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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
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0.1章 異世界からの侵略者たち18

 コンビニの前で、絡まれている。


 心配しすぎだっただろうか。ロシナが見たのは、日本人の容姿をした男女に囲まれている翔の姿だった。

 灯りは、周囲の炎だ。燃え上がっている木と建物で、照らされている。

 生きているようだが、地面に倒れている。


「こいつ、てこずらせやがって」


「で、この女はやってもいいんだな?」


 麗花は、男が拘束している。何がどうなれば、こうなるのか。コンビニには、電気がきていないようだ。そして、バイクにまたがった集団が包囲するようにしていた。つまり、


「そうだな。チョッパリどもは、全員死刑だ。その前に、女で楽しむのはいいだろう」


 武器を奪われたという事だろう。相手を殺す事にためらいを覚えたのか。あるいは、多勢に無勢。

 麗花が人質に取られて、何もできなかったか。

 ぐるりと、見ても通りには死体とそうでない者は武器を手にしている。


 そして、ロシナを見ると近寄ってきた。


「こんなところに、白人様かよ。ヤンキー・ゴー・ホームなんだよ!」


 差別である。ロシナは、外人風だが。いや、異世界人だから違う。


 頭のおかしな男だ。手には、釘バットを持っている。隣には、バンダナをしてマスクで口元を隠した男だ。こちらは、手に銃を持っている。


 そして、マスク越しにしわがれた声で、


「とりあえず、しゃぶれ。そして、ケツを出しな」


 とんでもない事を言う。ロシナの力を知っていてそれを言えるなら大したものだが。

 速攻で、


「ばびゅ」


 殴れば、頭がもげてマスク男は首から血の噴水を上げた。横にいた釘バットを持つ男は、左を見てロシナを見ると。


「は?」


 返す拳で、殴りつける。簡単に、男の頭は弾けて反対側へべっとりとした飛沫を飛ばした。

 異変を見たのか。集団から、銃を手にした男たちが駆け寄ってくる。 


「なっ、よくも木下をやりやがったな。てんめえ、ゆるさねえぞ」


「手足を撃って、動けなくしろ」「すっぞおらああっ」


 だみ声と威勢だけは、いい。近寄ってくるや、銃を発泡してくる。だが、弾は不可視のバリアに弾かれて当たらない。ロシナに近代兵器の類は効かないのだ。戦いになるはずがない。顔色の変わった男たちに近寄ると。


 軽く拳を握りしめて、手近にいた短銃を持つ男の顔面を打つ。簡単に鼻が潰れて、仰向けに倒れた。


「んだと? どういう事だ。弾が…」


「当たってない、か? 粕どもめ」


 肋が痛む。骨は、勝手に治癒されているはずだが。恐れか。集団は、銃を発泡しながら後ずさる。


「なんで? なんで、死なない?」


 また、歩を進めて追いつくと腕を掴む。体重だけはある太めの男だ。Tシャツの袖から刺青が見える。カタギではないようだ。


「離せ、このやろう! ぎゃっ」


 腕を引っ張って建物に投げつける。白い建物な上部に男の身体が当たって赤いペンキをぶちまけた。


「化け物かよ。逃げろっ」


 逃がす訳がない。驚いた表情で、後ろを見せる男女に安々と近寄って投げ捨てる。

 或いは、蹴りつける。囲んでいた人間が、そのまま無くなって麗花を掴んでいた男も後ろから蹴り飛ばす。バリアで保護している翔と麗花にさらなる暴力はなかったようだ。


(しかし、やり過ぎたか?)


