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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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258話 こいつら、早く何とかしないと13●(ウィルド挿絵有り)

挿絵(By みてみん)

ウィルド

 オークの迷宮を掃除して帰ってきてみれば、アキラがカウンターでくだを巻いている。

 相手は、ロメルだ。


「でさ。俺、どうすんのよ」


「どうもこうも、ユークリウッド様に相談するしかあるまいよ。私では、いかんともし難い」


 背丈が、だいぶ違うので見上げる格好だ。コビット族の少女が歩いていく。いつの間にか賑やかだ。


 ロメルが、眼鏡を掴むと立ち上がった。


「おかえりなさい。いかがでしたか」


 いかがって、そらもう地獄よ。迷宮にオークさんが苗床を作っているんだから、酷いに尽きる。


 冒険者は、最底辺というがいないとそりゃもう治安もへったくれもない。恐らく近くの村が壊滅しているとかいう事が出てくるはずだ。王権を取り上げたいところである。面倒だけれど。


「オークが、跋扈してますね。ウォルフガルドに、変わった事はありますか」


 すると、ロメルの前にいたアキラが椅子から立ち上がると。


「大将、聞いてくれよ」


 近寄ってくる。桜火が、パーティーメンバーを案内して座席に座らせた。食事を取らないとね。


「なんですか。食事を取りながら、話を聞きますよ」


 どうせ、碌な話ではないだろう。この少年。とんでもなく迷惑な事をしたりする。


 座りやすいようにだろうか。四角いテーブルに座席。対面には、エリストールが当然のように座った。


 羊娘の姿は見えない。横には、アキラが座った。チィチがいなくなっている。


「チィチが。その奴隷から、解放してくれって。おかしいだろ。奴隷って、解放できんの? いや、できるの?」


 状況がわからない。が、チィチが逃げ出した。という事なのだろうか。そこへロメルが、アキラの後ろへ歩いてくる。紙の束で、アキラのふさふさした髪を叩く。


 飯は、まだなのだろうか。軽く、桜火の弁当を車内で頂いたけれど人数が多いのですぐになくなってしまった。腹は、1分目くらいだ。


「何がどうしたら、解放してくれって話になったんですか?」


「それは…」


「セックスしようって言ったらしいですよ」


 こいつ、馬鹿なのか。奴隷だからって、セックスしようって言うとは。小説の読みすぎだ。ゲーム風に言うなれば、キャラの好感度が低いままで突撃した勇者というべき。普通に、最低なやつだった。


 ロメルは、ぽんぽんと紙の束をアキラの頭へ叩きつけながら。


「それで、チィチさんの解放をしてもよろしいでしょうか」


 その権利は、アキラにあるのではなかろうか。借金を返そうとしている。自転車操業で、返せてないけどさ。返す気はあるみたいだ。


「それだよ。おかしーだろ。セックスくらい奴隷としたって普通じゃね?」


 全然、普通ではない。相手も乗り気でないと、駄目なの。


 当然のように、少年は同意を求めてくる。いやいや。アキラさんよお。あんた、後ろから刺されるとか寝首を掻かれるとかいう心配を全ッ然してないよね。普通の女だったら、というか抵抗する女の子だって居るわけですよ。ましてや、戦闘もこなすゴリラみたいな奴隷戦士が言う事を聞く方が怖いと思うんですけど。


 違うんですかね。女だって、相手を選ぶでしょう。アキラの見た目は、悪くないのだが。何がいけなかったのだろう。


「普通、じゃなくてですね。解放の件ですが、お金は払ったんですか?」


「はい。親類の方が来られたようです。それが、問題に」


 嫌な予感がどんどん増えていく。そして、転送室からでてくる幼女軍団。エリアスの姿が見える。


「問題とは、一体? アキラさんの意見はわかりますが、相手がノーといったらノーでしょう」


 アキラは、椅子に座って突っ伏した。またしても、ハーレムが崩壊。彼の矜持も壊れていそうだ。

 エリアスは、見知らぬ2人の幼女を連れてやってきた。誰だろうか。後ろのカウンターに並ぶ。


「ふ、ふつーはするもんじゃないのかよ」


 そうなのだろうか。相手次第ではないのか。奴隷を買い取った後の事は、よく知らない。買い取った後の主人がどうするかに、かかっているといえよう。江戸時代などの小作人は、かなりの暇があたえられていたともいう。今のブラック企業などは、過労死させるほど厳しい。


