47話 森でトカゲ! (ユウタ、セリア、アル、シグルス、ドス、セルフィス、盗賊、プティノス、プティーライノス、オーク、ゴブリン、コボルト)
某日某時刻
「ウリ達の村が一つ潰れたゴブ」
「残念オク」
「あんなモンスター見たことがないゴブ!皆知らないゴブニカ?」
「コボぉ」
「避難させてるけどどうなるかわからないゴブよ」
「どうするオク」
「・・・」
「・・・」
◆
7日目だ。日は既に最高点を指し示し雲一つない空にモンスターと人の雄叫びと絶叫がこだまする。
森の入口からちょうど出た場所というには離れすぎた街道だった。
応援に駆けつけるとドスさん達が相手をしていたモンスターどもを確認する。
馬並みに巨大化したトカゲが十数匹2足歩行型。
小屋のような大きさのトカゲ二足歩行型が3体とわらわらいました。
地面を埋め尽くす様に居るお供の犬並トカゲ4足歩行型はもう数え切れねえ。
2m弱のオークや1m50cm弱のゴブリンに比べると段違いの迫力がある。
逃げていいですか!
とは言えないので取り合えず【アイスウォール】で相手を止める事を考えよう。
MMOじゃ皆して団子とか死体になっても後で逃げるべきだったとか言ってても次があったんだけどな。
今はどうなるか。わからないが皆が誰かが死んでしまうのは防がないと。
でかいのと細かい犬並のトカゲを分断する。【アイスミラー】を展開すると【サンダー】を放って細かいトカゲさん達を一網打尽とは行かなかった。
こっち側冒険者達に取り付いて半包囲しているトカゲさん達かなり多い。
そして今の攻撃ででかい奴らも本気になったようだ。そうは行かせないとデカトカゲ周辺を【アイスウォール】で阻む。
周囲に障害物がないので魔術はやりたい放題だ。火か氷が良さそうだけど火耐性持ちで突破されることを視野にいれると、固体化障害物もある氷一択かなあ。
かなり魔術を連打しているのにそう魔力が切れそうなかんじはしないがMP回復POT飲むことも忘れない。久しぶりに飲むこいつは激マズだ。
「ユウタくんすまないな。助かった」
「いえ」
ドスさんはゼェゼェと息も荒いし、傷だらけである。この先の村で休んでもらうほうがいいかもしれないな。
見れば冒険者達全員傷だらけで装備もバラバラだ。朝の初心者フォースじゃないのかこれ。
つまり・・・。楽しいハイキングが地獄のビリーブブートキャンプに様変わりしちまったということか。
「ドスさんこいつら何なんですか? ハッ!」
「うむ。・・・こいつらモンスターについて詳しいことはわからないが南方の熱帯雨林地帯の国に生息するはずのモンスターだ。コボルトと交戦してる最中に突然現れてな。数を減らしながら撤退していたが、ユウタ君達が来てくれなければついにここで覚悟を決める所だった」
しかし恐竜そっくりの姿態でしかもそのまんま出てきたような体躯だ。まさかこれブレス攻撃持ちとか。
・・・距離の維持は絶対だな。デカトカゲの噛み付きでも即死しそうな顎をしている。
弓に持ち替えてはデカトカゲを狙う。目狙いだ。狙ったつもりだが当たるとは思わなかった。
こんなところでついててもしょうがないんだけどな。両目に矢を生やして暴れだした1匹は森の中に逃げ出した。
セコイが【ファイアウォール】に【アイスウォール】と弓ペチを交互に繰り返していくしかないか。
話をしながらでも弓矢にエンチャントしながら1匹集中でデカトカゲを狙っていく。
どんどん後退していく冒険者達。限界近く皆かなり弱っているな。
「これで全員なんですか」
「ああ。悪いがセルフィスが重傷負っている。みな魔力も気力も限界に近い。俺以外は撤退させるがいいかな?」
「ええ、近くに村があります。せい! ドスさんも行ってください、そこまでいけばスールさんPTもいますよ。ふっ!」
「また世話になる、いや・・・すまないなユウタくん」
ドスさん傷を負っているならさっさと撤退したほうがいい。
この状況でデカイの二匹が突っ込んできたら詰んでしまう。雑魚トカゲに包囲されても詰みそうだ。
セリア他前衛陣は頑張っているが・・いかんせん雑魚の数が半端ではない。数で押し切られるかもしれない。
逃げ出そうにも後ろには疲労限界を迎えている冒険者達。現金なものでふつふつと力が漲ってくる。
ドスさん達をもう仲間みたいに感じ始めてるわけでここで逃げ出す位なら死んだほうがましだ。
接近している雑魚相手にいい手が思い浮かばない。デカブツは足を止めている間にエンチャントした雷化弓矢が突き刺さってくれる。そのうち殺れると思うがこれまた希望的観測だ。
