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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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66話 侵攻した土地から撤退するのって、情けないですよね。でも、無能な人たちには(ユウタ、セリア、アルル、シグルス、ティアンナ、エリストール、フィナル、エリアス、ロシナ、ラルフ、ドッド、エメラルダ)

 狩りの途中だというのに。


 アルルに呼び出された。寒い。

 しょうがないとはいえ、やってきた場所はだだっ広い平原であった。

 居並ぶのは、ジギスムント家が指揮していた将兵だ。

 ロシナとシグルスの姿がある。と、


「よく来たな。早速で悪いが、こやつらと戦ってもらう。武装は、無制限だ。ただし、殺すな。蘇生が面倒だ」


 見れば、相手は大の大人だ。騎士と勇者らしい装備をしている。

 更には、魔術師が。


「このような子供と!? 馬鹿にしておられるのか!」

「…勝てば我々の意見を聞き入れて貰えるのでしょうな」

「お前たちの言うことも一理ある。優れた者が支配をすることで、よりよい社会を作り上げられる、だったか。しかし、失敗しているではないか。奴隷を売るだけの政策で、一体何を為したというのだ」

「ですから、その失政は商人どもあるのでして、これからは違います」


 どの口がそのような言葉を吐けるのか。不思議でしょうがない。


「まあよい。勝てば、よかろう。お前たちの血で勝ち取った領土を自分たちで切り盛りして何が悪いのか。というのもわからなくは、ないのだ。ただ、な。セリアとユークリウッド。こやつらとお前たちを天秤にかけた時、2人に天秤が傾く。それを納得させるだけの力を見せてもらわねば、な」

「このような子供と勝負など…業腹ですが。承りました」


 どうして勝負をしなければならないのか。時間の無駄だ。


「どうなってるの」

「俺が聞きてえ。つか、アル様もロボット持ってたんだな」


 ロシナの横に並ぶのは、フィナル、エリアスだ。

 反対側にセリア、アルル、シグルスと。


「ふふん。驚いたかユークリウッド。これぞ、アームドデュランダルよ。形状も自由自在。巨大なこいつは転移させて呼び出せる神機なのだ。鍵が必要だが、お前が持って来てくれたおかげで戦力的には私とシグルスで余裕なのだ。こいつらを踏みつぶして土にしてやってもいいのだが、シグルスの家門でもあるのでなあ。もうちょっと根性を見せて欲しかったのだ」


 巨人だ。白く輝く鎧を巨大化させたという。そんな巨大な騎士というイメージ。

 側にいるシグルスは、


「アル様。滅多なことでそれを使っては、お父上に叱られますよ。自重してください」

「つまらんのだ。お前もブリュンヒルデを使えばいいではないか」

「生身の人間に使うのは、どうかと。騎士道に反しますよ」


 シグルスも持っているようだ。


「俺も欲しいんだが、なあ」

「ロシナが持ったら、バリアを装備しちゃって無敵状態じゃないか」

「バリア装備なんてごろごろいるぜ? ロボットの世界だとな。だいたい、小回りが効かなくてやられる役じゃないか。機体がバリアを張れるわけじゃねえから、やられたらコックピット周りしかのこらねえとか・・・。ギャグになっちまうよ」

