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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
402/711

217話 弟の家周り (ユウタ、レウス、クシャナ、ギル)

 結局、家に戻ってきた。

 壁破壊に床も破壊しそうになったから。

 1階に降りていけば、でるに出られない状況とか。

 ロメルは、ロメルでキャシーという狼獣人とよろしくやっていたからだ。

 

(事務所は、ピンク宿じゃねーぞ)

 

 と、叫びそうだった。

 もはや、嫌がらせでしかない。

 ロメルに何か思惑があるのだろうか、と勘ぐってしまう。

 

 狐とひよこ、毛玉が枕元に鎮座していた。

 眠いので、そのまま寝ることにする。どうせ、外に出しても五月蝿くて寝れないのだ。

 母親が、犬猫嫌いであった事を思い出しながら眠りにつく。




 朝は、早く起きないといけない。

 枕元では、動いている3匹が睡眠を邪魔してくる。起きろというのか。

 ユウタは、眠い目を擦りながら上半身を起こした。

 勉強は、全くやっていなかった。前世の記憶やらで、どこまで凌げるのか怪しいくらいさぼっている。

 

 今季の通信簿もいい評価をもらうのは、絶望的だろう。

 朝起きて、鍛錬するとそこから朝食。

 ルナやオルフィーナといった面々は、起きてくるのが遅い。

 妹であるシャルロッテもそうだ。父親であるグスタフに、変わった様子もなく。

 聞いてみたいが、これで家庭崩壊するとかいう事になれば居たたまれない。


(軽く、ジャブでもかましてやりたいところだわ)


 気持ち的には、どうしてティーチとレウスが見捨てられているのか。それが気になる。

 まさか、貴族の体面だとかそういう事なのだろうか。疑念は尽きない。

 朝食は、青野菜に目玉焼き。フランクフルトと白シチュー。それに、ポテトをすりおろした物だった。


「兄者。学校に行っていないのは、どうしてです?」


 びっくりした。クラウザーが話かけてきたのだ。兄弟のコミュニケーションのない家庭で、弟が聞いてくるとは。思わぬ言葉に、グスタフもエリザもチラリと視線を向けてきた。


「暇がなくてね。ちょっと、遠くまでいったりしてるんだよ。学校には、たまにしか顔を出せないかな」

「どこへ行っているのですか?」

「ちょっと、コーボルトまで行ってたりするよ」


 嘘ではない。すると、父親譲りの四角い顔に興味有りげな目を浮かべる。

 

「それでは、あの、浮遊するお城を見たのですね。あの、中に入ったりしました?」


 気になっているのは、城なのか。学校は、痛いところ。話が長くなりそうだ。

 金髪を短く刈った幼児は、前掛け姿でナイフとフォークを持ちながら口を開く。

 当たり障りのない返事をするべきか。ありのままを言うべきか。


「中、アルさまの趣味に染まってるよ。きっと、驚くと思う」

「わーすごいなー。僕も一度でいいから、登城したいです。正騎士になれば、浮遊するお城に入れるのですか?」

「入れるのかな? わからないよ」


 父親の方に、視線を向ければ素知らぬ顔だ。浮遊城は、戦闘用で王城とも違う。犯罪捜査を主とするグスタフにとっては関係ない話だからだろうか。エリザと会話に花を開かせている。今日のお弁当だとか。植えている花だとか。贈り物とか、そういった話になっていた。


 残念そうな顔で、クラウザーは言葉を止めた。代わりに、アレスが剣の話をしだす。

 どうも、アレスは剣、槍、弓とどれが一番強いのかという事に興味があるらしい。

 戦場の話になって、道場の話が盛り上がる。学校に行っては、帰りに道場に通っているようだ。


「兄上は、剣が最強だと思いますか?」

「どうなんだろう」

「僕は、剣と魔術を併用していくようにしています」


 アレスは、剣と盾を使いさらに魔術で補強するという。クラウザーは、


「僕は、大剣です。魔術も使うつもりですけど。素養が低いので、補助にしかならないし回復系統に絞ると思います。兄者は、何にするつもりなのですか」


 困った。なんでも使える。斧でも、杭でもなんでも武器として使えてしまう。

 なければ、素手でいい。子供の夢を打ち砕くような大人気ない事は、慎むべきだ。

 手を見せて言う。


「僕は、拳かな。武器がない時は、これを鍛えておくと助かると思うよ」

「剣は、駄目なのですか?」


 悪くないのだが、剣が無い事もある。剣が通じない相手もいたりする。


「いや、いいと思うよ」

「では、なぜ素手なのです?」


 困った。どうして、子供というのは容赦がないのだろう。

 追求を逃れるのに四苦八苦していると、グスタフが肩をすくめて視線を送ってくる。


「父上」

「うむ。クラウザー、アレス。そう、兄を困らせるでない。返事が難しいのだよ」

「そうですよ。お兄さんを困らせるんじゃありません」


 ほっと一息つけた。剣は、鋼鉄の鎧に弱いし。魔術を帯びれば、別とはいえこれまた魔術を帯びた鎧に通じなかったりする。鼬ごっこなのだ。リーチの面からいえば、槍、弓、銃に負けるし。魔術は、ほとんど無制限の射程だし。魔術抜きで、どれが最強かと言われれば、銃だろう。


