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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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180話 砂上の楼閣1 (ユウタ)

 何も考えないのは、楽でいいですよね。

 でも、政治家をするなら対案くらいだせないと。

 ちなみに、ウォルフガルドには政治家らしい政治家なんていません。

 もはや、断言してもいいかもしれませんよ。


 何しろ、国防に対して案を持ってくる獣人がいないんですから。

 全部、国王頼みのような感じです。

 その国王は、大怪我で治療中ときました。


 最高責任者が、投げているのです。

 なぜか、ロメルの所に陳情がたくさん来ています。

 どうしたらいいんでしょうね。

 そして、水車なんて作っていて効果があるの? みたいな態度を取る部下。


 逆臣、須く、斬首にす。同じ日本人なので、厚遇してきたのは間違いだったんでしょうかね。

 そろそろ、外患誘致罪か何かで処刑していいですか?






(まだ、高校生なんだ。分離独立するって事がどれだけ危険な発言なのか。わかってねえ。このままで行くと、その内に処刑しないといけなくなるな。だけど、まだ16歳だしなあ。斬首なんて、可哀想だろ。どうしたらいいんだ)


 わかれよ。と言っても、彼はわからないようだ。

 自由な言論が認められた日本ではない。ちょっとした侮辱が、命取りになる。

 決闘も日常茶飯事。ミッドガルドでは、決闘裁判もあったりする。

 強い者が勝つ。そんな世界で、不用意な発言が周囲にもたらす危険性をどれだけ省みているのか。


(社会を経験した事がないから、ああなんだろうけどな。軍隊経験者でもなければ、いい年をしたおっさんでもないし。なんも知らない子供なんだ。我慢して、導いてあげないと) 


 とはいえ、失点を突いてくるような敵対勢力につけ込まれかねないのも事実。

 アキラを部下にしたのは、失敗だったか。

 ユウタは、後悔しきりだ。

 あれほど、分別がないとは。

 これで、高校生ではなくて社会人であれば見切りを付けられた物を。

 そう。まだ、子供なのだ。彼は。


(何度も言っているような気がするぜ。もしかして、舐められているのか? だとしたら……)


 いくら、同郷の子供だといっても庇い立てするには限度がある。

 アルーシュは短気だし、女特有の気まぐれがある。急に意見が180度に変わったりする。

 男とは違って、たまーにヒステリックな部分もあったりするのだ。

 要するに、男と違う。


(あいつ、いきなりきついこと言うからなあ)


 分別もへったくれもないようなお願いをしてくるし。魔力を全力で搾り出せとかいうし。

 たまーに、仕えるのが嫌になる。顔は、良いが王として仰ぐには大変だろう。

 何しろ、急な事が多くて人の都合などお構いなしだったりする。


 アルルは、アルルで古びた城を空中に上げるし。魔力が切れると墜落するのではないか。

 そんな心配を他所に、彼女もまた自分の都合で動いていた。


(アルルにも言えないよな。首がすぐ飛びそうだし、シグルスさんは様子が変だし)


 相談したら、密着しようとするのだ。頭が暑さでやられたのかもしれない。


 明るい室内には、獣人がせわしなく移動している。ぴかぴかに磨き上げられた大理石と黒檀を使ったようなカウンター。それで細長い廊下が構成されている。長椅子がそこにはあって、受付を待っている獣人たちが座っていた。いつの間にか、銀行の窓口のようだ。


 入り口には、屈強な熊耳をした獣人が金属鎧を着たまま立っているし。警備は、いよいよ厳重さを増している。のんびりとした空間がいいのだ。裏口の方も改造されて裏手に回る入り口に警備員が立っている。まるで、どこかの城かと彷彿させるような。そんな感じで、中で食事を用意するのも困るくらい。


 待っている狐人と風妖精にてんこもりになった麺を出す。


「はい、お待ちどうさま」


「ふむ。今日の食事は、竹の皿に具が乗っておるのじゃな。これを入れて食べろという事かの。なかなか新鮮じゃ。良いのよいのう」


「……いただきます」


 ティアンナは、無駄口をきかずにそのまま豚肉を麺に放り込む。餃子を乗せているのは、水車を作る際に余った木の皿だ。勿体無いので、皿にしてみた。漆がないので、艶が出せなかった。少し物足りないが、ティアンナもレンも気にした様子がない。


「ティアンナ。エリストールは?」


「……変な事をするからお仕置き。むごぉとかあひぃいとか言ってる」


「そうなの」


 いや、そこまでする必要はないのではないか。あれで、男たちの耳目を集める客引きになっていたような気がするのだ。アキラよりもずっと役に立つ。しょせんは、男だし。いずれは争う間柄でしかない。対するに、エリストールはむちむちのエロフ。磨けば、磨いただけ客を釣るにはいい女だ。


