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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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270 黒い木の向こう側7● (4人挿絵)

「このまま中に着地するのですか」


 ザビーネが、中に入るつもりでいるようだ。しかし、考えて欲しい。訳のわからない者が、町の内部に入り込んだりすれば取り調べを受ける事は必定。


 ましてや、子供と少女が鳥馬に乗っているというのは普通だろうか。普通でないに決まっている。


「無理だよ。一旦、着地して門から入ろう」


 いきなり矢で落とされないとも限らない。鳥馬は、乗り手の意を汲んでくれるけれど2人も乗っているのだ。特に、ザビーネは装備が重いだろうし。


「先ほどすれ違ったゴブリンたちの群れは、掃討しなくていいのですか」


「矢が届く範囲だと、不覚を取るかもしれないからね」


 北上すると、左方向にゴブリンの群れを発見したので『火線』を打ち込んだのである。

 面白いように相手を蹂躙したが、つまらなくもある。煮えたぎるような強敵が、いない。

 『火線』は、弱点があるのだ。そうでなくても、発動する前には魔力が高まる。


 勘のいい魔物なら、地面なりに潜るし。熱線だけに水蒸気を出すのが、一番の対策なのだ。

 自分で破り方を考えてしまうのは、どうかと思う。

 ゆっくりと距離を取って、地面に降りると。鳥馬が疲れているようだ。


「俺は、走るからさ。後についてきて」


「わかりました」


 走りだすと、一面雪で覆われた平野を走る。耕作地なのか。バーモントの南側には、魔物の姿もない。

 平和なようだ。すれ違う人間は、ぎょっとした顔をするのだが。とんとんと進んで、立派な門の前にある行列の後ろに並ぶ。


 混んでいるようだ。門の周りには、テントがいくつもあって寒そうに焚き火をしている。

 バーモント領も、またスラムが形成されているのか。スラムは、必要悪という人間もいるようだが。

 あれば、あったで荒廃していくのだ。無いに越した事は、ない。


 おかしい格好をしているのだろうか。並ぶ人間が、ユウタの姿を見ている気がする。

 その内に、順番がきた。


「子供か。入場には、5000ゴルだぞ。金は、持っているのか」


 胡散臭そうに、兵士が尋ねてくる。無精髭に、槍を持って手を出してきた。

 腰に下げた袋から、金を手渡すと。


「お師匠ーーー! お待ちくださいっ」


 振り返れば、大声を出すザビーネが駆け寄ってくる。鳥馬を連れて、手を降っていた。


「2人なら、1万ゴルだな」


 ちと、高いのではないか。それとも、難民を入れないように高く設定しているのかもしれない。

 再度、金を手渡す。


「ふむ。確かに。では、滞在許可証だ。これが、持っていないと叩き出されるからな。滞在期限は10日。それまでに、更新するか決めたまえよ。冒険者を目指して、この町の門を叩くのかもしれんがな。入ってすぐのところで、ギルドがある。ギルドカードを発行してもらえば、それが通門許可証になるからな。ただ、金をとられるだろうが。一応、行ってみるがいい」


 上から目線で、説教をたれようというのか。しかし、悪気があって言っているようではない。むしろ、気を使ってくれているのやも。すると、


「待ってくれ。師匠、ここは私のギルドカードを使います。無料ですよ」


 おお。なんともついている。というか、さっさと言えよ。金が、勿体無いだろうが。


「ほう? そちらのお嬢さんが、冒険者か」


 落ち着いた感じがする。ステータスカードを受け取った男は、カードを見て金を返してきた。


「確かに、Bランクのザビーネさんか。シルバーカードは、本物のようだ。連れも無料という事でいい。よかったな。坊主」


 何か、含むところがあるような気がする。


「通っていいぞ」


 門を抜けていくと。冒険者ギルドに行くべきか、それとも城に行くべきか。バーモントの町は、しっかりした石畳がまっすぐに城へと伸びている。平地に建てられた城のようだ。道幅は、狭いが行き交う人で賑わっている。


