251話 こいつら、早くなんとかしないと6●(バラン挿絵有り)
屋根から飛び降りると、倒れたジェイムズの身体に近寄る人間がいる。
後を追って、着地したシルバーナに問う。
「あれは、仲間か?」
「うっ…」
どう見ても、知っているようにしか見えない。そんなに、裸踊りがしたいのだろうか。
今のシルバーナには、胸もないので見たところで興奮しない。ロリコンでもないので、パイパンを見ても勃起しないだろう。しかし、股間は立ちっぱなしだった。気が付かれたら、非常に危険だ。
返事をしないので、ギルティだろう。半分以上は、自白頼り。だが、アルーシュに真贋を問えば簡単に話が着く。
「どうなんだ?」
「ああ。そうだよ。あたいの部下だ」
回収していく。追いかけて、殺すのは簡単だ。なんなら、火線で蒸発させてもいいだろう。目は、エリストールに移っている。こちらへ視線を向けて、顎で左右の人間へアピールしていた。全く、意味の無い事だ。例え、ばれたとしても今度は開きなおるだけだ。
酒に食い物を振る舞う貴族の子弟と氏素性の知れない森妖精。どちらを信じるのか。
サディズムに満ちた性根に、呆れるしかない。もともと、そうだったのか。それとも、股間がそうさせるのか。男の本性なのかもしれなかった。
「どうするんだい」
臭い。この娘。脱糞しているんじゃないだろうか。建物の向こうへ消える部下たち。気がついて居ないと思っているのか。次は、ない。というか、アルルに知れればこの場で斬首に処される可能性すらある。
「そうですね。今後、このような事はしないで欲しい。父上に誓えますか?」
たらりと、額から汗が落ちる。こういう相手は、強姦したって諦めないのだ。脳内だけで、穴バックを決めながら様子を伺う。下を見れば、雪跡に小さな点が出来ていた。漏らしているし、糞までしているとは。指摘したら、また切れかねない。
藪蛇という奴だ。
「わかった。今後は、もう、しません」
屈辱にふるえている。ここで、チンコロしたら最高にザマァだ。しかし、死んでしまうだろう。それは、勿体無い。己1人を狙ってくるのなら、ばっちこいだ。周りを巻き込んで、爆発物を使う所業は厳しい処罰が必要だろう。
チンコが立つようになったところで、壁にシルバーナを押しやる。ウンコ臭い。
当人は、臭わないのだろうか。
「次は、ありませんよ」
仇を見る目で、睨む娘を後ろから突いてやる。最高に満たされる瞬間だろう。脳内で済ませておくのが、いい。というか、実際にしてしまったら犯罪だ。もがれてしまう。どうして、急に性欲が出てきたのだろうか。チンコのせいかもしれない。
「わかったってば。それより、エリストールを放っておいていいのかい? あのままだと、留置所で強姦されかねないさね」
それは、大変。ちょっと、見てみたい気もする。多数のむくつけき男が、順番に並ぶところでエロフが激しく突かれている場面とか。脳内が、汚染されているようだ。
「そうだね。追いかけるとしよう」
はたして、石壁に囲まれた場所へと連れ込まれるエルフ。人で一杯だ。スケルトンは、街の外へと向かっていった。仮に、倒されても魔力が切れない限り復活する仕様だ。
「中、に入ったみたいだけど。ひっ」
後ろを歩くシルバーナが立ち止まったようだ。振り返ると、顔が真っ白になっている。臭いが、手を引くしか無い。その後ろには、誰もいなかった。人でごった返していたのが、嘘のようだ。
「どうしたんですか」
「いや、どうもしていないよ。気にせず、前を行ってくれよ」
どうかしている。間違いない。手は、震えているし。引きずるようにして、前へ進むと。
建物の中へ消えたエリストールを追って、扉を開けた。
兵士がいる。人もたくさんだ。エリストールは、階段の下か。鉄格子の向こうのようだ。
「すいません」
「んー。なんだ? ぼっちゃん。今日は、忙しいんだ。帰ってくれないか?」
帰ってくれとは。シルバーナの方を見る。しかし、気合を込めた視線もうわの空になった女の子には無意味のようだ。本来ならば、平手打ちでもして気合を入れるのだが。それも、時間が惜しい。中で、強姦でもされていてはティアンナに申し開きできない。
ちょっと、見てみたい気もするが脳内だけにしておこう。ガニ股姿でおらおらされる光景を瞼の裏においやると。
インベントリから、金塊を詰め所のテーブルに乗せた。
男たちの視線が、集まって訝しんでいる。
