33話 森で戦闘Ⅲ! (ユウタ、セリア、モニカ、アルル、シグルス、トトリ、ミギワ、ワウ、ヒロ、オーク)
閲覧・評価・ブクマありがとうございます。
某日某時刻 森の中
三人の男女が対峙する。
華奢な女の子は、口元を覆い隠し人相を隠している。
その体躯には似合わない大剣をぶら下げて悠然と構える。
華麗なフルプレートを着飾る青年はハルバードを構えている。
ミスリル製の華麗なハーフタワー型の盾とメイスを持つ美女は、どこか落ち着かない様子だ。
「へー、度胸あんだね。あんたら、たった二人でアタシを相手しようっての?」
「・・・(不味いなこいつは強敵です。二人でよかった。)」
「・・・(どうするの時間を稼ぐの? 逃げる?)」
「・・・(やるだけやろう、逃すとヒロさんに顔むけできないよ。)」
「・・・(わかっ・・。)」
「こそこそと念話かい? こないならこっちから行くよ」
少女は連続で【ソニックウェイブ】を放ってくる。
飛ぶ斬撃の代表的なスキルだ。
ぐっ・・・槍と盾で二人ともガードしたが二人してかなりのダメージだ。
範囲攻撃で周囲の木は根こそぎ吹き飛んでいく。
一人だったらやられていただろうダメージだ。
ワウの【ヒール】をもらうと反撃に転じる。
応戦だ。【ソニック・カッター】で槍の連続で縦型斬撃。
それを飛ばしながら、接近して愚直なまでの牽制の突きで範囲系を牽制する。
どうみても相手の方が格上。
見た目に反して重すぎる斬撃で吹き飛ばれる。
同様の打ち合いなのに、【ヒール】で立ち上がる有様だ。
ゾンビのように木に地面に叩きつけられては立ち上がる。
「ゲハッ・・・(どういうパワーですかこれは。)」
「・・・(【ヒール】!ミギワ大丈夫?)」
「・・・(正直かなり不味いです。)」
斬撃スキルに対しても馬鹿でかく幅広な大剣。
かなりの防御力なのか。ミギワの攻撃は、ほとんど効いていないようだ。
相手の間合いに立たず常に有効な刺突で牽制する戦い。
これに少女はじれてきた様子か。
「しぶといじゃん。まだるっこしいぃ!【アクセル】【ヘイスト】【バーサーク】!」
「・・・?!(そんな。連続スキル使用!? これは不味い!」
相手の殺るためにラッシュだ、逃げるべきか。とっさに大盾と剣持ち替える。
急加速する少女。疾風のように接近してくる。逃げる?
ミギワたちにそんな暇を相手は与えてくれそうもない。
そこからは嵐のような斬撃。
ボロ雑巾のようにはね飛ばされないように。亀のように耐える。
いつかは奴の体力も切れるはず。
フルスイングした大剣でガードごと木に身体を叩きつけられる。
ミギワが気絶しそうになる。そこへにワウの【ヒール・ハンド】。
それをもらいながら、足止めスキル【リストレイン】で足止めしてもらう。
とっさに飛び退くと少女は【ソニック・ブレード】横薙ぎの斬撃飛ばしを打ちまくってきます。
転がるように飛び退き、盾で嵐のような斬撃飛ばし。
その攻撃を受けながらひたすら反撃のタイミングを待つ。
このまま耐えきれるか?
