272話 黒い木の向こう側9●(クリス)
「さあ、アルブレスト様。中へ入りましょう」
「お姉さま。名前、名前」
誰なのだ。姫だというからには、それらしい名前があるだろう。
門番の男には、世話になった。
「バーモントの娘エリィと申します。ミッドガルドの騎士アルブレストさま。ようこそ、いらっしゃいました。外は、寒いでしょう。中で、お食事を用意しております」
腕に抱きついたままのクラリスとエリィ。両手に花なのだろうけれど、困った。
さっさと歩こうとするのに、不自由だし。ザビーネは、素知らぬ顔で後ろを歩く。
「待たれよ。姫様。その奴隷まで連れ込む気ですか」
骸骨奴隷も一緒に連れていきたい。エリィは、その顔を下にして人の顔をまじまじと見る。
「ええ。よろしいですわ。何か、問題でもありますの?」
「いえ。しかしですなあ」
門番は、困ったようにしている。問題があるのなら、帰ろう。そうだ、帰る口実が出来たぞ。
心証が、更に下がった。
「お嬢様、お父上がお呼びです」
エリィの後ろに立つのは、燕尾服を着た年配の男だ。髭が白い。
メイドが、控えている。
「そうです、の。でしたら、また後ほど」
クラリスは、くっついたままだ。エリィは、名残惜しそうに手を話す。胸は、あまりなかった。もう少し育ったら、いい感じだ。おっぱい星人だからして、いいものは良いと思う。胸が大きい子は、苦労するというが。男は、皆、胸やら尻やらが大好き。
いや、女が嫌いな男はいないはずだ。そこに、愛がないとしても。
「姫さま。こちらへ。お召し替えをしませんと」
「えー。だったら、もっと凄いの?」
「ええ。とっても可愛くなりますよ。さあ、いらしてください」
執事の男は、立ち止まったままだ。そして、見送った後。くるりと振り返る。
その顔は、目が細く眼光鋭い。猛禽という印象だ。
「貴殿が、アルブレスト卿ですな。では、こちらへ」
そういう相手なのか。メイドたちも、その下で武器を持っているようだし。歓迎されていないようだ。
「師匠。よろしいのですか」
「何が?」
「いえ、それならばよろしいのです」
わかっている。館に入った瞬間、矢だとか落とし穴だとかをかまされては堪らない。
後ろを歩いて、正面の扉が開く。
中は、シャンデリアと赤い絨毯が敷かれていた。
金がかかっている。ありきたりではあるが、ハイデルベルの町や一般の住民の住まいを考えれば贅沢だろう。この骸骨奴隷など、その象徴ではないか。
案内されるままに、進路を取り。石の階段を登って、通されたのは部屋だ。
中には、長いテーブルがある。
その奥で、主人がいた。
車椅子に乗っている。
「ようこそ。ボリス・フォン・バーモントだ。娘を忌々しいオークたちから助けだしたとか。ミッドガルドの騎士である貴君には、感謝している。何か、欲しい物はあるのかね」
待っていましたとも。それを待っていました。
「では、この子をいただきたいのです」
「ん? それは、なんだ。おい、奴隷が入り込んでいるぞ。つまみ出せ!」
なんだと? この糞野郎。ぶちころすぞ。顔面にパンチを入れて、後ろに飾ってある鹿だとか熊の毛皮で締めちまうよ。
「お父様。私が、許可をしたのです。止めてください。客人の前です。どうか、お願いします」
エリィが、立ち上がって頭を下げる。土下座をして、地に頭をこすりつけていた。
「こら、そんな、はしたない真似を。どうしたんだ。おい、ジェーームズっ! 娘を部屋で休ませろっ」
「お父さん、駄目だよ。お兄ちゃん、怒ってるもん。あのひと、お腹が凄くすいているみたい」
骸骨奴隷は、目の前にある七面鳥だかの肉を凝視している。食いたいのか。腹が膨れているのに、食いたそうにじーーーーっと見ている。まさに、世界はそれだけといった風だ。
