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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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183話 砂上の楼閣4 (アキラ)

 魂は、どこから来てどこへ行くのか。

 興味が尽きないです。

 異世界もどこにあるんでしょうね。

 全くのファンタジーだといいのですが、それはそれで現実感がありませんし。

 

 空間転移だとか、どうなっているのか。

 向こう側が見えないのに、入ろうとするのはどうかしていると思います。

 別の空間に繋がっているのか、それとも土の中とか。

 わからないのに、ですねえ。

 

 ちなみに、発見した穴は黒い渦状の物です。

 中は、見えないのでどうなっているのか気になるところです。

 入ってみようとは思いません。

 

 反対に、敵はどうして入ってくるのでしょう。

 謎ですね。







 まさか。

 こんな所で、死ぬ訳にはいかない。待ってくれている人がいるのだ。後ろには、14人もの少女がいる。

 内、2人には気配りも要らないだろう。アキラよりも強い妖精族だ。

 アキラは、這いつくばりながら周囲を観察する。

 地面には、地雷があるかもしれない。

 引っかかれば、爆発して死ぬ事になるだろう。

 

 ユークリウッドは、どうして先に進んだのか。囮にでもなるつもりなのか。

 わからない。アキラには、理解し難い行動だ。みんなで行動すれば、その分だけリスクが分散されるではないか。他人を当てにしないのが、ユークリウッドの特徴だ。彼の真似をして、1人で先に進むとかいう行動は……。


「みんな。足元に、気をつけてくれ。ゆっくり進もう。地面に、爆弾が仕掛けられているかもしれない」


 注意を促すしかない。しかし、森に入るまでに地雷がなかった。その事から、敵はまだ地雷を敷設している暇がなかったのかもしれない。先に進むべきか進まざるべきか。迷っていると。


「…レビテーション」


 身体が浮いた。

 魔術をかけたのは、ティアンナだ。浮けば、問題は解決したといえよう。だが、恐ろしい。


「…何を迷っているの。進む」


「いや、しかし、ですね。罠が仕掛けられているかもしれません。うかつには、進めませんよ」


 罠で死亡するとか。アキラは、生きてマールの所に帰らないといけない。

 ここは、撤退して次節を待つ。というのは、し難い。己の上司が先に進んでいるのだ。まさか、帰るので後はよろしくなんて言えっこないのである。


 腕組みをして、ティアンナは豊かな胸を盛り上げると。


「…アキラ、怖気づいた?」


「俺は、この子たちを預かっているんですよ。簡単には、進めません」


「…仕方がない。エリス、直進。罠を粉砕しながら進んで。アキラは、努力が足りない」


 むかっときた。しかし、本当の事なので何も言い返せない。銃も怖ければ、地雷も怖い。

 敵に、自動小銃があればアキラは蜂の巣にされてしまうだろう。

 緑色をした巨躯の騎士が前を行く。エリストールは、明滅する鎧を纏っている。

 どのような魔術がかけられているのかわからないが、アキラでも凄みを感じる程だ。


 ただの、痴女だと思っていたのだが。


「前方で、音が止みました」


「…しまった。間に合わなかった」


「え?」


「…え? じゃない。慎重さも必要だけれど、時に勢いも必要」


 と、爆音がして爆風がアキラたちを包む。爆風は、届かなかった。どういう仕掛けか。

 地面ではなくて、木に罠が仕掛けられてあったのだろう。

 左右から来る木槌を切り落としながら、


「くだらん。このまま走ります」


「…わかった」


「え? まじですか」


「…爆発による攻撃だけなら、風の魔術で防げる。全員走る」


 エリストールを先頭にして、音がしていた方向へと走りだす。魔物が出てくる事も想定しているのだろうか。だが、魔物が現れないまま小さく開けた場所に出る。木がない場所に、戦車の残骸だとか人らしきものの残りが散らばっている。見えるのは、盛り上がった土だ。


 そして、動く人間は黒いローブを着た幼児と獣人らしき男。

 黒い髪に、耳が生えているので、黒狼族なのだろう。

 ユークリウッドの事なので、会話で説得するかと思っていたが違った。

 問答無用で、攻撃したのか。敵だけに、殺すしかなかったのか。


「…ユーウ」


「ん。待って、彼らは敵じゃないです」


 低い声で、ティアンナが声を発した。


 声に反応した男は、腕をさすりながら斧を構えたのだ。戦闘にならなかったのは、幸いだった。アキラでは、自衛隊に勝てるはずもない。剣で銃に勝てるはずもないからだ。弾丸を飛ばされれば、あえなく死ぬ事になっただろうし。生きているだけで、ほっとした。


