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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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277話 黒い木の向こう側14●(チィチ)

 エルフ狩りをする人間を捕縛か処刑。それに、ハイデルベルクの立て直しと。

 ウォルフガルドも、手間がかかる。

 下水道の整備からして、できる人間が限られているのだ。


 横を見ると、白いお腹が目に入った。狐がその横で万歳している。ひよこと毛玉は、枕の下に潜り込んでいた。


 結局、フィナルたちは来なかった。いいのかな。前日なので、下見くらいしてもいいはずだ。

 というか。


 扉が、開かれてた。


「おはよう、うぉ」


 ベッドから立ち上がったところに、入ってきたのはエリアスだ。固まっている。

 後ろから、フィナルが現れると。


「なんですの、あら。いやですわ」


 同じようにして、顔を手で覆っている。しかし、目を隠そうともしていない。


「おはようございます。今日は、早いんですね」


「いや、その悪かったな」


 扉が閉められる。なにかおかしな事でもあっただろうか。身体を見ると、股間がテントを張っていた。

 なるほど。


 非常に、気まずい。日本人のそれは、ソーセージくらいなのに。ちょっと、ビッグで破壊してしまいそうな感じだ。外人サイズなのだ。いいのか悪いのか。まあ、使う事もないので大丈夫だろう。


 新しいローブに着替えて、立ち上がると。机の上に、ノートが乗っていた。

 ぱらぱらとめくれば、授業の内容だ。大概の物は、習わなくとも大丈夫ではある。

 魔導工学なんて事は、まだまだ先だ。


 ノックが、部屋に響く。


「どうぞ」


「おっす。飯食ったら、さっそく大会の下見に行くからよ。頼むぜ」


 ここで、断ったらエリアスが激怒しそうだ。エンシェントゴーレムを作って欲しいし、飛空船も作って欲しい。次いでに、空中要塞も欲しい。自分で作れればいいのだが、壊すのは得意でも作れなかったりする。ダンジョンで製造できないだろうか。


 桜火と相談する必要があるだろう。


「いいよ。下で、食べてく?」


「おう。で、こいつをやるぜ」


 手渡されたのは、茶色い包装紙で包まれた四角い箱である。小さい。ミニサイズだ。親指くらい。


「わたくしからも、どうぞ」


 こちらも小さい。なんて小ささだ。開けてみると、茶色い物体だった。

 口にいれてみれば、苦い。とても、苦くて甘いとかいう物ではなかった。


「味は、どうよ」


 本当の事を言ったらどうなるのだろう。まずいんだよバカ野郎と、言うべきだろうか。

 

 セリアのも、食えない味ではなかったが。謎の味だった。


「まあまあですね」


「あたくしのも、食べてくださるのですよね」


 もう一つも、似たような色だ。茶色いので、チョコレートを連想するのだが。苦い。

 こちらも、苦くて大量には食えないだろう。何で作っているのか。


「ま、まあまあですね」


「同じ感想は、やめろよな。もう少し、ひねりを考えろよ。下に行くぞ」


 もっと、ヨイショしろというのか。しかし、変な食べ物を食わされる身になって欲しい。

 憮然とする魔女っ娘に、対するフィナルは上機嫌だ。

 にこにこしている。いや、いつもにこにこしているのだが。いつも以上ににこ~っという。


「まったくよう、なんで俺までとばっちりを受けなきゃなんねえんだよ。ざけんなよ、コラ」


 まるで、ヤクザのような言い回しだ。汚い言葉に、


「貴方が、大きな物を作るからでしてよ」


「んや、あれは母ちゃんがもってけって」


 どうやら、エリアスの方は母親に嵌められたようである。なんなのか気になるが、それが先ほど物なのだろう。たまに、妙な物を食わせられるので困ったものだ。


 いや、女の子から物を貰うと嬉しい半面で恐ろしい。何を要求されるのか、ねえ。


「そういや、今日はエルフ狩りに迷宮攻略もしなきゃいけねえって聞いたぜ? 大変だなあ」


 おめえも手伝うんだよ。他人事のように語っているが、手伝う以上に手伝ってもらうぜ?