それとも盾がお釈迦になってしまうのか。
瀬戸際だ。
ミギワは、いずれにしても反撃の糸口がつかめない。
だが、ワウの方向にだけは行かせない。
一人だけだったら間違いなく死んでいる。
回復だけが二人の連携を支える生命線だ。見かけは華奢な少女の中身がこんな化け物だとは・・・想像もできないだろう。
盾技スキル【ガード】使い始めるがその上からでもダメージが貫通してくる。
「ガハッ・・・」
いつまで立っていられるのか。いつまで耐えられるのか。
もう自分の身体が自分のものでなくなるそんな感覚。
【ヒール】を何度かけられたか。
もう足がガクガクいう。その度に【ヒール】をもらって立ち上がる。
「ゼェゼェ・・・。ウゼエウゼエマジウゼエェェ!」
「・・・(ワウまだいけますか?)」
「・・・(こっちも限界かも。・・・いえ、まだいけるよ!)」
相手が弱っているフリを見せているということもある。
【ソニック・ブレード】を放つと牽制の突きを放つ。
斬撃スキルを少女はあっさり避けた。
剣を受け流すと少女は返す大剣を叩きつけてくる。
またも身体ごと岩に叩きつけられた。
すぐさま飛び起きて、転がるように移動する。
そして、襲い来る止めの攻撃を躱す。
やはり罠で。
見事なカウンターで。
そして、危うく大剣で串刺しになるところだ。
「あんた、本当に隙がないお兄さんだねえ。誘いにも乗ってこないし、しぶといねえちゃっちゃと潰れて欲しかったんだけど、あークソ・・・。時間切れかな。まったね~お兄さん」
ニヤリと口元は見えない。
が、茶髪褐色な目で笑う少女は森の奥に向かって疾走していく。
どういう体力なのか。
あれだけ斬撃を打ち込んでスキルをガンガン使ってきて。
それでも、まだ余力がある。
全く動けなくなる。
情けない限りだ。が、短時間とはいえ力の限り戦ったと。
ミギワにワウが【ヒール】をかけてくれているようだ。
立ち上がろうにも、疲労と残留ダメージで動けそうにもない。
不意に声がする。
「おいしっかりしろ。大丈夫か、ミギワ」
「ヒロさんですか遅いですよ。ええ、とんでもない相手でした。本当に良く生きていたなと」
「ガハハ、そいつは上出来だ。やられた分、仇はとってやるからよ。ま、今日はここまでだな。合流しよう。つかまあ、辺り一帯穴だらけだしオメーもスゲー有様だぜ。おいミギワ・・・聞いてるか?」
ミギワの脳裏に響く、ヒロの声がする。結構近かった。
相手をもう倒したのか。
安心すると意識のほうが遠のく。
強敵と戦って生きてる。生き残るのは、素晴らしい。
睡魔の世界に旅立った。
◆
作戦も決まったのでオーク連中に接近し、息を潜めながら連中の様子を伺う。
オーク達とこちらにはそれなりの距離がある。40mといったところか・・・ギリギリ身体を狙える射程だ。
オーク弓はコンパウンドボウかトルコ弓のような作りなので飛ばすだけならかなりの距離飛ぶのだろうが・・・。もちっと近寄れればいいのだ。
が、森から見つからないように射つので距離を選べないのが痛い。
ヘッドショットは無理な距離だな。
【ウィンド】を弓矢にエンチャントしながら狙いをつける。
狙いはやはりローブ、次にアーチャーだろう。2、3体ほど速射して仕留めると移動する。
同時に【ファイアウォール】を連中の中に出す。
大混乱に陥るオークの群れ。好感触だ。
もしや、このままオークを弓で攻撃しながら【ファイアウォール】で焼いていくだけで終わるのでは? と。
思ったが、どうやらそうもいかないようだ。
短時間でサクッと後衛10体は仕留めただろうか。オークの一際デカイやつデューク級らしいのが何事か叫ぶと。一斉に森の中にオーク共が走り込む。
不味いこちらにデカイのが来る。デカオークとお供【ファイアウォール】で焼くが、大したダメージを負っていないデカオークが突っ込んでくる。
デカオークのお供を、弓矢で攻撃しながら。
アル様達が、待機する場所まで誘導していく。
我ながらなんてズルい攻撃だ。
これはいわゆる弓職による引き狩りだな。
【アイスミラー】を使うまでもなかったようだ。
・・・オーク達を一人で倒しすぎたのではないだろうか。
アル様に叱られるかもしれない。
「遅いぞユウタ! たあ!」
「アル様すいません。予想以上に相手が、混乱してくれたもので調子に乗っていました」
一人で狩っても良かったな。
やばい。ちょっと本心がもろに出てしまった。調子に乗って全滅させようと頑張ってしまった。
アル様の一撃はデカオークの持つ斧に阻まれてしまう。オークの持つタワーシールドで吹き飛ばされるアル様。
援護の弓矢も盾で阻まれる。
モニカの攻撃は武器を持つ腕狙いのようだが、なかなか狙えそうもない。
こいつ。かなりの強敵なのでは?
