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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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69話 森妖精さんは積極的 (ユウタ、エリストール、ロメル)

 学校か。ミッドガルドには、日本人が転移して以来ずっと増えている。

 ユウタは、考えた。教育こそが人を人たらしめていると。

 けれども、己は勉強が好きではない。学校を建てて、富国強兵を図るのはいいが。

 いみじくも、日本が維新を成し遂げたそれをまんまパクった訳だ。

 具体的には、耕作地の確保。住居の確保。兵力の確保。治安の確保。食料の確保。

 そこから、教育へとつなげていく。狼国の寒さは、一段と冷え込みが増している。

 エリストールと一緒に座っていると。


「くしゅんっ」

「大丈夫?」

「くっ。これしきの寒さで、病にかかってしまうとはっ。鼻水が止まらない。頭が火照ってきた。どこか寝る場所はないだろうか。寒気がする」

「・・・(くくく、馬鹿め。その程度の風邪など想定済みよ。薬の開発も万事順調だ。NAISEIマスターだけにな!)」


 つっと差し出す紙袋。そこには、薬が入っている。


「これは?」

「えへんっ。君の病気を治す薬さ」

「ば、馬鹿な。私の病を想定していただと。ありえんっ。どうせ、この薬は紛い物だ。薬なんて物は、非常に高価な代物なのだぞ? ティアンナ様は、薬学の心得もあるが・・・。はっ、まさか。これは媚薬かっ」


 今度は、ハリセンで叩く番だった。このピンク髪をした女森妖精は、どこかおかしい。


「飲んでみてよ」


 変なセリフはスルーして、水をコップに入れて差し出す。

 滑らかなガラスのコップを見て、エリストールは目を見開く。

 何か、気になるようだ。


「こ、これはなんという透明度なのだ。まるで、宝石のようだ。一体、どこで作られたんだ。こんな物を見せびらかして、私を懐柔しようなどとっ。恥を知れっ」


 といいながら、水と一緒に薬を飲む。すると、


「ふっふっふ。どうやら、でまかせのようだな。薬などといって、この病が治るなどという事は・・・。そ、そんな・・・馬鹿な。急に、頭の痛みが治まってくるだとっ。信じられないっ。一体どのようにして、治したというのだ。まさか、こっそり魔法をかけているのではあるまいな」