「朝食は、皆さんご一緒なのですね」


 と、扉を開けて入れば勢ぞろいしていた。ここにレウスとザーツまでいれば完璧だったのだが。

 どれだけでも隠し子がでてくる。長男という事であるが、顔は似ていない。

 どちらかといえば、クラウザーやアレスの方が、特徴があるような。


 エルザは、いつもどおりにこやかだ。そして、お腹が膨らんでいるような気がする。


「今日は、レンダルク家のお嬢様とモルドレッセ家のお嬢様が朝食を取られるのかな」


 テーブルは、長くなっている。グスタフが、1番奥。で、エルザの対面に並んでいる。

 シャルロッテ、オヴェリア、オルフィーナ、ルナと。ユウタ、フィナル、エリアス。

 やけに多い。


「ごきげんよう、グスタフ様」


「うむ。楽にしてくれたまえ。何分、客人が多いのでね。下に座らせるのは、心苦しいのだが」


「構いませんわ。ねえ」


「おう。さっさと食って、行こうぜ」


「ちょっと、あんたたち。どこへ行くってのよ。最近、ずーっと学校をサボリ気味なんじゃないの」


 と、ルナが咎める。それに構わずに、グスタフは祈り始めた。


「天に坐す…」


「ルナも来るか? 魔術師の大会があるんだよ。まー、決闘方式なんだけどなー。応援してくれるなら歓迎するぜ」


「はあ? なんで、あんたたちの応援をしなきゃって…出るの?」


「おうよ。フィナルは、仕事があるみてーだし」


「ふーん。忙しいものね。で、なんでユーウまで?」


 ルナは、目が三角になっているような。グスタフの声は、続いている。ルナを気にしても仕方がないのだろう。待っていたら、昼になるし。わがままなところは、変わらない。どうしたら、これが気配りのできるような優しげな少女になるのか。


 目の錯覚だったのかも。ひょっとして、これまた世界を変えた影響なのだろうか。

 グスタフは、ちらりとルナを見て涙目だ。哀れ、権力には勝てないのであった。


「そりゃ、こいつも出場するからだぜ。まあ、俺、負けるとさ。家、追い出されるからさ。ほんっと、頼むぜ、へへ」


「え? それ、酷くない? わかったわ、全面的に協力してあげる。ね、オル、リア」


 3人は、頷き合う。なんというか。同盟でも組んだかのようだ。それを見るフィナルが、口元を隠している。目が、剣呑な感じだ。表面上は、穏やかにしているという奴なのだろう。だいたい、わかる。


「助かるけど、まあ。勝てるだろうし、学校を休んでまで来なくたっていいんだぜ。というかここじゃねえしな」


「そうなんだ。どこなの?」


「そいつがまた、あれよ。大会の場所は、そこで発表されるんだけどな。そっから、場所まで移動するのに妨害ありの決闘方式なんだぜ。で、たどり着けないで終わるって事もあるみてーだからよー」


 初耳だ。普通は、四角い台座とかで戦うものなのではないのだろうか。

 そう思っていたのだが。


「それじゃあ、あたしたちができる事ってなさそう。見に行くのも難しいのね」


「ま、実況が放送されるらしいんだわ。見たけりゃ魔術師ギルドで、映像石でも買ってくれよな」


 また、商売している。高い買い物だ。ここでいう映像石というのは、犯罪捜査に使われる代物で。

 石にかけられた魔術が人の視神経だかに作用して、人の脳髄から映像を引き出すのにも使われる。

 裁判にも使用されるので、身の潔白を示すのにはもってこいの魔道具らしいのだ。


 そうでもないと、魔術なんてある時点で犯罪が起きまくるからね。

 

