表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
162/709

0.1章 異世界からの侵略者たち16

(頭痛え。なんなの。これ)


 アルーシュが見つけた時には、ロシナとロメルが斬り合っていた。

 互いに勝手知ったる間柄だ。大剣を振るえば、衝撃波があたりを襲って崩壊するビルが崩れようとしている。

 ミミーは、見ているだけだ。道路がめくれ上がり、自動車は炎を上げて大破。道には、死体が散乱している。


「おい。こいつらは、なんだ」


 バーコードの男を前に頭を掴む。ぶちぶちと、頭の毛をむしってやれば悲鳴を上げた。


「知りません」


 電球頭をつかんで、地べたとキスをさせる。男前になった。


「知らないだあ? てめえの国だろうが! なんで知らねえ。死にたいのか?」


「くっ。どうせ、殺すなら、さっさと殺せばいい」


 舐めてやがる。そんな訳があるまいに。馬鹿が。

 剣を抜くと。バーコードの後ろに座る男女が、どよめいた。


「もう一度、聞く。あれは、なんだ? なんで、暴れまわっている。どうみても銃だな? この責任は誰がとるべきだ。どうして、ああなっている」


 テレビを応用して、複数の画面が映るようになっている。テレビだって、これくらいやってのけるのだ。いわんや、魔術師ができないわけがない。並べられた画面では、銃を持った複数の男女によって日本人が殺害されつつある。


 思い切り剣の鞘で、肩を殴りつける。そして、踏みつけると。


「あっぐあっ」


 脂汗を浮かべながら、それでも見つめてくる。気に食わない。


「さあ、あれは誰だ。どこの手の者だ。いわなくともいい。貴様の手足を切り落として、放置するだけだ。惨めに蹴られて、息絶えるがいい。もちろん、貴様の家族を見つけ出して同じ目に合わせてやるがな」


 男の顔色が変わる。立ち上がり、そこをまた殴られて床へ倒れた。無礼な。頭を上げようとは。


「課長!」


「島田課長か。答えられない理由を言ってみろ。家族を引き換えにする理由なんてないだろう?」


 騎士が、引き起こす。メガネは、地面に転がったままだ。


「あれは、知らない。だから、答えようがない。本当だ」


 嘘をついている顔だ。本当は、知っているのだ。知らないフリをするとは。万死に値する。


「ほう。本当に知らないのか。これは、滑稽だぞ。こいつらを知っている連中がいないのなら、生かして理由もなさそうだな」


 いや、本当に知らないのか。全く理解できない。反乱分子を把握していないなど。治世にあっては、テロリストを放置していたことになる。目下、騎士団を降下させているが。


『ミミー、おい』


 返事がない。


『ロシナ、やめろ。なんで、戦っている?』


 返事しない。


『ロメル! いい加減にして、暴徒を鎮圧しろ』


 聞く耳を持たないとは。

 遊んでいるに違いない。が、聞こえていないのかもしれないのだ。

 念話の弱点は、相手の精神状態と波長をいかに合わせるかにある。


「こんな真似をしても、解決には至らないと思うがね」


 よくも抜け抜けと。知っている癖に。どうして、知らないと言い張れるのか。

 証拠を見せてやるのも億劫だ。


 がね、じゃねーんだよ。

 ふふ。くふっ。楽に殺すはずが、ねーじゃねーか。馬鹿な野郎だよ。


「手足を切って、治療してやれ」


「なっ」


 騎士が、両脇を抱えて出て行く。あとの人間も黙ったままだろうか。いっそ、全員を同じようにしてやってもいいくらいだ。どうせ、誰にやらせても同じ。という風には考えないが、ことの収拾を急がねばならない。

 電波を発する基地局を破壊しただけなのだが、効果は絶大なようだ。有線であっても、それらをつないでい通信施設の集合体はあるのだから。


 首を斜めにしたところで、立ち上がる男が1人。


「あれは…。多分、その推測になりますが」


 島田が連れていかれたことに焦ったように、語りだす。


「在日、外国人ではないかと思われます」


 ふーん。知ってたよ。もちろん、知ってたさ。知っていて聞いているのだ。この、馬鹿げた事態の責任はどこにある? もちろん、この官僚どもだ。攻撃して侵略した側が言うセリフではないが、安全対策が疎かすぎる。


