表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
250/710

65話 ダンジョン畑で無限に生産する。ちょっとそれ、半端じゃないチート。もはや、地上で生産する意味はあるのかどうか。そこはディストピアかユートピアか。わかりませんが。

 エリアスは、ハンバーグを食べて帰っていった。

 眉を釣り上げて、怒りを露わにしていたが。食べているうちに落ち着いてきた。

 やはり、腹が空くと怒りっぽくなるという。腹八分というが、できるなら満腹になりたい。

 と。

 誰しもが考えたのではないだろうか。農民なら。畑を耕す者なら。

 気温が安定して、害虫がわかない畑。連作障害の起こらない畑。 

 とにかく、自然災害にあえば一発で駄目になる。

 

 台風などは、その最たるものだろう。日照りにしろ、冷夏にしろ、どれをとっても農民を苦しめる。

 収穫できても、年貢で持って行かれて。

 税の比率によっては、生きていけない。

 

 それをどうにかしようとすれば。

 極端な話。

 

 迷宮(ダンジョン)で食料を作ればいいのだ。

 かなり、昔といっても未来で作ろうとして物だ。酪農も耕作も余裕だ。

 某肉体時間を止めて、時間を加速、逆行させるというような能力がまだない。

 迷宮内での時間の操作ができないので、広さで勝負という欠点があるが。

 とにかく、妨害が入らない。完結した空間で、生産できる。


 そういう事なのである。工場で食料を作るように。

 ダンジョンでも光苔なんてものがある。

 水も用意できれば、際限のない土地も用意できる。 

 従って、飯の心配をする必要がない。動く鎧を労働力に。ゴーレムで生産する。

 そんなダンジョン。

 

 ワンダホーだろう。

 ダンジョン内で生産し、収穫し、販売して自給自足をできる。

 そんなダンジョンを。

 作ってしまった。絶対に、秘密だ。誰にも言えない。


 主に、アイデアを出したのはユウタだ。

 ありとあらゆる試みで、ダンジョンコアがそれを可能とした。

 通称はダンジョンさん。透き通る清水をイメージさせる声が特徴的だ。

 性別は、不明。あれば、困るが。


 そんなこんなで作られたダンジョン内の畑には、大量の動くゴーレムが闊歩している。

 どうして、ダンジョンで作るか。

 それは、勿論。色々な面で有利に生産できるからだ。

 秘密裏に作れて、誰の目にも触れない。大量の食料を作るためのの資材は、ダンジョン内で生成できるというそんなとんでもない性質。利用しないわけにはいかない。

 迷宮というより娯楽施設。

 魔物を配置するよりも、もっと歓迎して送り返すというような施設になってしまっているのは愛嬌だろう。ミッドガルドには、ダンジョンランキングなんてものもある。ダンジョンマスターランキングまで。その利用者数だとか、死亡者数だとか。攻略難易度なんてものまで裏の話では、ある。


 夜は更けてきて。断れなかった。

 駄目といっても聞かない子は、どうすればいいのかわからない。

 ベッドは、お肉で占領されている。


「ティアンナさまあー」


 ティアンナとエリストールが右半分を。左側には、狼状態になったセリアと植木なアルーシュが。

 キングサイズのベッドなのに、手狭だ。

 セリアなどは、あほのように食べるので。養うのが、普通なら大変だ。

 

 それらを一括して、供給させるのがダンジョン畑である。

 攻略できないように隔壁で覆われていて、そちらの方には行けないようになっている。

 破壊不能というのは、ただの壁ではないため可能になっている。

 広大なスペースがそちらに割振られていて、ゴーレムたちが毎日忙しく動いている。

 ダンジョンコアがどのようにしてそれらを操っているのか不明だが。


 栄えるダンジョンを目指したところ、どうしても死なないダンジョンになってしまった。

 もう、仕方がないのではないだろうか。死ねば、またくるという冒険者が減る。

 それでいて、死にかかるので。そうなったら強制転移させるというふうに。


「(眠れない)」

「ユウタ♡」


 ティアンナにぎゅっと抱きしめられる。と、木の根っこが腕を引っ張る。

 眠れない。

 結局、寝不足のまま夜が明けてしまう。


 ダンジョン畑は、チートもいいところだろう。秘密は、墓まで持っていかなければならない。

 起き上がると、あられもない格好のティアンナとエリストールがいて。

 毛布をかけ直してやる。


 ドアを開ければ、横にはよだれを垂らした桜火が寝ていた。

 これをベッドに運んでおく。

 と、朝の食事の用意だ。しかし、台所で待っていたのは拒絶だ。

 コック長が、いう。


「ぼっちゃま。このような場所に来られては、困ります」

「何か手伝いでもできないかな」

「メイド長からは、くれぐれもぼっちゃまに料理をさせないようにとのこと。平にご容赦を」


 家では、もう料理が作れないようだ。

 桜火がこのように言っているようでは、何ができるのか怪しい。

 テーブルの前で座っているわけにもいかない。

 と、ちび竜がもそもそと行列を作って歩いてくる。

 

