4話 町だ!リベンジきた! (ユウタ、ルナ、アベル、ガイ、マーク、レオ)
ここが異世界なのかゲーム世界なのかわからない。けれど、目が覚めてから2日目昼過ぎである。俺は、ペダ村をでてゴメスさんを護衛してここアーバインの町についた。そして、アーバインの迷宮に入ることにしたのだ。なんでも迷宮は、アーバインの中央にあるらしい。
俺は冒険者が使うスキルことテレポートで飛ばして貰った。そして、地下鉄の入口のような穴に入る訳だ。この入口、四角くぽっかりと口を開けたそんな穴だ。迷宮の中にはいると。
ユウタは冒険者を獲得した!
ほう。また、聞こえてくる。やはりか。条件を満たすと、職業を獲得なんだろうか。入って、入口の暗闇を抜けていくと。迷宮の内部だ。そこには、ぼんやりと光る石が埋まる壁と通路が伸びている。灯りがあってよかった。なかったら、引き返さないといけない。
キューブを出す。四角い箱に触って、入れてもらったパーティーから抜けた。更に、市民からジョブを冒険者に替える。ばっちりだ。俺は、冒険者を獲得したのだからテレポートも使えるはずだ。そこまでで、俺の目的は達成したのだけれど。段々と、この迷宮の中に興味が湧いてきた。
この世界の迷宮ではどうなっているのか。VRMMOのようにいきなりモンスターが出てくるのかな。しかし、1人で大丈夫だろうか。そんな風に思いながら進む。しばらく中の通路を進むと、前方に人がいる。一方通行の道だ。どうも、こちらを待ち構えているようだ。
おかしい。【鑑定】を使う。6人ほどだろうか。全員が盗賊なのだ。後ろからも、3人の男が接近してくる。これは、罠か。考えてみれば、おかしな事だったんだ。馬鹿は、俺だった。相手の罠にまんまと引っかかるとは。
後方の3人は、ジョブが暗殺者だ。ただの盗賊連中じゃない。これは、詰んだのか。いきなりのピンチだ。森の盗賊達には、仲間が居たのだろうか。もしかして、見られていたのか。俺は、位置的に前後を挟まれている。早く手を打たなければ。しかし、どうする。
迷宮に潜ったら、いきなり死亡するってハードすぎるだろ。イベントリに残していた馬が数頭ある。それを取り出して通路に置き、且つ暗殺者達に馬を突っこませる。同時に、自分は反対側の盗賊達に走り寄った。暗殺者たちが走らせた暴れ馬に手間を取ってほしい。
弓は、迷宮の中でしかもこの距離では使いづらい。なので、剣を投げることにする。上段から斬りかかるとみせて、スローイングダガーならぬソードだ。それで盗賊の1人に命中する。2、3、4人目も同様に剣を投げつけて片付ける。残りの2人は、どうも放心状態で固まっているようだった。
動きの固まっている盗賊2人を、間髪入れず棍棒に持ち替える。棒立ちの相手を撲殺した。そこで、背中に痛みを感じる。投げナイフか。背中に刺さっているようだ。頭でなくて、幸いだ。
インベントリから、皮盾を取り出し。後ろを振り向けば、ナイフを投げたであろう暗殺者達が3人同時に走りよってくる。馬に少ししか手間を取らないか。時間稼ぎにもならなかった。次いで暗殺者達は、投げナイフを3人同時に放ってくる。
タイミングを合わせた投げナイフは、皮盾で防御できた。俺は、ゴメスさんから買った毒消しの丸薬を取り出す。それを飲みながら下がる。ナイフに毒が塗っている可能性があるからだ。ゲームでも毒を使うのが、暗殺者というジョブだ。彼らは、3人同時のコンビネーションで攻める気のようである。
馬鹿め。俺は下がって下がって下がりまくれるのだ。棒立ちになる必要がない。攻撃は、剣投げで対応する。斬り合う訳にはいかない。横薙ぎに振る。と、見せかけて。目標を手首で狙いを変えて、暗殺者たちの1人を倒した。
2人目はスキルを使おうとしているのかな。棒立ちになっている。棒立ちで隙だらけだし、棍棒でさくっと仕留める。まさかスキルを使う最中に攻撃しないとか思ってたのか? 3人同時にかかってくるのは、よかった。が、その後の連携がなかった。