「まさか。薬の力だよ。良かったね」

「くっ、治ってしまった」


 どういうつもりか。エリストールは、配給の仕事もパンを売る仕事も好きではないようだ。

 仮病ではないのだろうが。病気を理由に休もうという魂胆が見え透いていた。

 そうはいかない。


「どうやら、君には奴隷だという事をしらしめる必要があるのかなあ」

「なっ。なんだと・・・」


 インベントリから取り出したのは、ヒモ水着ではなくエプロンだ。


「これをコートの下に着てもらおうかなあ」

「な、なんという破廉恥な。しかし、そんなものは大好物・・・じゃない。もっとマシな服を着させてくれ。これではまた病にかかってしまう」

「それもそうだ。それじゃあ、着替えてきていいよ」


 エリストールは、コートの下にえっちな水着しか着ていなかった。

 風邪を引かない方が不思議だろう。彼女の胸は、圧倒的な破壊力だった。

 丸いスイカが乗っているような。たゆんたゆんである。少しばかり、異常だ。

 森妖精(エルフ)といえば、そろって貧乳というのが常識であった。そして、スタイルがいいというような。

 持っていた常識が、今まさに破壊されつつある。


 目の前の行列がある。

 なのに、パンは売れない。金がないからだ。

 金を稼げる獣人を育てる必要がある。

 その為には、常識を変える。時代についてこられるように。

 そんな教育を施すには、教師が必要だ。

 場所は、青空の元でもなんでもいいだろう。ドメルから借りた建物に入っていくエリストールの姿を見送りながら、配給を続ける。

 金は、天下の回り物という。しかし、金を回すには金持ちが使わなければならない。


 金。アルブレスト家の領土になっているシャルロッテンブルクから上がってくる税は、莫大だ。

 それだけでも、小さな国なら余裕で賄えるほどに。

 一体、誰が想像しただろうか。ただの魔物が跋扈する荒れ地が穀倉地帯に生まれ変わるなどと。


 森の中にある管理地も。ペダ村からペダ市になっている場所は、扱いづらい場所だとしても。

 奴隷を使った奴隷経済で回しているとしても。教育を施して、奴隷から卒業していく者が出だした。

 そのように、実験をしている。結果が、多少変わっているが。


 目の前で配給にやってくる人間に、スープを注いでやると。

 一つの事に気がついた。獣人たちは、そのほとんどが裸足だ。

 これは、非常に衛生上よくない。黒死病と呼ばれた病の事を知らないのだろうか。


「これは大変だ」


 配給をしている場合ではない。大急ぎで、草履を製造だ。

 いきなり、路上で草履を作っていく。飯を食った人間には、草履を編んでもらう事からだ。

 裸足は、いけない。病気にかかるのだから。風呂に入るのもそうだが。

 飯を食って風呂に入るのか、風呂に入って飯を食うのか自由だけれども。


 立て札を勝手に立てる。ヒヨコがぴょんと、乗った。倒れはしない。

 が、手で捕まえようとすると飛んで逃げまわる。素早い。

 背後から、声がする。


「一体どういう事だ」


 エリストールだ。遠くにはロメルの姿もある。

 立て札を見ながら。


「どうもこうもないよ。その通りだよ」

「裸足で、歩くべからず。か。金がないと、靴も買えないだろう。靴がなければ、裸足で歩くしかないではないか。まさか、歩くなというのか?」

「だから、草履の作り方から教えているんじゃないか」

「ふむ。だからといって、その草で編んだ物を履くとは限らないぞ」

「その為の強制じゃないか。靴を履かないと足の裏を怪我したりするし、よくないんだよ」

「それが、わかればいいがな。そうか。そういう事か。なんたる見識」


 ぞわぞわとする悪寒。風邪にかかってしまったかのように。

 己は、そんなに上等なものではない。かなりの馬鹿だ。

 エリストールは、何か勘違いしているようだ。

 わかっているのかわかっていないのかはっきりしない少女だ。

 年齢がわからないが、少女の姿をしているので強弁するしかない。

 いきなり、靴を用意しろといってもできない。ならばどうするのか。


 今すぐにでも、それを用意しなければならないのなら。

 草履は、非常に優秀な靴になる。皮で出来た靴は、高価だ。

 未だに家庭内手工業から抜け出せないでいるミッドガルド。

 その中で、アルブレスト領では、工場にも手を伸ばした。


 もちろん、そこで作っているのは量産可能な代物である。

 富の源泉を作るにしても、現代知識を応用すればいくらでも稼げるという見本だ。

 その工場を動かすのも、日本人が教育したミッドガルド人だ。

 日本人が、足りない。思ったより、増えないのが問題になっている。中々上手くはいかない。


「これを履けばいいんですかな」

「そうです。自分の足の大きさに合わせて作ってください。あと、もしかして靴屋が困るとかありますか」


 相対するのは、中年の獣人だ。名も知らぬ獣人は、


「そりゃあ、ありますけど。靴屋は、皮製ですよ。ラトスクには、何件かあって、・・・別にこれが元で困るってことはないと思いますがね」

「ありがとう」


 獣人は、かなりの時間をかけて草履を編んだ。不器用なようだ。

 1人が教えて、そのまた他の人間に教えていくという風に。

 履かないようではこまる。裸足が元でネズミを介した病気やらにかかるのだから。

 絶対に、靴は必要だ。黒死病を防ぐにも、病気にかからないためにも。

 森妖精はどうしているのか。隣でお椀とスプーンを洗っている少女の方を向くと。 


「エルフって、靴は履くの?」

「馬鹿にするな。靴くらい自分で作れる。大体、森の民は自前で何でも出来なければ生きていけないぞ。魔物を狩るだとか。最近、人間が森に入ってくるようになってティアンナ様が成敗しているくらいだ。狩りも生産もエルフなら得意だ。時間は、腐るほどあるからな」

「なるほど。エリストールが履いている靴って、立派だよね」

「むっ。よく気がついたな。これは、鹿の皮をなめして作った代物だ。人間ごときが真似できるとおもうなよっ。はっ、まさか」


 ようやく気がついたようだ。

 ぽんっと肩に手を乗せると前かがみになりながら。


「教えてあげられるよね」

「下等な獣人どもに、か? むむ。しかし、だなあ」

「奴隷がご主人さまの言うことを聞けないなんて、ありえないよね。もちろん、おっけーだよね。ちゃんとしてくれたら、美味しいのを用意しておくよ」

「いや、しかし。悪くないが、もっとこう肉体的な接触でのご褒美が・・・いや、何でもない」


 聞こえているがスルーだ。セックスなど、早すぎる。

 ロシナは、異常者だという事にでもしておかなければいけない。

 誰でも彼でもやっているようでは、相手に見放されてしまうだろうに。

 相手だって、選ぶ権利があるのだ。貴族だと、そういうのも難しいらしいが。

 男は、比較的自由だ。正妻さえ、しっかりとした身分の女性を捕まえれば。

 後は、経済力の問題である。


 皮は、ワニの皮が腐るほどある。リザードマンの皮とか。

 DDは、嫌な気持ちになるかもしれないが。そこは、見逃してもらうしかない。

 エリストールの訴えかけるような瞳も、スルーするしかない。

 セックスは、やってしまうと猿になってしまったかのようになってしまうだろう。

 だから、無理なのだ。


「・・・(瞳で会話するんじゃねえ。我慢できなくなったら、どうするんだよ)」


 股間は、正直者で。我慢が効かなくなったら、襲いかねない。

 ワニ皮を取り出すと、エリストールが指導する様を眺める。

 草履も順調に出来上がっているようだ。最初は難しいが。

 獣人は足がまちまちの大きさなので、自分で作ってもらうしかない。


 兵士の募集を任せていたロメルが、隣に座る。と、


「なあ、アルブレスト卿。兵士をアキュって野郎に任せてもいいのか?」

「いいよ。それとも、君がするかい」

「えっ。いいのか? 俺がやっても」

「その代わり、募集をする人がいないと駄目だよ。定員は、ラトスクの人口五万の5パーセントだと計算するか3パーセントで計算するか。1パーセントで500人かな。どんなくらいで集まりました?」