食いたければ、死ぬほど食わせてやる事も可能だ。驚け。そして、満足しろ。
「むっ、むうう」
「僭越ながら、お館様。アルブレスト卿の機嫌を損ねるような事があれば、バーモントの存続に関わるかと」
執事は、ジェイムズというらしい。その横にも燕尾服を着た青年が並ぶのだから、頂点なのだろう。
潰す? そんな事は、ない。そして、関わりにならないだろう。いや、関わるか。破滅の使者として。な。思い知らせてやるとも。
食うのも困る人間を出しているのは、失政ではないか。貴族としても、許容できない。
民主主義と違うのは、ぱっと変えられる点にある。
「だっ」
「貴方」
バーモント伯の隣で、エリィをふくよかにした女性が口を開いた。
「ぐぅ。お前まで。この、場所に、奴隷を連れてくるのは勝手が過ぎる。が、なあ。おかしいであろう。お前たちは、なんとも思わんのか」
この野郎は、自分のとこでできた奴隷だろうに。奴隷を扱っているのだ。奴隷であっても、領民には違いない。棲む家がないとなれば、用意してやり。食べる物がないとなれば、用意してやり。病気にかかれば、薬を用意してやる。
仕事がなくならないように。怪我をしないように。奴隷を止めてくれるように。
それが、奴隷の飼い主としての務めであると思っている。できないのなら、領主など辞めてしまえ。
「お父さん。お姉ちゃんが、こんなにもお願いしているんだよ。聞いてあげなよー」
「む、むうぅ。お前たちが、そこまでいうのなら仕方がない」
良かった。いや、良くなかった。さっさと、帰る口実が出来たのだ。どうして、立ち去らなかった。
このままでは、一揆なりなんなりが起きて滅びるように見えたからか。
「同席を許可する。そして、その奴隷は貴君の物だ。私の領主権限において約束しよう」
「では、奴隷を解放してやる。自由民だぞ。やったな。これで、問題解決だ」
骸骨奴隷は、何もわかっていないようだ。食い物だけに、目が行っている。
「はあ?」
バーモント伯は、口髭がぽろりと落ちそうになった間抜け顔だ。そんなにも驚く事か。
「本日は、お招きに預かり光栄でございます。さて、閣下本題に入りたく存じます。いったい、どのようなご用件でしょうか」
「い、いや。うっ」
顔が、赤い。伯は、高血圧なのか。食い過ぎのような気もする。傷口が悪化したのかもしれない。
「良かったです」
「貴方、しっかりして。ジェイムズ、マリーぃっ」
「はっ、ただいま」
バーモントが運ばれいていく。食事どころではない。しかし、隣ではどんどん口に入れていく元奴隷。
名前も知らないが、まあ良しとしよう。
「あの。良く来てくださいました」
エリィが、優雅に真っ白なドレスの裾をつかんで挨拶をする。
そして、椅子に座り直す。
「はい。不肖の身ながら、何か頼みごとでもおありになるのですよね」
「ええ。お分かりになられました?」
なんだろう。何をやってほしいのか検討が付かない。ゴブリンとかオークの相手は、中々に時間がかかる。セリアは、忙しそうだし。
「さて、心当たりが多すぎます」
「でしょうね」
お人形のような少女にも、悩みがあるらしい。ひょっとしたら、問題をキチンと理解しているのかもしれない。それは、喜ばしくも有り危険でもある。
だって、上手くいくとは限らないのだから。
要件は、さっさと済ませて欲しい。だが、中々進まない。エリィの母上とみられる女性も執事たちも姿が無くなってしまった。
ばくばく食っているのは、ザビーネと骸骨元奴隷。
対面に座っている少女は。
「領地を変えたいのです。手伝っていただけませんか?」
無理だ。手に余る。ただでさえ、幾つも抱えているのだ。
「その為なら、私の大事な物を差し上げても構いません」
な、なんだってーーー。よし、顔は好みだ。処女だろうし、散々弄んでポイ捨てにするか。
