67話 最強厨は、ロボットが大好き(ユウタ、セリア、ロシナ、エリアス、フィナル、ティアンナ、エリストール、スカハサ、コー、ガーフ)
アルルたちが居なくなった。すると、ぼろぼろになったロシナが寄ってくる。
散々セリアに玩具にされて、土まみれ。装備は、ぼこぼこに破壊されている。
少し、可哀想になるというのが人情というものだろう。
そのロシナ。ロボットには並々ならぬ興味と執着があるようだ。
男は、ロボットが大好き。ユウタもその余人同様だが。
「なあ、なあ。俺もロボが欲しいんだが? ロボに乗りたい。乗らせてくれよ」
「うーん。機体の整備にどれだけのコストがかかるのかわかっていないよね。ちなみに、今乗っている機体だけど。ノーメンテだよ。【人形使い】の能力で外装と内装を弄ってるけど。そもそも、ロボットは見せかけだし。生身で戦う方が、強いもん。セリアもそうだし、でかくなるとよけきれないから。すぐ死ぬと思うよ。虚仮威しに使いたいってのはわかるけどさ」
「なんだそりゃ。ってことは、セリアもあっちの方が強いのか?」
指で指した方向には、歩く巨獣がいた。硬質なフォルムが特徴的だ。
まんま4足歩行のロボットに近い。
ロシナは、ロボットに興味があるようだ。
「あれの次の方が強いよ。そもそもデカくなる事、それ自体が負けフラグって言われてるんだから」
「ロボ物だとそうだけどよお」
ロボット物は、大体そうだ。巨大なのは大概が、かませ犬。
的がでかいだけに、当たりまくりである。速度が一緒なら、違うのだろうが。
小さいほど細かい動きが可能で、耐久力に問題がなければ小さい方がいいに決まっている。
そして、小さい方が高機動で火力もあるとなればそちらを選ぶ人間も多いのではないだろうか。
といっても、ゲームにすると。多少大きくて、多少ノロマでも弾を躱せるユニットで装甲厚めの機体はそれはそれで強い。小さい機体は装甲が薄くて、高機動というのが設定になるものだからだ。そして、小型機が蚊蜻蛉のように一撃死するなんていうと。弱かったりする。どうやっても被弾するとかいうオチがついたりして。ノロマだといっても固くて重い機体が拡散型レーザーやら捕獲兵器を積んでいたりすると、なお劣勢になる。
ちなみに、セリアは装甲が厚いのに高機動で高火力という。
ゲームなら、ラスボスでしかないような性能だ。
巨獣のなりは日本の家をも凌ぐ大きさだ。もっとでかくなることも可能だったりする。
滅多に変身しないので、レアな光景だ。
「うーん。メンテしないと壊れると思うけど、あと収納場所に困るよ。ロシナは、アイテムボックスしか持ってないでしょ」
「うっ。移動は、乗って歩いてりゃいいんじゃね」
「整備は、誰がするの? 後、移動する際にはレビテーションなり浮遊系の魔術を使ったりしないと。地面が破壊されて、荒れ地ができあがるよ。それじゃ、ここで使わせられないし。実家に置いとくにしても、スペースが問題だよ。アニメのように重量が全く地面に影響したいとかいう風にはならないからね」
「うぐっ。それでもロボットはロマンだろっ。細かい事を気にしてたら、負けじゃね」
ロシナは食い下がる。
が、
「だから、さ。せめて、浮遊系の魔術を収めないと。魔導士が使うアーマーで十分じゃない。大きいとかっこ良く見えるけど。実際に運用するとなると、使えないよ。アスファルトもないから、踏み固められた地盤とか耕すの大変だよ」
「うー。しょうがねえ、魔術師のクラスを鍛えるしかねえのか」
ロシナは、魔術を使うのが苦手だ。当然、魔術師のクラスも鍛えていない。
脳筋だ。
「そう。それなら、考えるけど」
「ほんとだな。ひゃっほーい」
ぬか喜びにならなければいいのだが。現実を見れば、人サイズの強化アーマーで十分だ。
