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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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261話 こいつら、早くなんとかしないと16●(幼女)

 アキラが、セリアに連れて行かれる。抵抗しようとしていたが、力では勝てないしユウタを見る目が負け犬のようで、嫌な気分になった。

 

 殺されないから、安心して死んできてくれ。大丈夫、食われたりばらばらにされたりしないから。

 時計は17時を針が差している。


 太陽が、西日となって建物へオレンジ色の光を照らしていた。

 くるくるとした角をした女の子が、乳も露わにして言う。


「着替えは、どこだ」


 丁寧語が使えないのか。ザビーネは、めちゃくちゃになったままの薄緑髪を気にせず歩いていく。

 オレンジ色と相まって、妙な頭になったままだ。


「戻りましょう」


 見学者で、日本人の3人に声をかけた。

 日が落ちるのが、早い。あっという間に、残り3日しかない時間が過ぎていった。


「あの、凄かったです」


 軽装に黒髪が鮮やかな少年が、女の子を連れて寄ってくる。


 扉に消える少女は、戦いの後でふらついていた。

 セリアと戦える獣人は、少ない。それどころか、ミッドガルドの騎士だって少ないだろう。

 飛ぶ斬撃というのは、強力だ。滅多なことでは、剣を振り回して欲しくない。

 エリアスの連れてきた錬金術師たちは、回復しただろうか。


 夕暮れにしては、多い観客たちはポップコーンを食べている。暇が、あるのだろう。


 拓也は、


「あんな人が、多いんですか?」


「まさか」


「よかった。でも、考えさせられます」


 扉を開けて、事務所に入ると。エリアスたちがテーブルに戻っていた。

 幼女は、金髪を指でいじっている。


「おかえり。それで、ポーション製造についてなんだけどさ」


 小便を漏らしたことも脳内から、消えているようだ。しかして、エッダの姿がない。


 精神的なダメージが大きいのだろう。ウンコを漏らしていたしね。


 空間転移器を操るには、十分な魔力槽を持っていたけれど拡張が必要だ。『補給』を定期的にやらないといけないだろう。

 女の子が、敵になったら『補給』すればいいのではないか。これならば、殴らずとも勝てる。

 

 名案だ。


「はい」


「どうやって、儲けるとか考えているの?」


 それは、簡単な話だ。一等地で販売すればいい。MMOでならどこで売ってもいいだろう。しかし、現実を考えればどうだろうか。そう。一等地を抑えねば、販売もままならない。よくあるようなポッとでてきたポーション売りが、あれよあれよという間に儲けていく。というのは、冗談でしかなかった。


 そう、すごいポーションを持ってきたりする女の子がいたりすれば、そこで確保されるだろう。


 ポーションを製造する機械として。可哀想だが、それが現実だ。


 奴隷そのもののアルバイトや契約社員を見れば、すぐにわかる話である。


「ギルド内で販売するのが一番ですね。ギルドに卸していただく格好になります。あとは、薬局を作るくらいでしょうか」


 アルストロメリアは、わかっているのかな。


「あー、なるほどね。ギルドに売るのかー。魔術師ギルドは、こっちにないんだっけ。うちも錬金術師ギルドを復活させようと思っているんだけどさ。協力してくれると、ありがたいな」


「げっ。ずりーぞ」


 はたして、どちらがずるいのだろう。


 ラトスクには、ほそぼそと残っていた魔術師ギルドがあった。それを大きくしようとしているのが、エリアスであり。そこへアルストロメリアも食い込もうというわけか。断定は、早いが願ったり叶ったりだ。


 薬草を買い取っても、金にするのは錬金術師ギルドであって。冒険者ギルドはその上前を掠め取っているのが実情。ロメルの方を見れば、ドメルを伴ってカウンター側に座る。


「ここで製造すれば、販売も早くてすみますよね」


「いい案だが、場所がなあ。ギルドと反対側の宿を貸し切らんと足らないと思う」


 足りないのか。既に、ギルドの周辺が宿として買い上げられていた。住処を南側へと移動させられている。西区の出入り口なのだが、なぜだか外へと建物が増えていっていた。


「角地ですか」


「そうよ。角地に決まってるじゃない。売上が伸びるも伸びないも、場所が決定的な力を持つの。いい場所を取れば、それだけ機会が伸びるってことでしょ。さあ、用意しなさい。最高の土地を」


 簡単に言ってくれる。つまり、それは地上げであるからして。やれるのかやれないのかというと、言葉がでない。テンポ良く、返事をしないといけないのだ。つまらない男だと思われるだろう。