「おねえちゃん?」
クラリスが、不思議そうに横を見る。
ありえない。よね? 隣を見ると、ザビーネの半眼が突き刺さっていた。
気付かれたのか。
◆
アルストロメリアの焼き踊りは、半刻で終わって探索となった。
視線は、アキラの腰に向かう。それは、実に欲しい物だ。
羨ましい。考えるに、探索にしろ何にしろなんでも入る小型鞄というのは人類の夢だ。
腰に下げられたそれには、石が側面についていて淡い輝きが見える。
周囲での狩りは、順調ではない。矢を射かけてくるゴブリンやら狼たち。
狩れれば、それをもって帰らないといけないし。魔物の耳やら牙を取るのも、中々に難儀する。
「それ、良いですね。どこで、手に入るんですか」
なんでも入る鞄。是非とも欲しい。欲しくない人間がいるだろうか。いや、居ない。
食料を運ぶのにだって、人員は必要だ。拓也のパーティーは、持ち物係を探す必要があった。
「これかー。これな。大将にお願いすれば、作ってもらえるかもなー。でも、最近忙しいみたいだしな。アルちゃんは、そこんとこどうなの」
「あーん? んなの、俺には無理だぞ。そいつは、確かに形だけ作れても魔術がかけられない。空間魔術を修めている奴は、限られているからなあ。ギルドでも、使えるってのは片手の指くらいなんじゃねえの」
そうなのか。錬金術士であるアルストロメリアには、出来ないようである。
迷宮からでて、やることというと山沿いを探索している。雪が積もっていて、道がないのにだ。
ゴブリンが傘を被って矢を射かけてこないか。そればかりが気になる。
真っ白で、わかりにくいのだ。
「馬車も入るんですよね。いいなあ」
「全くだ。これがなきゃ、もう4,5人はパーティーに必要だぜ? 人の足で歩いていける範囲なんて限られてるからよ。しかも、鳥馬までいれときゃあ帰りの心配をする必要がねえ。問題は、それに見合った成果が出るかってことなんだよな。タダじゃねえから」
アキラは、周囲を警戒している。前を行くのは、ネリエルとチィチ。その後ろにアレインとセイラムだ。
後ろは、定子と美雪。ミミーが先行して、敵を探してくるというやり方である。
「俺、帰ってけん、準備がしたいんだけどなー。山の探索って、戦闘になるんじゃねえの」
研究と言おうとしたのか。アルストロメリアは、足が遅い。幼児たちの中でも、遅いだろう。
「ポーションの他に、キノコが取れればいいとか言ってなかったっけ」
「いや。そいつは、頼まれ物。っていうか、エリアスの奴、こねえじゃん。媚薬を作れとか言ってた癖に」
媚薬と聞いて、アキラが顔を寄せる。
「んだよ。それっ。ちょっと聞かせてくれよ」
「ばっーっか。媚薬って言っても、興奮剤の一種だぞ。ついでに、育毛剤の材料も取れねえかなって」
「育毛剤の材料? マジかよ」
何であろうか。気になる。アキラは、とても気になっているようだ。
「おめーにとっては、気になる物だよなあ。くくくっ。俺が作らねーってなったらやべーよなあ? ぷくく。ひれ伏せ! 崇めろ、この俺様の才能を!」
「へへーぇ~」
アキラは、本気で土下座しそうだ。ふんっと鼻を鳴らして、幼女は反り返る。倒れそうなくらい。
風を切る音がすると。
「むっ」
『防壁』『盾』スキルが淡い燐光を放つ。矢だ。矢を撃ったゴブリンが、逃げていく。
「動くなよ。チィチとネリエルが追う」
セイラムとアレインが寄ってきて円陣のようになった。
「ミミーとミーシャは、何をしている? 俺様を守れよ」
当然、守るとも。しかし、ゴブリンアーチャーは強敵だ。逃げるし、足は遅くない。
弓で矢を使って射かけては、待ち伏せをしてくるのだ。
怪物たちの絶叫が、聞こえてくる。隠れる場所は、ない。
『防壁』『壁』を張っているけれど、効果が何時切れるのか。わからないから、心臓がなる。
