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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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75話 未開の国で、ポンプさんを設置する (ユウタ、モニカ、エリストール、ミミー、ガーランド、ドメル)

今だから、いうと。神話、伝承のなぞりっていう人がいなかったOrz

「ティアンナさまの言う事は、間違いではなかったのか。あれでは、貴様一人いれば何でも解決するというのもうなずける。一体、どうやってそれだけの力を身につけたんだ?」

「毎日のトレーニングを欠かさずに、魔物退治してれば強くなれますよ」


 エリストールの顔には、疑わしい目がある。水路に池に井戸と作って見せたのだが。やり過ぎであったようだ。池を作って見せるのも、魔術のおかげである。筋肉を鍛えるのには、労働が一番だ。ユーウの背が低くなってしまうのではないかと、危惧しているのだが。


ラトスクまでの水路を建設するのもいいだろう。上下水道を施設するのは、一人では厳しいが。道にそって、魔物の死体がそのまま放置されている。ウルフだったり、ウルフだったり、サーベルウルフだったり。ほとんどが、狼系だ。サーベルウルフは、巨大な牙が特徴の重量級だ。狼の中でも群を抜いた牙で、相手を噛み殺すという。

 

 帰り道には、ガーランドたちの姿はなく。帰り着いた先で、兵を率いるアキュと会話している姿があった。見守っていると、会話が済んだようだ。ガーランドがかしこまっていう。


「ユーウ様。帰ってこられたのですか。先ほど、話をしまして兵を借りる事になりました。それで、魔物を回収してくればよろしいのですか」

「そうですね。まずは、ゆっくりしてからにしましょうか。皆で蟹鍋をしましょうよ」

「して、この魔物は食べられるのでしょうか」

「茹でてみれば、いけそうじゃないですか? ま、旅の疲れを落としてさっぱりしてからにしてください。それと、給金なのですが」


 蟹なのだ。美味であるに違いない。異世界がそうであるとは限らないのだが。

 

 そして、給料の話もしておかなければならない。一般的な騎士の年収を500万ゴルと計算すると、5人の仲間で2500万ゴル。ジギスムント軍は、15000の内5000が騎士で10000が随伴歩兵だったりする。普通なら、強力無比の戦力だ。ゴブリンだろうがオークだろうが、数で圧倒してしまえる。それが原因で経済的には困窮するというのもお粗末な話だった。


 魔術もなく、スキルもないような世界でなら勝ち目もない相手だった。

 ガーランドは、そんな軍団に属していてかなりの戦闘を経験している。兵隊を指揮させるなら、うってつけの人材だ。殺すよりも生かして使った方がお得である。女なら、もっとお得だったのだが。残念な事にガーランドは青年だ。中年になれば、間違いなく暑苦しい系統のおっさんになるだろう。


「・・・(なんでやろうなんだろう。可愛い子ならなあ。野郎だったら、生かしておいてもホモにしか発展しないし。ホモだけに、非生産的だというのに。美人で、まともで頭の回る軍師タイプの子が欲しいよな。どうしてか、周りには脳筋かおバカしか集まらないのか。類は友を呼ぶ的な・・・とほほ)」


 金の話をして、男と向き合っていると。


「聞いておられますかな」


 ぼんやりしていたようだ。


「勿論。それで、蟹には気をつけてね」

「わかりました。兵の方は、レベル持ちで統一した方がいいでしょうな」

「統一した方がやりやすそうではあるけれど、戦力に偏りが出そうだね。よく考えて、編成してくださいね」

「覚えておきましょう。それでは」

「待ってください。お風呂入ってくださいね」

「ぬ。それほど臭いますかな」

「獣人に聞いて見たほうがいいんじゃない? ミミーはどう思う?」

「えっと、気になりますけど。人間くさいなってくらいです。獣人の方が体臭のきつい人は、いっぱいいますよ。お風呂に入るって人の方が少ないかもです」


 ミミーが平然といってのけるのに、びっくりした。風呂に入らないのが普通だとか。日本人の感性からするとありえない。脇やら股やらに汗がこびりついて気持ち悪くならないのであろうか。日本の武士が頭を剃り上げていたのも兜が気持ち悪くなるからだ。それこそ、何時間も迷宮に潜っていれば耐え難い物がある。