「如何なされますか」


「まずは、そのバーモント伯爵にお目通りを願いに行ってみよう」


 道を行き交うのは、人間が多い。獣人の姿なんて、ザビーネくらいの物ではないだろうか。

 その代わりに、耳が尖ったエルフやコビットの姿がある。赤ん坊ほどの大きさで成人するという。

 コビットを真面目に考えると、小児性愛好者なんて事になってしまいそうだ。


「師匠。ギルドに寄って、ゴブリンとオークの集団を報告した方が良いと思います」


「あー、ギルドねえ」


 間違いなく絡まれそうだ。子供と少女の組み合わせ。明らかに世間の厳しさを教えようという冒険者がいてもおかしくない。


「何か、懸念でもおありになるのですか」


「いや。目立たないようにしたいけど、多分絡んでくる人がいるんじゃないかなって思うんだよね」


 雪が足元で凍っていたりして、歩きにくい。『浮遊』を使っていたいところだ。きっと奇異の目で見られるだろうけど。バーモントの町では、権力がないので大人しくしておくべきかね。不自由な事だ。


「それならば、私に任せてください。喧嘩は、どんと来いです」


「ダメだって」


「駄目ですか? チンピラを大人しくさせる簡単な仕事ですよ」


 テンプレを容赦なくやろうというのか。まさにセリア。因縁つけてきた相手の持ち物を奪うという所業をするのだ。それでもって、売り飛ばそうとする。いくら金に困っているからといって、他人の持ち物を売るなんて酷すぎる。


 やばい。この子、やばいよ。一緒にいれば、きっとやばい方向に成長していくのが予想できてしまう。

 どこかへ、捨てる? 何処へ?


「さあ、入りましょう」


 バーモントのギルドは、木でできた扉が2重構造になっていた。1つ目を開けて、2つ目を開ける前に1つ目を閉めるといった具合だ。


 中は、暖房が効いている。石を敷き詰めた床を進む。中には、人の姿がまばらにしかいない。

 なんか、死んだギルドという感じだ。


「こんにちわ」


「こんにちわ。バーモントの冒険者ギルドへようこそ。本日は、どのような依頼をお探しですか」


 ザビーネがステータスカードを渡すと、女職員はカードを見ている。


「ゴブリンの群れを追い払った、といえばいいか。デール村の救援と合わせて依頼料を貰えるのか?」


 ザビーネ。依頼を受けていなくても、依頼料をもらおうという魂胆らしい。


「ちょっと、待ってください。失礼ですが、まだデール村の救援という依頼は発行されておりませんので依頼料を払う訳にも」


 そこへ、別の女職員が寄ってきて耳打ちする。


「デール村の依頼についてなのですが、変更があったようです。救援から、森のゴブリンとオークの討伐要請に切り替えられたようでして。今回の依頼を前払いで渡すにしても、証拠品の提示をお願いします」


 しまった。オークのやらゴブリンの耳を集めていないではないか。ザビーネを見れば、拳を握っている。


「無念です。師匠は、持ってないですよね」


「ええ。残念ながら」


 まあ、オーク如きの依頼料ではたかが知れているし。残って、デカブツの解体をしていたら日が暮れてしまうだろうからね。仕方がないんだよ。解体するのは、こわさないように素材にしないといけないので時間もかかる。