 見れば、土で何かを覆うようにしている。そこに何か有るのだろうか。


「敵は?」


「生きている人は、居ないかな。全員、死んでる」


「…意外。取引を持ちかけるかと思った」


 そうだ。日本人に、特に厚いユークリウッドが交渉も無しに敵を殺すのは不自然だ。

 どうしてだろう。


「コーボルト軍と見分けが付かないんですよ。それに、人質を盾にされた場合。僕だけでは、対処できませんから」


「会話もしなかったのか?」


「戦闘中に、会話なんてできると思っているんですか」


 怒られてしまった。確かにそうだ。ゲームでは、会話をしたりする。

 だから、ゲームと同じように会話で敵を仲間にできる物だと思ってしまうのだが違うようだ。

 ユークリウッドの背後に何かが見える。近づいてみると、黒い何かがちらちらと見えた。

 何であろうか。


「後ろのって、何よ。あそこからこいつらが出てきたのか?」


「原因は、不明です。誰が開いたのかもわかりません。そして、どこに繋がっているのかもわからないですね。なので、穴の下に穴を掘って周囲を覆ってみました」


 近寄ってみる。土壁の階段を登ると、そこには黒い穴があった。そして、それを覆うように土壁が存在する。出てきたら、穴の中にご招待されるとは。中がどうなっているのか気になる所だ。


「これで、大丈夫なのか。敵が、湧いてきたら下に落ちるって寸法だよな」


「ええ。問題なのは、敵がこの穴をどれくらいの数で設置したのかです。穴が大量にあるとは思えないのですが、敵の力量次第では国が危ない」


「どんくらいやばいの」


「滅亡レベルですよ。後方撹乱にしても手が込んでいますね。誰だよ、こんな事をしやがるのは」


 ふと、魔王が思い浮かんだ。が、コーボルトという線もなくはないだろう。後は、神のいたずらだとか。

 どちらにしても、これを放っておくユークリウッドではない。真犯人を調べあげて、ぶち殺すというような事を考えているだろう。


 どぉおおーんと銅鑼を鳴らしたようなそんな音が中からすると、自動車が爆発したような煙が上がる。

 中で、何かが起きているようだ。どんどん、爆発が起きているような。中を覗きこむと、背後から赤い光が中に降り注ぐ。火線か。


 先程は、火線を使った様子もなかったのに何故ここでは火線を使うのか。


「それ、どうするんだ」


「見ていてください」


 すると、みるみる内に中が赤くなっていく。まるでマグマのようになった。溶鉱炉に近い色合いだ。


「マグマ?」


「そうです。それに近いですね。溶かしてしまえば、いい」


 穴は、数時間で塞がるとか。どういう仕組みなのだろう。


「これ、どこにつながっているんだろうな。向こう側が、日本なら帰りたいぜ」


「マールさんを置いて、帰るんですか?」


「あ、いや。そうか、失言だった。うーん。炊飯器とか欲しくね? ゲームとネットとかさ。音楽もなんだけど」


 そうなのだ。帰れるなら、一度は帰ってみたいではないか。もっとも、自衛隊を手にかけた悪の集団だ。帰ったら、犯罪者でしかないだろう。日本の法律では、人を1人でも殺せば死刑か無期懲役かそんな感じだ。

 ただ、ゲームがないので娯楽の幅が少ない。美味い飯を食って、性欲を満たしたら寝るくらいだ。

 現実では相手にされないような美少女がいるので、不満の方は全くない。が、時折に音楽を聞きたくなったりゲームをしたくなったりする。美味い飯をもっと追求するのもいいだろう。


 山田という先達がいるおかげで、小説の方はちょこちょこと増えるのだが。

 如何せん、同じ書き手なので文体が似ているのと。どこかで見たようなストーリーしかない。

 大抵は、それが王道だというのだが。


「ゲームは、難しいですね。こちらでは、システムエンジニアもいませんし。ああ。そもそもパソコンを稼働させるのに必要な変電設備をつくるところからですから。あ、アキラさんは電気とかに詳しいですか?」


「いや、知らね」


 何で、こんな話をしているのかわからないが落ち着く。ユークリウッドが側にいると、安心できるのだ。電気の事を話していると、アキラは電気もまるでわかってないことに気がついた。電撃の魔術で電気を発電していれば、簡単じゃん? とかいう風に考えていたのだ。