「セリアに鹵獲した機体を回してもらう? すごい金を取られそうだけど」


 ロシナは、期待した目をセリアに向けるが。


「断る。なんで、私がロシナに巨人をやらねばならないのだ。どうせ、整備もできないだろうし宝の持ち腐れだ」

「うぐっ。ちなみに、おいくらで譲ってくれるんだ」

「最低でも200億ゴルだな」


 ぼったくり価格だった。あまりの強欲ぶりに、暴食から強欲に変貌したのかと思うほどだ。

 そういえば、譲ってもらったということなのか。ユウタが使用しているロボットは。


「ユーウには使わせてんだろ。ずりーよ」

「夫に使わせるのは、妻の度量だ。私の財布を管理しているのは、こいつだからな」

「あー、なるほどね。って、そういやそうだな。けど、いいのかよ」

「小遣い制度になっているのが、悲しいがな。もう少しくれないと、チビたちの仕送りもままならない」


 弟たちの事だろう。セリアには、弟が沢山いるようだ。とはいえ。

 セリアは、駄目人間だ。主に、財布に関しては。迷宮に潜るのに、装備を整える金がないだとか。

 そんなことがしょっちゅうあった。

 闘技場で、勝った賞金がどこかに消えてしまうので。しょうがなくやり始めたら。ロシナは、憮然とした様子だ。


「国が買えるくらいは、稼いでいるんだろ。そんなけち臭いこと言わないでよお」

「だから、さ。買ったんだよ」

「へっ。まさか、そういうことか」


 領土を任せても、やるとは言っていない。

 だから、どうにかするには金だ。結局、金がものをいう。

 情けないが、言葉だけで相手を説得するには力がない。

 金は、力でもある。という事だ。シグルスは、いう。


「財政は火の車。我が父ながら、まことに情けない。サムライを真似て、切腹させるべきではないかと思う次第ですが。父でなければ斬首に処したいところです」

「滅多なことをいわないほうが」


 シグルスが加わってきた。フィナルは、終始笑顔だ。ロシナを押しのけて、隣に移動している。


「ロボットですの? 私も欲しゅうございますわ」

「ちょっと、待ちなさいよ。あんたには、アイアンゴーレムで十分でしょうが」

「いやですわ。わたくし、最近マンガという物を読んで研究しましたの。大きいロボットよりも、小さな装着タイプのユニットが格好良いのだと。ああして、大きなロボットもいいですけど。ナノユニットマシンによる、身体力の増強をさせるというのがいいですわあ。大空を飛んだり、跳ねたり、高起動司祭型ユニットなんて格好良い響きですの」


 フィナルは、日本人の漫画でも読んでいるのだろう。ロボット物は、かなりある。

 図書室には、アニメが大量にあったという。ロボットアニメも国宝指定していいくらいだ。

 異世界でどうやってアニメを布教させたりするのかが今後の課題だが。


「ふ。そんな物は、当然、すでにある。たしか、アル様が持っているスキル【王国の剣】を使えば対象者は変身できるぞ」

「えっ。そうですの? 一度、変身してみたいのですが、わたくし」

「多分、期待しているものとは違うと思うがな」


 話をしていると。準備が終わったのか、人選がすんだのか。5人の男と女が前に出てくる。


「お前たち、気が済むように戦って見せるがよい。ただ、不幸を避けるため。負けを判断した方には、私がタオルを投げるからな」

「タオルとは?」

「この手拭が、止めの合図なのだ。いいのが入った時点で、もう負けで良かろ」

「わかりました」


 5人の男女を見る。と、


「あー、中々じゃねえの。ジギスムント家の勇者に英雄持ちね。10万のなかでも最強の5人って言われている連中だろ。といっても、セリアがでるんじゃオッズがつかねえじゃん」

