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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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79話 強奪さん、意外と小心 (ユウタ、セリア、エリストール、ミミー、アキラ、マール、蟹、魚)

「なあなあ。お嬢ちゃんたち、強すぎねえか」

「いえ、セリアを除けば普通ですよ」

「マジかよ。まさにチートって感じだけどな。この狼、ええとウルフか。EXPの入りは低いな。もちっと稼げるところにしたいが、2人パーティーがくっついているようなもんだしなあ。LV20から上がらねえ」

「ご主人様、それでも上がるの早いですよ。普通、1から10になるのが2-3年かかるって言われているんですから。二ヶ月で、もう20なんです。剣士(セイバー)の次がすぐ見えてきますよ!」


 犬耳を生やした少女が男に向かって強弁する。浅黒く日焼けした男、ことアキラは犬耳の少女に酌をさせていた。

 アキラにマールを加えて、クラブ狩りだ。

 鳥馬に馬車を引かせる格好で、向かった先は川下。運河に向けて出発している。

 途中で出会ったウルフを始末すると。喉を潤す。


「ぷはあっ。こりゃ、いい。良い水だぜ。ぶどう酒にパンってやっぱいいな。蟹の具が入ってて腹も膨れるし。あれだな。つまみが欲しいわな」

「あまり食べると動けなくなりますよ」

「いいっていいって。こまけえこと気にしてると、白髪が増えるぞ」

「ご主人様、失礼ですよ!」


 アキラは、マールに突っ込まれる。ツッコミ役がマールでボケがアキラのようだ。


「エリストールだっけ。美人のお嬢さんに声かけたいんだけど、なんか避けられてるんだが…気のせいかね」

「あー。そうですね。そういえば、挨拶とかは返すんですか」

「超無視されてんの。あれか、こりゃ嫌われてるってやつなの? 美人とお知り合いになりたいです、先生。なんとかしてくださいよ」

「あれで、気難しい人ですからね。ただ、本性を知るとどうなんでしょう」

「どう、とは? 何かあるのかよ」

「いえ、黙っていれば美人ですからね」


 そう、エリストールはいかにもなぱっつん前髪に眼帯でもつければ厳しい軍人といった風体になる。中身がアレなので、勘違いしやすいが。ただ立っているだけならば、そこいらでも見かけないくらいの美人だ。伊達に、森妖精だというわけでもないのだろう。おかしいくらいに長い足と雨宿りができるくらいに出た胸。

 鎧が、あきらかにおかしい。

 と、


「あの、それでこちらの方は仲間になったんですか」

「んー、それはまだわからないね。仲間になったフリをしているのかもしれないから。注意を怠らないように」

「わかりました」

「それを本人の前でいうかよっ」

「でも、結構真実を当ててると思うんですよ。とりあえず様子を見てみるかっていうのは、わかりますから」

「うっ。そりゃ、まあな。ただ、ずばっと言われるともやもやするわ」

「ご主人様、裏切るんですか? いけませんよ!」

「裏切るだなんていってねえだろっ。様子見だってっ、ああもう。装備を良くしたり、マールを食わせねえといけねえんだからよ。魔術を習得しねえと、こりゃきついぜ。いっそ、魔術士を習得させてもらうべきだったか? 水系の魔術と火系の魔術までは初歩を取ったんだけどな。初期魔力炉《水》とかおまけしてもらったのによお」


 アキラは、自分から暴露していくタイプらしい。

 さっさと殺してしまった記憶からは伺いしれなかった。


「魔力炉ですか」

「ああ。なんでも、燃焼タイプの奴らしくてだから水辺に転移したのかねえ。とにかく、水があると魔力が増えやすいとか記載があるけどな。それで、電撃の呪文だとか使えるとよかったんだが…。それが、水弾と炎だけしか使えねえって、どうなのよ。すげえ微妙だし、2、3発撃つと疲れちまう。限界まで使うと、気絶しちまうし。使い勝手が悪いのなんの。鑑定を使っているのも、結構くうし。魔力を使い過ぎて、限界を上げてくスタイルだとそれで1日過ごしちまうのは勿体無え。となると、レベルを上げてどうにかするしかねえんだがね。なんかアドバイスをくれよ」


 どうにもビルドに失敗しているタイプにしか見えない。後から得たのであろうスキルは、どれも肉弾系のスキルで気力を使うタイプだ。魔力と気力は、似ているようで違う。精神力と体力とに別れるというべきか。気力の方は、生命力につながっている感じなので使うと疲労が増す。魔力の方は、精神に関係しているのか。使えば、酔っぱらいのようにふらふらになる。悪化すると、気絶だ。


「そう、ですね。何分、特化するのは有りです。剣士なら、剣士らしく魔術をそこそこにして剣技を磨いていく方がよろしいかと。鍛え上げれば、斬撃を飛ばすことも可能ですよ」

