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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
442/711

257話 こいつら、早くなんとかしないと12●(フィナル挿絵有り)

挿絵(By みてみん)

殴りかかる一秒前。

 燃える肉の匂いが、臭い。

 風の術を使えねば、酸欠で死亡するほどの炎。火葬のつもりだろう。


 奥までいっても、オークの死骸と人骨で一杯だった。

 宝のような物といえば、がらくたとオークが使っていたであろう剣やら斧。使いたいだろうか。

 溶かして、再利用するしかない。とはいえ、インベントリに入れたくない。血がこびりついていて、汚さを引き立てている。

 ゴミ箱へ突っ込んでいると。


「これが、冒険者…」


 拓也は、ショックのようだ。綺麗なゲームではない現実に、精神的ダメージを受けているのだろう。

 ネズミもそうだが、オークは人型で尚更だ。忌避感もあるだろうね。上で、戦ったのは逃げてきた連中なのかな。


 統制もくそもなかった。


「ゲームではありませんから」


「はは。だよな。わかってる。この、臭さ。目がしみるぜ」


 階段を登って、外へと向かう。ところどころに、亀裂が入っていて崩壊しそうな感じだ。


「どうしますか」


「どうって…そう、ですね」


 歩きながら、考える。アルトリウスは、椅子の上で居眠りをこきだした。安心しすぎだ。


 大八車を引いていた頃よりは、ずっと楽だけどさ。代わってくれそうな人間はいない。


 エリストールは、その横で寝ている。疲れたのはわかるけどさ。どうなの。


「まだ、わからないです」


「そうですか」


 別に、冒険者をやるだけがハーレムへの道ではない。戦闘をしなくても、権力とつながっているならいくらでもやりようがある。例えば、ポーション屋。


 どうにかして、説得するのもいいだろう。最低限身を守る能力を身につけてくれれば、いいのだから。


 今日を入れて3日で、魔術大会。拓也たちは、昨日の今日だ。


「製造系をやってみるって、気はないですよね」


 前を行くのは、女の子3人。桜火がいるので安心だ。エリストールの胸が、盛り上がっているのに股間は反応しない。やはり、アルトリウスのせいだろうか。性欲が、湧いてこない。


「製造系って、何をするんですか? パンでも焼くとか。です?」


 パンね。パンは、もうやっている。というよりも、アキラがやりそうな事を一通りやっているのでオススメはあるようでない。配下の商会と仕事が、被る。


 拓也たちのカードに目をやれば、レベルが大変な上がり方をしていた。やばい。こっちもやばい。


「パンはやっているんですよね」


「じゃあ、うどんですか」


 うどんね。簡単ではないとはいえ、それなりにやっております。


「うどんもラーメンもやってますね」


「じゃあ、寿司」


 魚を入手する事が大変な世界だ。ちなみに、領地の上へいけばデンマークに相当する国に接している。アレインの故郷だ。


「寿司は、厳しいですね。海で、魚を取るというのが命がけなので」


 ゲームでは、魔物が襲ってきても余裕で対応できるけどさ。奇襲されたら、漁師とかばったばったとやられるのよ。ちなみに、海を船で行き来するのに鋼鉄の船も沈みます。


「ハンバーガー屋さんとか。ファミレスは、どうなんですか」


「かなーり、厳しいですね。あそこまで、省力化された設備なんて魔法と一緒ですよ」


 最新の設備は、そのまま魔法だろうよ。しかも、小型化された冷凍施設や蛇口をひねれば水が出るというのが異常だ。今だって、馬車から車への移行というのに苦戦している。運行ダイヤが守られるのだって、日本くらいの物なのよ。マジで異世界というのが日本という国なのだ。