「中に居る人を釈放してもらえませんか」
「ぼっちゃん、悪い冗談だな。彼女は、騒乱を起こした首魁みたいなんだ。じっくりと、取り調べをしてから、判断しなきゃなんないんだよ」
兵士は、穏やかな人のようだ。話を聞かないというタイプでもない。自分で蒔いた種だ。なんとかしないといけない。ここは、権力を使っておくべきだろう。盗賊に誘拐されて膜が残っているか、というのとくらべるべくもないが危険だ。
身体検査なんて、されては堪らない。心のチンコが折れてしまう。
シルバーナは、黙ったままだ。レイプされた目をしている。していないのに、している。なんでだ。
「わかりました。しかし、ミッドガルドのアル王子殿下の預かりでして。無用な取り調べは、止めていただきたい。なんでしたら、貴賓館へ人を送って確かめてもらっても結構です」
子供である、デメリットだ。これが、おっさんだったら信じてもらえただろうに。子供なので、馬鹿にされる。しょうがない事だ。
「ははは。君は、ミッドガルド人なのか。そうか…」
「隊長。子供の話を真に受けるんですか」
完全に、舐められている。ここは、チンピラモードの方が早いだろう。ぶっ壊せという、心の声がする。
真に受けてくれないと、攻撃魔術で破壊するしかないだろう。真っ裸にされて、膜やら何やら身体検査されている。なんてことになったら、大変だ。なんて言われるか知れたものではない。膜返せよって言われたらどうしよう。どんどん、悪い考えが浮かんでくる。
風断で皆殺しにしておくべきだろうか。
「そうだなあ。ただの子供が、このような金塊を出せるとは思えないし。取り出したのは、インベントリじゃないのかな。魔術士でもあるようだ。それを踏まえると、信じざる得ないね。わかった。人をつかわそう。それと、ボイドくん。下へやった彼女を連れてきてくれ。本当なら、全員の首が飛びかねないよ」
わかっている人だ。勿論、その場でやるけどね。家族までやっちゃいそうですよ。まさに、殺戮者ですわ。
ふう。
腐った魚が横たわっている目をした幼女を椅子に座らせてやると。
「見に行ってもいいですか」
「それには、及ばないさ。まさか、先走る人間が…いくか」
階段を降りていく刈り上げの金髪の男。ボイドは、先に行ったのに格子扉の前で男と話をしている。上に5人の兵士。シルバーナは、付いてきている。牢の前には、3人の男たち。顔の方向を変えて、視線を向けてきた。
「お前たち、何をしている? さっさと?」
「放せっ。汚い物を近づけるんじゃないっ。うぐっ」
声がする。我慢だ。
「あの」
皆殺しでいいですか。
「何の真似だ。これは」
「隊長っ。そのっ。へへっ、役得じゃあありませんか」
薄い眉をした男が、言う。それよりも、格子を破壊して中へ入った。男は、下半身丸出しだった。
チンポビンタでも食らっていたのだろうか。桃色の髪が汗でへばりつく顔に、毛がついている。ついでに、整って高く稜線を描く鼻から血がでていた。何してくれてんのよ。
これは、死刑でいいんじゃないですか。殺していいんじゃないの。皆殺しに、していいんじゃ。男を殴ると、よろめいて尻もちを付いた。そして、腹を押さえてうめき声を上げる。
一瞬で済む。後から、罪状を適当につけてしまえばいい。そうだ。
デコピンをすると、男はよだれを垂らして白目を剥いた。
いけない。殺しては。簡単に、殺す癖がついている。エリストールを拘束する枷を破壊すると。
「どういうつもりだ。君」
「それは、こちらのセリフなのですが。俺に喧嘩を売っているんですか? いいですよ? 買います」
剣を手にする兵士たち。隊長は、腕組みをしている。余裕だね隊長さん。次の瞬間には、死ぬのに。
「ふむ。いい度胸だ。ボイド、私は連れて来いといったな?」
茶色い髪をした兵士は、剣を抜いている。ボイドのいかつい顔を殴ると、床へ倒れた。隊長は、剣を抜くとそのまま屯っていた男たちを斬りつける。喉、頭。そして、縦に一閃。鮮やかな手並みだ。そして、ひしゃげた格子を潜って入ると。殴られて倒れている男へ一突き。
できる男のようだ。
「シルバーナ」
びくっとなった幼女は、声で反応する。反射的に短刀を手にした。
頭を下げる隊長。下げたままの格好で。
「この通り。済まなかった。まさか、このような真似をしているとは」
他にも牢に入っている人間は、いるようだ。好奇の視線が向けられている。