「マジで?」

「ええ。ですが、羽毛を斬るくらいの技量は当然必要になってきますし。その内に、銃弾すら斬れるようになります」

「銃弾を? 信じられねえ」

「セリア。いいかい」

「ふっ。いつでもいいぞ」


 と、セリアに石を投げつけた。パックリと割れた石が馬車の中に落ちる。


「おい。これ、断面がすごく滑らかなんだけど。一体、何で切ったんだ」

「これだ」


 セリアは、爪を見せた。長い。


「マジかよ。こりゃ、信じるしかねえ。うひょお。マジファンタジーな世界にきたーって感じだぜ。すげえ。俺もできるようになるんだよな」

「努力次第じゃないですかね」

「いやいや、現実だったらよ。いっくら努力したって、羽毛なんて切れやしねえ。それどころか燕だって蝿だって斬れやしねえんだよ。人だって斬れば殺人罪に問われて、刑務所行きだろ。ここじゃ、魔物をいくらだって斬れるんだ。サイコーじゃねえ? 斬って、斬って斬りまくるね。剣士だから、次は剣豪とか騎士とか剣術士が見えているな。ゴブリンとかでてこねえのかねえ」


 と、馬車が止まる。セリアは、川辺を見ている。


「どうしたの」

「フィッシュマンにクラブマンだ。これは、厄介だぞ」


 見れば、蟹人間と魚人間が争っている。蟹人間たちの方が優勢のようだ。


「げっ、すげえ数じゃんか。アレとやるのか?」

「ふっ、びびっているのか。情けない奴」


 と、セリアが飛び出していった。すぐに、蟹人間と魚人間が宙を舞いだした。


「どうするんだ」

「ま、見ておいてください」


 ミミーは犬を呼び寄せた。足元には、犬が一匹。それで、どうしようというのか。エリストールは、弓を構えて矢を射ちだす。ややあって、蟹人間も魚人間も逃げ出す。死体が、川辺に散乱した。

 セリアは、追いかけずに戻ってきた。


「馬車で南に移動するぞ」

「死体は、ほっとく?」

「追撃の方が先だ」


 魚人間の姿も蟹人間の姿も異様だ。そう、まるで足が急に生えたような格好をしていたからだ。手には、銛をもっていた。そうして、セリアに殴り殺された相手は地面に横たわっている。


「セリアちゃん。マジつええ」

「ふっ。そうでもない。お前の目の前にいる奴の方がよほど凶暴だぞ。妹の事が絡むと、急に変貌する」

「えっ。妹がいるの」

「いますよ。紹介しませんよ」

「可愛いんだろなあ。紹介してくれたっていいじゃん」

「……(殺すか…)」


 アキラが顔をひきつらせた。


「止めておけ。死ぬぞ」

「すいません」

「ええ」

「笑顔なのに、怖え…」

「ご主人様は、危険予知が足りませんよ!」


 マールが、慌てていう。


「妹の事になるとな。この次の瞬間に、アキラが肉塊に変わっていても不思議じゃない。気をつける事だ。もうすでに殺すつもりになっていてもおかしくないのだ。以後口にしない事だな」

「ああ。すいませんでした。ほんと、すいません」

「……(ふう…)」

「妹の為なら、地獄のそこだろうと行く奴だからな。欲望にまみれた雄の視線に、天使のようなシャルロッテをさらさせる訳にはいくまい。貴様のような下衆な男に会わせて、間違いでもあったら後悔してもしきれんだろうさ。マールとやら、気をつける事だ。このような男は、下半身で物事を決めているだろうからな。行動原理など、手に取るようにわかる。少しは、慎む事だ!」


 エリストールが、目を上げてアキラにいう。

 アキラは、サンドバックになった。


「うっ。すいませんでした」

「まったく、人が黙っていればいい気になって乳を視姦するとは。斬られてもおかしくない所業だぞ。貴様はっ。性欲の固まりであるユークリウッド以上に露骨な視線を寄越すなど、大胆不敵とはこの事だ。マールとやらとやりまくっているのであろう? 食い扶持も満足に稼げぬ男がハーレムなどと片腹痛いわっ。少なくとも、国の税収程度は稼いでからでかい口を叩け! 目の前の男は、何時でも酒池肉林ができるくらいに稼いでいるのだぞ? 見習う事だ」


