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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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263話 こいつら、早くなんとかしないと18●(アルストロメリア挿絵有り)

 腹にくる衝撃が、した。背後では、慌てる声。

 何かの術を使ったのだろう。迷宮が、一瞬だけ揺れた。


「なんだ?」


「恐らく、フィナルとエリアスの喧嘩です」


 振り向けば、セイラムが助けを求める顔をした。重傷なのかもしれない。


「ふむ。かまっておれんな。先へ進もう」


 オークの死体を鑑定すると、エリートオークジェネラルだった。盾と死体。それに、使っていた包丁タイプの剣を拾う。


 歩いていくと、そこでは黒い土でできた槍に足から胴まで貫かれている拓也がいた。

 部屋の入口だ。

 なぜ、入った。後の祭りだが、言ってもしょうがない。


「しっかり」


「あ、ああ。もう、駄目かもしれない」


 即死をしていないようだ。邪魔な美雪と定子を押しのけると、怒気が伝わってきた。


「てめぇっ」


 槍を引っこ抜いて、回復。臓物が、落ちてきたが破れた皮から元に戻っていく。太ももも貫通している。

 拓也の足元には、血が溜まっていた。


「え? おい。それ、高位神聖魔術じゃねえの」


 アルストロメリアが、袖を引っ張る。

 

 そうだけれど、解説してやらない。物知りな拳法家でもないので。


 傷が、塞がるとぼんやりとした顔をする拓也。まだ、痛いところでもあるのだろうか。

 

「どこか痛いところは、ありますか」


「ああ。…あれ、なんで痛くないんだろう」


「どうやら、治ったようですね」


 拓也は、腕を回している。足と腹を撫で回して、立ち上がった。大丈夫のようだ。


「ちょっと、待てって。今のどう見たって致命傷だろ。なんで、治るんだよ。んなの、聖女、じゃねえ大神官級じゃねえか」


「そうなのですか。それは、すごい」


 言うと。拓也が、驚いている。今更だ。


「おめーの事だっつーの。そうか。そういう事かよ」


 なにやら、1人で得心している幼女。エリアスは、話をしていないのだろうか。自信たっぷりな表情は、かわらない。しかし、企んでいそうだ。


「出てこないで、と言いましたよね」


「それは…そうです」


 セイラムとアレインが、ほっとした表情でアルルたちを追いかける。錬金術師といえば、なんとなく頭が良さそうなイメージとカートを引いて火炎瓶だか硫酸のつまった瓶でも投げていそうなイメージがある。前者は、薬局的な感じがする。


 後者というと、ホムンクルスなゲームというか。DEFを上げてINTの2極だかに仕上げるユニットだ。面白かったのだが、だんだんと人が減っていって辞めてしまった。今でも、キャラが残っているだろうか。廃屋とあだ名された場所をペアで潜っている頃は、本当に面白かった。


 ゴキブリを叩いているのも、懐かしい。


 良いゲームだったのだが、何が面白かったのかといえば人と遊ぶのが楽しかったのだろう。


 色々と、カオスなところもあったが。


「おいってば、聞いているのかよ」


「なんでしょうか」


「聞いてねえー。エッダ、こいつ、スルーするよぉ」


 すまない。幼女に、興味がないのよ。如何にぷにぷにして愛らしかろうとも、オッパイがないのではな。


 せめて、4、5年してそれなりに育ってからにしてもらおうか。


 通路の壁が、オークたちの血で染まっている。キングクラスが居てくれれば面白いのだが。


 まっすぐに歩いて、部屋に入ると死体というパターンだ。冒険者がいてもおかしくないけれど、いないのだろうか。遭遇する事があってもおかしくないのが、ゲームで。入口を固めていれば、会わないのが現実のようだ。


「装飾品とかさ。こいつらの高く売れる部分もあるんだから、ちっとは手加減して倒すって事を考えろよ。金儲けに、ここへ入ってるんじゃねえの?」


「それは、少し違いますね。ストレスの発散でしかないので」


 主に、アルたちの事だ。ストレスを溜める仕事だというのは、わかる。書類と向き合うなんて、大人になってからでいい。なんとなれば、部下に任せればいいので。しかし、統治すれども君臨せずとはいかないようだ。