 辺りには、日本人のフリをしていた在日ゲリラが制圧していたようである。彼らは、武器を保管していたようだ。しかし、ロシナに襲いかかってくるとは。身の程知らずというべきか。


 彼らの餌食となった日本人は、少なくないようだ。コンビニであった白い建物の横には、肌色の物体が大量に積まれている。女は、仰向けだったりうつ伏せだったりしていた。股間は、白い物が流れていたりペットボトルが突っ込まれていたり。


(回復魔術が使えりゃいいんだけどな。フィナルが来てくれれば)


 しかし、居ない。フィナルは、ミッドガルド王国に置いてきぼりである。

 回復魔術に長け、蘇生までやってのける彼女ならば精神の調整だってやれるだろう。

 今は、どういうわけか杖を置いているが。


「大丈夫か」


 翔に声をかけるが。うめき声を出すばかりだ。相当、殴られたようである。 

 一方の麗花は、うろたえ気味に。


「翔ちゃん、翔ちゃん」


 服が破けている翔の身体を抱きしめる。あまり怪我人を動かすのはいけない。

 とはいえ、意識が戻るまでにコンビニが安全とも限らない。というのは、死体の山からもぞもぞと動くものが現れたからだ。ロシナが殺した連中は、頭部を失っている。


(参った。こういう時、治癒術士か僧侶が欲しいわな)


 だが、件の少女も配下もいない。空を飛ぶ自らの艦を呼び寄せても、東京中の混乱を収めるのは難しいだろう。ましてや、弟分がおかんむりだ。


「感動のふれあいは、そこそこにしておけ。周りを見ろ」


 きょとんとした瞳で、麗花はロシナを見る。見るのは、ロシナではなく動く死体なのだが。

 神仏の加護を失って、しかもウィルスで動く死体たちをどうこうするのは骨だ。

 万一にも噛まれれば、ロシナとて危うい。


「なんで、なんで。この人たちは、乱暴しようって」


 少女は、気丈にも翔を負ぶさって立ち上がった。服のボタンが取れて前がはだけている。

 気の毒だが、それは理解できないだろう。麗花はまだ子供だ。

 動く死体を斬り捨てると、歩き出す。


「どうしてなんですか?」


 スキルを使って、火をつければ動けない女たちもまた飲まれた。丸く上にあがった独特なバイクが燃え上がる。

 

「さてね。それは、知っても仕方がないんじゃないか?」


 教えてもしょうがないというのが、心情だ。何しろ、日本人というのは愚かな生き物なのだ。

 相手も、同じ人間であると。そう思ってしまうらしい。

 ロシナは、それを理解するのに死ななければならなかった。元の名前は、なんだったか。

 

(子供に語っても、わからないだろうし、な)

 

 北へ、埼玉へと続く道を進む。


「でも、知りたいんです。どうしてなんですか?」


「彼らに聞くといい。理由は、彼らが知っているさ」


 授業では教えたりしないから。学校では知り得ないだろう。それは、誰が悪いのか。

 文部省が悪いし、政治家が悪いし、メディア、マスコミが悪い。言う成れば、国が悪い。

 揃いも揃って、馬鹿ばかりなのだ。


(知っている人間は知っているし、調べればわかる事なんだけどなあ)


 なにしろ、大統領が千年恨むと言ってしまう国だ。恨で、できている国民性なのである。

 事実をすり替えるのは、お手の物。だが、だからといってその全てが愚かだとか劣っているという訳ではない。高句麗を滅ぼした過去でも、決して劣っている訳でなく。


 むしろ、入り込み国を破壊するという点では優れているのではないか。悪い方向にではあるが、他人を貶める事に関しては異常な情熱を持って事に当たれる。異常が、正常となる国だから間違いに気がつくと発狂するという。国を捨てる率も、桁が違うし国民を捨てても平然としていられる。


 左手に見える東京ドームは、電力を失ったのか。それでも、赤く照らされているのは不可解だ。

 

「あの」


「知らない方が良い事もあるんだよ」


 なぜ、憎き日本人を守っているのか。ロシナもそこのところが、わからなくなっている。

 当面、ユークリウッドを探す手がかりになれば。とは、いえ。アルーシュからは、さっさと暴徒を鎮圧しろと言われている。

  