 エリストールが説教をし始めた。馬車の空気は、しんみりとしている。


「マジ?」

「いえ、そこまでは」

「これだ。正直にいえ。謙遜していても、お前の能力など相手にわかるはずもないぞ」


 何をどう説明しろというのか。エリストールは、耳をぴくぴく上下させた。


「そんなに稼いでいるって、どうやって稼いだんだ?」

「秘密です」

「あれか、貴族なんだよな。貴族だけに、NAISEIしてか?」

「その内政なのかわかりませんけど。色々ですよ」

「最近だと、蟹パンなんていうのが王都で流行りはじめた。以外にイケる。元々、蟹自体が高い値段が付いていたからな。ラトスクでは、値段が付かないが」


 セリアがばらした。


「金儲けの才がある訳か、羨ましいぜ。後発の俺ができることって、大抵ユーウに取られてそうだな。一国一城の主になりてえんだけど。なんとかならんかなあ」

「今なら、配下を募集してますよ」

「えっと、それってユーウの下につけって事か?」

「そうですね。厳密には、セリアの元で。ウォルフガルドで働いてもらいますけどね」

「よろしくお願いします」

「「えっ」」


 マールとはもった。


「えって。酷くね。即決だろ」

「いや、でもご主人様ってハーレム王とかなるって言ってませんでしたっけ」

「だから、だよ。このままじゃ、騎士どころか冒険者で野垂れ死にしそうなんだし。上に上がっていきそうな奴の下に付いた方が利口じゃん。扱いは、悪くねえ。それに、殺すならいきなり殺されてどっかに埋められてもしょうがねえんだし。日本人を重用してるってんだから、悪い気もしねえ。問題は、俺の能力の方だな。美人の獣人さんとイチャラブしてえし」

「あの、マールいるんですけど」

「マールは、可愛い系な。美人はまた、別。おっぱいがほらどーんとある、みたいな」


 すると、エリストールからハリセンのツッコミが入った。


「女は、胸じゃない」

「あんたがいうのかよっ」

「ううっ。ご主人様が、捨てるつもりだー!」

「そんなんじゃねえって」


 もう収拾がつかない。マールとアキラは、イチャイチャしだした。

 ミミーは、犬と戯れている。


「この子、戦いに出せるんでしょうか」

「んー見たところ、すごい能力は無さそうだね」


 普通の犬。としか表示がない。がたごとと揺られて、道を南に移動しているのに、人と出くわさないとは。村を放棄して逃げたのか。川沿いには、蟹の姿あるだけだ。道に飛び出した蟹を電撃で薙ぎ払っていくと。


「ユーウって、あれか。魔力が0なのに、なんで魔術が使えるんだ? ステータス上では、0にしかなってないぜ」

「騙されているのだ。いつから、魔力が0だなんて思い込んでいた? 貴様は、愚かにもユーウを相手にとって戦いを挑もうという。今のままでは百万年早い! どうして、その鑑定した情報を信じこむ。それを鵜呑みにするのは愚者の行いだぞ。まずは、この私を倒してからにしてもらおうか」

「おいおい、いつ、俺が戦いを挑んだんだよ」

「鑑定をかけまくっているではないか! それが証左でなくてなんだというのだ」


 エリストールは、ドヤ顔だ。アキラは、困惑している。


「やっ。ちょっと待ってくれ。ユーウって魔術師55なんだよな?」


 アキラが言っているのは、違う。実際には、とっくに超えたところにある。当然ながら、そういう偽の情報を鑑定で掴ませては喧嘩を売らせるのは作法とも言えるだろう。能ある鷹は、爪を隠すというか。それがわからないとは。


「なぜ、そう思うんですか」

「や、だって鑑定したら55だし。称号の所がおかしいけど、なんだこれ。辺境の領主って。そうなのか」

「それは、一部で当たっているな」

「また、被害者が出たな。貴様、いつから、それが真実であると思い込んでいた。鑑定など、偽装スキルで変えられてしまうのだ。レベルが高い相手がよく使う手、だぞ。お前は、鴨。ユークリウッドは、手ぐすねひいてお前を肉塊にしようと企んでいると。なぜ見抜けない」


 マールが差し出した水を含んだところで、思いっきりアキラが吹き出す。汚い。


「マジ? マジで、そうなのかよ」

「罠に決まっているだろう。貴様は、セリア殿を魔王といったがな。ユークリウッドこそ魔王。地上をいつでも殲滅できる戦闘力を持った奴なのだ。必殺技は、太陽柱(サンピラー)。まさに、破滅の光だ。なので、妹に手をだそうとしたりするのは絶対に許さんぞ。ちなみに、ユークリウッドを籠絡しようなどと企むとゴキブリとかに変えられる心配があるからオススメしないぞ? ホモは、私も困る。貴様が、どんな手を使おうともすぐに排除するからな。ティアンナ様も悲しまれるし、そのような真似は断じて許さん!」

「いや、俺ノン気だし。ホモって、どうしてそうなるんだよ。俺は、女の子が大好きなんだぞ!」


 太陽柱。滅多に地上で撃てる魔術ではない。

 カオスだ。2人で、いや馬車の中がいたたまれない。

 男が加わると、こうなるのか。ロシナの方がまだいいのかもしれない。

 蟹の魔物と魚の魔物が川沿いに散乱していく。



アキラ、ハゲそう(・∀・)

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