 ガーランドはしぶしぶといった体で風呂の方向へと歩きだした。あれでは、貴族の令嬢を娶るどころではない。

 風呂を各家庭に常設するには。下水道の整備だとか、そういったところまで面倒を見る必要があるようだ。ついでに、井戸を街中に掘り始めた。

 ミミーが額に汗を浮かべているが、まったく進まない。

 井戸は、20mから30mくらいは掘っていかなければならないから大変だ。


「井戸が必要なのか」

「そりゃそうだよ。だって、魔術なんてほんとチート技だもん」

「チート?」

「ずるいってことだよ。水って普通は、手元に出てきたりなんてしないからね。冒険者が苦労するのも、水の確保が一番だよ。魔術士をパーティーに入れているのは、どうしてだと思う?」


 エルフのち女はよくわかっていないようだ。


「水か」

「そうそう。アイテムボックスかストレージかそういった道具なりインベントリなりのスキルでもないとね。迷宮の中じゃ、魔物でも食わないとやっていけないし。中に入ったら、出てくるのに数日かかったなんてあるんだから。ダンジョンで飯屋も流行ってもおかしくないよ」

「ふむ。とすると、このババさまが作って下さった袋はすごい値段が付きそうだな」

「見せびらかしていると、盗まれると思う」


 袋をエリストールはいじった。盗賊に狙われかねない代物だ。

 井戸を立てているのは、もっぱらモニカとユウタである。


「それは、大変だ。ちなみに、金額にするとどれほどの価値があるのだ?」

「金額ね。それは、値段がつけられないと思うよ。土を運んだりするのに、どれだけの労力が必要になるのかとか。そういう方面では、計り知れない価値があるからねえ。ただ、中にどれだけの物が入るのか。わかっていないと壊れたりするから要注意だよ。入れすぎて、収納鞄が壊れた例があったりするからね。食料とかがぶちまけられたら、すごいことになっちゃう。回収するのは、手間だし。運搬するのに、苦労がかからないのは大きいね」

「ふむ。とすると、奪われないように魔法をかけておいて正解だな」


 モニカがするすると鋼鉄の杭を地中に埋め込んでいく。ボーリング機も真っ青な怪力だ。牛人とのハーフだけに筋力値の上がり方が異常にいい。レベルに不相応な値は、伊達ではないようだ。エリストールもやるが、


「これはどうなっているんだ。地面に打ち込むのに、全く進まないぞ」

「こつがあるんだよ。回転させるようにして、ある程度進んだら引きぬくんだ。中の土を取りながら、掘っていく感じ。先っぽで、土をえぐっていくんだよ。回していくと掘れるから、頑張って」


 獣人たちも手を貸してくれるのだが、井戸の掘りは必ずしも水が採れるとは限らない。深く掘って、水が湧くところまで掘り進めるのが最良だ。汚染を防ぐ意味でも大きな井戸がいいのだが。そうこうしている内にドメルが走ってきた。


「こんにちは、アルブレスト様。こちらで、何をなさっているのですかな」

「井戸ですよ。少ないですから、飲水にも困っているでしょうし。川は、危険なので井戸を増やしましょう」

「川まで行かれたのですか。恐ろしい魔物に出会わなかったですか。クラブと呼ばれる魔物なのですが」

「倒しておきました。あれは、川の方に沢山いるのですか?」


 ドメルは、大きな目をさらに大きくした。


「いや、セリア様の言うとおりだ。こほん。ええと、川は運河につながっておりまして。そこから、どうも蟹の魔物が大量に上陸してくるようなのです。ミッドガルドの方には、幾度となく討伐の要請を出していたのですが。全く聞き入れてもらえず、周囲の村には死者が沢山でております。中には村を捨てて、こちらまで逃げて来た者も。討伐隊を組んでいただけますかな」

「わかりました。早急に対処します。それと、街の住人には毎日のお風呂と手洗い歯磨き。草履か靴を履くこと。猫をとって食べないなどを徹底させてください。これは、絶対です」


 強い口調でいうと。


「わかりました。猫をとって食わないのは、どういう意味があるのでしょう。あれらに食べ物を取られる事もあるのですが」

「ネズミをとってくれるのです。獣人の方は、ネズミを獲りますか?」

「いや、さすがに。猫人は、東の方に国がありますからな。ここは、狼系か犬系がほとんど。私は、熊人の端くれですが・・・ネズミをとったりしませんな」

「でしたら、徹底をお願いします」


 ペストの流行だけは、さけなければならない。病気は、魔術でなんとかできるときもあるが。できないときもある。万能でないのが歯がゆい限りだ。魔術でやれる事といえば、対象の抵抗力を上げたりだとか傷を塞いだりだとか。腕の細胞を増殖させて、再生させるだとか。


 そんな感じだ。特に気になることといえば、細胞を増殖させているのならば、劣化して急激な老化でもむかえるのではないだろうか。というような危惧がある。ゴメスは、腕組みをして秘書の女と話をしだした。


