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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
157/709

0.x話 異世界からの侵略者たち11

「やめてっ」


「アニョハセヨ!」


 殴打。打撃の音が曲になりアイゴー、アイゴー、ファッキンジャップを奏でる。

 拉致も傷害も強姦もなんでもござれ。

 あにょ! あにょ! 馳せよ! ふぁっくじゃああっぷにはマンセー!

 

「やめて!」

 聞こえない。聞こえたとしても殴って黙らせる。世界最高民族の躾なのだ。

 歴史を修正しようとする愚かで、蒙昧なジャップに当然下すべき拳である。


「あがあが、べ、べえああ、あれ、あ?」


 男を庇う女が引き剥がされて、乾いた音が煙を立てる。

 弾丸が、男の頭を貫通して乾いた地面を跳ねた。

 自業自得だ。日本人は、馬鹿なのだからこうなっても仕方がない。

 脳がやられて動きを止めた骸から、女が引き剥がされると。


 また、違う乾いた音がなる。男女が上げる悲鳴と怒号が、アスファルトの大地を赤く濡らした。

 それを見ているロシナは、迷う心を押さえつけながら細長い草の筒に火を付ける。


「見てられんわ」


「ウリナラマンセー。ウリナラマンセー」


「はいはい、どっかいけよ」


 と、銃を持った刈り上げのチョン人が勢いよく駆けていく。彼らの狙いは、日本人。チョン人たちも、元はと言えば日本に世話になったというのに。マンセー! マンセー! と言いながら、逃げ惑う日本人に銃を手に襲いかかる。日本人に整形したのか。


 顔だけは、よく似ている。銃を持った彼らに悲鳴を上げて、土下座したり両の手を上げて許しを乞うのだが。


「チョッパリ、チュゴ!」


 そう言われて、頭を撃ち抜かれる。白いゼリーが飛び散って、道路は汚物だらけ。蜘蛛を散らすように逃げ回る男女とそれを追いかけるチョン人たち。思うところが無い訳でもないが。それは、敵国人を受け入れた小泉正一郎政権のせいだ。チョン人に対して、無期限ビザを2006年3月より発行したのだから。これにより、チョン人は爆発的に数を増やしていった。


 さらに、小泉正一郎政権によって地方公務員の国籍条項撤廃され、チョン公務員だらけに。2006年から、まさに腐敗が始まったといえよう。そんな事を大概の人間は、知らない。大した事だとも思わなかったのである。


 ユークリウッドが見つからないのなら、やるべき事はあぶり出す事だ。ロシナは、思う。どうせなら、ずっと出てこない方が都合がいいのでは、と。日本人たちに存分に苦しみを味わって貰うには、彼が出てくるのは邪魔だ。もっとも、それをアルーシュが許さないだろうけれど。


 歩いていくと、学生の1人がチョン人から武器を奪って撃ち殺すところを発見する。

 その学生は、


「糞っ。こいつら、イカレテやがる。逃げよう麗花!」


 叫ぶ。少年が手にしたのは、人殺しの武器。それを見てか、それとも人が死ぬところを見てか。少女は、腰を抜かしている。


「やれやれ。こいつは、いかんな」


 少年は、銃を持ったままだ。


 そのまま、少女の手を強く引っ張る。突然の襲撃。意味がわからなかった。敵は、宇宙人ではないのか。 突如として、東京の空に現れた謎の城。


 通じなくなったスマートフォン。テレビはおろかラジオだって通じない。

 さらに、電気が来ない。夕暮れを迎えれば闇がそこにあった。

 最初の一日は、整然としていたというのに。


「あ、ああ? 危ない、翔!」


 翔は、逆に手を引かれて間一髪で攻撃を避けた。放ったのは、男だ。見目は、そこいらにいるアイドルも顔負けのいい少年。幼さの残る顔には、嗜虐に満ちた唇がある。


「ほう? なかなか、いい反応じゃないか。…俺が手加減をしたのかそれともお前さんの反応がいいのか。どっちだろうかねえ」


 その言葉に、湧き上がってきた嫌悪感。だが、全身が「逃げろ」と訴えかけている。剣道の嗜みがある翔は、それなりに喧嘩が強いと思っている。それが、肩ごしに見る金髪の時代錯誤を前にして空気の抜けた風船になってしまう。


「見逃してくれよ」


 敵だ。この男は、敵。手には、物騒な剣を持っている。ファンタジー。

 剣からは、火が溢れてバーナーのように熱風を送ってくる。


「んー。見逃して、どうする? お前らはすぐによってたかって、あっ!」


 翔は、麗花の手を引いて脱兎のように走りだした。とても敵う相手ではない。剣を持つ立ち姿に、微塵の隙がなく。銃を構えれば、そこで腕ごと真っ二つにされかねないと。そう思った。だから、話をしていようが、逃げるのが最善だ。