といっても、気がつくと5対1である。
僅かについてきた残りのお供は、速攻でシグルスさんとセリスが片付けてしまったようだ。
「ブォオオオ!」
凄まじい雄叫びだ。モニカとアル様が固まってしまっている。間髪を入れず振られる斧だったが、あっさりセリスが受け止める。
もしかして、これ相手にバッドステータスを与えるとかいう咆哮なんだろうか。
俺には効いてないけどね。セリアの咆吼の方がやばい。
二人は固まってしまっている。
【キュア】で状態異常にかかっているモニカとアル様を回復させる。
「っく、なんということだ、情けない」
「アル様まだですよ、頑張りましょう!」
「ああ、だがあの二人の戦いを見せられると悔しいな」
シグルスさんとセリアがオークの動きを翻弄しつつ、確実にダメージを手足に叩き込んでいく。
一撃で決められる相手ではないのだろう。確実な戦い方である。
【サンダー】を打ち込んでいくが大したダメージを負っていないのか? 相当なタフネスだ。
連射しているのでMP回復薬を飲むのも忘れない。
いまだにMPが尽きた時どうなるのかは分かっていない。
そろそろ初級魔術だけじゃ辛い気もしてくる。中級くらい使えるようにならないときついかもしれないな。
前衛が4人後衛1ならこうなるよね。
特に多数の相手というより強敵が1人の場合なおさらセリアとシグルスさんの戦いに割り込むのは二人には難しいよな。
強敵だったが、大して長い時間戦いは続かなかった。
一瞬毎にダメージが手足に刻まれ耐久力の低下した足を飛ばされた辺りで勝負は決まってしまった。
はずだったが、先程の咆哮はバッドステータスを与えると同時に仲間を呼び集めるためだったようだ。
次々とオーク達が集まってくる。先頭のオークを【サンダー】で焼くがきりがないな。
まだ20以上はオーク達は残っているはず。どこまでやれるか。
「いくぞ、モニカ!」
「はい、アル様!」
二人が駆け出していく。オークさん達と殺る気満々だよこの子ら。
けど戦いは数なんですぜ? ・・・アル様は相変わらずの勇者ぶりだ。
すでにデカオークを仕留めに入っているセリア達をチラリとみるとアル様達の援護に入る。
うー、待ってくださいよ。アル様突撃しすぎですって!
◆
遅い。何をやっているのだユウタは、馬鹿者め。
さっさとオーク共をおびき寄せてこの剣の錆にしてくれる!
「む」
ユウタが疾走してくる。やっときたか。オークを連れてきたが、引き連れているオークは・・・巨大といってもいいだろう。
なんと大きなオークだ。こいつは普通のオーク共のサイズより一回り以上に大きい。
「遅いぞユウタ!たあ!」
「すいません。予想以上に相手が混乱してくれたもので調子に乗っていました」
むう、それならばしょうがないか。数を減らすしてくるとはなかなか出来るものではない。
ましてや追いつかれれば死ぬ、恐怖と戦いながらの攻撃をやってのけたのである。
やはり姉上が見込んだ男なだけはあるな。
デカオークに一撃を叩きこむも防がれた上にカウンターで弾き飛ばされる。
なんという無様。吹き飛ばされて木に叩きつけられる。衝撃よりも顔が真っ赤になっているかどうかが気になる。
デカオークはモニカの攻撃もあっさり躱すと反撃に転じてくる。
「ブォオオオ!」
突然咆哮を上げるデカオーク。
何の気構えもなかった私は硬直して体が動かなくなった。
振り上げられる斧。まさかこんな・・・こんなところで私は死ぬのか。
嫌だ。まだ死ねない。目の前に迫る斧はセリアが受け止めた。途端にほっとする自分がいた事に愕然とする。
硬直する体をユウタが【キュア】で回復させてくれた。ありがたい、が・・それ以上に情けない気持ちで一杯だ。
臣下の者達に助けられっぱなしだ。
「なんということだ、情けない」
「アル様まだですよ、頑張りましょう!」
「ああ、だがあの二人の戦いを見せられると悔しいな。」
見ればセリアとシグルスが見事な連携を魅せている。ああなりたいものだ。
そして確実な戦い方をする。相手を一撃で仕留めるのではなく、ダメージを蓄積して倒す、
デカオークはそれほどの相手ということか。
オークが持つ盾での防御もものともしない、隙を見つけては確実な斬撃を決めていく。
ユウタは援護に【サンダー】を決めてデカオークの動きを鈍らせる。
セリアがデカオークの足を斬り飛ばした時点で勝ちは確定したようなものだったが、奴は仲間を呼び寄せていたようだ。
休憩所予定地のほうから次々とオーク達が姿を現す。
不味いこちらに来させてはいけない!
「いくぞモニカ!」
「はい、アル様!」
かなりの数だが、デカオークほどではない。【聖騎士】を目指す身この程度のオーク達、必ず倒してみせる!
私はモニカと二人で駆け出した。
キューブステータス サナダ・ユウタ 16才 冒険者
装備 ミスリルの剣 チェインアーマー チェイングリーブ 銅のメット 硬い皮のブーツ 対魔術の盾 銅の篭手
オークの弓 オークのワンド
邸宅有り セリア 人狼 モニカ 鍛冶士
スキル テレポート PT編成
特殊能力 なし
固有能力( 人形使役、人形化 )
▽
[冒険者LV45]市民51村人49戦士 49剣士 50弓士 50勇者 51狩人 51魔術士 48商人 45薬剤士 45騎兵 45弓騎兵45格闘士 45英雄 45治癒士 45料理人 45魔獣使い 41付与術士 41錬金術士 40木こり27下忍 27神官19人形使い19
所持金 34万2千弱ゴル(9万クーポン有)
バトル回が終わらない!