 女の賞味期限が如何にも狭いのだから、好きにさせてやるべきではないだろうか。

 が、何も言えない。


「……心配しなくても処女膜を破ったりしないから。安心」


「なんでそうなるの!」


「ふふふ。じゃが、そうと顔に書いてあるのう。して、小僧の事でも気になるのかえ?」


 レンは、室内でも寝間着のような帽子を被っている。なんぞ、ここで寝泊まりするので問題でもないのであるが。机の下で、もぞもぞと足をしているのが気になる。この美女も危険だ。最近では、正体を隠さなくなって尻尾を出している。なんと、その数は9つ。


 九尾の狐だ。どこぞの有名な狐と関係があるのかないのか。聞いてみたいが、聞けない。

 聞いたら、後に引けなくなるというか。女の過去を聞くというのは、野暮という物だ。


「どうして、そう書いてあるんでしょうね」


「ふふん。ネリエルが、アキラの所から抜けたじゃろ。して、あやつがそのまま生き残れるとは思えん。小僧だけにのう。ここの飯は、美味い。マールの方は、まだまだじゃがの。不幸は、未然に防いだ方がいいと思わんかえ?」


「確かに。アキラさんには、困ったものです」


「ほれほれ。ここには、年長者もおる。と、ティアンナは疎いかもしれんがのう。妾で良ければ、相談に乗ってやるぞ」


 しかし、話をした物かどうか。これが、元でアキラの首が本当に飛んでいってしまっては困る。何しろ、手間暇かけて育てているのだ。泣いて馬謖を切るなんて、柄ではない。孔明の失敗といえば、一重に人材不足を解決できなかった所にあるのではないか。


 どんどん、優秀な人材が死亡したり居なくなってから本気を出しますみたいな。

 そんな所が透けて見えたから、勝てなかったと。ユウタなら、馬謖は反省してもらって使う所だ。

 有為の人材を時間とともに、みすみす失っていたから蜀は敗北した。


「うーん。アキラさんの人生経験が不足している件、ですかねえ。こればっかりは、色々と失敗しないと獲得できないような気がしてるんですよ。何か、良い案でもありますか」


「……ふむ。それは、時間が解決してくれるじゃろ。というのは、あまりに曖昧。こうするのは、どうかの。獅子は谷底に子供を蹴落とすという。いっそ、チィチとマールを取り上げるのは」


 鬼だった。狐人のレンは、頭からひょっこりとした耳が横に揺れている。これは、面白そうな獲物を見つけたというようなそんな感じだ。


「それは、流石にアキラさんのやる気が零になってしまいます。他にないですか」


 うるさい森妖精が居なくて普段は大人しい青い髪をした少女が、いう。


「…あの子は、絶望がない。絶望がないから、努力もしない。ユウタのように、孤独も絶望も抱えた人間でない。確たる望みもない。高みに至ろうという執念もない。だから、強さも手に入れられない。恵まれた人間。だから、わからない」


 断言すると、髪の毛をかき上げて上目遣いで見つめてくる。と、ティアンナの身体が僅かに揺れた。

 どういう事か。よく見ると、下は長いスカートだが座っているのは椅子でなくて樽だ。大きな酒樽に座っている。しかも、立ててはなくて横にしたままだ。それでは揺れるのも道理というもの。


「そういわれると、なんとも言えないよ。でさ。ティアンナ、それ。どうしたの」


 嫌な予感がする。テーブルの端では、白い玉がラーメンを狙っているようだ。セリアは闘技場で大会があるらしい。ひよこは、妹のお守だ。魔王が出てきて、攫われるだけは防がないといけない。出てこない魔王。さっさと出てきて倒されろよ、と言いたい。


 動く樽。何か、入っている?


