表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
168/709

異世界側が侵略する場合2 (翔、黒竜、麗花、ロシナ)

 覚めない悪夢を見ているようだ。

 歩いても、生きている人間に出会う事はないのだろうか。

 そして、


「何あれ」


 麗花の言葉で、空を見上げると。

 流れていく光。

 流星だ。しかし、あり得ない量だった。


「ハレー彗星じゃ、ないよな」


「あんなに沢山の流星なんて、見たことないよ~」


 悪い予感がする。核兵器の余波で、街灯はなく月明かりだけが頼りだった。

 そして、


「ぼさっとしてんじゃねえ!」


 剣から人形が出てきた。あり得ない事に、驚きつつも。


「無事っていうか。その、どうしたんですかこれ」


 半透明なのだ。しかも、小さい。


「理由は、後回しだ。剣を握って、叫べ。来たれ、赤い壁ってな」


「え?」


「え? じゃねえ。早くしろ」


「ええと、来たれ赤い壁?」


 赤い柄の剣は、まるで燃えるように熱くなってきた。

 そして、音もなく頭上に現れたのは赤い巨人だ。空を飛んで腹を見せる格好で。

 巨人の腹から、光線が伸びてきた。


「麗花ちゃんも」


 言われずとも手を引くと。そのまま上へ引っ張りあげられていく。


「ちょっとまった。これ、どういう機能なんだ? というか、なんで敵のロボットに乗るん」


「だから、このままじゃ日本つーか世界が滅ぶんだよ。おいおい説明すっから」


 腹の部分が、開いて青い光沢の面が見える。そこへぶつかると思った瞬間、翔は内部へと吸い込まれた。


「これ、どうなってんの」


「さあな。さっさと座って、流星を迎撃しろ。地球が、質量兵器で破滅する前に」


 コックピットに座ると、全周囲に広がる光景にただ衝撃を受けるばかりだ。


「こいつに乗るって、抵抗があるんだけどな」


「乗らにゃ、ユーラシア大陸は消滅しちまう。世界がどうなっても良い気もするが、流石に見過ごせんだろ?」


「これに乗ることができるってことは、ロシナさんは敵側ってことじゃんか。どうして、助けてくれるんだよ」


 念じるだけで、流れていく星をロックオンしてくれる。なんて、規格外の兵器だ。

 そして、流れ込んでくる感覚。射てば当たる。

 後ろには麗花が、おっかなびっくりで周囲を見ているようだ。


「さてなあ。俺も気が狂ったのかもしれねえ」


「こいつで、城を撃ち落とす……とは考えないのかよ」


 そうなのだ。流星を射撃しつつ、つい空を飛ぶ城を狙いたくなる。

 全ての厄介事は、かの城が引き起こしているのではないか。

 そう思うのも、仕方がない。と。


「いいが、その瞬間に翔は死ぬか放り出されると思う」


「隙が、ないのな」


「有る方がおかしいだろ。敵機の乗っ取りとかな。あれ、どうかんがえたって自爆装置を積んでいないのが不思議だっての」


「だよなー」


 残念。この機体で、ゾンビを始末していけないだろうか。東京都は、暗闇に包まれている。辛うじて灯りがあったはずの空。星降る夜に、月が突然消えてしまった。 


「じゃあ、さ。教えてくれよ。この機体で、何をしようってんだ? 流星とは、関係がないのか? 流星は、誰が降らせているんだよ」


 ちびっこになったロシナは、腕を組んで麗花の頭の上に乗っている。


「良いおっぱいだな」


「とぼけんな」


「敵は、竜族。その頂点に立つ竜神だろうな。月を砕いて、地表を更地にしちまおうって腹だ。ついでに、それでユーウが見つかればラッキーな感じでやっているようでな」


 射撃が止まりそうになった。いきなり扱えるのもおかしいが、ゲームと一緒である。

