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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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310話 バーモントの町、魔物に侵入される ●(4コマ漫画)

 息を荒げる男は、慌てて扉を閉める。


「どうしました」


 女職員が、近寄っていく。部屋の中は、寒いせいか。女は厚手のものを着込んでいる。


「どうしたもこうしたも、町の中に魔物が出現し」


 そこで、扉が大きな音を立てて男にぶつかる。現れたのは、赤黒い虫の頭だ。

 虫といっても、大きい。その大きさは、人の肩幅ほどもある。

 駆け寄れば、噛み付こうとしてきた。


 バボッ。下から蹴り上げると、虫の頭が取れた。大して強くなさそうである。見た目だけは、おどろおどろしい。外だ。まず、確認をしよう。エリアスは、戦う前から戦闘不能になっているので転移門で家へお帰り願うか。


「えっと」


「うー、うう。酷い目にあったぜ」


 気がついたようだ。ルドラは、素知らぬ顔で肉にかぶりついている。


「俺らは、足でまといになりそうだから待機でいいよな」


 錬金術師たちは、戦闘が得意ではないようだ。2人ともに、蛇と猫が戦闘員だったりする。


「ええ。あっ」

「師匠お先に行きます」

 ザビーネは、外へ飛び出していく。まあ、いいんだけどね。


「我は、ここで留守番をしているとしよう」


「ありがとうございます」


 魔物が現れた経緯がわからない。上空から見た限りでは、接近する影など見当たらなかった。


「うーわっ。べったべたじゃねーか。お前、なにしてくれてんだよ。着替えるから、あっち見てろよな」


 エリアスは、そう言ってカーテンを空中に浮かせて着替える。汁だらけだったのだ。しかたないといえば、そうなる。


「先に行っているよ」


 虫の首をギルドの職員が、おっかなびっくりで見ている。

 鑑定すると、装甲地虫の死体なんてでてきた。地中でも掘り進んできたのかもしれない。

 外へと出れば、緑色の人型が棍棒だの槍だので人を襲っている。


 ゴブリンにしては、身体が大きい。これまた鑑定するとホブゴブリンのようだ。

 やけに筋肉質で、振るう棍棒が通常の何倍もある。

 ザビーネの姿は、見当たらない。どこへ行ってしまったのだろう。

 それほど時間は、経っていないのに。


 迫る魔物は、勢いがいい。

 敵の狙いは、城を落とす事なのか。それが、問題だ。町の中には、魔物が現れて人を襲っている。

 

(城かな? この場合)


 向かうのは、そこだろう。普通に考えて、どこから現れたのかしれないが。通路の敵を掃討する事が肝要と言える。道を埋め尽くすようにしてホブゴブリンが迫ってきた。人を棍棒で叩き潰しながら。


 火線は使えない。町の中で使えば、元に戻すのが大変だ。電撃を飛ばすと。

 盾で受け止めても、倒れる。どうやら、電撃は通じるようだ。

 問題は、矢が飛んでくる事で。受け止めては、電撃をお返しに見舞う。


 集団になっているところへ電撃球を見舞えば、一網打尽となる。

 火球でもいいが、火事が心配だ。建物の中にいるであろう人が、犠牲になりかねない。

 その点で、電撃は非常に都合がいいのだ。建物を破壊せず、魔物だけを駆逐するのに。


「おい、待てって」


 後ろから、声をかけられる。


「ちょっと、待てよ。なんで、俺らまで」


 お留守番をするはずのアルストロメリアとそれを引っ張るエリアスの姿があった。


「お留守番をするんじゃないんですか」


 電撃で、ゴブリンを駆逐する。青白い光が、魔方陣から飛ぶ度に魔物は数を減らしていった。

 なんてことはない作業。


「いやいや。こいつは、魔獣を使ってるっぽいじゃん。アルストロメリアは、こう見えて召喚について詳しいし。空中戦とかできねえけどさ。お前が、鍛えてやれば戦力になるかもしんねーし」