「見逃してくれって、糞っ」


 横から、チョン人の男が銃で狙いをつけている。そのままでいれば、撃たれる。ガードレールを盾に、かがみながら反撃をする。


「いい判断だ。お前、なかなかやるじゃん」


 ぎょっとした。

 真横から、声が出ている。目で負うと。

 後ろから追いかけてくるはずのコスプレした少年は、ショーウィンドーを背後にしている。無言で切りかかられれば、翔の命は無かっただろう。背後にいる麗花を守らんとして、


「あんた、何が目的なんだ」


「目的? ふふ。何がって、そりゃあ、よっ」


 足が伸びてきた。まるで、時が止まったかのよう。だが、受ければ足をへし折られる。そして、麗花を巻き込む軌道。受けざるえない。翔は、前にタックルをしようとして何かに激突した。


「がっ。ってえ」


 割れるかと思った。血が出てないのか。頭を押さえる。


「まあ、合格か。おもしれえ。ふうん、山田ねえ。…山田って結構どこにでもいる名前だよな」

「痛え、どういうつもりだよ。名前、どこで知ったんだよ」


 名前を知る事などできないはず。どうやって知ったのか不思議で仕方がない。

 財布は、尻のポケットに入っている。確かめても、抜かれたようではなくて狐に化かされた気分だ。


「気が変わったのさ。ネズミを踏み潰すよりも、鑑賞する方がずっと面白いしな。その手でどこまでやれるのかねえ」


 目の前にいる男は、外道の類か。麗花が構えた銃を前にしても、まるで怯まない。銃が怖くないようだ。至近距離から銃を放たれれば、中世めいた鎧など容易く貫通して命はないというのに。


「撃つわよ! 動かないでっ」

「ふふ。撃って当たると思うなら、引き金を引くといい。しかし、その時は首が胴から離れてるだろうがね」

「行こう。彼の気が変わらない内に」


 頭がおかしい謎の少年を相手にして、チョン人に囲まれる方が最悪だ。彼らは、武器を手に手当たり次第に襲いかかっている。翔ができることと言えば、麗花の手を引いて逃げる事だけだ。逃げる方向は、都心とは逆の山へ向かうのがいい。海へと逃げれば、逃げ道が無くなってしまう。

 

 マンホールを開けて中に逃げ込むというのも考えたけれど、それは無理な相談だろう。銃を持って逃げているのも、翔たちぐらいの物。反撃しようとする日本人は、自動小銃で掃射されて倒れていく。逃げるしかない。自衛隊や警察は、何をやっているのか。思った。彼らが出動すれば、チョン人などすぐに捕まえてしまえるはず。


 だというのに、救急車はおろか車も動かなくなったようで。逃げ惑う人の流れに添っていくしかない。


 警察署を目指すべきだ。暴動が起こったのだから、学校か警察を頼りにするべき。そうして、チョン人たちから逃げるようにして歩いていく。幸いに、車が使えないのはチョン人たちも一緒のようだ。空は、夕暮にさしかかっている。


 電気がなくなったのは、痛手だ。コンビニは、略奪を受けている。物は、無くなってまさに世紀末のようになっていた。テレビで見ていた震災とは大違いだ。それもこれも、テレビが使えない携帯がスマフォが使えないのが一因となっているのだろう。


 歩いている内に、マスクを確保できた。コンビニの残り物だ。麗花の顔を隠すのに利用できる。


 文明が失われて、むき出しの本能が出たというところか。

 レジも何もかもない状態だ。

 

「お腹、減ったね」

「食うか? おにぎりがあるぜ」

「うん」


 コンビニでは補給できなかった。

 この分では、水も食料も誰かから奪うしかないのではないか。翔は、現金の持ち合わせが少ない。

 このまま通りを歩いていけば、家に着くはず。といっても、家は埼玉なので北に結構な距離を歩かないといけない。たまたま、東京に遊びに行って災難に出くわした。デート次第では、麗花と付き合えないだろうかという下心があったのに。


 兄が失踪してしまったせいで、翔は大事にされてきた。彼女でもさっさと作ってくれなんて、堂々と親から言われている。兄が、どうしていなくなったのか。高校が、突然消えてしまうなんてありえるのか。それと同じくらい信じられない事が、今、日本に起きている。空に浮かぶ西洋風の城。


 振り返って、みれば西日を受けて金色に輝く。


「まだ、信じられねえ。けど、あれってさ。○ピュタとかじゃないよな」


「いくらなんでもファンタジーだよ。それって、翔ちゃんも信じてるの? 火星人が攻めてきたって」


「いや、でもさ。重力に逆らって、空に城が浮いてるんだぜ? どうみても、オーバーテクノロジーだって。あれ、自衛隊の武器とか通用してなさげだし」


 核兵器が通用しなかった事を翔たちは、知らない。だが、重力を支配するという事は慣性を破壊力に変える武器が通用しない事を知っている。だから、下から砲弾を打ち込んでも上からミサイルを撃っても当たらない。