「…お仕置きだったけど。仕方がない」


 と、ばこっと木が蹴破られる。ティアンナが退いた瞬間、樽から足が生えた。


 妖怪、樽人間が生まれた。


「わあああ。暗い―。ティアンナさまあああ」


 風の魔術で、声まで封じていたという事か。いきなり大きな鳴き声がする。

 しかも、樽からは黄色い液体が滴り落ちている。これは、アンモニア臭。

 鼻に突き刺さるような匂いで、食事などできるはずがない。


 急いで樽を運ぶと、風呂場のドアに手をかけた。

 すると、


「きゃああああ」


 なんと、ミミーとモニカが入浴中だったのか。脱衣所には、脱ぎかけの2人がいる。

 なんという事だろう。貧相な身体をした2人の子供が目に入る。

 バガッ。樽が壊れて、真っ裸の少女が出てきた。

 おおっ。なんという事か。びっくりして、後ろに下がろうとした所に人の壁があった。


「なっ?」


 足が引っかかって、そのまま空中の少女が覆いかぶさってきた。

 

「ぐえっ」


 まるで、ヒキガエルが潰れるような声が漏れた。玉が、


「ゆ、ユーウ?」


 後ろから声がするのは、ルーシアか。オデットの長い髪が視界に映っている。


「ひぃ。ユーウのスケベっ!」


 いきなり、口をふさがれた。なんで、塞がれているのかわからない。

 しかし、窒息死しかねないというのに手加減なし! 目には、真っ裸な痴女の山とさくらんぼが見えた。

 と、引っ張られた。痛い。


「何やっているであります!」


 手だ。手を引っ張られている。臭いアンモニア臭と糞の匂いで一杯だ。口は塞がれて、死にそうである。

 こんな所で死ぬ羽目になるとは。

 だが、諦められない。足をつきたてようと。


「わわっ。臭いです」


 ミミーの声がする。と、同時にエリストールがひっくり返った。股間は、大ダメージだが潰れてはいないようだ。玉がもげそうな痛みと口が塞がれているので、そろそろ息絶えてもおかしくない。


「姉上、姉上、それ、死ぬでありますよ」


「え? ええっ」


 ルーシアの腰に手をつくと。何も引っかかりが無くて、


「……」


「ユーウ、実はわざとやっているであります?」


 白い下着が目に入ってきた。わざとではない。断じてない。

 どうして、こんな事になっているのか。己が聞きたいくらいだ。

 だが、喋ろうにも口がふさがって喋れないのだった。


「ひ、ひ、やああああ」


(天に坐す我らが……)


 ぽこぽこパンチが顔面にやってきた。すいすいと避ける。

 当たったら、死ぬ。冗談ではなく、死ぬ。ギャグなら生きていられるかもしれないが、生憎とルーシアのパンチ力は、並ではない。床が穴だらけだ。冗談のつもりでなくて、本当に殴りかかっているのだ。彼女は、涙目になりながら。


「うぅぅー」


「どうどう。あ、当たったら死ぬでありますよ。ねっ、ねっ」


「ごめん、このとーり」


 パンツは、今も丸見えだ。幼女のパンツを見て「眼福、眼福」というような趣味もない。

 危うくカラテマスターのパンチで死ぬところだった。ちなみに、本気なのか本気でないのか怪しい威力が床に炸裂している。音が音だっただけに、中の人間が集まって……こない。


「ユウタ。あまり、大きな音を立てて遊ぶのはよくない」


「くふっ。何やら、面白そうな遊びをシておるのう。妾も混ぜるのじゃっ」


 いや、2人が混ざればどうなるか。火を見るよりも明らかだ。


 土下座の姿勢から、涙目のルーシアはぶつぶつと何か呟いてスカートを履き直した。

 殺される所であった。仲間に殺されるのは、勘弁してもらいたい。

 変形マウントポジションからの連打など、最近浴びてない攻撃を貰って心臓は跳ね馬になっている。


「いいもん。ユーウも、パンツを見せてくれたら許してあげる」


「「は?」」


 いやいや。どうかしている。

 そして、期待するような目を年長者がするのは如何な物か。

 含み笑いなのに、目が笑ってなくて。怖い。


「よしっ。ここは、おパンツを見せるでありますよ。これで、お相子であります。万事解決であります!」


「いやいやいや」


 そんな解決方法があっていいのだろうか。ふと、考える。

 アキラが居れば、あれを生贄にできた。そう考えると、盾役は必要だ。

 いつもは、彼が防波堤になっていたような気がしてくる。

 そう考えると、彼がいないのは困った事だ。


「観念するでありますよ~。くくくっ」


 なんで、喉を鳴らしていうのか。裏手に走ると、さっと飛び出した。

 女だらけの中では、彼女らの理性が溶けてなくなるようだ。

 どうしてもストッパーというのは必要になるだろうし。

 パンツを守るべく走りだした。

 


挿絵(By みてみん)


「ちょっと待て、こら」


「ふふ、いいじゃないのさ」


「こ、こらっ。変な所に触るんじゃない! 私はそんな趣味もない!」


「SOx! SOx!」


 樽妖怪エリストールは、仲間に入りたそうに見ている。

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