鎧に各種機能を取り付けたような。そんなロボットっぽいなにかで十分である。
ちなみに、【王国の剣】の機能は優秀だ。しかし、反逆を許さない制限がついている。
強制解除だとか。一度、それで戦ってしまえば湧き上がる全能感には逆らえないだろう。
ある意味、酒やタバコといった依存性のあるスキルだ。
もう一度変身したい。と思わせれば、立派な木偶の出来上がりだ。
ロシナは、アイテムボックスから飲み物を取り出した。グラスに液体を入れる。
「ちぇっ。飲んでないとやってられないぜ」
セリアは、倒れて動かなくなった兵士たちを尻目に戻っていく。
装備が破裂したとかいう事がないように伸縮自在の装備だ。大分破壊されているけれども。
酒なのか。ロシナからは、アルコールのような匂いが漂う。
「ちょっと、それ臭うんだけど」
「エリアスも一杯やっとくか」
「子供のうちから飲酒なんて、不良の始まりよね。信じられないわよ」
たまに欲しくなる。酒は、いくら飲んでも酔わない体質なのだ。
ついでに、毒も酒も小便としてすぐに排出してしまうのか。二日酔いもない。
恐るべきは、ユーウの身体機能だろう。とてもではないが、己には真似できないような性能だ。
「ふっ。終わった。いい匂いがするな。一杯もらおう」
「駄目だ。ロシナ、飲ませたら駄目だよ」
「だってよ」
「むう。しょうがないので、父上に会いにいく。ユーウも来るか?」
「いや、僕はすることがあるから」
「行ったほうが、いいんじゃね。生のフェンリル見る機会なんて、滅多にないぜ?」
「嫌な予感しかしないよ。そのまま、バトルとかになっちゃったらどうするの。まずは、色々と誠意を見せないと。行って、肉塊とか冗談じゃないよ。僕だって、不意を疲れたら死ぬかもしれないし」
ロシナは人事のようにいう。実際、人事だが。酔っぱらいの相手をしてられない。
「けどよお。ユーウって、頭割られてもなんか死なないイメージがあるんだけどな。死んだことねえんだったっけ」
「いや、死ぬでしょ。それ、人間じゃないじゃない。普通、頭やられたら死ぬよ」
世の中には、ヘッドショットを貰っても即死しない人間がいるという。
冗談としか思えないが。どたまを撃ちぬかれて、なお生きてるならゴル●さんもびっくりだろうに。
仮に、生きていたとしても半身不随だとかいう風になるはずで。
その場で、意識を失うようなダメージを貰った場合にはまず回復不能だ。
魔法でもない限りは。
残念そうな声で、セリアがいう。
「行かないのか。母さまも会いたいと、言っていたのだがな。すごく残念がると思うぞ」
「あはは。そのうちね」
怖いのだ。セリアですら、恐るべき戦闘力だというのに。成長したフェンリルなどと相対したいとは思わない。セリアがどのような事を言っているのか知らないので、悪い展開しか予想できない。最悪ではなくても牢屋に閉じ込められるだとか、土下座するだとか。そんな羽目になる予感がしてしょうがないのだ。
だから。
「じゃあ。私が付いてってあげるわ。ちょっと興味があるし。このへたれは置いておいて観光を楽しませてもらうわよ」
「ふむ」
セリアは腕組みをしている。フィナルは、汗だくだ。
「わ、わたくしもついて参ります。セリアさんのお父様には興味がありますし。何より、色々と話をしなければならない事がございますし。護衛は、連れて行ってもよろしいですの?」
「それは、かまわないと思う。むしろ、連れていない方が不自然だろう」
エリアスとフィナルが付いていくという。色々と仕事のある人間だ。珍しい事に2人が同調している。
「よりどりみどりだなあ、おい」
「あはは。冗談でも、やめて」
ロシナは、どんどん飲んでいる。飲酒は20歳から、というような日本の法律は意味がなかった。
日本での法律なので、ミッドガルドやウォルフガルドで適用されないけれども。
