41話 騎士団で依頼? (ユウタ、アベル、レオ、マーク、コボルト)
某日某時刻
「このままだと損害大きすぎるコボ」
「どうするコボ」
「こっちよわすぎるコボ」
「人間多すぎるコボ」
「モンスター共を投入するといいコボ。」
「こちらに襲いかかってくるかもしれないコボよ」
「やるしかないコボ」
◆
某日某時刻 ある場所
「誰かに貴方の人生は満ち足りていたかい?」
と問いかけられると・・・。
その返事に詰まった。
周囲は真っ暗で何もない。
暗黒に満ちている。上下左右すらわからずここは一体?
俺の人生ねえ・・・。
VRMMOが人生かもな。
・・・おなじみとなっているフルダイブ型のMMOを奴隷MMORPGの合間に仲間と引き籠もりで闘技場や戦場に篭るのが毎日の日課になっていた。LV上げスキル上げ商売に採取なんてものは当たり前にこなした後だ。
市場のVRMMOは押し並べてプレイ環境で痛みや過度の刺激を感じない。
その様にセッティングしてあった。
・・・が、リアル思考のオッサン仲間は法的未整備なことをいいことにアンダーグラウンドな改造をセット本体に施しダメージもリアル感覚仕様を楽しんでいた。俺もその一人だ。
そうして、年中無休で定刻になると集まり皆で殺し合いを楽しんでいた。
ネットにつなぎ外に出ていけば、皆日本はおろか世界屈指の戦闘系VRMMOやFPSのランカーだったんだがね。
たまにやるMMOで十分だったハズが、ネットチャット専用になり引き籠もり状態になっていったのは何時頃だったろうか。
プレイが雑魚狩りに轢き殺しと装備格差になり、ついでチートや公式チートアイテムに萎えると身内だけやるようになった。ネットで大多数と繋がる必要性がだんだん感じなくなったのもある。
なんせ身内と呼べる仲間に五分五分で実力を張り合う連中が20人もいればもう十分だろ? メンバーの入れ替わりは少量だ。
ネット環境にする必要もないオフラインバージョンソフトが出るとちょっとした拡張改造して犯罪を起こさず心逝くまで戦えるのだ。オンラインもいいがオンラインもどきも捨てたもんじゃなかった。俺の中じゃVRMMOよりFPSさらに格ゲーのが好みだった。まあ、どれもこれも楽しんだ。
もちろん地道に装備を集めるのもレベルを上げるのもアイテム集めも大好きだ。PKに粘着を受けてMAPのまで逃げたが逃げきれなかったのも楽しかった。それで顔を真っ赤にしながら採取場所に戻るとハイドしていたPKにまた団子にされるなんてのも余裕であった。色々あっても倒して倒されて楽しんだ。
ヘッドショットを決めるのも大好きだ。
が、決められてDEAD大でしょんぼりすることもある。ヘリ適正と戦闘機適正はないにもかかわらず乗りたがる。乗れば速攻でロケランで撃ち落とされるNOOBだった。好きなんだがFPSは向いていなかったな。刹那に殺られて殺って楽しんだ。
格ゲー物は向いていたけどなあ。
そんな感じでVR物を楽しんだ。
技量伯仲だと心臓を貫かれながら相手の首を飛ばすなんてことはザラだ。強い相手と戦いたい。ただそれだけだ。
拳で殴り殴られ突き突かれ打ち打たれ蹴り蹴られへし折り折られ絞め絞められる。
槍で剣で斧で槌で突き薙ぎ斬り叩きつぶし潰され弓で銃で射ち射たれる。
魔術や超能力の炎で相手を溶かし溶かされ電撃で灼き灼かれ風で飛ばし飛ばされ抉りえぐられる。
人もモンスターもロボも殺し殺され壊し壊された。
現実でやれば犯罪だが・・・仮想空間そこでは自由だ。
リアルで喧嘩をし相手を傷つけると殺してしまうと取り返しが効かない。だからこそ皆ハマったんだろう。
どれだけ戦おうとも、どれだけ相手を擬似的に死に追いやろうとも所詮は空想だ。非現実でありノーカンだ。
環境データシステムデータ戦闘システムをソフト自体を差し替えれば翼を生やしたり竜やモンスターでロボット等を操り水中で海上で噴火口で超深海でマグマの中で高高度で宇宙空間で死闘を繰り広げた。
チートもなく互いに全力で何万何千万回と戦っても戦いたりない。そうやって毎日過ごしたけれども。
戦闘するだけじゃ埋まらなかった。色んな経験はして手に入れたけどさ。
愛が欲しかったのかな。目に見えない只の電気信号だと言われるけどさ。愛ってさ至高の輝きを放つんだよな。
同時に憎しみや妬みに怒りは凄い力になる。
・・・そうこうしながら皆して歳食って死ぬ間際になって何も手に入らなかったと、気付かされちゃったんだ。
だからこそなんだろうな・・・今更だけれど何かをしたいだなんて思ったのは。
手に入れたいんだ。欲してやまないそれを。誰より追い求めたい。今度こそ。