「行こうか。早期達成依頼は、支払いも厳しそうだしね」


 というか。冒険者の姿、ほとんどない。若い男が、2,3人でテーブルに座っているくらいだ。


「お待ちください。冒険者として登録されているのなら、緊急招集に応じるように願います」


「緊急招集? そうか。バーモント伯は、冒険者を集めて魔物の討伐に出たのだな」


 森の中で、全滅してしまったのだろうか。2,3人しかいないとしたら大変な被害だろう。

 そのバーモントに呼ばれて向かっている訳で、招集に応じるというのは枠が違う気もする。


「そうです。なので、ザビーネ様は待機を願いたいのです。もちろん、そこのお連れの方も一緒に参加されるのなら報酬が出ます」


「師匠。いかがされますか。私は、ここで参加しようと思います」


 特攻羊娘。オーク、ゴブリンの話をする事を忘れているのではないか。


「北上しようとしていたゴブリンの群れは、このザビーネさんが退治しました。まだ、ゴブリンが向かっているという話はあるのですか」


「へっ、えっと。その話は、どこでの話なのでしょう」


 地図を示してくるので、ザビーネの細い指が場所を示す。大体合っているようだ。


「至急、確認させます。お時間は、よろしいですか」


「いえ、この足で領主の館に向かう予定です。その後で、寄る事は可能ですね」


 主導権をザビーネが握るべきなのに、そうしないのが困ったものだ。子供とBランクのシルバー戦士では格も説得力も違うというのに。


「そうですか。でしたら、こちらをお持ちください」


 ザビーネが、渡されたのは5枚ほどの券だ。


「お食事等に使える券です。風呂場に入る券も付いています。ここの食事よりも、お好みの物を選べますよ」


 女職員は、オレンジ色の髪の毛がチャーミングだ。腕の上に、乳が乗っている。素晴らしい。


「師匠。行きましょう」


 腕を引っ張られるまで、乳を見ていた。気が付かれてしまったようだ。情報の買い取りとかしてもらうのではなかったのか。絡んでくる冒険者すらいない。


 外では、雪が降ってくる。勝手知らない町の中だ。ラトスクのように屋根の上を飛んで移動したり、空を飛行しようものなら矢で射たれる可能性がある。


「南から、まっすぐに行けば領主の館かな」


「ここへは来た事がないのでわかりませんけれど、中央の城がそれっぽいですね」


 ひよこたちは、まるで反応がない。腹一杯に食べたせいだろう。大人しいものだ。


「大量の兵士を失ったにしては、落ち着いているようだ。どうしてだと思う?」


「兵士の死体を回収できていないのかもしれません。浄化していないなら、死体がゾンビになる可能性が高いです」


 なんともはや。テレビや新聞もないようで、馬車が主流か。道を行く人の姿は、どれも足早だ。

 露天売りをしている人間の姿もない。代わりに、路地裏で座り込んでいる人間の姿が目につく。

 皿の上には、何もないままで座り込んでいた。


 近寄っていくと、皿の上にパンを乗せる。火が付いたように、それを貪った。

 ドクロのような顔だ。


「師匠。そのような事をしても無駄では」


 無駄ではない。毛布をインベントリから取り出して、与えると。立ち上がって、そこを離れた。


「絶対、良くないですよ。ほら」


 離れたら、後ろに付いてくる。首には、よく見れば首輪がついていた。鉄の首輪だ。

 立ち上がった姿は、幽鬼のよう。頭は、天然パーマのように爆発している。

 はっきりいって、恐ろしい。


「ついて来ますよ」


 手足が、不自由なのか。びっこを引くような動きだ。城までは、距離がそれなりにある。


「手を引いて上げてくれ」


「しかし…このような真似をすれば、騎士に咎められるかと」


 そうなのか。奴隷の首輪にも見える。それの事を言っているのかもしれない。

 顔からは、男なのか女なのかわからない。目だけが、鋭く赤い。

 『浄化』をかけてみたが、すぐには変化がないようだ。


「おい。貴様、その奴隷の主か?」


 兵士が、寄ってきていう。


「はあ。師匠。どうしますか」


 どうしますか。って、早すぎないだろうか。巡回の兵士が、すぐに寄ってくるなど。


「そっちも奴隷か? 貴様に、聞いておるんだぞ。はっきりと答えろ、獣人」


 兵士は、喧嘩腰だ。その横に兵士が、立つ。後ろでは、ちょび髭をした騎士風の出で立ちをした男と女がいる。


「これは、違う。だが、何か問題でもあるのか」


「大有りだ。奴隷を2人も持っているような獣人の話は、聞いた事がないからな。確かめさせて貰いたい」


 鑑定をかけようというのか。無礼な。殴れば、すぐにでも死んでしまいそうな男だ。

 しかし、揉め事を起こすのは良くない。せっかく、出向いて来たというのに。


「断る。鑑定をかけるのは、無礼であろう」


「ふん、馬脚を表すとはこの事だな。おいっ、こいつらを引っ立てろ」


 ちょっと待って欲しい。何かの雲行きがおかしいではないか。狙ったように、奴隷を連れていたら絡まれるとか。そんな話を聞いた事がない。普通は、飼い主だと思うものではないのか。


