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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
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異世界側が侵略する場合4 地球寒冷化

 夜は、冷えてきた。

 黒い雨が振ってくるかと思いきや、空気が悪い。

 マスクの代わりに、布を口に当てている。


「この調子だと、お前ら以外、生き残れんかもしれない」


「ああ」


 そうですね。しかし、口から出すのも思考が鈍っている。

 一日。家に帰れず、疲れた。もうくたくたで、瞼が重い。

 だが、寝てしまえば死んでしまうかもしれなかった。

 

 薄暗い崩れかけたビルの片隅で横になっている。辛うじて人が2人ほど入れる場所であった。

 急に寒くなって、風邪を引きそうだ。


 この寒さは?


「寒い。なんか毛布でも欲しいわ」


「そんなに寒いのか。まさか」


 ロシナは、何かを知っているようだ。


「ロシナさんは、寒くないのですか」


「済まない。この体ではな。おそらく、地球寒冷化作戦を実行しているのだろうよ。せっかちなことだ」


 地球寒冷化作戦? 兄がよく見ていたアニメでは隕石を落とすものだった。しかし、流れ星など見えやしない。窓などなく空が、すぐ見える。


「その地球寒冷化作戦というのは」


「単純な話だ。異星人がせめて来るような映画やら小説はあるだろう? だが、だいたい直接的な攻撃ばかりだ。なんとかすれば防げるようなやつ。敵のロボットを奪ったりして、立ち向かうのは定番とも言えるな。そして、共通しているのはなんだか言ってみろ」


 とっさに答えられない。


 異星人が攻めて来るか。日本が極秘に開発していたロボットがタイミングよく出撃して、撃破する。そうなら、なんと良かった事か。事態は、最悪の展開を見せている気がする。核攻撃が、東京、関東中を破壊しているとすれば。


 翔たちに逃げ場などない。そして、


「なんとかなりそうな感じか。ロボットか秘密兵器で立ち向かえるってとこ」


「定番だ。だが、人類殲滅に直接打撃兵器が必要か? 人間は惑星に住む生き物。何を失えば、生きていけないか。それは、太陽だよ。核兵器で地上を汚染するまでもない。軌道上を押さえているのなら、太陽の光を遮ってしまえばいい。戦うまでもなく、人類は死滅する。その後で、選んだ優良なる種を繁殖させればいいのだ、ってな」


 いともたやすくえげつない事を言ってのける。軌道上を押さえられば、そうなるのだろう。

 地球の外では、手も足もでないのは当然。

 寒さは、それが原因か。しかし、一体どうやって。


「遮るって。太陽、むちゃくちゃでかくないか?」


「そうだ。大きいな。もっとも、宇宙空間で敵の居ない場所に敷設するのだから、無理ではない。それこそ、量子テレポートで無限増殖して攻撃するほうが無茶苦茶と言える。薄くとも壁を設置するだけだからな」


 壁で敵対生物を殲滅できるなら、安上がりなのだろう。ー50度や-100度にでもなれば人間が生きていけるとは思えない。その前に、作物ができないので大半が餓死してしまうだろう。敗北したのだ。きっと。


「降参してさ。負けを認めたら、どうにかならないのかよ」


「おそらく、もうわかっていると思うんだがね。ここに奴はいない。じゃあ、どうするかって? うちの主人は残虐だ。逆らった人間は、皆殺しと相場が決っている」


 なんじゃそりゃ。野蛮人か。異世界人だった。


「話し合いで、どうにかなんねーの?」


「お前は、家畜と会話するタイプなのか? 残念だが、主人は会話を拒否されたら二度としない」


「じゃあ」


 終わりなのか。なんとかならないのか。


「そんな顔をするな。まだ、手はある。○の穴にいってアニメを買い占める事だ。最新のアニメ製作者を攫ってこないといけない」


 ついていけない。アニメ? ○の穴? 製作者を攫う? 買い占めといっても、現金が有効なのだろうか。法律を守って生きていけない世界では、食い物こそ重要だ。 


 次第に睡魔が襲ってきた。






 寝てしまったようだ。だが、関節が痛み喉がひりつく。水は、どこだろう。

 麗花の姿を探すと、隣で寝ていた。呑気なものだ。

 夢なら良かったのに。夢ではない。痛みで、起き上がるのも億劫だった。


「起きたか」


「これから、どうしたら良いんだろう。教えて欲しい」


 家へ帰る。それが、目的だった。しかし、核兵器が使用されたのなら戻れない。

 放射能で汚染されて、死んでしまう可能性があるからだ。

 いずれは、戻るつもりだ。翔は、クマの人形を見つめる。頭は、ロシナの顔のよう。


「南か西だろう。そのついでに、本屋でも漁るかするしかないな。ガーフが襲ってくるか、それとも在日に襲われるかわからんが」


「それだ。なんで、在日韓国人が襲ってくるんだ。教えて欲しい」


 動く死体もそうだが、在日韓国人が襲ってくる。意味がわからない。武装していた。


「なんでって、考えた事はないのか?」


「なんで考えるんだよ。日本に住んでいるんだぞ」


 すると、ロシナ人形は踊りだした。そして、口元を押さえる。


「お前。ひょっとして、敵が何かわからないやつか。哀れだな。いや、日本人自体が敵が敵だってわかんないんだっけな。異世界行ったら、大概はなんとかなると思う哀れな連中だからなあ」