 魔力を帯びた銃は、弾の制限さえなければ最強くさい。

 当たれば。そして、火薬を作る事ができれば。雷管ですら大量生産はできない。

 工場が必要だ。圧延から製鉄。それから型をとってと。

 現地生産になれば、日本のようにはいかない。考えていると、くるくる螺子巻いたパンを手にした弟2人が、顔を向けている。


「兄者、「兄上今度、手合わせしてください」

「おい「兄上の力を知りたいのです」

「んー。また、今度ね」


 クラウザーとアレスが、掴みあいをし始めた。食事をそっちのけだ。グスタフとエリザは、食事を切り上げており止める人間がいない。


「こらっ。俺が、兄者とやるんだ。お前は、すっこんでろ」

「いいえ、兄さんより僕の方が上です。兄上に稽古をつけてもらうのは、僕の方がいいに決まってます」


 どうして、稽古をつけてもらいたがるのだろう。わからない。シャルロッテと食事を取りたかったが、彼女は寝ぼすけさんだ。争う2人を放って、レウスの元へと急ぐとしよう。

 頭に毛玉、首元に狐を巻いてメイド服に身を包んだ桜火が、玄関の扉で待っていた。足元には、ちび竜たちが群れている。

 ちびたちの中で違う毛色の違う生物が、遊んでいた。青い布で包まれた弁当箱と見られる物を桜火が手渡してくる。


「これをお持ちになってください。ご主人さま」

「あ、ありがとうございます」


 弁当とは。ありがたい。いつも、どこかで食べてばかりだ。


「本日の予定は、いかがされるのですか」

「えーと。んー」


 そこで、言葉を切る。毛玉とひよこ、狐がフードに潜り込んできた。餌をもらっていたに違いない。

 さすがに、両親や兄弟と一緒に食事をとることができないので。

 念話を使って桜火には、伝えておいた方がいいだろう。

 

『あー。桜火さん』

『なんでございましょう。はっ。よもや、お情けをくださる、とか』


 頭を、金槌で殴られたような衝撃を受けた。なぜだ。ロメルといい罠の匂いがする。念話で問いかける。


『あ、あの?』

『冗談です。弟さまの事ですね。存じておりますとも。長じては、レウスさまが怨念を胸にお主人様に刃を向けることも。よく存じております』

『どこまで、知っているのかな』


 レウスの事を桜火は、知っているようだ。ユウタは周回するループなどした事がないので、知らないし。ユーウの記憶にレウスが埋もれているのかも知れないが。とかく、彼の記憶はシャルロッテの事ばかりが思い出される。


 ほの暗く苦い記憶は、忘れているのかもしれない。

 メイドさんは、エプロンの裾を掴んでお辞儀しながらいう。


『全て。しかし、ユーウさまより記憶を受け継いでいなくともご主人様ならばきっと道を切り開くはず。桜火は信じております』


 心臓が痛い。あまり信じられても困るのだ。桜火が知っている事を、洗いざらい吐いて欲しい。

 ユウタは、なお聞き出そうとした。が、廊下に出てくるルナの気配を察知して扉を開けた。

 なんとタイミングの悪い。続いて、オルフィーナやオヴェリアが出てくる。モニカとミミーもだ。外にでるしかない。

 外まで付いてきたちび竜たちに、餌をやろうとすると。

 黄色いひよこが、容赦なく奪い取る。


(なんて意地汚いんだ)


 ひよこは、お腹が空いているようだ。


『この子たちに餌やったら、駄目だって。桜火も餌やってるんだから。際限ないよ?』

『そうなのじゃ。主さまよ。我らに餌を寄越すのじゃー!』


 パンの切れ端を空中でキャッチする2匹。

 毛玉は、おとなしくしている。が、白い腹がもっこりと膨れている。食ったに違いない。

 どこで、何を食ったのか知れないが。角の生えた白い毛玉のお腹を押したら、汁がわずかにこぼれた。

 やばいくらいに食っている。毛玉が、ゲロをフードにぶちまけない事を祈るしかない。

  

 転移門を使ってレウスを迎えに行くと、レウス家の前では朝から清掃活動をしている黒騎士団の団員たち。口元に三角の白い布をして、作業する姿があった。

 白騎士団は、どこへ行ってしまったのか。

 それを横目に、仮面を付けると。


「おはようございます。レウスくん、起きていますかー」


 扉につけられた金属の輪を握って軽く叩く。


 時間にして、8時くらいだろう。巨大なロボットがあるというのに、未だ小型の時計すら量産されていない。時間を確かめるようにインベントリから金属製の腕時計を取り出す。山田が制作したという苦心の作らしい。時間は、8時を回ったところだった。