 進むにつれて、斜めへ傾斜が向いている。落とし穴あり、ボウガンを構えたまま死んでいるオークがいたりと。


「どこまで、先に進んでいるの。早すぎないかなー」


 またぶりっ子する。エッダを見たが、彼女は彼女で不安のようだ。先ほどの、串刺しが効いている様子である。


「頑張って拾いましょう」


「うぇー。つーかーれーたー」


 板を出していないせいだ。レウスもいないので、出す事もないと思っていたのに。


「はあ」


「おー。こいつが、フローティングボードか。でも、狭くね」


 そりゃあ、だって狭い通路だもの。どうにも、狭い通路と広い部屋という構成なのだ。当然、人が並んで3人くらいしか入れないとなれば細くなる。


「乗っているのは、いいですけど。死なないようにしてくださいよ」


「こいつ、結構な硬さじゃん。寝てちゃだめ?」


「駄目です」


 言ったのは、エッダだった。真面目なエッダと組まされているのは、駄目猫とツンツン幼女のようだ。

 可哀想に。ストレスで、倒れるかもしれない。


 拓也といえば、普通に歩いている。美雪と定子は、気が気でないのか。ぴったりと離れない。

 女の子2人の目が、真っ赤だ。


「エリアスとフィナルってば、遅くね? 戻って、こないよね」  

 

「ええ。それが、どうかしましたか」


「いや、いつもこんな感じなのかよ。2人も減って大丈夫なのか? オークってってもジェネラルとかいたんじゃ、やばくない」


 ひょっとして、怖気づいているのか。いつだって、いきあたりばったりだ。倒せない時は、死ぬときではないだろうか。というよりも、アルルの場合は味方が危ない。被弾を無視した戦い方をするので、味方が死んでしまいかねないという。


 彼女が、前線に立つと守ろうとする味方で被害が増える。


「大丈夫でしょう」


 心配なのは、アレインとセイラムだ。引き際というよりも、狙われたら生きていられないだろう。

 回避力云々がない。


「まーいーけど。この迷宮って、守護者がいるタイプなんじゃねえのかな。確か赤い鉱石が埋まってるじゃんよ。これってのは、炎、火の魔力を帯びてて鍛冶をする際には付与するのに使えるんよ。なので、もっと深くに行けば掘れる箇所があるかも」


 雪国なのに、火の魔力石が取れるのか。噴火口があるようだから、火山と関係した石が埋まっているのかもしれない。


 まっすぐに進んでいくと、剣戟の音が聞こえてくる。戦っているようだ。


「慎重にいきましょう。さっきみたいな事は、駄目ですよ」


「俺たちも隠れていた方がいいんですか」


 当たり前だ。拓也は、また盾すら満足に使えていない。そして、矢を弾くとかも出来そうにないだろう。


「そうです。アルストロメリアさんと待機でお願いします。むしろ、後方の警戒をしていてください」


 後ろの壁が破壊されれば、敵が追いかけてくるという事も考えられる。中は、広い。四角い部屋だ。

 すみっこで人骨が、山となっていた。


 中央で斬り合っているのは、狼に乗ったオークだ。全身に金属をつけた黒い狼から、白い吹雪がはきけられて動きが止まる。そこへ、斬撃か。アルルたちの盾と防壁が、燐光を放つ。色が、1つ、1つ違う。アレインとセイラムが、下がってくる。


 追い打ちをかけるボウガンの矢。まっすぐに、飛び出すと。それを摘んで、投げ捨てた。


『苦戦しているようですね』


『全くだ。奴の後ろにいるオークマジシャンとプリーストがな』


 後方にいる杖を持ったオークの集団。その前には、盾を持つオークシールドがいる。そして、突撃してくる大きな狼に乗るオーク。槍とつきだしてきた。下だ。狼の下へと滑りこむと、蹴りを放つ。そのまま天井へと叩きつけた。


 ザビーネとエリストールが、敵の集団へと突っ込んでいく。天井にいる狼とオークへ、光の束が突き刺さる。黒く、丸いものが上から降ってくるのを『指弾』で破壊していくと。


 前でからも、矢が飛んでくる。『弾道予測』『掴み』を発動して、そのまま爆弾の破壊へとつなげた。

 敵は、爆弾を撒くタイプだったようだ。自爆もありえたのを回避できたのは、幸いだった。


「手間をかけさせるっ」「はっはっはっ」


 エリストールの剣が、オークの防御を崩せばそこへザビーネの刃が決まるという感じだ。盾でガードしていたオークがやられる前に、後衛が逃げ出していく。アルルは、「また、逃げるぞ。ちゃんと始末するのだ」と剣を上にして走りだした。