 それを連れて外に出れば、雪景色だ。ミッドガルドは、雪が多い。

 つまるところ、冬に食料を作ろうとしても立ち行かない事が多いのだ。

 強引に気候を変動させれば、作れない事もないが。それをするまでもなくなっている。

 

 ペダ村は、急速な発展を見せている。とっくに村ではなくて市以上といった規模だ。

 冒険者たちは、かなりの割合でペダ村のダンジョンに入り浸っているという。

 周辺でも迷宮でも食料は採れるし、風呂もあって、潜るのは割に合うというのだからそうなるだろう。

 勿論、そこから卒業していく人間もいる。


 素寒貧になれば、また戻ってくる冒険者もいて面白い。

 チビ竜たちも何時かは大きくなってどこかにいくのだろう。

 鶏程度の大きさだが、そのうちに大きくなればとても飼いきれない。

 しかし、この竜たちは餌を食っている風ではない。

 どのようにしてかといえば、魔力を食っているのだという。


 本当かどうか怪しいが、食っていないのがその証左でもあるようで。

 ダンジョンもまた成長している。階層の方は、驚きの9999階を超えたようだ。

 もっとも、ボスの配置が追いつかないので侵入できる階層を限定しているという。

 もはや、無限に広がっていく勢いだ。


 一体いつからそこに広がったのかも不明な不思議なダンジョン。

 攻略できる人間がいたなら、もう人間を辞めているだろう。

 何しろ、そこの中は普通に時間が過ぎていく。

 普通に事故れば、死ぬ。死んで必ず蘇られるとは限らない。


 などなど。

 ちび竜たちと遊んでいると。


「ふぁあ。おはよう」

「DDか。早いのな」

「ボクだって起きるときは早いんだよ。寝てる事の方が多いけど」

「呑気だなあ。聞きたい事があるんだが・・・こいつらって、いつも何を食ってんの?」

「んん? 前に言わなかったっけ。ユウタの魔力だよ。それ以外に何があるってのさ」


 何か問題でもあるの? という風だ。


「いや、美味いのか? 魔力って」

「美味いよ。いや、美味くなかったら食べにこないと思うよ。普通は、大気中にあるのじゃ足りないから餌として他の動物なり鉱石なりを食ったりするけどね。その必要がないくらいだもん。これは、すごい事なんだよ? こいつらは、まあ竜王候補だからね。置いといて損はないと思うよ。育ての親の言うことを無碍にする竜ってのはいないし」

「一緒に寝ているだけだけどな」

「そんなもんだよ。それで事足りるのが、いいところなんじゃないかな。大体竜が暴れるのってさ。あれは空腹でしょうがなくって時だし。それ以外じゃ、住処を荒らされたとか襲われた時くらいだもん」


 竜の生態は、不思議だ。蜥蜴とは違うというが、食事が要らないとは。

 

「竜ねえ。こいつらがそうだとは、とても思えないけど。かわいいし」

「えへっ。ボクも可愛いよね」

「自分でいうとか、減点だな」

「ひどーい」


 くるくると踊ってみせる。DDは、黙っていれば愛らしいヒヨコだ。

 たまに、むきむきな竜人になるが。土手っ腹に穴を開けられた事もあるので、要注意だ。

 食糧事情を改善するために、今日も氷の剣山に向かってみるつもりだ。

 ひとしきり、ちび竜と戯れて食事になった。




 門を開いて向かったのは冒険者ギルドだ。

 例の件もある。進展があったのかないのか確かめねばならない。


「ネスさんですか? それなら、お呼びしますね」


 ギルドの職員は、さっと奥に姿を消す。ギルドは、あまり人がいない。

 朝方だからか。


「ユーウ。ここに何の用があるの」

「ちょっとね。調べ物をしてもらうはずなんだけど」


 やがて、ハゲたおっさんが現れた。ネスである。ばつが悪そうだ。

 嫌な予感しかしない。


「なんといっていいか。その、信じてもらえるかどうか。すまないっ。あのアイテムを何者かに奪われてしまった。気がついたら、懐にはなかったんだ。どうしたら信じてもらえるのかわからないが、申し訳ない」

「そうですか。襲われたのなら仕方がないですよね。それで、犯人とか姿を目撃したとかいう事はないですか。もしくは、それに関する怪しい人物だとかいませんか」


 犯人の顔を見ていれば、まだなんとかなる。しかし、


「それ、なんだが。怪しい相手というのが全くわからないんだ。俺が、あのアイテムを持っている事を知っているのは職員くらいだし。この場で見てでもいなければ、奪おうなどと考えないだろうしな。それこそ、その価値を知っているような人間でなければならない。となると、内部の協力者がいるという風になって捜査をするにしても聞き取りくらいではらちがあかないだろう。一応、それもやってみたんだが。これといって怪しい人間がいるようでもない。何しろ、アレがなんなのかさっぱりわかっていないからな。使い道だとか。金をとったというのが普通の見方だといえるんだが・・・。済まない、奪った相手がどういう連中なのか想像でしかない」