こいつら普段はソロなんじゃないのかな。
最後に残った暗殺者の1人が、武器を捨てて命乞いし始めた。この状況で、それはないよな。返事をする代わりに、棍棒で頭を割ってやった。気がつけば、呼吸の音だけだ。それがBGMになっている。俺は、革鎧を突き抜けて背中に刺さるナイフを抜く。背中の筋肉に結構深く刺さっていたようだ。
血が足元に垂れる。つばでもつけとくか? 毒消しはさっき飲んだけれども、回復薬とかなんもないわけで困った。盗賊たちが回復薬とかもっているかもしれない。なので、盗賊達の懐やポーチなど探すことにする。やばかった。戦闘奴隷とか本当に必要かもしれないな。
仲間だと、捨て駒にできないし。周囲を警戒しつつ、アイテム回収する。警戒と回収は同時にやるのは難しい。本当に大変だ。仲間として、本当の意味で頼りになるPTメンバーがほしいけどなあ。しかし、そんな相手を探すのは至難の技だろう。
信頼と信用って奴は、見つけるのが本当に難しい物なんだ。もしも買えるのなら、黄金を積んででも買いたい。昔の王侯貴族もそうだったに違いない。そんな希少な奴なんだ。懐を探っている俺は、なんか軟膏のようなものや飲むタイプの瓶を発見する。傷薬の一種だと判断した。
森の盗賊達の時は、そんな暇もなかったのだ。ゴメスさんに、回復アイテムを勧められた事を思い出した。買っておくべきだったな。アイテムに【鑑定】にかける。
すると傷薬x9 生命力ポーションx3 魔力ポーションx3とかでてくる。暗殺者達だけが瓶をもっていた。背中の傷に傷薬を使う。そして、例によってキューブ回収、馬、装備を回収する。
ユウタは治癒士を獲得した!
じくじくと痛む傷の手当。これがジョブの条件だったんだろうか。穴の空いた皮鎧を倒れた盗賊連中のと交換する。幸い損傷の少ない物があった。頭部を損壊した盗賊がいたのは幸いだ。誰もこないな。
暗殺者の短剣x3 銅の剣x6 黒装束x3 皮の鎧x5 皮の靴x6
盗賊と暗殺者から剥ぎ取ったアイテムをイベントリに入れる。キューブでレベルを確認してみた。
【冒険者LV8市民25村人21戦士20剣士20斥候18勇者20狩人24魔術士14】
脳裏に浮かぶ画面をスクロールさせると治癒士1があった。ぼっちだが、スキルが鑑定、イベントリ、テレポートに増えた。呪文もわからないことには、魔術が使えない。ジョブはキューブでいじれるようだ。
魔術もなしか。最初からこれでは、ベリーハードすぎる。ふと見ると、盗賊達の死体が消えてる。数時間たった気もするし、数分の戦闘だったような気もする。謎だ。が、連中はここで始末するために殺しをかけてきたんだろう。
ダンジョンが消化するのか空間が消化するのか。はたまたキューブを回収されたため死体が消えたのか。誰かに聞きたいんだけども、やはり相談できる相手もいない。この襲撃は、外の盗賊達の復讐ということか。それなら、辻褄があうような気もする。
とにかく此処から出てキューブを賞金に変えてしまおう。
「冒険の神よ探求を追い求めたる使徒をかの地に誘いた給え《テレポート》!」
呪文は詠唱しなくてもいいんだった。次からは詠唱するふりして念じることにしよう。冒険者ギルドの入口隅にテレポート出口を開く。そして、跳ぶことにした。
帰ってきたぜ。もう、何が起きても驚かねえよ! 俺は、一日で何回死にそうになっているんだ。ゴメスさんにはマジ感謝だ。毒消しがなかったら死んでたかもしれない。受けた恩はきっちり返さないといけないよな。顔といい体型といい。おっさんだけに加齢臭がして、むさいけど。
おかげ様で助かりましたよ。毒なんてものは、毒が回ったと気がついた時には遅い。そこで死んでるわけですよ。しっかし、この世界はハードだ。盗賊にいきなり消されかかるし、どんだけついてないんだよ。受付の方にに歩いて行くと、サチさんはいないようだ。