 休憩しようという考えは、無いらしい。オークたちは、果たして残っているだろうか。

 ここが、本拠地なら簡単なのだが。数は、少ないように思える。むしろ、他の魔物の方が多いくらいであった。

 鑑定すると、ハイオークライダーだった。爆発と、矢で狼は肉塊となって降り注いでいる。


 死体は、オークとどっこいどっこい。ユウタには、血が降りかかって酷い様相だろう。 


 これまた、何のドロップもない。中ボスモンスターの気がするのだけれど。でないのが、不思議だ。


「うわー。お前、よくもやるなあ」


 アルストロメリアが、おっかなびっくりでオークの死体をいじる。何をしているのだろう。まさか、金玉でも探しているのか。オークの金玉が精力剤に使われていたりするのは、たまに聞く話だ。


「うぇー。こりゃあ、まあ。こんなもんだよな」


 金玉だけが、残っていた。チンコ本体は、なかった。良かった。グロいもんを見せられなくて。いや、よくないのか? アルストロメリアは、そそくさと鞄へ収納する。


「それ、使うの?」


「こんなんでも、金になるんだよ。分前が、欲しいなら売上が上がってからな。売れるまでは、金じゃねーからよ」


 仕方がない。一応、言っておくべきだろう。


「金目のものは、全部アル様が引取りますから。そこのところは、ご了解ください」


「えー。ケチくせーこと言わずにって、そういうパーティーなのかよ。じゃあ、こいつも?」


 金玉を平然と取り出す幼女。慌てて、手を止めた。拓也たちの動きは止まっている。


「先へ進みましょう。それは、いいです」


「ラッキー。もうけたー」


「もう、儲けたじゃないよ。そんなの拾って、女の子らしくしなくっちゃ駄目だってばあ」


 エッダは、アルストロメリアに注意を促すけれど聞いている風ではない。


「さっきの戦い見てたけど、よくも下に潜ったよな。潰されるとは、思わなかったのかよ」


「心配した?」


「なっ、馬鹿野郎。潰されてみた方が良かったな」


 アルストロメリアは、ツンツンしている。心配してくれたのかと思ったではないか。

 青い蛇は、緑色の皮が付いた肉片を食べている。幼女は、そっぽを向いたまま歩き出す。


 対するエッダは、苦労していそうな女の子だ。ストレスで、おかしくならなければいいのだが。

 平然と、金玉を持つ女の子っているんだなあ。もっとも、アルーシュやセリアで印象がぶち壊しになってしまっているけどさ。


「先へ進みます」


 アレインが、そう言って前へ行く。

 女の子って言っても壊れ物ではなくて、アマゾネスも真っ青なのがいるという事で。


 オークたちを追うようにして進むアルルを追って、セイラムとアレインは走っている。ぽつりぽつりと、後ろから斬られたとみられるオークの死体が転がっている。潰走状態なのだろう。下へと潜っていくと、大きな空洞へとでた。


「遅いと、言っているだろ」


 アルルが、叫ぶ。人が、遅いとこれだ。しかし、早くくると待てという。暴君だ。


 囲まれている。オークの死体で輪っかを作っているが。段が、あってそこからボウガンで射撃をしてくるのだ。オークたちの持つ盾には、オークマジシャンが付与をしているのか。斬撃を防御しているのも、そのおかげだろう。


 剣をメインに扱う3人に、相性が悪い。そして、大きな樽を振りかぶるオークが目に映る。

 『指弾』を放つと、派手に爆発した。

 手前にいる盾を持つオークへと近寄って、突き飛ばす。『剛力』『投げ』が作用すると。


 派手に周囲を巻き込んで倒れていく。


「よしっ」「死ねえっ」


 狂喜乱舞する女の子たち。どっちが魔物なのかわからない。反対側を崩すと。再度、樽を持ったままでいるオークへサンダーを放つ。再度の爆発で、上の段で待機していたオークシールドたちも崩壊している。下を切り崩した3人が、両側から登っていく。上には、一際大きなオークだ。


 青いオークは、1つ目であった。ボスだろう。両手に槌を持っていたが、盾に持ち替えて殴りかかっていく。乱戦になっては、困る。セイラムとアレインは、死にかけのオークたちに止めをさしていた。拓也たちが大人しくしているので、走って4mはあろうか。


 段を駆け上がって、青オークの後ろを取る。ボスだけに、ゲームなら時間がかかるところだろう。

 しかし、背中を蹴ると穴が空いた。頭も、そのまま飛んで行く。


「こっ、こらあ。ちょっとは、戦わせろって言っているのだ」


 遅いと言ったり、戦わせろと言ったり。面倒な女の子である。


「どうするの」


 ザビーネが、剣で示す先には虚ろな目をした女の子たちがいた。

 そして、黒く脈動する木がある。

挿絵(By みてみん)

ハロイ様作画

アルストロメリア

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