 国民が拉致されても何もできない国なのだ。アルーシュが、支配してもまったく問題ないはずである。

 どうせ、何もしなくとも民衆の力で成長できる国なのだから。


『おーい。ミミーっ』


 駄目だ。どうして、反応しないのか。念話を送っても、戦場だからだとかいう言い訳をしそうだ。

 そして、斬り合いを止めようとはしない。2人が険悪な仲だとは。まったく知らなかった。


『ロシナ』


『なんですか。今、生意気な獣人をシメるとこなんですよ』


 だあああ。何が原因で争っているのだろう。この馬鹿野郎どもは。


『おい』


『わかっています。こいつをのしてから、やりますよ』


 おおおおお。頭おかしい。漫画家にアニメーター以外は、どうでもいい。いや、ゲーム、いや、お菓子も捨てがたい。いやいや。魔術だよりなのもなんとかしたい。


 テロリストたちは、完全に反乱兵となっている。


「そんな連中がなぜ、野放しになっていた? やつらの持つ武装は、どこから調達した。なぜ、そのようなことが可能だったのだ。言え」


「そこまでは、わかりません。船で密輸した、とか。彼らに対する安全保証が上層部に足りていなかったのは、事実です。しかし、政治家が決めることが文民統制の根本ですので」


 すると、黙っていた壮年の男が口を開こうとして殴られた。腹を蹴られる蹴られる。

 寄ってたかって下段蹴り。騎士の手で、別室へと連れて行かれる。


「では、政治家を全部手足を切り落としてやれ。焼印を顔面に押し金玉は、潰せ」


「殿下、女もでありますか」


「女は、放置しておけ。どうせ、何もできん」


 男は、まだ話したそうにしている。ロシナは、戦いを止めないし。ミミーは止めようとしないし。

 セリアは、連絡をよこさないし。ストレスで、禿げたらどうするのだ。

 原住民たちは、銃をもって住民同士で殺し合いをし始めるし。


 どーにでもなーれの気分である。その前に、漫画家、アニメーターやらを確保しておかなければならない。彼らに最高の仕事をしてもらう環境を整える必要があるだろう。

 その為にも、やる気を出さないといけないのだが。


 ま、全部ついでであるからして、気が乗らない。


「殿下。なぜ、このような侵略をされたのです。私たちには、理解し難い」


 いうではないか。言葉を選んでいるようだ。賢しい。


「そうだな。その話、最初で聞きたかったものだよ。お前たちには、さっさと事態の収拾をしてもらおうか」

「何をすればよろしいのですか」


 持ち物を開くと、一枚の写真を取り出す。スマートフォンがあれば良かったのだが。


「こいつを探し出せ。そうすれば、撤退してやろうではないか。もっとも、どこまで人類が生き残っているのか微妙なところだろうがな」


 実際のところ、人類が生き残れる確率はかなり低い。アフリカには、蟻人が住み着くであろうし。海中には魚人たちが。高山には、鳥人たちが。平地には、獣人たちが。人類を殲滅せんと迫ってくるのだ。何れも、実験動物にされた復讐からという単純な理由である。


 残された時間は、少ない。犬人も猫人も人間を捕らえれば、八つ裂きにして良いと言われている。


 どこまで抗えるのか、微妙な線だろう。


「どういうことなのでしょう」


「ふん。自分たちでやったことくらい覚えておくことだな。貴様らは、いつも人類最高という風に考えがちだ。しかし、どうして己以上の科学力あるいは超自然的力を持っていないと考えるのか。その傲慢が、破滅を呼び寄せた。下がらせろ」


 なんてことは、ない話だ。全部が全部とはいかないが、ほとんどの獣たちが立ち上がった。異世界の人間、駆逐すべしと。


 首輪に繋がれて、目玉が飛び出るような投薬をされて死ぬ。

 脳を露出させるような実験の末に、死ぬ。

 身体を固定して、目玉を引っこ抜いて電気を死ぬまで流す。

 

 およそ、人というものは他の動物を如何様にしてもよいと思っているらしい。

 その思い上がりをたたきつぶせと。

 動物たちが、怨嗟の声を上げる事しきり。しかし、渡る事ができるモノは限られている。


(人間は、どこまで残酷になれるのだ。到底、許容し難いぞ)