 ファンタジー奴隷経済をやっている身なので、かわいい女の子をお尻向けさせてずらりと並べる事はできるだろう。その後、野となれ山となれでいいのなら。


「チィチさんの例もある、という事だ。マールちゃんとは事情が、違う。引取に来たのは、ライオネル王国の高官でした。それなりのコネクションがあるようです」


 地雷だったようだ。踏まなくてよかった。


 チィチの親類が国の高官。現状を鑑みるに、コーボルトにも手を出し、ハイデルベルにも手を出している状態だ。もう、お荷物はたくさん。内政を充実させる時だろう。勢いで、東の果てまで行くのかもしれないが。


「いいでしょう。アキラさんには、我慢してもらうしかありません」


「えー。そりゃないぜ」


 すると、アキラの後ろに位置する玄関からチィチが普通に入ってきた。ネリエルも一緒だ。


 チィチは、ぼさぼさで整えられていなかった金髪を綺麗に梳いている。見違えるくらい変わった。


 鎧も新調したようだ。白と金縁をした物に赤いマントを着ている。どこぞの王族のような雰囲気だ。


 キャシーが、「お話中に失礼いたします」と、ロメルに話かけて連れて行く。


「奴隷なら、たくさんいるでしょう」


「いや、だってさ。だれでも彼でもって訳にはいかないじゃん」 


 この期に及んでも選り好みできるのか。マールが、丁寧に肉の乗った皿をおいて行った。アキラには勿体無いお嫁さんだ。そろそろ説教するべきなのか。信長も秀吉の妻に対するありように、かましていたという。一応、歳の差があるとはいえ主従。


 となりでは、「いただきます」という声が聞こえてきた。熱々のコーンスープに肉が入っている。


 目の前には、肉汁が湧き出てくるステーキだ。野菜が刻まれている。揚げたポテトをまず口にいれる。


 塩気がして美味い。塩は、身体に悪いといわれるけれど。汗で消費するので、補給しておくべきだろう。


 塩と脂身が旨さの元だ。


「こら、妾の分も残しておくのじゃ」


 人語を話す狐とそれを妨害しようとするひよこ。醜い争いに毛玉と謎の猫が加わっている。赤茶色をした猫の背中に羽が生えているのだが。さも当然のように、人の飯にかぶりついていた。


「いい飯食ってんじゃん。おいら、バンってんだ。よろしくな」


 壁に投げつけて、倒したい。経験値が、1くらい入るだろうか。そこへ白い子狼まで参戦して混戦になった。どうして、人の食べ物にたかる。エリストールは、ささっと確保して口元の位置で食っている。美味そうに。

 にんまりとした表情だ。


「大丈夫か? 大将」


「ええ」


「マールぅ。追加、もう一丁。ステーキを頼む」


「はぁーい」


 もう、アキラは料理店のウェイターか店長をやっているべきだろう。


「まっ。しゃあねえよな。新しい仲間でも探すかね」


「そうしましょう」


「女がいい」


 だろうね。ユウタも男はごめんだ。しかし、冒険者ギルドに女の姿はない。であるならば、自分で育てるしかないではないか。だというのに、アキラは育てようとしないから困り者だ。いったい、どうして強い女の子がごろごろしていると思う。


 その思考を破壊して、新しい価値観を植え付ける必要があるだろう。とはいえ、今日は3人の育成。


 しかして、エリアスがやってきた。どうしようか。


「よろしいですか」


「おい。ちょっと待てや。俺らが先だろ」


 と、叫んだのは幼女だった。帽子を被っているので、顔はよくわからないが。金髪が、帽子から見えている。長い髪だ。自信満々の幼女。と、小動物のように隠れている幼女がいた。


 ロメルは、止められて顔色を伺っている。


「先に待っていたので、こちらを優先に」


「さようで。少々、お待ちになってもらいます」


 羊さんは、どこへ行った。ロメルは、離れていく。ネリエルとチィチが話をしている。


 アキラが、エリストールの横へ移動していくと。


「おい。こっちへこい。ったくよ。人を待たせておいて、最近の奴は礼儀を知らねえ」


 なんなのだ。幼女は、エリアスを見ながら言う。カウンターから、歩いていく3人。


 奥の方へと座り、横には気の強そうな幼女が座った。


「こいつが、ユークリウッドか。話には、聞いているぜ。俺は、アルストロメリア。錬金術士の端くれだ。んで、こっちが同志エッダ。今日は、エリアスからの依頼もあって顔を見に来たんだわ。率直に言うと、空間転移器の作り方を教えろ。こっちの要件は、それだ」


 なんなのであろう。空間転移は、強力な魔術として認識されている。おいそれと、他人に教えられるはずがない。ましてや、転移門は。


 そこへ、三角帽子を抜いたエリアスが言う。 


「えっとな。なんで、こうなったかつーとさ。ほら、大会があるじゃん。それでさ。ブリタニアとミッドガルドを移動すっとさ。俺もけっこーつかれるんだよね。で、マジックポーションが欲しいわけなんだよ。ほら、転送器って馬鹿みてーに魔力食うしさー。頼むぜ」