 それが、異世界ともなれば想像して欲しい。タバコをすって、遅れ。水を飲んでいて遅れ。


 規律は、ある。でも、真面目というのはそれだけで美徳だ。


「この世界でもやれそうなファンタジーな事ですね。ほら、MMOとかやってませんでしたか」


「っ…少しなら」


 何をやっていたのだろう。アキラもロシナも経験がある日本人だった。というよりも、召喚される人間は大なり小なりMMOを嗜んでいるという。偏ってるよね。神様。


 わからないようだ。ヒントを出そうとしていたら、アルトリウスが欠伸をする。


 起こしてしまったようだ。


「ふん。ポーションだろう。或いは、錬金術士といったところか? あれならば、知識を学べばいけるものな。薄い部分といえば、戦力よりも製造部門だろ」


 正確な所をついてくる。察しが、いいのも困りものだ。拓也は、ツンツン王子を見てこちらを見る。


「そうです」


「具体的には、何をやるんでしょう」


 ポーションですよ。ポーション。夜な夜な作る事になるそれ。大変なんです。ほら、両手を合わせてスキルを発動させれば出来上がりなんて事ないですからねえ。なんとか、同意させたいところですわ。面倒なのは、全力で他人に押し付ける。楽しないとね。全部やる? 過労死してしまいますよ。


 そんなどす黒い考えを隠すように、笑みを作ると。


「ポーションとかオススメですよ」


「あっ。でも、商人とか錬金系ですよね。それって、魔力が必要になるのでは?」


 そうですね。確かに、必要ですけれど。それは、レベルの上昇でどうにかなるでしょう。


「錬金術士ギルドへ加入すればよかろう。やり方さえ学んでしまえば、作れるようになる。ただし、師を得られれば。の話だ。学校へ通えれば、そういった事もクリアできよう。が、ユーウが教えるのだろうしな」


 まあ、教えなくもない。ただ、高校生なら本を読めばいけるだろう。


 アルトリウスの権力に頼れば、何を頼まれるかわからない。


「うーん。錬金術士ですか。少し、考えさせてください」


「いいチャンスだと思うのですけれどね」


 チラッチラッと相手の反応を伺う。うざいだろうか。しかし、利を示して勧めてみる。


 いい話なのだ。むしろ、是非ともやって欲しい。


「ポーションの販売は、儲かるんでしょうか。素材なんか集めていると、赤字が出そうな気もします。安定した供給ができないといけませんし。競合する相手、商人がいるのなら値下げ競争になってしまいますから」


 意外だ。MMOの経験だろうか。確かに、足の引っ張り合いというのはある。現実でもそうだ。


「俺の庇護下に入ればよい。国営ならば、他の商人から手出しも受けん」


 もうアルトリウスの中では、決定事項になっている。嫌だとは言わせない彼女のやり口だ。


 先導している騎士たちが処理したのか。まだ新しいゴブリンとウルフの死体が、通路に転がっている。


「2人が、するかどうか。なんですよね。こればかりは、勝手に決める訳にいきませんから」


「ほう。それで、貴様はチート能力を本当に持っていないのだな?」


 今になって、アルトリウスの尋問タイムが始まろうとしている。気になるといえば、気になる。『模写』だとか『強化』というのも強力なスキルだ。


 考えうるに、アンリミテッド~とつけば、大凡チートと言っていいだろう。

 アンリミテッド・ソード。無限にソードを作り出す。相手は死ぬ。

 アンリミテッド・シールド。無限に盾を作り出す。相手は死ぬ。

 アンリミテッド・ランス。無限に槍を作り出す。相手は死ぬ。

 アンリミテッド・アロー。矢を作り出す。相手は死ぬ。

 アンリミテッド・マジック。魔法無限撃ち。相手は死ぬ。

 アンリミテッド・スティール。相手から、全てを奪う。相手は死ぬ。

 アンリミテッド・コピー。相手から全てをコピーする。相手の存在が消える。

 アンリミテッド・パワー。パンチしたら惑星が崩壊する。相手も自分も死ぬ。

 アンリミテッド・ボディ。身体が固くなる。相手の攻撃は全て向こう。

 アンリミテッド・スピード。光速を超えるスピード。自分は塵になる。

 アンリミテッド・ウェポン。弾丸無限。相手は死ぬ。

 アンリミテッド・トラック。視界一杯にトラックを召喚。相手を異世界に送る。

 アンリミテッド・EXP。レベル無限に上がっていく。自分が無敵状態。

 アンリミテッド・タフネス。何も効かなくなる。無敵。 

 アンリミテッド・フード。食料を無限に生み出す。相手は破裂して死ぬ。


 どうであろうか。どれもこれもチート。こんな味方が欲しい。しかし、男はなあ。敵だしなあ。

 

