子に相談してもらっては、どうなのでしょう」


「それを言っては、いけない。ユークリウッドにそれを言わせるな」


「ですが」


 喧嘩になりそうだ。考えるに、軍に入っていないようだし。まず、無理ではないだろうか。

 

「そろそろ、失礼いたします」


 食事が、すいすい進んでしまった。朝から、野菜の盛り合わせにころもの付いたサクサクする肉がでてきたからだ。それに、ご飯と味噌汁が合う。ソースが、少し辛かった。


 廊下へと出る。中では、皆で話をしているようだ。

 貴族といっても、貴族らしからぬ家。ちょっと騒々しいが、それもまた好ましい。

 映画で見ていたような冷たい感じは、しない。

 

 準備運動を済ませたら、移動する事にしよう。



 と、玄関に立っていたら幼女2人が玄関から入ってきた。次に、隣の家から扉を開けて幼女2人が入ってくる。

 

「おーっす。今日も、よろしくな~」


「今日も、学校にいかないのでありますか。不良であります!」


 エリアスとオデットが突っかかってくる。その後ろでは、アルストロメリアとルーシアが挨拶を交わしていた。


「別に、サボろうと思ってないから」


 そして、今日も配達しなければいけない箇所の地図を突きつけた。

 するっと、横を抜けようとした幼女の肩を掴む。

 顔を近づけると。


「ねえ。だ、れ、が、サボろう、だってええ?」


 たまには、仏も怒らないといけないだろう。いつもいつも甘い顔をしていたんでは、付け上がる一方だ。

 

「ど、どうしたでありますか。その男らしくないであります」


 男らしいって、誰が決めた。いや、世間が決めているだけなんだよ。

 それがわからないから、女は女の役割を無視するのだ。

 ならば、ラーム教園のように女は畑で教育など必要ないって言っちまうか?


 男女は、平等ではない。男は、1人で子供が作れないし。それで、人口が減少するから解決しようとすれば子宮の生体部品化が待ったなしにいる。女が、外に出た結果だろうに。

 シャルロッテンブルクでは、アルバイトもパートも禁止である。


 なぜなら、賃金の低下はそれが原因だからだ。賃金を下げても正社員がやめてもパートでアルバイトで代用が可能。それが、どうして原因でないと言えるのか。どんな金持ちであったとしても、働く奴隷がいなくなれば己が働かなくてはならない。


 故に、中抜きというもの禁じていたのに。派遣法を成立させた1985年自死党の中曽根内閣は、永劫に語り継がれるべき悪。1988年自死党の竹下内閣が成立させた消費税とあわせて、消費意欲を低下させて景気の悪化を招くという。


(現代版の奴隷制度じゃん)


 ユウタなら、間違ったモノをすぐに変える事ができる。だが、彼らは。

 間違っていても、改められないのだ。失敗だとしても。

 失敗を認められないのである。


 以来、ずっと景気は良くとも30年ほどかけて中間層が破壊され、低所得者が増えてきた。


 奴隷が奴隷だと気付かない。金の奴隷。哀れで、愚かな日本人。

 異世界にやってきても、大抵はすぐ死ぬ雑魚である。

 しかしながら、彼らを保護しなければならない。外見は違えど、同郷の人間だから。

 

「おーい。帰ってこいってば。今日は、茸でも売るか?」


 耳元で、息を吹きかけられる。危うく押し倒しそうだった。


「いえ、耕作状況を視察しましょう」


「よっしゃ、飲み食いタダだな!」


 股間の痛みに耐えながら。

 なわけあるかい! と、幼女のほっぺを思い切り横へ引っ張った。


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