ドスさん達に俺達が来たように相手にも援軍が来る可能性が0ではない。
さっき逃げたデカトカゲが仲間を呼んでこないとも限らないわけでこいつらさっさと片付けてしまいたい。
そういう知恵はあるんだろうか、無いとは言えないのであるかもしれないと想定しておく。
さっきからひたすら頭に弓矢突き刺さっているんだがデカトカゲまだ死なないしどうする。
「埓が開かないご主人様。装備の換装をしたい、ポールアックスを出して欲しい。それと頭に刺さった矢を目印に【サンダー】は有効だぞ。」
「セリア、ああ。・・・了解だ」
なるほど目印ね。体に刺さっているのもポイントだろう。
んと・・オークデュークの使っていたやつか? セリアの身体にはデカすぎる得物だろう。
そしてこの局面でそんなものを使えばどうなるか。
ともあれ出せと言われれば出しますとも。言われるがままイベントリからポールアックスを出す。
これ見た目がアックスというよりハンマー。ハンマーとアックスの合体したタイプだ。斬り叩くというより潰すそんな感じだ。柄が大きすぎて握れないと思うんだが。まあ脇に抱えて槍代わりにでも使うのだろうか。デカイといっても丸太より短くドアというより細いなんというかギターを武器にしたようなイメージだ。糞重いはずだがもてるんだろうか。
いきなり腕を掴まれて引っ張られる。なんだ? 何もない場所を剣で斬るセリア。おお? ・・・普通に市民ぽい死体が出てくる。このタイミングで来るなんて執念深い人だ。
「ありがとうセリア。こいつはいったい何なんだ」
「見たところわかりづらいが盗賊だな。【隠蔽】持ちでハイディングスキルを使用か。だが、匂いですぐにわかる、魂でもな。気をつけろご主人様。・・・つけねらっていた執念深い奴が釣れたようだが、安心するには早いぞ」
そう言って受け取ったポールアックスを抱えると素早く戦線に復帰するセリア。木こり仲間伊達じゃなかった。
雑魚の犬並トカゲと言っても素早く噛み付かれればただではすまないだろう。
それを処理するには得物がでかすぎやしないだろうか。普通の人には持つことすら困難な斧だ。
だが、セリアは得物を抱え直す。と、一閃。ポールアックスを雑魚どもがいる中心に飛び込むと地面に叩きつけた。
叩きつけられた衝撃で全員浮き上がった。
フラフラになり。動きの止まる小型トカゲ達をセリアはすり潰し始めた。
「さすがセリア殿だ。見事な【アースハンマー】です。範囲スキルがきますよ、アル様お下がりください」
「む、わかった。あれでは近寄れないしな」
「そうですそうです!」
いや本当に危ない。セリアは独楽の様に斧を振り回し回転しながら倒し始めた。
さらにトカゲ達のひき肉量産が加速拡大していく。
退避してくる前衛陣。各自で傷の手当て体力回復してくれよな。こっちは手が離せない・・。
「傷の手当てとか回復各自お願いします。ハッ!」
「うむ。ユウタよまだ大きなプティーライノスは倒せぬのかや? おおやっと一匹か!」
アル様に言われてか何発刺さっているのか見えないほど頭に矢を生やしてやっと一匹トカゲが倒れる。
なんつうしぶとさだよ。普通こういう雑魚ボスっぽいのはすぐ死ぬのが相場だろう。腕がパンパンになってきた。
しかしアル様の台詞に聞きなれない単語が出てきたがこれはトカゲの事を指しているのだろうか。
会話する暇も惜しんで二匹目に取り掛かる。
やっぱデカイだけのトカゲだったんだろうかコイツら。
連携は取れているみたいだが・・・。
ブレス攻撃を持つ竜なんかに比べるといかにもプレッシャーが足りない。VRMMOのやつのは半端じゃなかった。
そういや竜ってこの世界にいるんだろうか。デカイトカゲが竜だなんていったら吹き出してしまうぞ。
デカトカゲの噛み付きはやばそうだが、遠距離から動きを縛ってチクチクしていれば意外になんとかなってしまう。
最悪の展開を想定してう○こ玉でも投げるかどうか考えていたのに出番なさそうだ。
「来ますよ、皆さんプティノスには噛み付きだけでなく振り回す尻尾や飛ばしてくるヨダレにも気をつけてください」
「はい!」
「わかっている」
「りょうかーい」
続々と侵入してくるトカゲ。【アイスウォール】を逃れた馬並トカゲ達が取り囲むように来る。
セリアが雑魚トカゲ達から馬トカゲさん達に目標を替えたようだ。吹き飛んでいくトカゲ達。
もうどっちが襲っているのかわからない。デカイトカゲさえ動けなきゃこんなものか?