 騎士風の男を見れば、その横で太った厚着の禿げが何かを言っている。

 嵌められたのだろうか。


「1つ。私は、バーモント伯爵に招かれたユークリウッド・アルブレストという者です。お取り次ぎをお願いしたい」


「は? 何を訳の分からない事を言っている。伯爵は、重症で安静が必要だ。本当に、招かれたのなら紹介状なり書状を見せてみろ」


 ない。そう言えば、貰ってないではないか。これは、いよいよ抜き差しならない。が、地べたに這うとかお断りだ。


 ザビーネは、両手を上げている。

 無視して、そのまま城への方向へ進もうとすれば兵士たちが2人を掴もうとする。

 その足を掬って、転がすと。


「貴様。あくまで、抵抗するかっ」


 兵士たちは、剣を抜く。魔術で大人しくさせるのもいい。なんとなれば、全部焼きつくしてもいいのではないか。なぜだか、心がかっかしている。


「城に行きたいのですが、あくまでも捕縛されるというのなら止む得ません。方々には、気絶してもらいましょう」


「舐めた口を、構わん。餓鬼の方は、片腕でも落としてやれっ」


 斜めに、振り下ろされる剣の何と遅い事か。ザビーネを押しのけて、剣の軌道を逸しながら内に入る。

 右に脇腹。左にも脇腹。軽くパンチを当てると。崩れ落ちる。

 腹を押さえた鈍色の鎧を着た兵士は、残り1人。動いているのは、腕だけで。

 

 そのまま横にステップして、足を払う。仰向けに倒れて、頭を打った。

 それで、うめき声を上げている。

 背後で余裕の表情を浮かべていた男の表情が変わり、女の方は槍を背から手にする。

 