 そうではないのか。寝ている麗花を背負うと、服で体を固定する。外は、夜が明けておらず薄暗いままだ。

 南は、どっちだろう。


「だから、なんで襲ってくんの」


「なんで? 敵だろ? 襲ってくるのは当然だろう」


「いや、なんで?」


 日本に住んでいるのに、日本人を襲う。意味がわからない。


「なんで、なんで、なんで。お前らは、いつもそれだ。理解できないと、疑問を繰り返す。だから、理由なんて求めるな。連中にとって、日本人は駆逐するべき敵だってことだ。わからないのなら、わかれ。そういう人種なんだと」


 だから、


「理由になってないじゃん」


「敵だから、襲ってくるんだよ。まだわからないのか?」


「わかるわけないじゃん」


「だから、殺される。殺されて当然ってことだ。敵が理解できないのなら、死ぬしかない。連中の生態ってのは甲は乙に対して何をしてもいいと思っているんだよ。人種として、か。それとも民族として、か。わからんけれどな。連中の脳みその中では、韓民族こそ至高。世界最優秀民族であるから日本人を駆逐し、東韓を取り戻すってのが事実になるんだ」


 意味がわからない。何を言っているのだろう。

 日本は、日本人の土地だ。スマートフォンで位置を確認したかったが、電源すらはいらなくなっていた。 電気を得ようにも電柱は、倒れている。

 

 道は、道の姿をしていなかった。


「それで、どうするんだよ。こんなになった世界を支配するのかよ」


「それは、知らん。奴らのやりたいようにやるだろうな。その先に滅亡があるとしても、なに。地下で社会を作っている連中は生き残るかもしれないぞ」


 寒くなるのだ。作物が実らなくなり、やがて争いが起こるだろう。

 そして、食料を巡って殲滅戦争が始まるかもしれない。

 核兵器を尚も飛ばそうとする勢力がみられない事から、全世界が屈してしまったようだ。


 辛うじて歩いていける場所を探していく。月明かりがなくなって、多少明るくなったものの。

 ほとんど変わりが、ないくらいに暗い。

 水が、凍っていた。


「連中の事は、わかった。あんたの主人ってのは、本当に人間を皆殺しにする気か?」


「どうだろうな。また、気が変わってぶっ殺してやるってな気分になってるのかもしれんし。やりすぎたって1日で止めるかもしれん。つまり言うと、気分屋だ。手に負えん。あんなのに付き合うのは、本当に難儀なんだ。早くユークリウッドを見つけないとその気はなかったが死んでしまっては仕方がない。なんて事になりかねん」


 そのユークリウッドというのは。一体、何者なのだろう。


「そいつを見つければいいのか?」


「そうなる。だが、奴がいるのならこんなことになるはずがないんだよ。黙って見ている奴じゃないからな」


 いないのなら、さっさと撤退するべきだろう。動く死体を見つけて、剣を抜くと。炎が吹き出す。

 ただの剣にしか見えなかったのに。

 振りかぶれば、間合いに入る体を真っ二つにした。熱い。


 2つになった物体が、燃えている。何故、燃えているのだろう。タダの死体なはず。

 燃料でも詰まっているかのような燃え方だ。

 急に腹が減ってきた。


 コンビニを探すべきだろう。敵がいるのなら、倒して、殺してでも食料を奪うつもりだ。


「ためらわなくなったな」


「生きるためだから、しょうがない」


 麗花は、体が丈夫な方ではない。風邪だって引けば、あっさりあの世に行ってしまうかもしれなかった。

 麗花は、己の事が好きではないかもしれない。

 しかし、それでも。


 瓦礫の山を歩いていく。生きている人間は、どこにいるのだろうか。

 剣を鞘にしまう。炎は、ぷっつりと消えた。

 コンビニを求めて、南と思われる方向へと歩きだす。


 もしも、このまま生きている人間に出会わなかったら。

 もしも、このまま薬や食料が得られなかったら。

 死ぬかもしれない。そう考えると、歩かざるえない。


「あのロボットは使えないのか」


「あいにくだが、修理中だ。再出撃まで一時間というところだな。あれは、お前の命を削るから使用は勧められない」


 だが、いよいよとなれば使わざる得ないだろう。きっと。

 神田川から南に歩いているはず。一面瓦礫しかみえず、道路の通れそうな箇所には死体がうごめいている。川に沿って移動すれば水だけは確保できる。だが、飲めるのだろうか。


 それよりもコンビニか。或いはホームセンターだ。

 動く死体の群れを剣から吹き出る炎で薙ぐと、集団がまたたく間に燃え上がる。

 死体が、周囲を明るく照らすとは。


「まるで、住民の人が生きていなさそうな具合だぜ」


「実際、そうなのではないか」


 鉄パイプやらが体に刺さっていたりする。彼らと戦おうとしたようだが、無理だったのかもしれない。

 ロシナの剣は、非常に有用なバーナーのようだ。

 一体、どのような仕組みで炎が出るのか。

 

「これさ。なんなの」


 魂を取られるとかなってはたまらない。麗花と添い遂げるために、死ぬつもりもないのだから。


「そいつは、そうだな。そいつが使えるんだから、条件を満たしているってことが前提だもんな。しかし、秘密だ」


「秘密かよ」


 なるほど。なんとなく合点がいった。兄が愛読していたゲーム小説を思い出すと。


「クラスとか」


「む」


「称号だろ」


「知ってたりする?」


「いや、なんとなく」


「いやいや、なんとなくで。カマかけたかよ」


 合っていたようだ。


「そっちが勝手にばらしているだけだろ。あんなロボットみちゃあ、ギャグとか笑ってられない」


 火達磨のまま倒れて動かなくなる。手を合わせて成仏しますように、と祈りを捧げた。

 


 




 

 


 




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