「前向きに検討します」


「期待しちゃうよー。で、夜は狩りにいくのかなー」


 笑みを湛えた幼女の顔は、天使もさながらだ。エリアスを見ると。


「あー。夜は、なあ。今日は、全員で潜るって話だろ。遅れたらやべーよ」


「行き先を変更しましょうか」


「えー。ていうと、ハイデルベルの雑魚迷宮かよ。面白くないと思うんだけど」


 面白い面白くないではなくて、困っているのだ。先に、掃除しておいた方が何かにつけて便利だろう。


「いーじゃん。私も混ぜてよ」


 チンコが、ついていないのならやぶさかではない。しかし、怪しい。ついていたら、立ち直れない気がしてくる。男も大概に、惚れっぽいし。女と、視線があったら気があるんじゃというレベル。


「エッダちゃんは、どうしたのかな」


「お前が、あんな事をすっからだろっ」


「全く、ど変態だぜ」


 酷い言われようだ。しかし、あたっているので反撃できない。時間までに食事を済ませる。


 もっとも、ハンバーグがまたしても毛玉たちによって食い荒らされていた。ちょっとのつもりだったのか。


「ポーションは、いいけど。この子たちも連れていくの」


「いや。さすがに、疲れていると思うし。山の方は、どうなんだろうね。3層でない可能性があるからね」


「ふーん。じゃあ、エッダは明日だな。さすがに、今日は立ち直れねえと思う」


 幼女は、珈琲の入ったカップをかき混ぜる。 


「ちょっと待て、マジックポーションはどうなってるんだよ」


「あー、あれな。簡単だぜ。単価を引き下げるんなら、城の水瓶をちっとだけ安く使わせてくれりゃあいいのよ」


 !? どういう話なのだろう。水は、ただのはずだ。


「水瓶の水が、どうかしましたか」


「だから、水はただじゃねーんだっていう話よ。俺らだって、ボランティアでやっているわけじゃねーもん。あれくらいの水になると、源泉にいる貴族たちはさぞや潤ってんだろーなー。いいよなー」


 聞いていない話だ。水は、水だ。


「あっ、やっべ。この話」


「続きをどうぞ」


 エリアスが、アルストロメリアの袖を引っ張る。聞いていない話だけに、気になるではないか。


「ん、そんなのに気になんの。いいぜ、これでどうよ」


 5本の指が立つ。5000ゴルか。5万では、ちと高い。

 銀貨を置くと、幼女は懐にしまう。


「まいどありー。んとなー、水瓶の水はただの水じゃねえってこった。あれ、色々な効能があるんだわ。んで、その後はアル殿下の利用権販売になってだなあ。使える量ってのが、決まっているんだよな。1つは、城の中で温泉に使われる事。2つ目は、とあるアイテムの製造。3つ目が、薬草関連。でもって、もろもろ使った水が下流に流れていくわけよ。で、余った水は貴族たちへ優先してながれる。ここまでは、いいか?」