恐ろしい。矢を頭に受けたら? 死ぬだろう。誰かが、死ぬ。それだけで、足が竦み上がり動きも鈍る。 だが、座り込む訳にはいかない。生きていかないといけないんだ。
拓也と美雪と定子で。使い物にならないって、言った連中を見返すのだ。
その為には、ユークリウッドとかいう子供にだっておもねるし遜りもする。
「怖いよな。見えない盾なんてよ」
「ですよ。俺、小便ちびりそうです」
「ゴブリンどもも馬鹿じゃねえから、単独で彷徨いてるは速攻で逃げやがるし。マジシャンは手下をぞろぞろ連れている事が多いしな」
すると、右の木から足音がする。反対側にはネリエルとチィチが行った。ミミーは何処へいったのだ。
「撤退だな。逃げるぞ」
「え? でも」
「敵の数が多いかもしれねえ。俺じゃあ、倒せるかどうかわかんねえんだよ」
いや、待って欲しい。敵がどうして、数が多いとわかる。アキラには、拓也の知らない能力があるのか。
そのまま後ろへと走っていく。
「ほら、元来た道を戻るぞ」
「っだあ、守るのではなかったのか。とんだ、腰抜け野郎だなっ」
アルストロメリアは、ご立腹だ。そして、後ろを見れば丁度敵の姿が出てくる。オーク。
いや、それだけではない。一回り大きなつるっとした顔に角がついた魔物だ。
「オーガが出るとは、聞いてないんだよ!」
追ってくるのは、オークにオーガ。そして、その前を走る狼達だ。ペットか。雪をものともせずに、追いすがる。
やばい。前にも狼が、現れた。まさかの挟撃だ。森からも猿男が飛び出してくる。反対側からも。
「なろっ」
やるしかないのか。狼は、距離を取って離れる。非常にやりずらい。しかもすっかり囲まれて、ピンチだ。敵に時間を与えるほど、危険は増す。全滅する? そんな文字が横切っていく。
嘘だ。こんなところで死ぬなんて、想像だってしない。
「畜生。前だ。前に突破するぞ!」
足場は、雪で動きが取りづらい。だというのに、猿人間が飛びかかってくる。その一撃は、タックルにもにて拓也たちを一網打尽にしようというのか。
「だりゃあっ」
アキラの剣が、顔面から真下まで2つの肉塊へ変える。逃げろといったのは、不利だったからではないのか。
「おおおっ。拓也っ。防壁を切らすなよっと」
狼が、下がるところへ斬撃が飛ぶ。アキラも使えるのか。白い狼が、2つになって地面に倒れる。
「わかりました」
「いい返事だ。絶対に切らしちゃあならねえ。ステータスカードで、確認しておけ。自分のも他人のも見れるからな。1人でも剥がれたら、貼り直しだ。なに、気絶するまでに倒しきれればいいっ」
アキラが、なおも突っ込む。それを囲むように、オークとオーガが位置取りをして槍を突き出す。
剣で逸しながら、盾の防御よりも速く頭を狙っている。
後ろは、
「こっち、来んなっつってんだろぉ!」
と、定子がぶんぶん槍の突きで牽制している。矢を撃ちこんでくるオーク。外れるとわかっていても、味方が居る方向の矢を防ぐ。
やばい。何がやばいって、どんどんオークが増えていく。
逃げる方向も、厚みが増してきた。
ひょっとして、オークの巣? 死んじゃうのか。拓也は、死にたくない。
しかし、良い案なんて思い浮かばない。だって、増えるのは前後なのだ。
少しずつ、アキラが倒しているけれどさ。
こんなのって、ないよ。
「諦めた顔をすんじゃねえっ。つか、幼女さんよ。何かねえのかっ」
「非戦闘員を連れ回しおって、俺はこんなところで死にたくないぞ。そうだっ。これだっ」
横に下げていた鞄から、フラスコを取り出すと。敵のいる方向へと投げつける。
が、弓で放たれたのか。空中で、液体が四散すると。
「くっせえ! なんっだこりゃ」
「おっげええぇ。何を」
まず、狼が地面に倒れる。そして、吸い込んだ豚人が泡を吹いて地面に崩れた。
