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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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177話 王都の前にて8 (ユウタ)

 たまーに、思うんですけど。

 外交の延長線上に、戦争がある。とか、わからない人もいるのかとか。

 ですね。

 ウォルフガルドでは、言論が自由ではないので議論も難しいところです。

 ミッドガルドだと、不敬罪なんていう物もあります。

 冒険者が、貴族にタメ口を聞くとか死刑になっちゃったりすることもありますし。


 そんなウォルフガルドですけど、めちゃくちゃです。

 どうして、こんな風になっちゃったんだろうとか思う訳ですけど。

 1つ目は、諜報機関がなかった。 

 2つ目は、軍隊が弱すぎた。

 3つ目は、外交力がなかった。


 どれも当てはまって辛いです。

 世の中には、戦争するくらいなら死んだ方がマシという方もいるらしいですが。

 俺は、死にたくないので道連れにしないでください。

 さて、これはどこの国の事でしょうか。言論が、自由な国というのはいいですよね。 



 






 魔王は、ちらりとも姿が見えてこない。

 ライオネルは、すぐに撤退したという。蟹人もまた右に倣えらしく。

 コーボルトには、アルルが攻め込みそうだ。

 

 今日は、学校に行く。何故か。夏休みに突入するからだ。

 魔王に動きがあれば、桜火なりアルーシュなりから連絡が入るだろうし。

 エリアスが、掲示板を作ろうとか言っているのが気になる。


 魔導で、インターネットを再現しようというのか。匿名性のない掲示板では意味がないのではないか。

 アルーシュは、報道が大嫌いだ。流言飛語の類も大嫌い。

 ついでに、敵に回った日本人絡みで扱いが悪くなりそうで困っている。


「おはよう。珍しいね」


「おはよー。そりゃね。僕だって、生徒だし」


 ロシナの弟が話かけてきた。ローエンだ。背丈の方は、ユウタよりも小さい。9歳なので、まだまだ成長に至っていないのだろう。白色人種よろしく背丈が高いのかとおもいきや、伸びていないのであった。学校の入り口には、騎士が鎧を身に包んだまま立っている。


 金属の鎧を継ぎ接ぎにしたタイプだ。流石に、全身を覆う鎧の中に入っていては熱中症にかかるのだろう。魔術で、中を冷やすというような鎧もある。しかし、こちらは魔術を使用している間に魔力が無くなってしまう恐れがある。


 永続的には、冷えないという事だ。

 ユウタが通う冒険者学校の隣には、魔術師ギルドや錬金術師ギルドが運営する学校が立っている。

 反対側には国が運営する騎士養成学校が。

 なので、騎士学校と魔術師学校に分かれる事もある。


 騎士にも魔術士にも、すさまじい金がかかる。1人の騎士を養成するのに、日本で例えるならば2千万円はかかるような感じだ。国からの補助があるとはいえ、それでいいのかというような風で。魔術士は、もっとかかるので医者になるような物といえばいいだろうか。


 馬車が通り過ぎていく。


「このカードって不便かな」


「そんな事はないよ。変な人が入って来れないように、偽物を作れないようにしてあるって先生が言ってたよ」


 警備対策なのだろう。学校の関係者でもなければ、敷地に入れないように警備がされている。

 貴族の子弟が通うので、厳重さは折り紙つきだ。

 学校の門前で、チンピラが暴れていたら速攻で連れて行かれるくらいに。

 着飾った生徒も多い。綺麗な帽子を被っている子供も。

 色気づいているのだろう。


「ふうん。それで、さ。何か変わった事とかないかな」


「うん……。その君が出席していない間に、成績表とかで順位が貼りだされているんだけどね。知ってた?」


「それは、知らなかったよ」


 歩いていくと、目を疑ってしまうような光景が見えた。

 大きな掲示板の上位にエリアスとフィナルの名前があったからだ。

 そして、1位にはなんとアルの名前が。


「アル様って、勉強も運動もできるんだよね。すごいなー」


「そうなんだ。そっか、そうだよね」


 そう。ユウタがウォルフガルドで色々やっている間に、学校の成績はさんざんな物になっている。

 筆記試験はともかく、通信簿は下の方の点数が書かれている事は疑いようがない。

 学校の中に入る間に、揉め事が起こる様子はなかった。

 小説のように、イベントが起こったりするという事はないようだ。

 普通は、上級生に絡まれる下級生とかに出くわすイベントが起きたりするはずなのだが。

 