 ロメルがおろおろしだした。ちょっと、可愛い。


「それが、その。パーセントってのがわかんねえけど。ご、・・・」

「ご?」

「5000人超えた・・・んですが」

「あらら」


 怒られると思ったようだ。しかし、集まったのなら有効活用しないといけない。

 が、5000は多すぎる。10パーセントではないか。それだけ仕事にあぶれているとも言える。

 

「しょうがないですね。5000人の内の2500人は、草履と靴作りに回しましょう。500人ほど、希望者を選んで魔物と戦う兵士に。それから、2000人は訓練と耕作に回しましょうか。それで、その総指揮はロメルさんがとってください。兵士の指揮はアキュさんにお願いするとして。靴屋に手配をお願いします。何かあれば、ドメルさんか僕に相談してくださいね」

「靴屋か。わかった。あ、あ。それで、いいのか?」

「何か、問題でも?」

「俺達が、反乱を起こしたりだとか。そんな事は考えに入っていないみたいだ」


 ロメルは、真摯な眼差しだ。


「ええ。問題ありませんよ。反乱を起こされても、鎮圧するのは簡単です。それに、皆殺しにするのはもっと簡単ですし。反乱を起こして、困るのは多分この町の獣人たちですよ。それでも反乱を起こす理と利があるなら、話をしてくれるとありがたいです。もっとも、そういう事が起きたら放置すると思いますけど」

「なるほどな。俺も頭がいいほうじゃねえけど、その放置するっていうのはどうするんだ」


 兵糧攻めだ。恐ろしい効果を発揮する。文献でしか読んだことはないが、凄惨であろう。

 間違いない。飢餓とは、恐ろしいものなのだ。飽食の世界に生まれた人間にわかりはしないが。


「それは、ですね。逆に、放っておけばこの町はすにでも深刻な食料不足で内輪揉めを起こすでしょう。ということなんですよ。凄惨なのは、食料がなくて殺しあうという話なのはどこも一緒ですから」

「・・・お前、子供なのに頭がいいんだな」


 頭はよくないです。といっても聞きそうにない。ロメルは、近視眼的な戦略しか持ちあわせていないようだ。席を立つと、そのまま門の方向へと歩きだした。

 パンは、焼いても金が回る方向には走りださない。

 貨幣経済を成り立たせる以前に、貧乏だとインフレーションを起こすしかないのだが。

 その貨幣の鋳造から始めねばならないような有り様である。

 獣人に作り方を指導していたエリストールが、


「な、なあ。私は、いつまでこれを教えればいいんだっ。足がつってきたぞ」

「胸がつかえて、座るのに、すごく不便そうですね」


 すっと立ち上がると。胸をずいっと突き出してくる。


「大体、なんだ。この胸につける装着具は、胸が押されて痛いのだが」

「えっと、ブラジャーなんですけど。知りませんか」

「ブラじゃ? これの名前か。一体どうして、こんな物が必要なんだ。きついし。胸が熱くなってきたぞ」

 

 モニカを超えるのか。デカすぎる。

 色っぽいピンクの下着だ。ブラジャーは、セリア用に作った代物ではない。

 モニカ用に作った代物で、学校の本を見てコルトの商会で生産している。

 中々に評判がいい。胸が崩れるのは、筋肉の衰えるのが原因だ。

 歳をとって、崩れたおっぱいを見るのは忍びない。

 貴族のご婦人方にも、評判のいい代物である。


「つけてないと。エリストールの胸がだらんだらんになっちゃうよ」

「そんな訳ないぞ。ティアンナ様もつけていない」


 どうやら、彼女にも用意してやる必要がある。サイズを正確に測る必要があるが。


「他のエルフとかもエリストールみたいな胸をしているの?」

「うっ。聞くな。私が、こんな胸をしているせいで婚約者もいなくて貰い手もいなくて森で爪弾きにあって。うんこ投げられたり、郵便受けに動物の死体を入れられたり・・・していないんだからなっ。ティアンナ様のお付きとは名ばかりの所ばらいでもないんだぞっ。・・・言ってて、悲しくなってきた」

「それは、なんといっていいか。酷いね」

「そうだろっ。だったら、貰ってくれ!」

「・・・奴隷だもん。無理」


 泣きそうになっているピンク髪の少女の頭を撫でてやると。


「そうだな。そうだよな」

「予約しとくよ。その代わり、逃げられると思うなよ?」

「っ・・・」


 エリストールが抱きついた。

 何かの拍子で、入ってしまったらどうするつもりなのか。下半身は、煮えたぎっている。 

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