幼児が飲んでいるのは、慣習に外れているのではないのか。
それと、エリアスたちは伯爵家令嬢でシグルス等は、公爵家令嬢だ。複数と結婚できるとしても、身分の有る人間と結婚するのは難しいのではないか。セリアなどはウォルフガルドの王族なのだし。未来では、奴隷にしたこともあったが。今は、そうではない。
ちょっと仲のいい間柄でしかない。結婚するには、何よりも障害が多すぎる。
「あの美人を紹介してくれよ」
「えっと、どの子?」
「あの、青い髪をした子だよ。すげー美人だろ、お近づきになりてーよ」
「ああ、いいけど」
ティアンナに手招きをすると。彼女は、やってきて。
「は、初めまして。俺の名前は・・・」
「知ってる。ロシナンテ。あいもかわらず、スケベ顔。それがむかつく」
と、いきなり張り倒された。ロシナが地面とキスした。
エリストールがおろおろしている。
ロシナは、地面に倒れて顔を上にあげて。困惑しているようだ。
「えっ、あの、俺何かしました?」
「その顔がむかつく」
「・・・(まじっすか。どうしたの。ティアンナさん、激おこぷんぷん? やべーよ)」
青い髪を乱れさせることなく。倒れたロシナに、蹴りを見舞っていく。セリアたちの姿はない。
ロシナの配下の目があるというのに。ロシナが、己に声を向けて。
「ぶっ、ぶへっ。た、助けて」
「バリアを張ればいいじゃない」
「それが、なんでか張れないんだよ」
すると、ロシナを引き起こす。と、襟元の鎧を掴む。紙でも掴むようにして、指がめり込んだ。
ティアンナは、ロシナの顔を見ながら。
「こいつ、変態だから。今の内に教育しておくのが重要。女の敵」
「ロシナ、何かしたの?」
「いや、してねーし。そんなのただの言いがかりだって。助けてくれ」
左右を見るが、周囲も固まっている。ロシナは、仮にも赤騎士団きっての使い手なのだ。
セリアに度肝を抜かれているというのもあるだろうが。
ティアンナは、平手打ちをかましながら。
「すぐ、女に手を出す」
「ほんとに?」
「いや、健全な男子だから。するだろ。普通、女の子に興味あったらなあ。するよな?」
ロシナは、泣き顔だ。しかし、いたしたら子供が生まれるのではないか。避妊とかに気を使うようなタイプには見えない。ロシナは、生が最高だとかいいそうなタイプである。
出しながら、「ふう。いっぱい出ちまったぜ」というのが安々と思い浮かべられるので。
「うーん、どうだろう。ロシナの歳でやりまくっているのって。責任とれるんだよね?」
「・・・」
黙るとは。どういうつもりなのか。援護も無駄だ。という。
「こういう奴」
「若の行状をしれば、大変な事になると。私は、申しましたよ。止めた方がいいと。何度も何度も。可愛い子がいるからといって、すぐにするのはいけませんと。バレたのでは、仕方がない事。どうぞ、折檻なさってください」
ガーフがいた。どうやら、獣人の子にでも手をつけたのか。手が早すぎる。
あちらも早いのかもしれない。早熟にも程があるだろうに。ロシナはJSだとかそんな歳なのに。
しかし、ロシナはやりまくりのようだ。そんな子にティアンナが手を下す。
アイアンクローだ。
「どこで、バレたん。見てるの居なかったはずなのに! バリア。あ、あれ? ひぎぃ」
「バリアは、無駄。それは、種が割れている」
さっきから張ろうとしていたようだ。
バリア。ロシナのバリアは全周囲型であるというのに。何もないかのようだ。
「どういう事」
「どうやっても、通気孔が必要。なら、そこから攻撃するといい。ロシナは、耐久力があるように見えてそんなにないから」
と、女が寄ってくる。ラフな皮鎧に長い槍を携帯して。鎧は、赤く染め上げられている。黒髪の美女だ。