 実際には、電圧とかそういう諸々が関係して日本人がたくさんいるという学校の周辺でしか活用できていないらしい。設備を整える段階で、領地では電気を使う施設を増やしているとか。羨ましい。電気のある世界は、真昼の世界だ。


 24時間、眠らない都市東京。日本が誇る最先端の都市だ。そんな都市に近づけたら、どんなにいいだろう。ただ、それには諸々の超えないといけない条件があるのだが。ミッドガルドでは、どのような暮らしをしているのか気になる。


 ウォルフガルドは、残念ながら未開の国だ。戦争も絶えないし、目の前で煙が登っている。

 そういえば。どうやって、この壁を作ったのか。気になる。延々と電気について語るユークリウッドに冷水を浴びせる事になるが。


「この壁って、どうなってんだ? こんなのどうやって作ったんだよ」


「それは、土壁の術です。アキラさんでも使えるはずですよ」


 そんな馬鹿な。アキラは、土壁の術を習得しても土がぴくりとも動かなかった。

 スキルとして登録するというのもできていない。長々と呪文を唱えて、発動しても一ミリ程度上がったのか上がってないのかわからないと。やる気を失せてしまうという物だろう。


 それを、家だかなんだかの高さまで安々と作ってしまえる。端的にいって、アキラには魔術士としての素養がないのではないかと思うのだ。


 失ったスキル【強奪】の存在がいよいよ大きい。ともすれば、絶望から地面を転げまわってしまいそうだ。歯をくいしばって耐えるしかない。


 VRMMOのように、有るのなら使えて欲しいものだ。


「発動、しないんだよ。いや、しているのかもしれないけどさ。使えないっておかしくねえ?」


(ジョブ)の設定は、しましたか?」


「は?」


 職の設定がいるなんて聞いていない。職は、【騎士(ナイト)】【魔術士(マジシャン)】マルチで使えるのではないのか。 


「アキラさんが、選んだ職が適応されるはずです。まだ騎士のままなら、魔術は不得手でしょう。完全な効力を発揮しないかもしれないですね」


 言われてみれば、【騎士】を選択している。口から舌を出すしかなかった。


「ごめん。間違えてた」


「なら、いいんですけれど。暫く、時間が掛かりそうですね」


 魔力を吸い取るという。水晶を配置して、穴を塞ぐらしい。

 ユークリウッドは、後ろの穴が気になるのだろう。穴からは、未知の敵が出てきているようで時折絶叫だとか爆発音が聞こえる。どうして、このような悪辣な戦法をすぐに考えつくのか。背筋には、戦慄のせいで汗が出ている。


「その、さ。強奪スキルがなくなっちまったじゃん。俺、戦えんのかな」


 急に怖くなった。両方の意味で、怖い。何もできないまま蜂の巣にされるなんて、小便をちびったって誰も文句はいわないだろう。


 それに。ユークリウッドが、自衛隊を相手にどうやって戦ったのか気になる。

 幼児の両脇には、ティアンナとエリストールが距離を縮めていた。逃げられない。

 助けを求めているような気がした。気のせいだ。


「そう、ですね。【騎士(ナイト)】なら【(シールド)】と【防壁(ガードウォール)】で銃弾も防げますよ。実体験としては、戦車の主砲くらいまでなら気合いで防げるでしょう。どうやって、【盾】や【防壁】のスキルが防いでいるのか不明ですけれど」