 進むにつれて、地面を這う虫の数が増えてきた。サイなんてのもいる。

 鑑定すると武装魔犀なんてでてきた。青白い身体から、白い燐光を出している。

 しかし、電撃で一発だ。


 乗っている魔物も、サンダーから逃れられない。


「こいつと組んでたら、常識がおかしくなっちまう。場違いだしさ。なあ」


「うっせー。びびってんじゃねーよ。そんなんだから錬金術師が舐められんの。わかれよ」


 ぴーぴーうるさい。ユウタは、死体を拾う暇もないのに。


「暇なの? さっさと採取するなり敵がどこから来ているか探してよ」


「わかった。じゃ、こいつの面倒を見といてくれよ」


 箒に跨る幼女は、知り合いを置いて空中から探そうという気らしい。矢で討たれそうだ。


「おいおい。あー」


「行っちゃったね。大丈夫?」


 幼女は、涙目だ。戦闘員ではないのだろう。


「これが、大丈夫に見えたら白髪も増えんわ!」


 目が三角になって、突っ込みをいれてくる。これなら、まだ前線に出しても大丈夫っぽい。


「だいたい、俺ら錬金術師ってのは両手を合わせたらぽんっと魔法が使える職じゃねーっつーの。んなの、一部の天才だけだっての。ちょっと前まで、屋台引いて薬を売ってた奴が魔物と戦わなくちゃなんねーんだよ。ふざけんなよ、ああ? ちゃんと守らねーと俺らすぐ死ぬからな。毒なんかくらっても即死すっぞ、おらぁ」


 腕をまくってみせるのだ。つり目の幼女は、気炎を上げだした。


「大丈夫ですよ。防壁に風の壁を発動させておけば」


「だといいんだけどな」


 そこへビュッという音がして、矢が飛来する。アルストロメリアは、目を開いたまま固まった。


「セーフですね」


「だ、大丈夫なのかよ」


 空中で止まる矢に、地面が濡れている。足は、震えていた。

 エリアスは、空中から魔術を放っているようだ。矢を避けて楽しんでいるようですらある。


「着替え、しますか」


「なあ。帰ってもいいか」


 失禁した事を隠そうとしているが、見ればわかってしまう。帰ろうにも、離れれば魔術の効果が切れてしまうだろう。すでに、城の門に迫ろうとしてる。


 魔物は、門で止められているようだ。さすがに、城には結界があるのだろう。

 不意に、影が差す。上だ。


「やばい。おいおいおい」


 空中に踊り出たのは、蜘蛛か。風の刃を発動させる。両脇の建物から飛び降りてきた相手は、2つ3つに割断された。蜘蛛の身体に、人の身体が乗っている。手には、槍と盾を持っていたようだ。地面に、持ち物が落ちていく。上に向かって放ったので、建物に被害はない。


 糸は、焼いて防ぎつつ紫色をした蜘蛛型の魔物を排除する。目が赤いのは蜘蛛の特徴か。


「なあ。お前、禁呪が使えるんだろ。そいつで、どーんとやっちまえば早くないか? ほら、世界を焼きつくすとかいう奴。見てみてえわー」


 アルストロメリアは、軽く言う。

 威力が有り過ぎて使えない術を使えとは、興味本位で語られても困るではないか。

 

 広範囲を攻撃できると云うことは、広範囲の建物を壊すと同義なのだ。

 簡単に、元へ戻す魔法みたいな術があればいいのだが。残念ながら、復元系統でも全く同じにはならない上に元の形を再現できない。


「駄目だね。壊すのは、簡単でも元に戻せないもの」


 そういう魔術が得意な術者が現れてくれれば、非常に助かる。


「ちぇっ。あれかー。手加減してるとかないよな」


 アルストロメリアは、的はずれな事を言い出した。これが、戦争であっても味方ごと攻撃はできない。


「残念ですが1つ、1つ倒すしかないですね」


 突撃をしかけてくる毛むくじゃらの猿だとか色がばらばらな蜘蛛だとか。突進するところに、電撃を放てば1発で沈む。魔力の残量は、全く減っていない。むしろ、アルーシュが勝手に使うのがピンチだ。魔力が無くなったら昏倒しかねない。