だから今際の際になって暖かい光に包まれながら強く思うんだ。
今度こそ俺は殺してでも奪い取れるのか? って。敵なら簡単に殺せるのに・・どうして味方なんだ。
貴重で得難い席は一つしかなくて誰かがそこに先に座っている。現実は・・・そうなんだよな。
出来るのか? 俺に・・・また・・・俺にはできそうもないけれど。
聞かれた相手に問い返す。
「・・・貴方はどうなんだ?」と。
そして俺は光に溶けていった。
◆
二人共にナンパされてるかと思ったんだけど。どうやら杞憂だった様子だ。
騎士団に向かうことにしよう。ゴブリンの集落について話をしないといけない。
早朝ということもあって人通りは少ないようだ。冒険者ギルドが異常なだけか。
相変わらず、ここは只の詰所とは思えない外観である。
見張りの騎士に話をすると慣れた感じでレオ君が出てきた。これは話しやすいかもしれないな。
どうしたものかな、素直に話とくべきかそれとも勿体つけるべきか。
腹芸は苦手だしさっと話を通しておこう。
「こんにちはユウタさん、本日はどのようなご用件ですか」
「これはレオ様。実はゴブリン達の集落を発見しましたのでお知らせしておこうかとお時間よろしいでしょうか」
「! それは気になりますね。・・・ところでその話は他でもされているのですか?」
「ええ・・・ついさっき知り合いの方達にしましたが不味かったですか」
「そうですか。それは・・・残念です。できることならまず我々に話を持ってきて欲しかったのです」
どういうことだろう。良かれと思って情報を持ってきたらなにやら良くない雲行きだ。
「レオ様それはどういう事情なんでしょう。何かあるのでしょうか」
「それは。ええと・・・」
天然パーマな子犬系騎士が困った表情を見せる。そんなに困ったことだったのか。いや話づらいのか?
「ここからは私も話に加えてもらっていいですか。ユウタくんレオ、こちらに来てください」
「あっ、アベルさん。お願いします」
沈着冷静な知的騎士様だ。今日は知的っぽくメガネ装備だと!? いきなりの参加だが話を聞いていたんだろうか。
詰所前で話すのが不味いんだろうか。
案内されるまま騎士団の一室に通される。薄暗いがなんとも優雅なバーのようだ。ゴルかかっているなあ。
木製のカウンターだが・・・艶がかかっていて重厚な作りだし、酒瓶は所狭しと陳列されている。
室中には数名の騎士団員達がソファーで雑談に興じていた。こちらに一瞥するとまた再開したようだ。
カウンター席に着席する。二人に挟まれた! そんな趣味はないんだが落ち着かない位置だ。
一杯のカップを貰うとコーヒーだと!? 手が震えてきた。
アベルが話を再開する。
「早い話が我々騎士団単独で上げる手柄が欲しかったということです。あけすけな言い方をしてすいませんね」
「ゴブリン退治をして手柄を上げると何かもらえたのですか?」
「そうですね。ルナ様の謹慎が早期に解かれるとかですね」
それは重大だ。しまった・・・なんてこった。この行動が後世に甚大な影響を・・・なんてないよな。
コーヒーを戴く。うーん美味い、というより苦味が強すぎるような。
「現在アーバインの騎士団はリーダーが不在です。なので動きが取れません。そしてその代わりに冒険者達が森で戦っているのが現状です。悪化する経済、に治安、我々も歯がゆい事態になっているのです。盗賊達の動きも活発になってきているので、治安にも目が離せません」
「あのーアベル様。そんな重要なこと一市民に漏らしても大丈夫なのですか」
「ユウタくんは貴重な情報提供者ですからね。情報屋とも違いますし、秘密は守ってくれますよね?」
「それは、もちろんです」
うーんここでもなんかいいように使われるような気がする。愚痴聞き? 運命ってやつか?
コーヒーを飲み干してしまった。まだまだ飲みたりないのだがお替りはためらわれた。
「ここからは私のひとりごとです。ルナ様の謹慎は、公爵家に圧力を掛ける勢力による嫌がらせだと思っていますが、それだけでは済まないような気がするのですよ。まだまだ、陰謀は続いているかもしれないと私は見ています」
「・・・」
「僕もひとりごとです。僕もそう感じます。主に貴族連中によるものでしょうか。ゴブリンによる侵略も何らかの指図も連携もなければ取れないものです。連中の思惑としてはうまいこと潰れるか失態を犯して所領減といったところでしょうか。もちろんそんなことやらせはしませんが!」
ひとりごとになってねえから! どんどんテンションが上がっていく二人。いや俺部外者だろ? ・・・どうなっているんだ。君ら二人。騎士同士でやってくれよ。んっと、俺に何かさせたいのかな?