回復を掛けていくとパンパンになった腕が戻りまた膨れるので風船状態が終わりなく続く。
地面に杖と弓を立てて交互に持ち替えて魔術と弓矢を撃ちまくる。
そろそろ初級音声魔術に切り替えて、威力と燃費を良くしたほうがいいのかもしれない。
俺が試した体感としては大して変わりがないような気もするんだけどな。
俺がいつもつかっている思考魔術及び思念魔術らしい・・・これ等と違い音声及び言語魔術は対人だと口や音声で見切られてしまうのが弱点だが対モブは対人と違って声で見切られる心配がない点もある。必中で必ず当たる魔術が見当たらないので詳しくわかっているわけではないけどどの魔術も狙って当てる必要がある。現時点では魔術一強ともいえないか。
もちろん知性のあるモブだと通用しない点や時間が掛かるというのも不味いがこの際なので使ってみよう。
「【ふー、雷よこの掌に集え、我雷を球となし障害を討つ】 【サンダー・ボール】!】
「ユウタよ地味ではないか。もっとこう派手にパーっといけユウタ。やあ!」
「ユウタ殿に対してアル様、失礼ですよ。ですが・・・私も派手なものを期待します」
鬼畜か。こいつら・・・。こっちは、魔術も覚えたてなんで勘弁してくれよ! 畜生・・・渡る世間は鬼騎士ばかりだぜ。
詠唱が終わると作られた雷球は両の手から放たれた。
雷球は間違いなくデカトカゲに決まった。
雷球は球状の派手な放電現象を起こすとぐらりと傾いて倒れるトカゲ。
結構派手だよな、もう自画自賛するぜ。
「すごく綺麗でしたよご主人様。たあ!」
「ありがとう」
前衛陣は、時折セリアの攻撃から漏れてトカゲの相手をしている。
くそっ、褒めてくれるのはモニカだけかよ。
涙腺が緩みそうだ、かなり切なくなった。
前線を見ればセリアも馬並トカゲを倒しきったみたいだ。ポールアックスを片手で肩に担いで戻ってくる。
細かい雑魚も前衛陣が倒しきったみたいだし、どうするか・・・。
ここは一旦村に帰って汗でも落とすか?
村を出ていきなり帰還だが一服入れるのも悪くない。
「アル様村で汗でも落としませんか?」
「何? 今出てきたばかりだろうユウタ。いや・・・。だが・・・うーむ。わかった。疲労したまま戦うのは良くないしな」
やはり自身の汗臭さには勝てないか。戻ることを了承するアル様。風呂でも入って再出発だ。
ドスさん達や冒険者達の事も気になる。色々言い訳してみたけど俺が疲れきっているだけだった。
ゴブリン達と戦う前からクタクタじゃ戻るのもしょうがないよね。
トカゲさん達を回収しつつペダ村に一旦帰還した。
キューブステータス サナダ・ユウタ 16才 冒険者
装備 ミスリルの剣 ハーフプレート チェイングリーブ プレートヘルム 硬い皮のブーツ 対魔術の盾 銅の篭手 オークの弓 オークのワンド
邸宅有り セリア 人狼 モニカ 鍛冶士
スキル テレポート PT編成
特殊能力 なし
固有能力( 人形使役、人形化 、幽体離脱、生命操作、力吸収)
▽
[冒険者LV58]市民63村人62戦士 62剣士 62弓士 62勇者 63狩人 63魔術士 61商人 58薬剤士 58騎兵 58弓騎兵55格闘士 55英雄 55治癒士 55料理人 57魔獣使い 55付与術士 55錬金術士 55木こり48下忍 48神官45人形使い45死霊王7生命王7闘技士10騎士7槍士7 村主7
所持金 35万5千中ゴル(9万クーポン有)
閲覧ありがとうございます。