別の受付嬢に毒消し丸薬。それの購入と麻痺解除薬、石化解除薬、睡眠解除薬とかないのと尋ねる。毒消しは25ゴル 麻痺解除薬は500ゴル、石化解除薬は400ゴル 睡眠解除300ゴルだそうだ。んーと、毒消しが半額になっているような。
冒険者をつけているからだろうか。俺は1万ゴル分ほど買ってイベントリにつっこむ。ついでに、冒険初心者向けガイドブックとかないのか訪ねてみる。あるみたいだ。奥にカウンターの下から、本が出てきた。むしろこれが一番最初にやるべきことだった。初心者向けガイドブックに初心者用スキルブックのセットが2000ゴル。アーバインの町の地図が2000ゴルか。
冒険者じゃなきゃあ倍額。ギルドの商売もえぐいなあ。全部半額になっているんだ。両方共に買うしかない。冒険者向けの宿を聞いておくのも忘れない。海豚亭、タンポポ亭、向日葵亭か。うー、悩むなあ。ゴメスさんのオススメはどこだったっけ。忘れてしまった。ビッグコック亭とかは除外だ。ホモっぽいからな。
サチさんが、いないのが残念だ。化粧濃いけどな! 殺伐とした修羅の世界だ。潤いが欲しいよ。死亡フラグばっかりとか。そんなのいらないよ!迷宮はわくわくがとまらねえ。けど、それで死んでたらどうすんだ。俺自身が調子に乗るのも戒めなければいけない。
思考が同じ場所ぐるぐるまわっていたようだ。盗賊たちのキューブを賞金に変えなければならないな。換金するには騎士団まで持っていけばいいのだ。そこで、アーバインの町の地図を見つめる。どうやら、騎士団詰所は冒険者ギルドの前にあるようだ。
冒険者ギルドの玄関から出るか。目の前に立つ騎士団詰所。前に立つ騎士に取り次ぎを頼むと詰所を観察した。アーバインの騎士団詰所は、とてもそうみえない立派な建物だ。
外観は要塞のようである。しかし、詰所は内装の方を凝っているようだ。どことなく乙女チックな内装色をしている。俺は取次を待っている間に、リュックにPOTの瓶類を詰めながら考える。そう、盗賊たちは全員仲間だ。中にも外にも協力者がいるみたいである。
で、外でやられた仲間の仇討ちのために迷宮で網を張って待っていた。入口にひとがいなかったのも連中の罠か。ここは、妄想の類だ。俺には想像するしかないので、ここでやめておこう。奥からでてきた人を見た衝撃で、肩に下げていたリュックを落としてしまった。ポーション瓶がああぁ。
割れた音はしていない。無事なようだ。
いや、本当に光るような美少女っているんだっていう。金髪が凄まじく似合っている。とりあえず、結婚してください。聞こえないだろうから言っておこう。内心でならタダだ。うん。お供なのか次いで出てくるイケメン、渋メン。そんな騎士たちで正気に帰る。ま、そうだよね。付け入る隙なんてなかったのでした。
題名、堂々たる美少女と騎士達。そんな絵になる光景だ。
「冒険者さん、リュックを落とされましたよ?」
「は、はい。騎士様ありがとうございます」
それだけ言うのが精一杯だった。落としたリュックを拾う。少女騎士の透き通るような声が、またすばらしい。全身から淡い光さえはなっている錯覚さえ覚える。金縛りにあうってこういうことか! 受けた衝撃で全く体が動かない。
俺は、少女の顔を見ているだけで何も考えられなくなりそうだ。簡単な自己紹介をして、盗賊達のキューブをイケメン騎士に渡す。自分で本当に出しているのかと思うような震える声だ。盗賊達の賞金を貰いたい事を告げて、待つことになった。
「申し遅れました。私、アーバインの町を預かる公爵の娘でルナ・フォン・エッフェンバッハと申します。以後お見知りおきをユウタさん」
と、少女騎士が言った。近寄ろうとしているのか。実際に近づいている。彼女の方が、だ。そのとたんに周囲の騎士達が止めに入る。