「そこでユウタくんにお願いがあるのですよ」
「どのような事をすればいいんですか」
「そうですね。個人の依頼で騎士団が動くような事はありませんが、ギルド或いは王家からの要請があれば別です。どうでしょうルナ様の名誉を回復も出来て治安に経済も良くなる。我々を助けてくれませんか?」
出たよ、お願い・・・確かにアベルさんには借りがある。
・・・魔術やスキルをゲットできるようになったのもこの人のおかげだ。これは断れないな。
しかし、だからといって俺に何ができるんだ?
「お力になりたいのは山々ですが、平民の私に何ができるんでしょうか」
「ユウタさんはアル殿下とお知り合いなのでしょう? 冒険者ギルドで一緒にいるところを目撃されています。セリアさんもご一緒ですよね?」
「ええ、それが? 只の護衛・・・肉壁兼捨て駒・・・いや奴隷みたいなものですよ」
なんとなくわかってきた。が・・・無理じゃないのかそれ。俺にだって出来ることと出来ないことがある!
アル様にお願いごとだと? そんなことしたら、さらに奴隷ライフが充実しちまうわ!
「何も自分から卑下することもないでしょう、ユウタ君。ただちょっとお願いしてみるだけでもいいのですよ。それだけでも我々にとっては一縷の望みを託すには十分です。それにヒロ・マクスベルともお知り合いのようだ。彼に相談していただくだけでも我々騎士団が動けるようになるかもしれない」
「アベルさんの言う通りです。騎士団とルナ様を助けると思ってなんとかお願いします。この通りです。」
「アベル様レオ様。・・・その出来るかどうか精一杯頑張らせてもらいます。が・・残念なことになるかもしれませんよ。」
「そのお気持ちだけで十分です。マークさんガイこちらに。マユキくん、酒を頼む。」
大変なことになった。気が重いなあ。話しにきたら・・・3倍重いものが帰ってきた。
やはり人を都合よく動かそうなんて俺には無理だ。どないしよう。・・・胃は痛くならないけどハゲそう。
「それではユウタくん乾杯といこうか!」
「それがいいな! 飲むぜぇユウタ!」
!? どっからアンタらいたんだ。そしてその酒は?
まだ朝ですから! 待て待て、確かに俺は飲んでもザルだったが今は未成年だぞ! ダメだ断固反対だ。
「ええそうしたいのですが、人を待たせているのと予定がありますので」
「ユウタくーん、そんなこといわずにお姉さんと~飲みましょ?」
「ユウタさん・・・もう動かれるんですか?」
「善は急げですよ。飲むのはまた今度でもいいと思いますし」
どこから現れたのか美女に美少女達がコスプレ騎士してやがる。だが、断る! 魅力的なんだけど。
くううぅ・・・。美少女、美女騎士達との楽しい酒盛りがああああ!
言ってみて後悔している。が・・・飲んだら今どうなるのか。
あと未成年だし。ダメだ! ここは強く理性をもってだね。ダメだ!と。何度でも言っておこう重要だしな。
多少男がいても気にならないがな・・・い。しょうがない。
「・・・(ふむ理性的だな。やはり合格といっていいだろう・・素直すぎるのが気になるが。)」
「・・・(マーク卿それも美点だと思います。お人好しですけど。)」
「・・・(それにしたってよ、餌も撒かずホイホイ動くっての。ちょろすぎねえか?)」
「そうですか・・ではまた後日においでください(ガイ言い過ぎですよ。敢えてわかってるけれど乗ってくるのが、ユウタ君らしいというか。)」
聞こえてんぞ。顔に書いてやがる。多分だが。
・・・ちゃんと結果もってこいってことか! なんてデカイ借りになってしまったんだ。投資に回収かよ。
でもまあ、もし紹介状ないままだったらどうなっていたことか。借りた物は返すべきだよな!
俺は騎士団のメンバーに見送られながら騎士団詰所を後にした。
キューブステータス サナダ・ユウタ 16才 冒険者
装備 ミスリルの剣 チェインアーマー チェイングリーブ 銅のメット 硬い皮のブーツ 対魔術の盾 銅の篭手
オークの弓 オークのワンド
邸宅有り セリア 人狼 モニカ 鍛冶士
スキル テレポート PT編成
特殊能力 なし
固有能力( 人形使役、人形化 、幽体離脱、生命操作、力吸収)
▽
[冒険者LV53]市民59村人57戦士 57剣士 58弓士 58勇者 59狩人 59魔術士 56商人 53薬剤士 53騎兵 53弓騎兵53格闘士 53英雄 53治癒士 53料理人 53魔獣使い 51付与術士 51錬金術士 51木こり42下忍 42神官37人形使い37死霊王1生命王1
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