「ふん。奴隷を略取しようという気か。冒険者風情が、大きくでたな」


 男の方は、ともかく。女の槍は、2本。奴隷商人が、手下を呼んだのか。武装した男が、増える。

 退路を絶たれる前に、進むべきか引くべきか。





◆ 血のバレンタインは、こうなる。



 何もない白い空間。逃げようがない。


「ふんっ」


 チョコレートが、目の前で粉砕された。何度目なのかしれない。

 せっかく作った包みから、茶色の物体がにじみ出てくる。

 しかし、そうしたアル王子たちといえば当たり前のように言う。


「ユークリウッドにチョコレートだと? 甘い、甘いわっ。俺の目が黒い内は、絶ぇ~ったいに許さんからな。あーっはっはっは。くやしいか? 悔しいだろうなあ~」


 悪党だ。

 せっかく作ったというのに、渡そうとする相手が見つからず。見つかったのは、顔が変形してぐったりとなったライバルだ。


「くくくっ。全く、どうして出し抜こうなんて思ったんだろうな」


 チョコレートが、炎に炙られて無くなってしまう。

 収納鞄から、山盛りのチョコが溶けてなくなっていく。

 せっかく渡そうとしていたのに。


 隠していた物もセリアに取られてしまって、予備すらないではないか。


「なんで、邪魔するのですか」


「なんで、だと? 貴様~。ゆ”るさん」


 自分たちではアプローチの1つもしないのに、人がしようとすれば勝手に食ってしまうのだ。

 アルとセリアの4人が、立ちふさがって会いに行くどころではない。

 しかも、仲間に仕立てたエリアスはてんで使い物にならないでやられている。


「そこを退いてくださいまし」


「いいや。てめーは、今日だけ謹慎だ。バレンタイン、だと?! 許されんよな」


「全くなのだ。でも、私は食いきれないのだ。いい加減な事はしてほしくないのだ」


 アルルは、どんどん腹にチョコレートを収めていく。

 味方が欲しい。このままでは、まるで進展がないではないか。

 それでいいのか。愛に生きるフィナルにとって、承知しかねる事案だ。


 かれこれ、このイベントが6年近く開催されているような気がする。

 馬鹿なのか。好きだと言わなければ、何も起きないではないか。

 恋も愛も早い者勝ち。


 先手必勝に限る。だが、結界が張られて動けない。

 フィナルを縛るほどの結界が、エリアスにも張られていた。

 特に、念入りに顔面を殴られたせいか。呪文を唱えるのは、不可能だろう。


「ふん。そこで、大人しくしておくことだな」


「しかし、動かなければ相手に伝わらないと」


 言わなけりゃあ気持ちなんてわからない。違うのか。だというのに、アルーシュはぐりぐりとチョコを踏みつけながら。


「何もするな。今で、十分だ」


 そりゃ、不公平ではないか。フィナルは、動物に変身する事ができない。

 部屋に忍び込む事は、できないのだ。ずるいではないか。こんなにも、一緒に居たいと願っているのに。 

 『変身』というのは、非常に難しい呪文でスキルとして取れるのは獣人であったり神族という。

 人間は、どうあっても人間。その軛から逃れるのは、容易ではない。


 もしなれるのなら、全てを投げ捨ててもいい。

 4人は、去っていく。そうして、時間が過ぎて。


「惚れ薬入りのチョコレートを作るというのは、本当の話なのかしら」


 問うと、虚ろな目をした金髪の幼女は口を開く。


「お、おう。あーあれか。…でも、アルストロメリアの奴は気まぐれだからなあ。それと分かれば、自分で食いかねねえよ」


 それは変態ではないか。自分で食って、自分で惚れるというのは。


「馬鹿なのかしら」


 自称、天才錬金術師。しかし、頭はおかしいようだ。そんな彼女をフォローしようというのか。


「いや。あ、あいつ。馬鹿じゃねえんだけどさ。無駄にひねくれてるっつーか。効果を試そうと、自分で食いかねえとこあるから」


 やはり、頭おかしい。


 とはいえ。今回もプレゼント作戦は失敗だ。

 バレンタインというイベントはない。しかし、そういった事もあるという。

 

 日本ではやっているのだから、これ幸いなのだが。

 徒労に終わってしまうのか。


「アルーシュ様も自分で貰って、大量のチョコをユーウに自慢するのは止めればいいのになあ」


「ですの。年々、悪化しているように思えますわ」


「あれじゃあ、あいつが可哀想だぜ。ロシナの奴は、しっかり貰っているんだろ」


 アドルは、クリスから貰っている。


 そうなのだ。大量のチョコレートをこれ見よがしに、見せびらかしてはがりがりと食うのである。

 男たちは、血の涙を心の内で流している事だろう。

 もっとも、フィナルは1人だけであるからして気にも留めない。


「お前も、こんだけ妨害されてんのに諦めないよな~」


「ふふん。この程度、何の事もありませんわよ。この愛にかけて、添い遂げて見せますわ」


「その根性だけは、尊敬するけどさ。毎回、やられてるからな。いい加減、何か手を考えねえと」


 手は、考えたのだ。エリストールに勧誘をかけてみたり、ティアンナに声をかけてみたりと。

 蓋を開けてみれば、ティアンナは動かずにエリストールもモニカもミミーも無反応というか。

 反応が薄くて、チョコを渡すまでもないというか。


「俺、動けねえから。つか、さー。親がその気なだけだから」


「ふふん。それならそうで、構いませんわ」


「ほ、本当だからなっ」


 と、言いながら用意しているのは確かだ。

 聖堂騎士アイスマンにチョコレートを渡すように頼んでおいた。

 抜かりは、ない。


 しゃくなのは、ゲルラッハという騎士にエリアスがチョコレートを渡している事か。

 同じように考えていたとは。    

  

 その後、仲間がどんどん増えていった。桃色髪をした女だとか。黒髪の行き遅れだとか。

 予想外な面子になっていく。  

挿絵(By みてみん)

左からオルフィーナ、ミミー、ミーシャ、オヴェリア


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