「うまく、掘れないです」


 ミミーは、ちっとも掘れない。なので、手伝うしかない。


「任せておいてよ」


 ぎゅっと力を込めると。するすると地面に潜っていく。潜ったところで、引き抜いた。先の方が水で湿っている。当たりのようだ。


「ええ?」

「多少、硬い所でも力を込めて掘ればなんとかなるよ。今日中に50箇所くらいは、井戸を掘ってポンプを付けたいね」

「あの、ポンプってなんですか」

「良く聞いてくれたよ。これだよ」


 インベントリから取り出したのは、筒だ。腐食しづらいという。フィナルやエリアスと提携する錬金術師ギルドから回ってきた代物だ。それを地面に埋め込んで、その後にポンプを取り付ける。


「これが、ポンプなんですか?」

「そうだよ。これを押すと、中の水が採れるんだ。すごいでしょ」

「すごいです。魔術が使えない私達にとっては、すごいです」


 ミミーは、目をキラキラさせている。ポンプから水をとるには、時間がかかる。


「水が採れるとわかれば、中を拡張しないとね。水が溜まっていないと、採れる量は限られるから」

「そうなんですね。すぐには、水なんて採れないですよね」

「あとは、手掘りで拡張していく。側にいると危ないよ」


 鎧化をして、手で文字通り掘るのだ。


「あの、それって」

「……」


 喋れない。最大の欠点が、意思の疎通ができなくなる事だ。無言で、掘っていくと。

 中は、5分で取り終えた。鎧化を解除して。


「すごい、早さです」

「まあね。鎧になると、会話ができないのが問題なんだよね…」

「そうなんですか。この後は、どうすればいいんですか?」

「石で固めるのは、獣人の人に任せようかな。魔術で固めておくけど、やっぱり石で強固に補強しておくのはありだよ」


 石で壁を覆ってしまうのがいい。井戸づくりは、奥が深い。つるべ式の井戸もいいだろう。中を魔術でガラス状にしておくのもいい。底は、駄目だが。鋼鉄の管が作れればいい。けれど、それを作る製鉄所を作るのも時間がかかるのだ。一日で出来たりはしない。作ろうにも、それらの部品をどうやってつくるのか。図面を見て覚えているだけでは、作れやしない。

  

 なぜかといえば、企業秘密というのがある。なんでもかんでも晒しているのは、阿呆だ。

 次に取り掛かろうとするところで、


「ううっ。手伝ってくれ」


 エリストールが、根を上げた。


「重たいかな。やっぱり」

「それもあるが、こっちのは進まなくなったんだが? 何かあるのか?」

「貸してみて」


 ミミーが周囲に集まっている獣人にあれこれお願いをしている間に、杭を地面に埋めていく。と、


「この感触、石だね。ここは、諦めようか」

「なんだって? 石か。道理で硬いはずだ。ユークリウッドでも掘れないのか?」


 カチンときた。


「掘れるよ」


 石を砕けよとばかりに突き刺して回して、掘っていく。人間ではとても無理な重量の棒が、地面に潜っていくと。ちょうどいいところまで掘って、先を引き抜く。


「大当たりだ」

「おおっ。すると、良い物なのか?」

「多分。地下水の溜まっている場所かもしれないね。見えないからなんとも言えないけれど」

「掘らずともよいのか?」

「そうだね。すぐにでも飲水が採れるといいんだけどね。水質とか調べないと」


 地下水が汚染されているようだと、大変な事だ。まずないであろうが。掘った場所に、管を埋めていく。管、それだけでも大変な価格だ。錬金術師ギルドは、ボロ儲けである。それを回収しなければならない。安く融通してもらうには、ボッタクリを互いに止める事である。だから、エリアスかフィナルを通さないとならない。


 前者だと、魔術師ギルドとの縁で後者だと異端審問との絡みで。

 取り付けた手押し式のポンプは、透明な水を吐き出す。

 手を洗うと、手に水をためてそのまま口に含む。


「どうだ?」

「うーん、わからないなあ。毒が効かないから、かな。美味しいとは思う。カルキがないし)

「カルキ?」

「ああ」


 わからないのであろう。説明が必要だ。


「よし。貴様、私に惚れていいぞっ」

「なんでそうなるの!」


 訳がわからない。エリストールは、仁王立ちしていう。

 手元に視線を移すと。

 金色のヒヨコが手の水を舐めているが。あてにならない。このヒヨコも毒なんて効きそうにない類だからだ。

 何時の間にか、周囲には獣人たちが興奮した表情で手桶を持って立っていた。



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