 ロボットゲームに似ていて、簡単に習熟できた。思えば、レトロなゲームであったがよく出来ていた。


「なんで、竜族が人間に攻撃してくるんだよ。おかしいだろ」


「なんでだ?」


 なんで? なんでって、竜なんて非現実的存在で。敵対しているなんて、信じがたい。

 攻撃を受けるような事をしたのだろうか。

 どういう理由があって流星を降らせているのだろう。


「なんでって、そりゃあ。何かしたのかっていうね。理由を知りたいじゃん」


「さてねえ。竜といえば、人間に討伐される存在として描かれる事も多い。邪悪な存在みたいにな。当然、相手も人間へ敵意を持って接してくるようになるとは思わないか? それでなくても、かませ扱いだからな。さても、竜。知性を持った人間以上に強靭な肉体を持つ生命体だ。彼らは、人間を殺して餌にする必要もない。地球を攻撃するのは、ただ目障りだからだろうな。人間が、竜を討つように竜も人間を討つべしと。ま、ともかく手下の竜を使って隕石を降らせてだな。人類を殲滅しようとしているワケよ」


「だから……」


「だから、理由は簡単。人間とは相容れないってやつさ」


 月を砕くというのも荒唐無稽なら、竜というのも同様。動く死体に、ロボットを操縦して頭がどうにかなりそうである。そんな浮ついた気分でも、正確に流星を撃ち落としていく。

 腕は、疲れを訴えている。


 レバーを操作するのも、同じように動かさないといけないという。これは、人体が疲れる。


「竜って、味方のイメージがあるんだけど。なんでかな」


「日本人が抱くのは、龍っぽいよな。でも、竜の棲む世界じゃ色々いるらしい。知っているやつは、知っているんだがあんまり喋らなかったしなあ。語彙が少ねえっていうのかねえ。おい、上に上がれ。このままだと、降ってくる奴が地表にぶつかってとんでもない被害を出すぞ」


 上? 上と聞いて足を上げるようにするが浮かばない。


「どうやってよ」


「ともかく、念じろ。こいつは、そういう機械だと思えばいい」


「はいはい。つか、他人に自分のロボットを貸すか? 普通」


「こまけーやつだな。とてもあの人の弟だとは思えねえよ」


 違和感をずっと感じていたが、ロシナは。つまり、知り合いなのだ。

 失踪した事になっている兄の。

 テレビでは、連日報道されて。今でも、たまに聞く。


 あまり、仲が良かったとは言えない兄だが。それでも兄弟なのだ。気になって仕方がない。

 上へと。念じれば。


「おお? なんで、浮かぶんだよ」


「俺に聞くなよ。こいつは、話によると重力子を操る機能があるんだとか。それがどういう機械で、どういう仕組なのかわかったらノーベル物理賞もんだぜ」


「すげえ。ロボって、浮かぶんだな」


「感想はいいから、もっと高度を上げて迎撃しろ」


 上に、赤い丸が表示されて危険を訴えている。表示されている文字が読めない。

 なんと書いてあるのかと。思っていれば、


「おいおいこいつは」


 拡大されて、それが見えてくる。


「怪獣?」


「やべえな」


 射つのだが、赤い光は外皮に反射されて拡散してしまう。空中で、激突すると。

 猛烈な勢いで、殴りかかってきた。

 画面の文字を見れば、2,1mなんて出ているのできっとマッハが出ているのだろう。


 空中で、黒光りする怪獣と格闘する事になろうとは。しかも、ロボットに乗って。


「上手いじゃないか」


「どーも。つか、頭、割れそう」


 バリアとみられる光の膜を拳が突き抜けてきたし。スウェーの要領で、上半身を後ろに反らしながら持っていた銃で腹を殴ってやった。かなり、硬い。銃も竜も。折れずに、殴れるとは。