「考えとくわ。高い物なのでしょう?」


「まーな。おっと、さっさと食ってかねえと。げええっ」


 フィナルが、エリアスの分まで手をつけていた。今日の献立は、野菜に肉の厚切り盛り仕立て。

 ジューシーな仕様だ。朝も濃い食事が、アルブレスト家では普通である。

 肉が、若干赤いのは新鮮さというか。作ったばかりというか。


 美味そうに食べているのをみると、食欲をそそられる。


「なんですの。さっさと食べないのが、悪いのでしてよ」


「お前、いつもいいもの食っているだろ。意地きたねえことをすんなよ。聖女の名前が、台無しだろ? なんなんだよ。ユーウ、おかわり」


「遅刻しますわよ」


 エリアスは、涙目だ。しょうがないので、肉を差し出そうとすれば、フィナルが美味そうに食ってしまった。


「マジ、で、おま、今日という今日は、決着をつけないといけないらしいなあ? おい」


「あら、よろしくってよ? でも、間に合わなくて欠場になるのも一興かしら」


 ドン引きの煽りだ。しかし、そうしてまでも妨害したいのか。ルナが、とことこ廻って行くと。


「ほら、食べなさい。フィナルも邪魔したら駄目じゃない。貴族の品格が問われるわよ」


 と、言われて幼女は口元が震える。そんなになるなら、やらなければいいのに。

 エリアスは、その皿を全部受け取ってしまうと。今度は、ルナが。


「ユーウ、貴方のよこしなさい」


 返事も待たずに、奪っていく。一切れを口に入れただけだった。皿には、野菜とじゃがいもの切れ端が残る。バイキング形式にしたらどうだろうか。すると、なんとなく全部食べそうな奴が現れた。部屋の端に見えたと思ったら、テーブルの上に乗ってきて野菜から芋からかっ攫っていく。


 狐の上に毛玉が乗って現れると。きょろきょろして、寄ってきた。もう、食べ物はない。

 うん。もう、いいや。

 立ち上がると。


「そろそろ、行こう」


「マスター。これを」


 桜火が、後ろに立って包を渡してくれる。重箱だ。ありがたい。

 フィナルとエリアスが加わるだけで、とんでもない状態になった。

 今後は、お断りしたい。


「ちょっと、待てって」


 エリアスは、食うのに必死だ。食ってから、やってきたのではないのか。フィナルは、上品に口元を白いレースのついた布で拭くと。


「それでは、失礼しますわ。エリアスが、勝つのを見にいきますけど」


 まだ食べ物が口に入ったまま、エリアスは立ち上がる。毛玉と狐は、くいたそうに目で語る。

 ともかく、手を合わせて歩きだした。


「それで、どこへ行けばいいの」


「父ちゃんの領地にいくから」


「ええと、ラインベルクに転移門を開けばいいんだっけ」


「そうだよ」


 ラインベルクというのは、フィナルの父親が代々領主をしている城のある町だ。人口は、かなり多い。

 確か、40万人規模の都市で。魔導を志す人間が、ミッドガルド中から集まってくるとか。

 フードに、三匹が潜り込んでくると。廊下から、家の外へ移動する。


 門の外へ出ると、そこにはオデットとルーシアが待ち構えていた。


「およ。今日は、学校でありますか」


「いや、ちょっとまたエリアスと一緒に大会にでないといけなくなったんだよ」


「うー、そうなんだ。でも、たまには学校に顔を出してね」


 ルーシアは、心配そうだ。声をかけてもらえるだけ、感謝しないといけないのだろう。

 学校に行かない不良という風になっていそうだし。


「ありがとう」


「あ、そうであります。私たちもついて行くでありますよ」


「ちょっと待った。俺、家から追い出されるかもしんねーんだよ。頼む、ここは貸しだと思って見逃してくれ」


 エリアスが、トレードマークの帽子を脱ぐと。オデットも、察したようだ。


「それなら、仕方がないでありますね。でも、フィナルとか妨害してきそうでありますよ? 手伝わないで大丈夫でありますか」


「おー、おおおう。そりゃ、ありがたいぜ。でも、いいのかよ」


「ここで、話をしていたら間に合わなくなるんじゃないのかな」


 すると、エリアスが驚いてちょっとだけ縦に伸びる。


「やべ、とにかく、そういう事だから」


 転移門を開くと、オデットとルーシアが入ってきた。

 いいのだろうか。学校に行かなくても。


「師匠! 置いていくとは、酷いです!」


 頭が痛いのまで、やってきた。


「あれ、女の人に角が生えてるでありますよ。あの人は」


「入って、とにかく」


 なんだかしれないが、同行者4人になってしまった。エリアスと1人しか出場できないのだが。

 妨害される事を考えれば、サポートが居た方がいいのは間違いない。

 フィナルが、何もしなければいいのに。強い口調で言っておくべきか。

挿絵(By みてみん)

りすちー様作画

チィチ豊乳バージョン

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