「賭けにならないのは、つまらないですの。それよりも、今夜の食事はわたくしもご一緒させてもらいたいですわ。あの後ろにいる女のことをたっぷりと聞かせてもらわないと」


 フィナルは、ティアンナのことが気になっているようだ。嫉妬深い子だけに、嵐の予感がする。

 後ろを見ると。つかつかとティアンナが寄ってきて。

 さらわれていった。エリストールにも挟まれた。


「な、なんですの。この人」

「フィナル、かわいい。ちっちゃいフィナル、かわいい」


 ティアンナは、可愛いものが大好きだ。ちょっと百合が入っているようでもある。

 エリアスは、後ろを見ながら汗を垂らす。


「あの人、なんなの。私もひどい目にあったんだけど。スキンシップにしては、度を超えているわよ」

「さあ。害とかなさそうだけど」

「くっ。あの美人、どこで捕まえたんだよ。羨ましいぜ」


 ロシナは、本気で悔しがっているようだ。目の前の相手をするのが先なのではないだろうか。

 と、


「先鋒は、私が切る」

「ふむ。いいのだ。して、相手は誰なのだ。選ぶといいのだ」

「ふ。何を言っているのですか。全員です」

「えっ」


 セリアは、5人の男女の前に立つ。


「我が名は、セリア。貴様らの挑戦を受けてたつ。どこからでもかかってくるがよい」

「噂に聞く、魔狼どのか。それは、いささか我らを軽く見過ぎではないかね」


 セリアは、それを意に介さないかのように手招きする。


「5人どころか、全員でもいいぞ? 殺すのならば、もっと容易い」

「このガキがっ。ぬかしたな? 我は、ラルフ。この剣にかけて貴様を倒す。いざっ」


 剣を抜いた相手が前に進みでると。腹に拳がめり込む。そのまま地面で痙攣している。


「弱すぎる」

「馬鹿なラルフは、勇者(ブレイバー)レベル99だぞ。それが、いともたやすく倒されるはずがない。さては、何か薬でも盛ったな?」

「ふっ。大人がこれでは、ミッドガルドの先行きも暗いのではないか? 10年後には、ミッドガルドとの差も無くなっているかもしれんぞ」

「おのれ、言わせておけばっ。今度は、俺が相手だ」


 前に出るのは、素手の男だ。素手だが、その拳は鉄をもへし曲げ数多の獣人の血を吸ったという。


「剛拳のドッドか。こい」

「ふんっ。小娘がっ」


 幼女を相手に、大人が襲いかかるという。そんな絵面であった。互いに向き合っている、と。

 

「しゃあっ」


 先手をとったのは、ドッドの方だった。ローキックだ。蹴りで、真空波を飛ばすという。

 そんな技を繰り出すのだが。


「ふっ。遅い!」


 蹴りを見ながら、足を取ると。振り回し始めた。地面に。


「ごあっ」


 足を持ったまま、セリアが叩きつける。戦いは、一方的な展開を見せ始めた。

 何度も叩きつけられていくと。やがて。


「参った」


 同僚が、いう。ドッドは、白目を向いていた。失神したまま降参しなかったのは、大したものだ。


「勝負にならない。あれで、格闘士99に英雄99持ちか。大したことがないな」


 セリアは、不満そうだ。


「今度は、私がやるっ」


 女が出ようとするが。


「もういい。まとめて相手をしてやる。残りの軍団も全員で、戦ってはどうだ? 何、私は何もしない。お前たちは、攻撃をしてくるだけでいい」

「ふざけるな。子供だからといって、そのなりが攻撃するのをためらわせているのだ。女子供だからな」


 いや、女のいうセリフではない。


「ふっ。だから、な。攻撃しやすいように変身してやろう」

「何っ」


 すると。セリアは、もこもこと何か別の生き物に変わっていく。

 巨大な、白い狼だ。しかし、鏡面のように輝く装甲をまとったロボットのようでもあり。

 つまるところ、生物とは似て非なるフェンリルというところか。

 狼女に変身する次の段階だ。


「さあ、こい。これで、攻撃しやすいだろう。なんでも試してみることだ。私は、いっこうにかまわないぞ」

「くそっ。馬鹿にして」


 女は、斬りかかるが。


「剣が通らない? エンチャントしているというのに。魔装技、赤の裁き! 受けてっみろーーー!」


 女の剣は、真紅に染まり天を貫く勢いで伸びた。赤い色がセリアを飲み込むが。


「これで・・・死んでしまったか?」


 だが、


「ふっ。効かんな。もっと威力のある攻撃は出来ないのか? エメラルダ」

「貴様っ。我が名を知って、抜かすとはっ」


 エメラルダは、剣を手にセリアの身体に斬りつける。

 斬撃を連続して行い、足を必死になって攻撃するが。


「か、かはっ」


 どれほど斬りつけたのか。8万を超える人間が見守る中、女は息を上げている。

 どよめきと、困惑した空気が流れていた。


「セリア、またパワーアップしたんじゃねえの。エスメラルダ卿は、弱くない。むしろ、騎士としては最上位の聖騎士にして序列も白騎士団十傑の内に入る剣士でもあるんだよな。それが、子供に負けるってのはどういう気分なんだろうな」

「んと。なんていったらいいんだろうね。普通は、戦いにならないよね。彼女の場合は、ちょっと異常だってことで」

「大技を繰り出しまくってるんだが。全く効いていないって、どんだけ差があるんだよ。剣だって、並の剣じゃねえ。聖剣の部類だろ、あれ。何だったか。名前は、ホワイトブランドだっけな」


 白い剣が、真っ赤に染まって攻撃を繰り返している。炎と電撃が飛び交い、一方的にセリアの巨体を攻撃しているのだが。表面は、焦げ目すらない。


「ふっ。どうした。この程度のなのか? これで終わりならば、気も済んだであろう」

「くっ。この化け物め。この一撃にかける。我が身命に誓ってっーーー終わりだあああ」


 すると、セリアが吼えた。それだけで、


「か、か、か」


 息が上がっている。動悸が止まらないというような。酸欠状態のようだ。

 エスメラルダは、剣を手に膝をついた。


「うむ。これで、はっきりしたな。確かに、せっかく得た領土をやすやすと手放すのは惜しいというのもわかるが。お前たちに国家経営を任せてはおけん。失敗したのだから、潔く撤退するべきなのだ。勿論、兵士たちに国は報奨金を払うし狼国には賠償金を用意する。これでもまだ納得できないというのなら…死んでもらうしかないな」