 そんな事は、一切なくて。上履きに履き替えると、教室へと向かった。

 奇妙な視線が色々とやってくるのが、気になる。

 白いタイルと木製の下駄箱は、立派な物だった。ユウタの顔に視線が向いているような。

 教室にはいると、


「おはようー」


 と、声を上げるローエン。続いて挨拶をすると、怪訝な顔をされた。

 席に座る。


「ふう。もしかして、幽霊か何かに思われているのかなあ」


「そう、だね。まだ、ここだといいけどさ。上の学校に進学すると、全然出てこないから出席日数が足りなくて卒業できなくなる事もあるみたいだよ」


 大変、困った事態だ。小学校は、卒業できるだろう。中学校は、どうなるのか。

 そもそも、この学校は冒険者を育成する機関。というのが建前で、実際には貴族の子弟がほとんどのクラス。一学年が300人程度なのだ。平民の学校は、また別に作られているらしく。見目がよいとかそういった理由で入れられるくらいに、貴族で占められている。


 こんな風でいいのかとは、思ってしまうのだが。

 子供なのだし、自主性を伸ばすとか変な思想を植え付けない方が良いのではないかとか。

 悶々するのだ。


「ローエン。アルブレストくんを紹介してくれよ」


「あっ。うん」


 何故か、ローエンの横にはチビデブとガリが立っていた。面相は、優れていないようだ。

 顔は、十人並みで冴えていない。片方は、知らない子供だ。


「俺、ガリンコ」「僕は、ガイア」


 もう片方は、ケンイチロウだ。しかし、何故ガイアなのか。アイガだから、逆にしたのか。

 ガリンコの方は、裕福そうな感じだ。太っているという事は、食事に困っていないという事だろう。

 ガイアの方は、いい。よく知っている。


「うん。多分、このメンバーで行動する事になると思う。だから、講習とかも一緒に行動しようよ」


 ローエンは、にこにこしていうが。女ならともかく男といちゃつくつもりはないのに。

 学校の授業なのだろうか。夏休みに入る前に、とんでもない事になりそうな予感がする。


「何するの?」


「へへっ。具体的には、次に会った時からかもしんねーけどな」


 ガリンコは、でっぷりとした腹の上にある胸ポケットからハンカチを取り出した。

 白いシャツにはちきれんばかりの脂肪が隠されているのだろう。

 ズボンが窮屈そうだ。


「えっとね。宿題とかあるんだよ。薬草を調べたり、取ってくるとか。何故、薬草が森でしか生えなかったのかとかね。なんだか気にならない? 上級生は、水車の作り方を学んで裏庭に水車を使った庭園の作り方なんてやってるよ? ちょっとだけ時間があれば、見に行こうよ」


 水車に薬草とな。ユウタにとっては、過ぎ去った過去の話だが。どうして、薬草が高い値段で取引されるのか。それはもちろん、森に自生するからだ。水車が普及するのには、水車がなかなかに難しい構造になっているからだ。正確な構造を知っているおっさんになら、問題ないだろう。


 ケンイチロウは、眼鏡が割れてしまったのか。目つきが悪い。

 片方だけがレンズの入っていない眼鏡をしている。


「いいよ」

「やったぜ」

「むふう」


 ゆっさゆっさと腹を抱えて歩いて行く。このパーティー前途多難な気がしてならない。

 フードから、白いもこもこが出てくると机の上で居眠りを始めた。なんというフリーダムな生命体なのだろう。女子からは、全くなんのアプローチもないのに。


 先生は、男の先生だ。教室に入ってくるなり、


「おっ、まさか本当にいるとはな。よし、アルブレスト。前へ来たまえ!」


 悪い予感がする。


「最初に言っておく。実技の試験、等々にでていないお前の成績は判断しづらい。だが、特別な配慮で成績点がつけられた。よかったな、この学校が義務教育で」


 辛辣な言いように、沈黙せざるえない。

 中をちらっと見てみると、案の定というか。最低の数字が並んでいる。

 ABCDEでD評価。これはひどい。試験の点数だけでは、点数がやれないという事だろう。

 しかも点数がすごぶるいいわけでもない。


「残念だったね。秋に向けて、がんばろうよ」


 ケンイチロウは、青い顔をしている。もっとひどかったのか。

 いや、似たもの同士だからかもしれない。彼は、この学校に通うようになって洗礼を受けたという事だろう。学校なのだが、日本の学校と違って体育会系がかなりの部分を占める。魔術士になろうとするなら、頭も魔力も必要だ。


 先生の話を聞いていると、


「夏には、行事も多い。気をつけないとな。特に、知らない人間についていったり川や森で遊ぶのは要注意だ。子供だから、君たちだけでどこかへ行く場合にはちゃんとお父さんやお母さんに相談してくれたまえよ」