 後ろに反らして、躱したと思ったのだが。


「直撃してたら、頭が吹っ飛んでたな」


「ふむ? 貴様。ロシナではないな? 誰が乗っている」


 声が響く。ロボットアニメにありがちな、回線を合わせているのだろうか。

 会話する気分になれないのに。


「誰よ? 知っている人?」


「しっ。こいつは、戦闘を楽しむ野郎だからな。相手していると、きりがねえよ」


「聞こえているぞ」


 どうやら、聞こえているらしい。ゆったりと近寄ってきて、しかも力任せに腕を振ってくる。

 避けるしかない。光の膜が失われて、格闘戦になってしまった。

 光の膜がバリアだと感覚が教えてくれる。


「どうやら、不興を勝ったか? 赤い死神」


「死神じゃねえって、何回言えばわかる」


「死神かよ。とんでもねーな」


「お前ら、ひょっとして気が合うのか? つか、敵としゃべるんじゃねえっての」


 と言っても、終わりが見えそうにない。ぶんぶんと振り回される手足。

 黒い鱗に覆われた身体には、ロボットの赤い光が通じない。

 そして、武器といえば。羽だったりする。相手も、黒い光が漏れてきて全身を覆っているし。


「くっ。流石に、神機相手では秒殺できないか」


 仕方がないので、羽からも射撃をする。不思議な感覚だ。


「武装が偏りすぎだろ。実体弾がねえのかよ」


「あいつに、物理攻撃はほぼ効かねえ。それこそ、太陽でもぶつけねえと衣が剥げねえんだ。ユーウが居れば、そもそもさくっと解決っていうか。こんな事も起きなかったのにな」


「ユーウって奴が元凶なのかよ。最低な奴だろ」


 すると、黒い竜の太い足が避けきれずに腹に突き刺さった。

 おかしい。赤いロボットの動きも悪くなったという。避けれたはず。


「ふむ。我が主の主を愚弄するとはな。もはや、容赦はせんぞ。鉄くずにしてやろう」


 また、ゆったりと近寄ってくる。わかっているのだが、攻撃できない。

 何をやっても攻撃を受け流されるのだ。

 まさか、怪獣と空中格闘戦をやろうとは。


「仕方ねえ。あれだ。銃に、気合を入れろ。野郎をふっ飛ばしてやれ」


「ふん。そんなものが、があっ?」


 正解は、羽を突き刺してやる事だった。


「え? ちょっと待て。そんな使い方ねえぞ」


「ばーろー。こいつにゃ、読まれる。なら、こういう使い方もありってこった」


「まじかよ」


 銃をブッパすると見せかけて、羽は赤い光に包まれて竜の身体に突き立つ。

 腕は、落ちないが。重症は間違いない。背中の羽は、8枚。

 3つめを腹に突き立てるところで、


「おのれ、聖上?」


「ちっ、逃がすなよ。ここで、逃がしたら」


 だが、相手は余力がありそうだ。間合いを詰められない。詰めたら、いけない気がする。

 流星を撃ちを再開して、様子を見ていると。

 羽を投げ返してきた。危なく自分の武器で、死ぬところだ。


「名前を聞いておこうか」


「誰が、名乗るかばーか」


「煽るな。こいつは、翔。お前に、土をつけた野郎だぜ。はっはー」


 竜の目が、すぼまったような。これ以上戦闘を継続できるようには見えないが。


「ロシナが、手を貸しているとはいえ俺を退けた腕前は称賛に値する。なるほど、面白い」


「やべーな。こいつは」


「ロートに乗ってんだ。どんといけ、どんと」


 だが、同時に敵に狙われるという事ではないか。翔は、普通の学生である。

 頭は、良くないし。小説がかけたりもしない。漫画やアニメをみるくらいで、ヒーローになりたいとも思わない。ごくごく普通の。


「これで、終わったと思うなよ?」


 ゆったりと、しかし一気に離脱していく。上へ向かって。


「やれやれだな。他のが来る前に、退散するとしようか。次は、セリアが出るだろうし」


「つか。もう、一生分くれー疲れたんだが」


 気がつけば、汗で全身がぐっしょり。真夏のよう。

 眠気が、翔を襲ってきた。まさか、敵のロボットに乗るとは想像すらしていなかった。



 



  

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