「例えば、スリか強盗をする盗賊連中だとか?」

「うん、そんな所だ。確証がないので適当な答えが出せないのが、苦しいな」


 調べるならエリアスにでも預けるべきだったか。失敗だった。

 ガタイのいいネスを狙うというのは、予想外でもある。アキュと同じハゲだが、髪の毛が多少のこっているだけにパワーが足りなかったか。

 冒険者ギルドの中でくつろぐ事にした。

 待っていれば、アキュがやって来るかもしれない。

 だが、 

 

「狩りをするなら、早い方がいい。どうせ、こっちには直で跳べばいいだろう」


 セリアが急かす。


「そうだね。それもそうか」


 くつろいで、一杯のコーヒーを飲みたかった。

 しかし、それすら許さないようだ。

 氷の世界へと移動すると。


「ぺしゃんこだよ」

「ああ。予感が正しかったということだな。大物がいそうだ。倒しがいのありそうなやつがな」

「ふん。私がいるのだ。剣のサビにしてくれよう」


 アルーシュまでもが着いてきた。桜火は、居残りで妹の面倒を見てもらっている。

 ティアンナといえば、ストレッチをしている。


「アイスウルフは、アルーシュにとって相性が良くないと思う。釣る方がいい」

「ぬかせ。ぽっとでの貴様に負けるほど、落ちぶれてはいないっ。さあいくぞ、セリア」

「わかりました。ですが、いいのですか。公務をほったらかしにして」

「朝議は、お休みだ。昼になったら、出ると桜火に連絡をさせている。何も問題はない」


 何でもかんでも桜火に押し付けるのは、よくないのだが。己もそうだった。

 

「だいたい、なんだ。こんな面白そうな事をしているというのに。私をほったらかしにして。泣くぞ、ユークリウッド」

「いえ、その別にほったらかしにしたわけじゃないですよ。忙しいかと思いまして」

「それが、ほったらかしにしているというのだ。少しは、書類の整理だとか内政問題の解決を手伝えっ。最近、誰も手伝ってくれないのだ・・・。そろそろ私も寝ていいよな」

「わかりました。わかりましたよ。ですから、地面に穴を掘るのは止めてください」


 アルーシュが剣で穴を堀だすと。どこまでも穴があく。


「これ、どうですか」


 ティアンナとセリアは、さっさと行ってしまっている。エリストールといえば、後片付けだ。

 差し出したのは、肉汁の残りだ。


「ふーむ。悪くない。ぱりっとして、柔らかいのがいいな。ただ、これは狼肉か。セリアに食わせるのは厳禁だぞ」


 と、食べたら笑顔になって走っていった。

 後片付けと、立て直しだけで時間が過ぎていってしまう。

 ぱっぱと小屋を立て直すと。エリストールが、興奮していた。


「お前、実はすごい奴なのか。はっ、そうやって実力を見せつける事で私を虜にしようだなどと。破廉恥極まるプレイをさせるつもりなのだな? 間違いない、2人きりになってしまった。このまま雪の中でくんずほぐれつの汁だくまみれにされてしまうのだ。いけないぞっ、まだお前は子供なのだ。後ろから無理やりされてしまっては、抵抗できないがなっ」

「・・・」


 尻をふりふりしている。どういう痴女なのか。

 はたからみれば、そういう風にしか見えない。見た目は、ピンク色の髪をしているとはいえ美少女なのだ。これで、性格がまともであれば引く手あまただろう。あまりの残念ぶりに、誰も反応しそうにないが。


「ど、どうしたのだ? ・・・こないの、か」


 顔を赤らめていうセリフではない。普通の男子であれば、速攻で襲われているだろう。

 だが、しかし。


「さっさと柵を建てましょう」

「あの、貰ってはくれない、のか・・・?」


 俯いていたピンク色の髪をした少女が、落ち込んでいる様子だった。


「もう少し、したらですね」

「もう少ししたら、とは一体何時なんだ」


 目と鼻の先まで詰め寄ってきた。どういうつもかわからない。

 鼻息も荒く、両の手で身体を押さえつけてくる。

 その手を引き剥がしながら、


「僕は、9歳なんですよ。ちょっと早すぎるでしょう」

「なん、だと。それで、9歳は嘘だろう」


 疑われた。嘘ではない、が。


「本当です(肉体は、そうだ。まあ。中身の方は、何歳なんだかしれないけどな)」

「ま、まあ。一、二年くらいなら我慢できるか」

「…(一、二年でも無理だろう。ミッドガルドの法律じゃあ、可能だが…。やらんぞ)」


 しかし、目がらんらんと輝いている。怖い。

 実は、恐ろしい野獣が側にいたという。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