 アルルが容赦のないことをいう。


「大体、なんなのだ。信じて任せておけば、5年経っても満足な経済活動も出来ていないとか。ふざけるななのだ。冗談にも、程があるのだ。全員、ぶっ殺して埋めてやりたいのが本音ではあるが私の国民でもある。家族もいるだろうし、名誉もあるだろう。国民を飢えさせるようでは、為政者として失格だ。逆らうならば、よろしい。死ぬがいい」


 静まり返った。兵士たちは、固唾を飲んでいる。


「で、ないならば、従え。私が導き、君たちに栄光を与えよう。帰還して、普通の生活を送り反省するのだ。新たに任務もあれば、仕事はいくらでもある。休むのもいいだろう」


 残りの人間も加わって、セリアを攻撃しているが。損傷らしい損傷もない。


「本国へと帰るのだ! 家族が待っているぞ」


 と、兵士が歩きだす。軍団の指揮官ももはや止めようという者はいない。


「なんつうか、侵略するのも経済活動の一環だってことをわかってねえよな。最初の一撃で、相手を黙らせるのは良かったんだが。民間人を大量に虐殺なんてことしてるみてえだし。捜査は、これからだぜ」


 村を襲ったり、色々と問題を起こしていたようだ。ネスが狙われた件といい根が深い。


「欲しければ、奪うというのは否定しませんわよ。わたくし、他人が持っているのを奪うという名前の市場開拓なんて言葉も知りましたし。シェアの奪い合いなんてことは、つまり相手の領土を侵略するということにほかなりませんもの。女神教と大神教のそれが、ぶつかりあうのも仕方のないことですわ。一方が富と栄光を得ようとすれば、片一方は貧しくなるもの。誰もが笑顔になれる世界など、そうありませんもの」


 アルカディアへの侵略だとか。ブリタニアへの侵略だとか。力で奪って正当化するというやり方だ。

 そこには、すでに王様もいて下に組み込むというやり方をしている。

 いずれ、反乱が起きるのではないか。


「王は、導いてこそ王なのだ。下々の民を飢えさせて、和平です。だとか、ちゃんちゃらおかしいのだ。苦労もしたことがないから、そんなことを言い出すのだ。現状も知らずに、家臣のいうことも耳を傾けず。戦争の火種になったりだとか。そういうのは、王族である資格すらないのだ。民を腹いっぱいにするためなら、侵略だってするし肥沃な土地を得るためなら原住民を始末することだって視野に入れるのだ。土地とフェンリルを天秤にかけたら、普通はフェンリルをゲットするためにやってきたということくらい子供でもわかりそうなのに。なんでわからないのか。私は、頭が痛くてしょうがないのだ。という訳で、ユークリウッドよ。後始末、頼む」


 断りたい。しかし、セリアが助けてくれという。食料の援助を無制限にやることはできない。

 というのも、インベントリにしろアイテムボックスにしろそれがあるからごまかせているが。

 出処を商人たちに探られるのは、当然ながらある。どこで採れて、どこから運ばれてくるのか、とか。

 困った事に、この幼女はそういうことに頭が回っているように見えない。

 が、


「私からもお願いします。父は、きつく折檻しておきますので」

「ええと…わかりました」


 シグルスは、今日も美人だ。美人のお願いを断れないほど、ちょろかった。

 悲しい事に、容貌の整ったシグルスは15歳。結婚できる年齢で、相手もいておかしくない。

 明るいお姉さんという雰囲気で、気にならない訳がない。

 と、肘がめりこんだ。


「ちょっと、あんた鼻の下伸ばしすぎ」


 そんな風に見えたのだろうか。そんな事はないのに。エリアスの視線は、厳しい。

 撤退する兵士を見送りながら、今後の経済活動を考えた。

 衣食住足りて、教育を施していくしかない。

 反乱は、収まったがそれで終わりでもない。


「そういえば、ミミーちゃんの弟は大丈夫だったの?」

「あーあれね。手遅れだったわ」

「えっ・・・」


 肝が抜け落ちて、膝ががくがくと震えた。目の前が、暗くなりかけた。

 すると、


「ぷっ。あんた、ちょっとびっくりしすぎよ。ごめんごめん、大丈夫に決まっているじゃない。私が受け持ったのに、死なせるなんてあるわけないでしょ」

「ひどいよー」


 実際、驚きの衝撃を受けたのは事実だ。


「あんたって、ホント変わっているわよねえ。万軍を目の前にしたって、びびったりおしっこちびらせたりしないのに。よく知りもしない相手の弟が死んだっていうくらいで、驚いちゃってさ」