「すいません。僕らは、オマケでついてきてしまったみたいで…」


 悲しそうな顔だ。泣きそうになっている。流石に、アルトリウスも悪い思ったのか。


「任せておけ。貴様たちの身柄は、ミッドガルドで預かろう。悪いようにはせん。それに、ハイデルベルは見捨てるつもりもないようだぞ。まあ、そんな王であれば先も見えぬのだろうがな」


 ないのか。後から目覚めるという事もある。完全にさようならというのは、早すぎるだろう。

 最初から持つ物といえば。

 トランス・ドラゴン。竜になる。竜から人間にもなれる。無双。

 トランス・ゴブリン。ゴブリンになる。ゴブリンから人化。無双。

 トランス・オーク。オークになる。オークから人化。無双。

 トランス・コボルト。コボルトになる。コボルトから人化。無双。

 トランス・骸骨系。スケルトンになる。スケルトンから人化。無双。

 トランス・スパイダー。

 トランス・蟹。

 トランス・スライム。

 トランス・卵。

 トランス・鎧。

 トランス・剣。

 トランス・盾。

 トランス・兜。

 トランス・パンツ。

 トランス・畑。

 トランス・迷宮。

 トランス・カブトムシ。

 

 他にもたくさんあるだろう。拓也たちは、人間スタイルだ。カードの成長も至って普通。

 構成も悲しいまでに、普通だった。


「ありがとうございます」


 拓也は、アルトリウスを見て目をうるうるさせている。彼女の言葉に騙されてはいけない。こき使う為の方便だ。


「つまらんかったな。さて」


 最後に毒を吐くと、王子が言いながら立ち上がった。金髪に赤みがかかった騎士と黒髪を分けたランスロットが見ている。


「また、夕方な」


 夕方も来る気だ。やることが詰まっているのに。帝国の襲撃は、無かったようだ。山へ登るというのは、無しになったようである。


「承りました」


 引き続いて、拓也の面倒をみなければならない。パーティーから3人を抜いてカードを返す。


 レベルは、上がりすぎだろう。返されたカードを見て、動かない。


「帰りましょう。ポーションの話を詰める必要があります」


 四角い胴体に着地している腹へアルトリウスが歩いていく。撤収の準備は、済んでいるようだ。

 振り返ると、手を振る。


「あっ。手を振ってますよ」


 振り返さないと怒るので、手を振り返す。周囲の目が痛い。痛いほど、突き刺さってくる。無言のプレッシャー。将来暗殺されそう。


「あの」


 あの、というのが拓也の癖になっているようだ。寝ているエリストールから板を奪う。ひっくり返すと、おっぱいで浮き上がる。単純に、凄い。どうなっているのだろう。ゲームなら、水着で居て欲しいタイプだ。チンコは、まだ元気がでない。


 呪いなんだろうか。


「なんでしょう」


「王子さまなんだよな。あの人って、凄いひとなんだろ。どうして、君と知り合いなのよ。ちっこかったけどさー」

 


 おお。茶髪ヤンキーさん、死にそうな発言だ。聞かれては、いないだろうか。周りを見るが、反応はない。アルトリウスに聞かれていない事を祈るばかりだ。KGBも真っ青な盗聴能力をしているから、迂闊な事を言えない。


 元は、天幕が置かれて合った場所に何も残っていなかった。ひとまずは、一箇所を攻略した。


 任務を10分の1というところか。


「出会いは、最悪でしたよ」


 殴る蹴るの暴行。よくも出会い頭にやったものだ。ループしているからといって、容赦のない攻撃だった。過去のことだけどね。


「でも、2人でパーティーってことはかなり親しい仲なんだ」


 美雪、やばい。整った前髪の下で、腐女子の目を輝かしている。にまにましているといったらわかるだろうか。ホモじゃないですよ。


 ばらしちゃおうか。やめておこう。きっと、信じない。アルーシュはばらす奴だが。


「いえ。それほどでも」


 当たり障りなく返すと、火の玉が振ってきた。今頃降らせてくるとは。


「あぶなっ」


「さあ、さっさと移動しましょうか」


 転移門を開いて、ラトスクへと移動することにした。羊娘は、どうなったのであろうか。

 大人しくしていればいいんだけど。

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