「ちょっと、あんた。ウチの旦那になんて事してくれんだい。そういう事なら、ウチの方でやっとくよ。ここじゃ、外聞が悪い。任せてもらえないかい」
「いい」
ぱっと手を離す。乗り出してきたのは、ロシナの妻になった気でいるスカハサだ。
名実ともに、赤騎士団で内縁の妻というような立場にある。吸血姫だとか、水色の髪をしたスライムもどきまでともなっていた。元気ハツラツな人だ。槍を取っては天下無双という。
とんがり頭の手下は、後ろでぶすっとしていた。
「詳しく、話を聞かせてもらおうじゃないのさ。コー、頼むよ」
コーと呼ばれた金髪のゴスロリ少女に、顔面が変形したロシナが連れて行かれる。
スライム状の物体に拘束される。と、悲鳴を上げた。
「ひぃっ。ちょ、ちょとまってくれって。おい、ユーウも見てないで助けてくれっ。いいじゃねえか、男の性なんだよ。出しちゃうものを溜めてたら、身体に悪いだろ!」
「うーん。色々、思うところはあるけど。やることやっちゃったなら責任と説明が必要だよ。まさか、その後で何も起きないなんて考えてたんじゃないよね」
もはや、手遅れだ。避妊具のない世界なのだ。魔術で避妊できるとか。そういう事はないので。
当然ながら、何発もいたしているようだとできる。それが普通だ。
たまに、何発やってもできないとかいう男もいるかもしれないが。そういうのを種無しという。
悲しいが、子孫はできないだろう。
ロシナを見送りながら、ティアンナが側にきた。
「ロシナは、相変わらず。屑」
「色々、知っているみたいだね」
「手を出すのも早いけど、養えないのに手を出す。顔がいいだけに始末に負えない。養育費だって支払えない」
養育費を払えないのは、弁護のしようがない。紛れも無い屑、と認定されてしょうがない。
辛辣だった。ロシナにロボットを与えても、すぐに壊してしまうだろう。
その上、家族すら養えないに違いない。
給料の遅配だとか、領主としてあり得ない顛末が待っていそうだ。
ロシナのスキルを再現して、バリア装備のロボットが技術で応用できるのなら、強力ではある。
何しろ、全周囲だ。空間を削り取るタイプや吸収型とも違う扱いができる。
ちなみに、ロボットに削るタイプや吸収、対消滅タイプは危険だ。
それに、足元が弱点になる。地雷で、余裕でした。では、最強に程遠い。
求めるのは、最強。なのだ。
ロシナのスキルは、ユニーク物で売り買いができない。コモン物ならレクチャー屋でなんとかなる。
件のレクチャー屋だが、他所の国にはないシステムだ。
ラトスクでも、雪国ハイデルベルクでもなかった。もちろん、アルカディアでもだ。
何でもスキルを売り買いできるのなら、好都合なのだが。戦闘向きのスキルを持っていても、生産職が好きだという人間もいる。鍛えられたスキルは成長を見せるので、あるが。
売ると、熟練度が0に戻る。なので、できることなら何でも持っていた方が都合が良い。
ロシナの率いていた兵士たちが去っていくと。長い行列とユウタたちだけが残された。
「どうするの」
ティアンナとエリストールは、指示を待っている。
セリアに倒された兵士たちが転がっているが。
「一旦、冒険者ギルドに戻ろうか」
「ん。お腹が空いた」
「そうだね」
お腹が空けば、膨らませねばならない。民衆を食わせてこその王。
現状知らないだとかいうのでは務まらない。消えてしまったアルルとシグルスは一向に帰ってこない。
待つのも限界だ。気が、長い方ではないのだ。
穀物の生産と、獣人たちの訓練をしなければならない。
敵意に満ちた獣人たちをどのようにして説き伏せればいいのか。
狼国は、驚くほどに貧しい。まずは、パンだ。
某王妃を反面教師にして、パンで釣ることにした。
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