 頼むぜ、じゃない。空間転移器は、自分の魔力で飛ばなければならないのだ。高難度で、かつ魔力量がなければならず、更に正確な位置を掴んで飛ばないとあの世とこの世の境に飛び込む事だってある。わかっているのか。まあ、わかっていて言っているのだろう。


 メリットを提示してもらわねば。


「引受けかねますね。エリアスには、空間転移器を使用する許可を与えましたけれど。勝手な事をされては、ね」


「ふん。器量の小さい男だ。いいか? 皆が移動できるようになれば、兵力の運用が柔軟な展開を可能となるだろう。そして、その結果、最小の兵数で作戦が可能になる。いうなれば、兵法の革命だ。ならば、やるしかあるまい?」


 いや、その結果、馬車がいらなくなってしまうでしょうに。車が、開発されなくなってしまう。鳥馬たちを育成するのも、消滅してしまうだろう。手間暇がかかる癖に、空を飛ぶだけという。飛行船が全てになってしまう恐れがある。


 ゲームでは、どこでも飛んで良さそうなのに何故か飛べないという。そのゲームは面白いのだが、街の中を飛べないのは納得が行かなかった。現実で飛ばれれば、そりゃあ交通事故が起きたりするだろうさ。しかし、ゲームだよ。ゲームなんだから、すり抜けられるようにしときゃいいじゃん。


 街の中を空中から見下ろしながら、音楽にひたるとかさ。最高じゃん。

 そのプレイヤーを楽しませる事を考えろよ。面白くねえより、世界観より、プレイヤーの利便性だろ。

 エンタメに徹しろよ。

 やっている人間を楽しませる事こそが、何よりも最優先事項だろ。


 プレイヤーを無視した運営に先は、ねえんだよ。わかれよ。わからないか。なあ。


 攻撃力1200以下は来るなとかさ、55武器の☆4でなきゃあかんとかさ。

 そんなんで、楽しいのか? 楽しませている気持ちになっているなら駄目だろ。

 こうしなきゃ勝てないとか、そんな単純なアルゴリズムとかやめてくれよ。


 わかれよ。面白さこそが、求められてんの。ねえ。


 いくら応援のつもりで、課金したってさ。最後は、それら、データなんて塵芥。


 手元には、何も残らないってのは詐欺だろ。時間だけを消費して、何も残らないってのはよう。


 ねえ。見てる? 見ろよ。プレイヤーを見ろ。声を聞け。


「おい? 人の話を聞いてんのか」


 うるせえ。嫌な事を思い出しちまったじゃねえか。そりゃね。便利になるよ。


 でもね。利用を制限しないと、いけないの。それを説明してやる義理もないからね。


「駄目ですね」


「なっ。言っただろ。こいつ、堅いからさ」


 エリアスは、手をひらひらさせた。自分が持ち込んだ爆弾だというのに、呑気な物だ。


「なーなー。おいら、よくわかんないんだけど。なんで、駄目なんだよ。すっげー便利じゃん。一瞬で、移動できるしさー。もっと増やして良いんじゃないかなあ」


 飛ぶ猫が、口を開く。なんだか、とってもシュールだ。口の周りが、白くなっていて。どこか青狸のような。犬のような感じが、笑いを誘う。


「馬車組合が、消滅してしまいますね。少なくとも、一般人には利用させられないですよ」


「じゃあ、おいらたちにだけくれよ。それなら、いいんだろ」


 そういって、増えていくのだ。誰彼となく。


「ふふん。わかった。じゃあ、こういう遊びでもしちゃおっか」


 スカートをひらひらと煽ってみせる。それで、誘惑をしているつもりなのだろうか。ないわ。胸は、まるでないし。あいにくと、ロリコンではなかった。甘ったるい匂いが、鼻腔を刺激する。


「対価を支払えば、いいんでしょ~。ほら、エッダも手伝って」


 フードを被る幼女は、長い銀髪を左右にくくっている。可愛いのだが、こちらも胸がまるでない。

 チンコは、反応していなかった。


 目と鼻がくっつきそうな位置まで来る。


「そういう遊びは、早いですよ。勘違いしたおっさんに、襲われるのが趣味なんですか」


「はあ? お前…。こういう時には、乗るのが作法だろうがっ」


 なんで、怒っているのだろう。それを見ている猫。顔を見て吹き出した。

 面白い猫だ。翼を激しく振っていないのに、浮いている格好が。

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