 ばたばたと中をかける音がして、扉が開く。


『ところでさ。レウスくんを強くしようとしているのはわかるんだけどね。自分で戦えるようにしないと、意味がないんじゃないのかな』

『そんな事は、わかっておるのじゃ。主が、考えてないような事を言うでないわ!』

『なんか良い案があるのなら、言ってくれよ。争うんじゃねえええ』


 黄色いひよこと黄色い狐が、争いだした。迷宮に放り込めばいいだの適当な事をいうのがDDで、突っ込み役がレンだった。扉を開けてきたのは、エプロン姿の女だ。


「あら、おはようございます、ユウタ様。よくおいでくださいました」

「レウスくんは、起きてますか」

「それが、まだ寝ているようなの。レウス、起きるのです。起こしますので、少々お待ちください」


 手をエプロンで拭くティーチは、血色がよくなった幸薄そうな銀髪の美女になっていた。

 手が、荒れてかさかさだ。


「おっす」

「ん」


 後ろを振り向けば、黒い三角帽子をした幼女が白いエプロンをつけて立っていた。

 腰には茶色い鞄。そこから、透明な硝子に挟まれた髪の毛を取り出す。


『どーやら、99パー親父さんとは遺伝子が繋がってるぜ』

『おお。そうか。それは、よかった』

『けど、まあ。あー、うん。家に来いよ。ちょっと話があるんだ』

『いいけど、訓練をしてからかな』

『今日も学校には行かない気かよ。まったく、あんまサボってっと最下位になるぜ?』


 心配されているようだ。だが、どうにでもなる。どうせ、学校に意味なんてない。

 せいぜい、知識を学ぶ為に通うところなのだ。いみじくもいい年をしたおっさんもどきが行ってどうする。明らかに圧勝するであろう運動。古典文学や古代魔術を学ぶにはいいのだが。


『んー。時間が、ないんだよね』

『自分の時間を作った方がいいんじゃねえの。あんまり、人の為に時間を使ってると馬鹿をみるぜ』


 などと言っている内に、レウスが寝ぼけ眼で外に出てきた。明るく魔灯のついた部屋から、出てくる。

 日当たりの悪い北側なので、ややもすれば灯がいるのだろう。目にも、灯りが必要だ。

 

「レウス! 起きてるかーーー!!!」

「ひぃ、あ、あんちゃん。起きてるぉ」


 どうにも、気合が入っていない。さっそく道場に連れていくべく右に視線を動かしたところ。

 窓から、女の子が手を振っている。知らない女の子だ。年上だろう。

 

「あ。あの、ちょっと」


 レウスは、新調された紺色の服を着て走り出した。


「なんだよ、あいつ。今日も手伝うのか?」

「道場に連れて行こうかってね」

「それより、学校じゃねーの。そうだよ。学校に入れた方がいいと思うぜ」


 それでは、遅い。歩きながら銀髪の幼児の後を追う。隣には、これまた貧相な塀にこじゃれた家が立っていた。蔦が絡んでいて、年代を感じさせる。その窓から見下ろしている少女は、まだ小学生かもしれないくらいだ。


「あんちゃん。こっち、クシャナねーちゃん。ギルのアレイスターんちのねーちゃんね」

「そうか。ユウタだ。こいつの、…面倒を見る事になった者だ」

「面倒を見ていただくのですね。よろしくお願いします。ギル。挨拶しなさい」

「いい。姉さん、知らない人に声をかけてはだめだ」

「また、そんな事を言って。ごめんなさい。この子ったら、人見知りでこんな風な返事しかしませんが仲良くしてください」


 水晶に、水を浸して鳴らすような声だ。整った容貌は、数年もすれば人目を引くだろう。そうでないかもしれないが。弟の心配をできる少女のようだ。


「よし。行くぞ」

「え、どこに?」


 ユウタの弟は、分かっていないようだ。頭の血が巡ってないのかと、一瞬だけ心配して年相応の反応だと思い直す。どこへ行くのか行ってないのだし、察する事も難しいのだろう。セリアなら話をせずとも、魔物狩りだとわかってくれるはず。


「ちょっと待ったー! 俺んちに寄ってからにしようぜ」


 と、エリアスが主張する。2階から見下ろしていたクシャナとギルは、引っ込んでしまった。

 これは、幼馴染のお姉さんという事なのだろう。是非とも、レウスの為に仲良くなっておく必要があるだろう。移動しようとしたところに、


『ちょーっと待った方がいいかな、かなー。これは、イベント発生だよ!』

『ほう、タダ飯喰らいのお主が役に立つとはの。雨が降るのじゃー』

『30分ほどさ。隠密で隠れててよ。重要な事が起きるから』 

 

 フードで寝ているひよこが超、ひさしぶりに役に立つのか。訝しむ2人を説得しつつ、家を見張っていると。

 

 そこに、アレイスター家の前へいかがわしい黒いスーツで身を固めた男たちが現れた。如何にも、人買いのような連中だ。辺りをきょろきょろと見渡して、扉に近づく。

 樫の木か何かでできた年代物の扉を叩いている。立ち去るべきか否か。

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