「このような下賎な者にお名前を教える必要などございませぬ」
とかイケメン達が言うのも耳に入らない。そんな美しさだ。まるで天から零れた月の妖精。そんなかんじだろうか。エルフなのだろうか。耳が細長い。イケメンレッドとブルーにルナさんが奥に連れて行かれる。何故、レッドとブルーかというと。人数がそれっぽかったからだ。特に、意味はない。
その後も暫く待つ事になって、1人の若い騎士が前に出てくる。
「ユウタさん、こちらが賞金になります。すいませんでした。その、気にしないでくださいね」
「はあ、騎士様ありがとうございます」
低身低頭である。所詮、俺は流れ者の平民なのだ。それを忘れてはいけない。顔を引き締め、騎士様の話を聞くのだ。そのイケメンイエローことレオくん曰く。盗賊達は《絡みつく蛇》という一味で、アーバインの町に大変な被害を与えていたらしい。
徒党を組んで、森を通る商人たちから金品を巻き上げる等は序の口。ダンジョン内での暗殺や路上での暴行など。そんな感じで、やりたい放題だったとか。弱ければ襲うし、強ければスルーするし。弱肉強食を徹底していて、わかりやすい戦略である。それで町の治安は、悪化していたという話だ。
100万ゴルとか凄いな。何か裏でもあるんじゃないだろうか。はい、ドッキリでした! みたいな。それで、レオくんに賞金が多過ぎるんじゃないかと聞いた。
「えっと、一味が全滅なのでちょうどその額になりました。気になさらないでください。むしろ、よく倒せたものだ。と、皆で噂していましたよ」
「それはどうも」
裏表の無い子のようである。レオくんの騎士団はアジトもつかめず、尻尾もつかませない。そんな連中に、ほとほと手を焼いていたらしい。
「ルナ様も大変感謝していたんですよ。町の治安を預かる一員としてだらしがないと嘆いていました。今後もよろしくお願いしますね」
「ありがとうございます」
この子、ええ子やで。俺にはショタの気はないけど、いい人見つけたな。ルナっていうのか、あの美貌ならもう許嫁とかいそうな気もする。
いや、いないと信じたい。
「よろしければ、どうやって彼らを倒したのか教えていただけないでしょうか」
「ええと・・・・・・それはですね。何から話せばいいやら」
この子は、将来有望な可愛い系美少年てやつだな! だが騙されないぞ。くっ、そんな捨てられた子犬の目で見てもダメだ! この後いろいろ話をしていたような気もする。が、話をするとしている筈の俺がうわの空になってた。イケメンハーレム騎士団にいろいろ衝撃的すぎる美少女。
ああ、やばい。そろそろ宿をとらないとな。野宿が待っているわ!
「すいません、話はここまでにしてもよろしいでしょうか。ここで宿を探さないといけないので、また後日にでもお話しましょう」
「そうですか、大変な目にあわれたのですね。盗賊達に仲間がいるかもしれませんので注意してください。あ、あと気軽に詰所まで来てくださいね」
いや、言っていいのか。雑魚冒険者に後日とか。何かあるのか。しかし、これはチャンスなんじゃないのか。もう1度会うんだあの子に! 寄ることもまた有るかもしれませんと返事をした。許嫁がいたらどうしようか。
殺してでも奪い取りますか?
▽
はい いいえ
無理!
やばいそれやばい選択肢だから。今日はいろいろあったな。森の馬賊にモンスター、盗賊の待ち伏を有りすぎた。そろそろ寝床を探そう。とりあえず、俺はレオくんとの話を切り上げた。そのまま騎士団詰所を出ると、ここから近い海豚亭に行ってみることにした。ゴメスさんも豚とかなんとか言っていたような気がするし。
違ったら大変だけど。
キューブステータス サナダ・ユウタ 16才 冒険者
装備 鉄の剣 皮の鎧 皮のブーツ 皮の盾 皮の篭手
スキル テレポート PT編成
特殊能力 なし
所持金144万1千弱ゴル