 ここから、人間の地獄は始まるのだ。アルーシュは、知った事ではないが。

 ユーウに、助けて、と言われれば吝かではない。


「殿下、お待ちください。話を」


「まだ、何かあるのか」


「通信機器が使えません。これでは、時間がかかります」


「さっさと行け。理由は、自分たちで考えろ。他人がなんでも教えてくれるとは思うなよ」


 日本人というのは、聞かぬは一時の恥という。なんでも聞くことがあるので困ったものだ。

 ん、っとなった。画面のロシナが追い込まれている。

 原因は、ミミーだ。


 2対1では、ロシナに勝ち目が薄い。ロシナとロメルで互角くらいなのだから。


『いい加減に、喧嘩を止めて探索しろ。お前ら、任務を放棄する気か?』


『く、了解しました』


 ようやくロメルが離れたが、ロシナは血塗れでよろよろした足取りだ。

 バリアを持つロシナに対して、ロメルではダメージを与えられない。

 しかし、ミミーならば『鎧通し』でダメージが通る。原理は、空気の振動を内部に伝えるエネルギーとか。バリアを電子レンジに見立てる小細工もやってのける。


 リビングデット系の魔物が、大の好物だからああなったのか。ミミーは、すっと居なくなった。

 さっさと探せばいいものを。時間ばかり経って、頭にくるではないか。

 しかも、当初の予測では最初の一撃で世界を沈黙に入れるはずだったのに上手く行っていない。


 その上、反乱軍まで入り乱れて東京と言わず関東全域が混沌とした様相になっている。

 ここまでくれば、何かの陰謀であったのではないかと思うくらいだ。

 時期を間違えたのか。


 ユーウが発見できれば、すぐに引き上げるのは変わっていない。

 時期とかそういう問題ではなくて、なるべくして日本はなったのだ。

 風船をつついてみたら、中身がこぼれ落ちたと。


 解せないのは、反乱軍が周到に用意していた事だ。時期を見計らっていたように動いていて、鎮圧に手間取っている。如何せん数が足りないのだ。殺すのならば、できる。しかし、それでは殺戮を印象づける事になって統治がしづらい。


(んー。いっそ、ぷちっと全部潰しちまうか。ソッチのほうがやりやすいかもしれん)


 死ななかったら、それがユーウだ。全滅させた後だと、なに言われるかわからないのでやらないが。

 今だって、アルーシュが殺せと命じたのは貴族に当たる連中だ。

 国を守る気概も無く、他人に命じるだけの存在。目に余る下種どもだ。

 

(安全なところから、命令を下すものなど。あってたまるものかよ)


 それが、制度であるにせよ。何にしても、癇に障る。そうそうに退場させてしまう方が精神衛生にいい。 何にしても自国民を拉致、殺害されて放置しているような塵芥だ。

 殺処分は実に正しい。殺すのは慈悲で、手足切除刑の方は拷問に相当する。


(それにしても、なにを考えているのだ。こやつら。自分たちの居る国の住民を攻撃して、仲良くしようぜとは)


 気が狂っている。しかも、銃撃を浴びせかけるだけではない。死体の山を作って遊んでいる始末だ。

 エンシェントゴーレムで攻撃するには、小さすぎて。

 かといって、騎士を単独で行動させるのは危険過ぎる。

 

(官僚どもが、素直に動くか? 私なら、言うことを聞かないだろうしな)


 どっちにしても、掃討作戦をやらないといけない気がしてくる。


 まさか、日本人を殺しまくるテロリストが好き勝手するとか想像の外だろう。

 日本の警察組織は、優秀だと聞いていたのに。全くの無能とは。

 なぜ、テロリストやそれを助ける工作員たちを取り締まれていないのか。


 意味がわからない。


『姉上』


 セリアだ。今ごろ、念話を返してきた。


『なんだ。手短にな』


『これだけ、騒ぎを起こしても出てこないのはおかしいと思うのだが』


 それは、そうだ。おかしいに決っている。いの一番で、迎撃してきそうな男だから。


『おかしいのは、わかる。だが、隠れているのかもしれないだろ。びびって』


『あいつが、びびる奴なのか? 攻撃されれば、反撃してくるぞ』


 そう言われれば、そうだ。いじめたら、反撃するタイプである。いじめられっ子とはちょっと違う。


『では、どう思う。考えがあるのか』


『ひょっとして、転移に失敗したか。あるいは、向こう側に戻っているとか』


 どきっとした。転移に失敗したら、どうなるのか。考えてもいなかった。

 壁に同化しているなんてことが。あり得る。


『生きているとしたら、2,3日か?』


『そうだとしたら、大変だぞ。戦っている場合ではないのに、ロメルの奴がロシナと喧嘩してたりするのだ。止めさせろ』


 やばい。何がやばいって、死んでいるかもしれないという事だ。

 達磨にするどころではない。  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