「……」
このまま隊長以下の口を封じるという手もある。見ている者がいなければ、死人に口無しだ。
そんなことは、しないけどね。すると、お尋ね者に早変わりだし。
「今回の事は、なんとか水に流していただきたい。この者達の死を以って」
「わかりました。ともかく、外へでてよろしいですか」
「ああ」
倒れたボイドはそのまま。まだ生きているのだろう。
隊長の手は、震えている。味方を殺したせいだろう。シルバーナが階段を登り、その後に続く。素っ裸なエリストールにローブを着せてやると、上の階にでた。そこには、敵意に満ちた兵士が待っていた。
追ってきた隊長が、剣に手をやったまま。目には、涙がある。
「お前ら、ガストン、ジャックス、ボーマン、ベイトンがしていた事をしっている奴はいるか?」
「あいつらが、何をしでかしたんですか」
どうやら、隊長とその部下は上手くいっていないようだ。にやにやとした顔がある。
「女の尋問を勝手にしていた罪だ。私は、待てと言った。なぜ、待たない? 命令違反により、4名を処分した。知っていた奴は、前へ出ろ!」
誰も前へでない。しかし、敵意に満ちている。これが、ハイデルベルの軍規。
王都という檻の中に、放たれし獣達のサファリパークのようだ。
そこへ、扉が開く。白い鎧を着た兵が入ってくる。先導の兵と本命の兵士か。装飾鮮やかな鎧を纏う男が、声を高らかに。
「何事だ。答えよ、グリドリン卿」
隊長は、グリドリン卿というらしい。兵士は、立派な兜に赤い羽を設えている。
「これは、バッカス様。将軍閣下が、このような場所へどのようなご用件でございましょうか」
バッカスは、ぐるりと見渡す。
「どのようではないぞ。ミッドガルドから抗議を受けたのだ。それも、全ての貴族を処刑する権限をよこせという物言いまで受けて、だ。大臣など、震え上がっている。王命により、ここにいるアルブレスト卿の指示に従えというのだ」
と、髭を蓄えた将軍に視線が合う。速攻で逸らされました。
「そなたが、アルブレスト卿、なのか?」
涙目になって背中に隠れているエルフは、怯えている。駄目だ。使い物にならない。シルバーナといえば、先程から魂が抜けている。短刀を握ったまま突っ立って居た。
目の前をささっと、手の上下運動しても反応が薄い。
「違う。こいつだと、言っているだろう。スケルトンを作ったのも、こいつだ。敵が狙っているのも、こいつだ。私は、リッチじゃないと言っている。ネクロマンサーも持っていないぞ。信じてくれ」
信じるだろうか。裸足にされている彼女に、魔力の残りは少ないようだ。戦闘で、かなり消耗したに違いない。膜が残っているかが、問題だ。なくなっていたら、街を燃やし尽くす自信がありますとも。
「ふむ。信じ難い、が。貴方が、アルブレスト卿ですか」
ま、大概の人間は、信じない。そして、馬鹿にする。どうしてだ。アルカディアでも、ブリタニアでも戦闘で活躍したはずなのに。セリアばかりの勇名が、大きくなっているような気がする。
「ええ。信じて貰えるかどうかわかりませんけれど」
「…では、この者たちが何か失礼を致しましたか」
してない訳がない。速攻で、壁の染みにしたいところだ。だが、それでは以前と変わらない。我慢だ。
チンコも立つようになったし、穏便に済ませよう。エルフの膜が無かったら、許さないけどね。後で、皆殺しだよ。
「いえ、隊長さんが立派に指導されているところです。俺は、奴隷を返して貰えれば結構なので」
「ど、奴隷だと!?」
鼻血を出して、抗議してきた。冗談です。
「冗談ですよ。知り合いの森妖精です。まさか、辱めを受けてるとは思いませんでしたが」
ちょっとだけ、気合を入れてグリドリンを睨む。将軍を前に、直立不動の姿勢だ。
「そうか。グリドリン卿も話がある。サー・アルブレストは、こちらへ、城でおもてなしをしろとの命を受けております」
詰め所から出れば、馬車が用意されていた。嫌な予感しかしない。スケルトンたちには、耕作するように命令を出しているが本当に仕事をしているのかわからない。空からは、雪が降ってくる。
「さあ、お乗りください」
馬車に乗ったものなのだろうか。半裸エルフとウンコ女を先に乗せる。
後に続くと、糞の匂いがした。何を食ってんだか。着替え用にも、普段使っているような機能はない。
ひよこと狐は丸まって震えている。毛玉と違って、寒いようだ。