 空に浮かぶ城とか。魔法と科学の融合した機械の兵器とか


「面倒くせえなあ。箒に乗って、上から撃ってるあいつがいいなー。俺たちも上から、狙い撃ちした方がよくねえ?」


 魂こそ見えないし、値にでてこないが。有ると言われているのだ。 


「あれ、消耗が激しいんですよね。ポーションがぶ飲みしながら、戦うってのはぞっとします。魔力が切れたら、墜落ですよ」


 箒に乗っているけれど、実際には浮遊しているような物だ。同時に、飛行も使う。なんと、贅沢な。


「じゃあ、無理なのかよ」


 煽ってきやがった。

 小便の匂いが鼻にくる。ウンコも漏らしていそうだ。なのに、平然としていて女を辞めていそうである。


「無理じゃないですよ。では、飛べますか?」


 錬金術師と平行して魔術師を上げていれば、可能だ。しかし、汗塗れになった顔を横へ振る。


「飛行をかけてくれよ。錬金術師は、生産と研究がメインなの。蛇だって、空なんて飛べねーし。わかれよな」


 いちいち勘に触る物言いだ。飛べないから、飛びたいなら飛びたいと言えばいいのに。

 プライドが邪魔しているようである。そして、邪悪な事が思い浮かんだ。

 高い高いをしてみようかと。


「では、手を握ってください」


「えー、きめえなあ」


 糞が。と思ったが、我慢しよう。触った女の子の手は、実に柔らかい。じっとりとした手は、汗をかいている。


「なんか、ぬるぬるするんですが」


 正面から、一列に並ぶ敵兵は盾に魔術をかけているようだ。ならば、飛ぶのも悪くない選択肢に思える。

 何より、城の中が気になるではないか。 

 ついでに、アルストロメリアを投げて遊ぶのもいい。しかし、黄色い液体が空中を舞うというのはよろしくない。特殊な趣味を持つ人にとっては、ご褒美らしいが。


「ぬ、と、気のせいだろ」


 気のせいじゃねえよ、と思ったが仕方がない。女の子の手を握るというイベントが発生している。

 よくよく考えれば、セリアわんこを抱っこしているのも裸を抱いていると考えれば凄いイベントではないか。手を握る。ただそれだけで、好感度が一気に上昇するという。なんて、チョロいのだろう。


 空中へと上がるところに、矢が飛来する。


「わ、わああ」

「大丈夫です」

 幼女を引っ張り上げる格好になった。


「あぶふひぃ。あ、で、どうするんだ?」


 幼女の顔は、青くなったり赤くなったりめまぐるしい。


「まずは、これらを処理しながらですね」


 魔方陣から放つ稲妻が、地面に堕ちる落雷になってしまう。

 地面に当たりこそしないが、魔物が怯む様子もない。

 何かに操られているようだ。一気に、横へ薙ぐと視界がよくなって舞い上がる。

 

「味方、少ねえな。あっ、ザビーネって奴が」


 建物の上で、戦っている。囲む敵の攻撃を躱しながら、反撃で的確に沈めている。

 しかし、きりがないようだ。

 下から、どんどん上がってくる。ユウタたちに気がついたのか。

 

 飛び降りて、魔物が倒れた城門へと走る。死体だけが残っているが、門は破壊されていた。

 セーフなのか微妙なところだ。門の中へ敵が侵入している可能性を否定できない。


「平気みたいですね」


「あいつは、な。でも、城の門が壊れちまってるぞ」


 箒に乗ったエリアスが近づいて来る。


「お前らも来たのかよ。いちゃついてねーで、城の中へ入ろうぜ」


 魔女っ子の口が富士山だ。

 城壁の上へよじ登っている猿やら炎を纏う蝙蝠が見える。放って置くわけにはいかない。



挿絵(By みてみん)

東雲ノア様作画


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