 不思議な膜か。

 それで、防げるとしよう。だが、攻撃ができないではないか。


「反撃は、どうするんだ? 銃を持ってたら、斬りかかる前に逃げられると思うんだが」


 エリストールの手が、ユークリウッドの肩に回された。とんでもない攻撃だ。

 自衛隊を物ともしない幼児は、払い除けようとする。

 しかし、腕は2本しかなかった。


「そ、の、場合は。ソードカッターこと【斬撃刃】か【空斬波】で対応、するといい、ですねえ! こらっ邪魔しないで」


 だが、2人とも止めるつもりはないのか。続けている。


「うーん。それ、魔物には全然ダメージが入ってかないスキルじゃん」


「た、対人だとですね! 人の腕とかぱっくり落とすくらいの威力がありますよ! だああっ」


 必死になってきたが、そのうちに足を取られてユークリウッドはひっくり返った。

 おねショタレイプなのだろうか。これは、手助けをしておいた方がいいだろうか。

 後ろを見て、


「この子たちを育てるのもいいけど、ケンイチロウはいいのかよ。【時間】持ちだろ」


「あれは、とんでもない欠陥品ですよ。あれ、詐欺ですから」


「え?」


 ユークリウッドは、いちゃいちゃしているようにしか見えない。

 殺伐とした景色とは裏腹に、少女たちは死体を一箇所で火葬してやっていた。

 時間は、なんと詐欺だったらしい。神さまは、詐欺師なのか。

 騙されていたようだ。しかし、時間スキルというのはないのだろうか。


 オンラインゲームでは、時間を操るスキルをみた事がなかった。

 ケンイチロウのスキルは、使用するのに命が必要だとか。代償で、死んでいては意味がない。

 何かが必要なのだろうが、わからないという。とんでもない、欠陥品だった。


「詐欺って…。時間スキル強そうなのになあ。ないの? その、レクチャー屋にさ」


「いだだだだ。もげる! 助けて!」


 さすがに、見過ごせない。女の子たちと一緒に引き剥がす事に成功した。

 ちょっと、卑猥すぎる。ティアンナは、ぺろぺろと手を舐めていたりするのだ。

 がちゃがちゃと鳴るはずの鎧は、どこかに行って痴女が出現していた。


「ひぃ、ありがとうございます。その…助かりました。ええと…時間スキルは見たことがないですね。オフラインゲームならともかく」


「なんで? 小説とかじゃあったりするじゃん」


 ユークリウッドは、股間を押さえている。脂汗を浮かべながら。


「MMO、MO物のオンラインゲームで、ではです。ないですよ。見たことがない」


 オンラインゲーム? オフラインのそれと違いがあるのだろうか。 


「時間を操れたらなあ、最強じゃね?」


「できたら、強そうですね。しかし、対人ゲームでならありえないです。即死技もありえないですよ。ゲームのバランスがとれなくてすぐに修正されるでしょう。GMが中に入ってきて暴れてるっていうのならわかるんですけどね。ゲームで時間を互いに操ったら、そりゃあゲームになりませんてば」


「でも、小説だと見かけたりするんだって」


「ああ。その小説を書いている人、ゲームやってないで書いてるでしょう。最期の幻想を筆頭に、対人ありのゲームでは時間操作も即死技もそうそうないです。昔。僕は、戦争物の幻想地球で36人パニして0デットを記録しましたが…敵に見つかると死ぬバランスでした。体力が減っていないと倒せませんでしたし。音で避けられますし。殺せないで、デットを稼ぐとパニカスなんて呼ばれてましたよ。連携のある楽しいゲームだったのですが、改悪で見る影もなくなってしまいました。…ともかく、MMOでは即死技がないですね。MOでもないです。ボス側がギミックでやってくるのはあるんですけどねえ」


「未来でならあるん…」


「未来で、ならあるかもしれませんけど。そもそも、ね。全体の時間を止めるとなるとゲームにならないでしょう。対象の時間だけならまだしも、他のプレイヤーは? 他のプレイヤーの時間までも止められると? ぶっ壊れスキルでしょう。全員がそのスキルを使い始めたら、プレイできないですよ。草を生やしながらアンインスコ待ったなしですって。それくらい時間スキルは実装できないスキルです。ゲームでなら」


 あるんだってと、言いたかった。しかし、よくよく考えるとアキラのやったゲームでもなかったような? 山田にツッコミを入れておくべきだろうか。他人も使えるのに、時間操作なんてあったらゲームにならないのはわかった。しかし、あると面白そうだ。なので、面白いでしょ、と言われたらそれまでだろう。


 アキラもゲームは、それなりにやった。大好きだし。オタクでなくても、ゲームくらいやってないと話についていけなかったりするのだ。


 ウォルフガルドでもレクチャー屋を開くべきではないだろうか。延々と、ゲームの話をするのにティアンナまでもが入ってきてとりとめが無くなった。


 結論からすると、MMOでは即死技と弱点抹消するような改造などできないという事だ。改造なんてしたら、運営からBANされるだろう。オフラインゲームならまだしも一撃で相手が死ぬようだと戦いにならないだろうし。デスペナがあるようなゲームなら、尚更だろう。


 ユークリウッドは、スキルを失ったアキラを見捨てるつもりがないようだ。

 少しだけ、安心した。徐々に萎んでいく黒い穴を確認して、撤収だ。


 ゲームの話で盛り上がっていたせいか。

 獣人の男は、怪訝な顔をしていた。が、奴隷の少女たちに囲まれて照れている。

 男も、大概チョロかった。



 



 

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