 エリアスは、茶目っ気がある。驚かせるような真似は、止めて欲しい。というのが、心情だ。

 こと、誰かが死んだとかいう冗談は。それでなくても、すぐ信じてしまうタチなので。


「しかし、アル様。報奨金と賠償金を同時に払えるのですか。確かに、我が国の国庫の方は潤っておりますけれど。ゼンダックやビスマルクが納得するとも思えません。よくお考えになられての発言でしょうか」

「うむ。全部、ユークリウッドにお任せなのだ」

「はあ。・・・(こいつ、昔も未来も変わんねえ投げっぷりだ。俺だってここまで投げねえよ)」


 アルルの丸投げ癖は、変わらない。大体、困ったら特攻なので。

 大人物か馬鹿か評価に困る相手だ。

 それでいて、


「んとだな。ユーウの父上を士爵から伯爵に陞爵をだな。やっておくのだ。お前もこれで、伯爵の跡取りとなるのだからしっかりと励むのだ」

「はっ。仰せのままに」

「おめでとうございます。ユークリウッド様」


 シグルスが拍手をしている。が、


「ん、っと。微妙じゃね。そもそも、国を立て直すっていうのに執政官みてえな地位にあるのが男爵予定、だとか。すんごい微妙だろ」

「いや、ロシナ。そういう事は、黙っておいたほうがいいと思うよ」

「言うこといっとかねえと。王子だからって、なんでもわがまま言われるのも馬鹿みてえじゃん」

「あいつらの気持ちは、痛いくらいわかるし。文句もいいたくならあな」


 ロシナは、憤慨しているようだ。しかし、


「セリア様。ロシナくんが相手をして欲しいそうですよ。いかがされますか」

「はっ?」

「ふっ。それは、面白い」


 ロシナが、股間を爆発させた。冗談ではなく、噴水を作った。汚い。


「んーと、なのだ。んーと、その力関係でそこに落ち着いたのだ。貴族たちは、ユークリウッドを排除しようとやっきになって団結しているのだ。だからといって、陞爵の代わりに繁栄著しいシャルロッテンブルクを召し上げるとかユーウに反旗を翻されてしまうのだ。領地の転封もありえんのだ。元々が荒れ地だった場所を開拓したのは、ユーウなのだからそんなことを受け入れられるはずもないのだ。いくら公爵に匹敵する領域があると言っても、無理なものは無理なのだ。なので、そういう妥協した案になったのだ。ちょっと見返りが貧しいかもしれないが、我慢してほしいのだ」

「いいですよ。別に」

「そう言ってくれると助かるのだ。ここだけの話なのだが、そのアルーシュと結婚する気なのか?」


 飛び上がった。主に、周りの人間が。シグルスも、だ。どうしてか。


「何故? でしょうか」

「いや、何。その、あいつが最近になってそんなことを言い出しているから、なのだ。ユーウを王子にしてあいつが女の格好をするとか言っているのだ。ユーウが女装好きにするとか、わ、私も頭がおかしくなりそうなのだ。しょうがないのだ。ティアンナの出現で、焦っているとか。たぶん、そんな感じなのだ」

「なるほど。あの、私はただの下級貴族のせがれですよ?」

「周りは、そう思っていないと思うのだ。確かにそうかもしれないけれど。ちょっと、考えてみてほしいのだ。なに、将来的にはあり得ると思うけれど。あっ、そうなると側室とかばんばん作れるぞ? シグルスなんてすごい優良物件だし。あっ、これ秘密だった」


 アルルの姿が突然消えた。シグルスの姿も消えた。

 アルルを投げたのは、見えたが。巨人も消えている。転移したようだ。


「あ、あのよ。あれって、その」

「言わないで」

「いや、そのシグルス様が、なあ。まさかなあ」


 嘘だと言ってよ、バーニィみたいな。何か、そんな風な。

 セリアの巨体に群がっている人間が宙を舞いだした。

 面倒になったようだ。とりあえず。

 ウォルフガルドの改革は、待ったなしに進めねばならない。

 服の問題も食の問題も。職も。何もかも。

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