 魔術の訓練だとかもあるらしいが、最終日という事で宿題がばんばん山のように積み上がっていく。

 宿題など要らないと思うのだが。


「こんなに宿題って出るものなのか」


「バード先生は、厳しい人だからね。あの先生は冒険者から転職した人なんだってさ」


「宿題が多くても、困るんだけれど」


「だよねえ。見ている分には、いいんだろうけどね」


 ローエンは、端正な顔を曇らせた。ロシナと似ているのに、こうも性格が違うと戸惑ってしまう。

 なんというか。性欲を感じないような、そんな子供だ。

 先生の話を聞いているだけで、朝礼から全校朝礼。そして、終礼まで過ぎてしまう。

 ずっとこの調子では、尻も痛い。


「どうするの? すぐ帰る?」


 お昼で、終わりとは。早過ぎるのではないだろうか。

 何をやっているのかわからない内に、半ドンの学校が終わってしまった。


「いや、水車とか見学するのもいいかな」


「へえ、珍しいね。いつも忙しそうに姿が消えるからさ」


 いや、忙しいのだ。何かあれば、大変だ。魔王が出てきてくれないとおちおち冒険もできない。

 というのに、現れないという。正々堂々と、勝負をしに来て欲しい。心からのお願いだ。

 何も無いわけではない。コーボルトを攻めようというアルーシュの話もある。

 しかし、逆に攻め込んだら侵略戦争ではないか。ユーウは気にしないが、ユウタは気になる。

 

 そこら辺、戦争を仕掛けまくっていくのは問題だし。侵略する事に大義があるのか。

 コーボルトに殴られたので、殴り返しに行くというのは。いかがなものかとも思うのだ。

 セリアから手伝ってくれ、と言わればやぶさかないとなるけれど。


 敵がどれくらいの戦力を持っていて、どこに防衛力が集中しているだとか調べてからでもいいのではないか。行き当たりばったりで、脊髄反射のように殴り返すというのは。


 階段を降りて、1階に降りる。1回から、裏手の中庭に水路があった。噴水に、水車だ。

 よく作られている。水が噴出しているのは、どういう機構になっているのか知っている。

 が、同じ機構なのか。気になる所だ。水車を作ったのは、誰なのかはっきりしていない。

 

 石造りの噴水台から流れて水車が回っている。そして、そこから小さな小屋で石臼が回っているようだ。

 粉ひき小屋なのだろう。中では、仕組みがむき出しになって見学できるようにされている。

 ウォルフガルドでも水車の導入は、待ったなしでやらないといけない。

 土地の造成や開墾に手を追われていたし、専業の兵士を育てるという難題もある。


 何よりも王都が、焼け野原だ。東京大空襲と比較しても遜色ないレベルで破壊されていた。

 防衛力がなかったから、ああなったのか。それは、認めざるえない。

 軍隊が弱ければ、いつでも踏み潰される世界。ひどく、残酷な、世界なのだ。


「ローエンくんの所でも水車は、使っているんだっけ」


「ええ。水車って、すごいですよね。でも、なにか工夫がいるらしくって水路を作って水を引き込むとかしてますよ。ロシナ兄が山田さんにお願いして作ってもらったみたいです。高いところから低いところに水を落として電力も作れるとか。魔術士に電気を充電してもらう必要もなくなりますね」


 産業の米である電気を発電するのは、大変だ。魔術士がそれを担っていたりするわけだが。常時発電しておくには、負担が大きすぎる。エリアスは、そこで蓄電システムを開発してやりくりしている訳であるが。足りない。発電所の建設は、急ピッチで進んでいるけれどまだ一年はかかると見られている。


 それも、天災なりなんなりで破壊されなければ、だ。


「水車すげーよな」


「どうやって回ってんのかわかんね」


 ケンイチロウは、水車がどうやって回っているのかわからないようだ。

 しょうがないだろう。小学生なのだから。この子には、知識チートを期待するべくもない。

 スキルも【時間】【言語】から増えていないようだ。

 魔術士の作ったであろうカードを胸から下げているのが見える。


「そのうち、僕らも製作しなきゃなんないんだよ。よく見ておかなくっちゃ」


「そうなんだ」


 水車を作るとは、またハードコースだ。何しろ、簡単に見えて回転する力の軸を変えるというのは難しい。とある国では、800年かかっても水車が出来なかったというくらいなのだ。おして、図るべしだろう。

 水車を使って、水の水位を変えるなど農業にも工業にも活かせる。水車作りは、授業に入れていても問題がないのかもしれない。村に立ち寄って、水車を作るとか。ウォルフガルドに求められているのは、まさにそれなのだから。


 しかし、野郎が4人。潤いが、全くない学校生活になりそうだ。 



 





 

挿絵(By みてみん)

「わたくしが援軍として行くと言ってますの。引っ込んでなさい!」

「ふーん。そんな話、聞いてないぜ。聞けないな」

「こうしている間にも、遅れるのでしてよ?」


 どうやら、援軍を送れないのは2人のせいのようである。

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