「あの、東京ドームへ行った方が」


「なぜ?」


 歩きながら、襲い掛かってくる死体を殴り飛ばす。騎士でも、ロシナの力なら余裕だ。頭を潰せば、死体は動かなくなる。


「なぜ、といいますか、その。避難所になっているんじゃないでしょうか」


 ああ。であるならば、尚の事。そこへは、向かわない方がいい。恐らく、いや、すでに虐殺は起きているようだ。

 今や、日本列島で危険でない場所がないほど。であるからこそ、ユークリウッドが出てこないのは解せない。彼は、真っ先にアルーシュへとお願いしに来るだろう。

 或いは、止める為に戦いを挑むか。勝てないとしても。


「駄目だね。まず、隅田川を越える事を考えよう」


「警察の方は、何をなさっているのでしょう。こんな、こんな事が」


 いやさ。狭い世界で、少女は生きていたのだろう。むしろ、日本の治安は良いと言われるが。

 そんなものは、まやかしでしかない。麗花がレイプされていなかったのは、よほどの幸運であっただろう。鑑定するに、未だに処女のようだ。


 ロシナとしては、微笑ましい。ので、守りたくあるが、情勢はうまくない。

 北からは、ウラジオストックを出撃したネオバルチック艦隊が札幌を攻略しているし。

 新潟へは、北朝鮮軍が侵攻している。 


(まー、どうすんのというのが東日本の状況だぜ。在日だけならまだしも。ゾンビを防ぎながら、暴徒を鎮圧ってのは…)


 ロートヴァントで掃射してしまえばいい。それが、最も簡単なやり方ではある。ただし、その場合恐ろしい死人が出るだろう。手をこまねいていても、泥沼なのだが。

 

 逃げ惑う人々とそれに紛れ込んでいるゲリラ。一々、鑑定している間にも、事態は進行していくだろう。

 自衛隊のように、まとまっている訳でもなく区別できないゲリラ兵をどうしろというのか。

 それは、並々ならぬ事だ。


 コンピューターが搭載されていて、照射した光で遺伝子を読み取って区別するとかいう機能であればいいのだが。残念なことに、ロートヴァントには戦闘システムしか搭載されていない。飛ぶとか。動くとか。攻撃する手段だって、簡単なものばかり。


 銃を持っている人間も、ゾンビが襲ってくるのに手を焼いているようである。

 北へと進む道のりは、遅々としていた。


「うっ」


 よろめいた少女を支える。動く死体は、俊敏であったり鈍かったり色々だ。

 死体が、死体を貪るとかいう異常な光景も見られる横に座ると。文京区役所の前だ。

 逃げる人たちは、少なくない。銃よりも、増えた死体に囲まれている。


「死体、こっちに来ませんね」 


「まあね。そらっ」


 手を振れば、炎が走って死体が崩れ落ちる。ウィルスだと、炎にすごく弱い。頭も弱点だ。

 そのまま歩いて来るのもいる。が、バリアに阻まれて止まったまま。


「さっきの話だが、本当に知りたいのかな」


「それは…そうですよ! 知りたいに決まってます!」


 少女の気持ちは、わからない。知ってもどうしようもないのだ。今更、遅すぎる。

 沖縄は、壊滅した米軍に替わって中国軍が制圧している。目下、浄化の真っ最中。

 九州、中国地方へは南朝鮮軍が侵攻しているのだ。


「なんで、こうなったのかって? それは、簡単な話さ。君らが、愚かすぎた」


「それじゃ、わかりません!」


 わかっても、わからずともいい。麗花が、どう頑張ろうとも無力な小娘でしかない。

 事態は、粛々と進んでいくだろう。わざわざ、敵国を援助し敵の学校に資金をやる国だ。

 滅ぶべくして、滅ぶ。自分たちが愚かではない、と信じこみ。


 どうして、朝鮮人たちが愚かだと断じるのか。その思い上がりが、今の事態を招いている。

 自衛隊の戦士たちを苦しめ、その子供たちを虐めるなど。ロシナだって信じられない。

 ミッドガルドで騎士の子供を平民が故無く虐めたのなら、間違いなく死刑だ。


「その理由を…」


 そして、途中に。地上を震わす衝撃と夜を染める眩さ。


(まさか!)


 予想だにしなかった。次いできたのは、光と爆風。爆発したのは、核か。人体を溶かす一撃に、終わりの光に慄いた。

 北へ脱出するどころではなく。   

 身を包むバリアがあるとはいえ。


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