吸い込んでいない魔物も、遠ざかっていく。
拓也たちも退路を走る。
「な、何だったんだあれは」
「おー、げええ」
自分で投げたアルストロメリアが、地面に汚い液体を吐いている。
しかし、助かった。でなければ、完全包囲されて死んでいただろう。
オークたちによって、参三四五に切り分けられてしまったに違いない。
「ま、まあ? 探索は、成功だったな」
「ぜ、全ッ然成功じゃないですよね。いきなり囲まれてましたよ? そんで、死にかけてたってどういう事ですか」
計画性っていうのが、アキラにはかけている。力はあるのだろう。しかし、ステータスカードはレベル21のままだ。上がっていない。おかしい。かなりの数、魔物を倒して歩いて進んだ。
上がっていない。何度見ても上がっていない。
「んー。まあ、ああいう事もあるって事だ。まじで、やばかった。アルストロメリアちゃんの機転がなかったら、俺以外全員死んでたかもしれん」
ひでえ。こいつ、こいつだけ生き残るつもりでいたのか。こんなのとパーティーなんて組んでいられない。しかも、行く基準がナイトメアレベルだ。
オークに倒されて終わるなんて、絶対にゴメンだ。
「あいつら、というか。うちらに欠けてるのって、もしかして魔術師?」
「良く気がついたな。そうだよ。全員、前衛寄りだからな。最低でも1人は居ねえと、どうにもならねえもん」
今までは、ユークリウッドがいた。エリアスがいた。で、エリストールもいた。一気にいなくなってしまった。
「ここまでくれば、安心、ですか」
水汲み迷宮の前まで、引き返していた。全員、崩れ落ちるように座り込む。
ネリエルたちは、大丈夫だろうか。
「あの、ネリエルさんたちは、大丈夫でしょうか」
そんなこと、アキラにわかるはずがない。聞いたってわからないだろう。しかし、
「あいつらだけなら、どうとでもなるぜ。逆に、俺らが居たら戦いづらいかもな」
走ってきた方向から衝撃すると、雪が舞う。入道雲のように、縦へ伸びる。
「あれは」
「また、盛大にやるつもりなんだな。俺と同じかそれ以上に、獣人たちは強え。レベルが同じでも、そのフィジカルは圧倒的に見えるぜ。俺だったら、銃を持ってたって喧嘩したくねえもん。つか、寒さにも強いってどうなの。ずりーだろ」
アキラは、口元に手を添えて息を吐きかける。さっきまで、走っていたので手足が冷たい。
オークやばい。群れている場所に突っ込むのは、自殺行為だろう。
「応援に行かなくて、大丈夫でしょうか」
美雪が、おずおずといった調子でいう。
「ん。下手な気遣いは、無用だってば。俺はともかく、君らはまだまだ経験が浅いって事。鳥馬だって、個人で持ってないだろ? 1人で戦って、1人で生還する覚悟が必要なんだよ。大将の手下には、さ」
そうなのか。ひとりで、集団と戦う。夢物語だ。
そんな事、できっこない。
「それは、いいだろ。怪我、している奴はいないな? オークどもは、矢に糞を塗っているからな。傷を受けていたら、必ず『回復』『浄化』をしてもらえよ」
全員をアルストロメリアが、見て回っていた。
「気が利くね~。さすが、天才錬金術師」
「ふ、ふん。こんなものは、当たり前だ。油断して、死んだら承知せんぞ。というか、なんであいつはこないんだ」
あいつって、ユークリウッドの事だろうか。そんな神さまではあるまいし、気がついたら恐怖するわ。
よく見れば、幼女の鼻穴がひくひくしている。アルストロメリアは、ちょろかった。しかし、脱出する案すら拓也の脳裏に思い浮かばない。
経験値がなさすぎて、悲しくなってくる。そして、喜んでいる2人の女を見て股間が痛い。
なんと、破廉恥な。節操なく。むしゃぶりつきたいと。生きているから。嬉しい。そうだ。帰ったら、セックスしまくるぞ。