 よくねえ。いつの間に、そんな手の込んだ真似を。城の中を通して水が流れていくはずだったのに。


「ああ」


「あのな。アル様だって、悪気があってそうしてるんじゃねえから」


 わかっているとも。しかし、相談くらいしてもいいのではないか。金に変えているとは、いい根性だ。


「そこで、問題です。薬草を精製するのには、どれくらいの金がかかるでしょうかー。だいたい、50パーほどは上乗せなー」


「それ、やりすぎじゃねえの」


「しょうがねえじゃん。税金だよ。税金。まー、ばらしたエリアスにはぽこぽんハンマーの刑だー」


 プラスチック製に見えるハンマーで叩くと、ぽっこぽっこと音がする。

 可愛らしい叩き方だ。なんだろう。この違和感。まるで、何か得体の知れない化物と対峙しているかのようだ。


「さっさと、行こうぜ」


 秀才だかなんだかしらないが、フィナルやアルルを置いていったら何を言われるかしれたモノではない。


「おっ、あれ」


 カツの乗った皿とライスが出される。ソースが旨みを引き出してくれるような。そんな気がする。

 さっと、襲いかかってきた白い毛玉を掴む。間一髪だ。カツは、口の中へと入る。


「うまそーだな。オイラにも食わせてくれよ」


 猫が、つぶらな瞳で腕組みをしていた。桜火が持ってきた皿は、途中で獣達の宴へと突入していった。一体、いつになったら腹が膨れるのだろうか。

 白いフードを被ったフィナルが、肩を落として老婆の如き姿勢で扉を開けて入ってきた。


 次に、アルル。アドルとクリスは、忙しいのかもしれない。シグルスも、ハイデルベルでの会議があるのだろう。


「おー。なんだか賑やかなパーティーだな。おい。ねーちゃん、こっちで飲もうぜ」


 隣にエッダが、座る。両方ともにやつれている。なんで、やつれているのか片方はわかる。

 フィナルは、変な物を見る目だ。アルストロメリアは、フィナルを見てからエリアスを見る。

 そして、風呂からでてきたところのエリストールを見て。


「好きだなー。お前。けど、男だもんなー。つーか、バリエーション豊富すぎんだろ」


 と、フィナルの肩に手をかける。


「なんですの。この方は、エリアス。説明なさい」


「えー? めんどくせーなーもー。錬金術師ギルドのアルストロメリアだよ。んで、横のがエッダな」


 フィナルは、胡乱な目をして交互に見る。

 見られたパッツン幼女は、手を口元に持ってきて。


「きゃー、こわーい。フィナル様ったら、そんなに見つめなくてもいいのに~」


「アルちゃんってば、もう。フィナル様は伯爵家から侯爵に陞爵している家柄なんだから。あんまり、馴れ馴れしいとめっだよ」


 名前が、アルで被っている。リアとかアルスの方がいいのではないか。フィナルの実家は、出世しているようだ。対するユーウの家は、何も上がっていない。おかしいではないか。少なく見積もっても、公爵になったって遜色ない功績なのに。


 勘案されてないような。気のせいだろうか。アルストロメリアの目が、フィナルの胸にいっている。

 幼女が、幼女好きとは面妖な。


「あなた、あたくしに喧嘩を売っているのかしら」


「えー。そんな事ないってば~。アルちゃんが、恋のお悩み相談に乗っちゃうぞ」


 ハートマークが出てきそうな笑顔。


 ユウタを見ていう。まるで、おめーの女はいただくぜえ、とでもいうような視線の変化。ひょっとして、チンコがついているのではないか。段々と、変な考えが浮かぶ。


「結構です。それよりも、補給をお願いいたしますわ」


 すると、途端に左側2人の幼女が顔色を変えた。苦手のようである。手を取りながら、スキルを発動させると。平然としているフィナルを見た幼女は、


「ば、バケモンかよ。それ、耐えられんのか」


「あら、当然でしてよ。この程度、セリアの攻撃に比べれば蚊ほどのこともありませんわ。おーっほっほっほ、げほっ」


 むせ返った。上に、飲んでいた果汁が霧となって吹きかかる。エリアスの顔に。


「おめー、こっち向くなよ。ユーウに吹きかけろよな」


 間接キスになってしまうではないか。一向に手を放さないので、指を剥がしていく。


「ま、まあ? 俺様なら、そいつにだって耐えられるってーの」


「へえ?」


 フィナルの口から、蛇の舌がでてきたような気がした。気のせいだろうか。


「もー。また、アルちゃん調子にのるんだから。ごめんねー」


「まったくだぜ。これで、幼いけれど天才錬金術師とか言ってたら、茶がいくらあってもたりねーつーの」


 エッダがとりなしているのに、エリアスは煽る。パッツン幼女の目がつり上がって見えた。


「はあ? 何いってんだこら。俺様が天才なのは、まぎれもねー事実なんだよ、あ?」


「よろしくってよ。どちらが、ボスへ先に辿りつくのか勝負いたしましょう」


 立ち上がって、睨み合う2人。やめてほしい。その一方で、猫とひよこは「いいかんじだな」「もっとやるといいんだよ」と無責任な人語を話す。


 両方とも邪気の欠片もないつぶらな瞳なのに、言葉は悪意に満ち満ちていた。


「んじゃ、あれだな。3人と行く奴は、いるかー」


「私は、当然参加に決まっているのだ。それと、ちびっこたちを入れてパーティーを組むのだ。2つに分けてもいいけれど、山なのだろう。1:1で蹴りをつけてくればいいのだ」


「私も参加したい」


 アルルは、アレインたちを加えたパーティーを結成している。子供は寝る時間に迫っているのに、醜い争いが始まった。ザビーネも加えて、現地で分ける事にした。


「小娘が、泣かせてやるからな、ああ?」


「大言壮語で、小物感溢れる天才様ですわ。おーっほっほっほ」


 セリアでないだけに、フィナルはやる気満々。そして、権力をものともしない子供は初めてではないだろうか。

 本当に、天才と馬鹿は紙一重というけれど。にたりと笑うアルストロメリアの笑顔が、気になる。


 っていうか。笑顔のせいで、悪寒が走る。幼女に、チンコついている気がしてしょうがない。  

挿絵(By みてみん)

Turbo様作画

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