 突如として現れた城がやってきてから、おかしな事態になった。という事は、あの空に浮かぶ城こそが諸悪の根源である可能性は高い。


「どこかで休みを取りたいけど、お金、利用できるかな」

「お、うん。お金、ね」


 急に話題を現実に戻す彼女は、休息を必要としているようだ。ホテルを利用したい。もっというのなら、この機会に合体したい。青少年にあるまじき欲望だ。しかし、そういった下劣な思考が麗花に及んでは消えている。もしも、チョン人共に捕まっていたらと思えば先にやってしまいたいのだ。身体だけの関係でも。 いいのか悪いのか。


「ラーメンでも食いてえよなあ」

「そうだね。ラックもやってないし」


 ラーメン屋も大衆バーガー屋もシャッターを下ろしている。暴動は、どこでも起きているようだ。窓ガラスを割られて、食料を奪い取られているのだから深刻だろう。自動二輪車に乗ったチンピラたちが、通りすぎる。銃は、学生服の下に隠すようにしている。幸いに、ちょっと太った男にみえるくらいだろう。銃が見つかってはいけないし、麗花が絡まれないようにマスクで顔を隠して歩いている。


 真っ直ぐに北へ。埼玉までいけば、家がある。

 座り込んだままの人もいれば、歩いている人もいる。

 あまり人気のない場所で、野宿をするのは危険だ。麗花は、かなり可愛い子なのだから。

 よってたかって乱暴されかねない。文明が失われた今、少女を守れるのは翔だけなのだ。

 道行く人たちが、少なくなってきた。そこに。


「おい、兄ちゃんたち。こっちで、休んでいっちゃあどうだい」


 恰幅のいい男が、人懐っこい笑みを浮かべている。しかし、頭を振っていう。


「すいません。急いでいるので」

「そうかい。しかし、太陽が落ちたらここらもやばいぜ。人が居るところで休んだほうが賢明だと思うがね」

「翔ちゃん」

「よけりゃあ、案内するぜ」

「いえ」


 男は、手を組んでいる。が、油断できない。人懐っこい笑みで、罠にかけるなんて事があるからだ。

 後ろに回り込んでくるとか。ありえる話。人さらい宿が、でてきても後悔しきれない。

 ここは、


「電柱には、南千住って書いてあるな」


 大分歩いたと思ったら、まだ東京だった。中央区から足立区まで、混乱の坩堝。

 略奪と暴力が吹き荒れていた。警察の姿が、とんと見えないのも。


「うん。もう少しだね」

「もう少し」


 だが、本当にもう少しなのだろうか。わからないが、嫌な予感が翔には感じられた。


 適当な場所を見つけて、水を取ったら夜明けと共に、歩くしかないだろう。

 集団も、道端で寝ている人のなんと多い事か。どこかいい場所を探すよりも、交代で休んだほうが安全かもしれない。武器を持っている事は、切り札だ。顔を見られないように、帽子を目深に被った麗花と肩を寄せ合った。

 

 それに目を向けるのは、先ほど別れた男。


「呑気に寝ようとしてやがる。警察は、壊滅ってな。もう、日本はおしまいだぜ」

「リーダー。さっさとやっちまおう」


 男とは別に、2人。


「あわてんなって、あいつ、何かを持っているようだからな。迂闊に近づいてずっぱりやられちゃかなわねえ」

「何かってーと。ポン刀ですかねえ」


 仲間だ。手馴れた手つきで、革袋に手を入れる。拉致、監禁に強姦となんでもあり。

 チーム焚威蛾。暴走族くずれの半グレである。警察に捕まれば、10年20年は軽くくらうであろう犯罪をやってきた。

 男は、沢渡。一際、背の高い実行役を纏めている。

 壁から、覗き見る獲物を前に股間の昂ぶりは抑えられない。

 何よりも、女の悲鳴が大好物なのだ。


「裏に回るのは、田渕と西。逃がすんじゃねえぞ」

「了解」


 無線も使えない。電気もない。となれば、暗闇で同士打ちする可能性がある。

 真っ暗では、逆に襲えない。


「おい、なにしてやがる」


 了解、と答えた男2人が立ったまま動かない。

 そのまま、沢渡の方へと仰向けに倒れてきた。額から、血が出ている。 

 

「…なっ」


 絶句した。数瞬までは、生きていただろうに。次の瞬間には、死んでいるとは。

 予想だにしない出来事に、沢渡は硬直した。獲物をみれば、2人で仲良く寄り添っている。

 振り返ると。

 青い目があった。


「よう」


 幻覚か。見覚えのない目、外人だ。鈍い痛みが太ももからする。

 西洋人。ドイツ人かイギリス人か。金髪。甲冑。キチガイかコスプレか。

 痛みを堪えて、目に力を入れる。


「なん、だよ」

「やれやれ悪いな。俺も、どうかしてる。ああ…。今、手当をしてやるよ」

「は? なんなんだよ。てめえは!」


 すると、焼け付くような打撃が鳩尾を襲った。息が止まる。力が抜けて、地面に倒れこむ。

 空が振ってきて、薬がキまったようだ。流暢な日本語を話す少年に、反撃を考えていると。


「てめえと呼ばれる覚えは、ないんだがな。ところで、仲間はこんだけなのか? ああ、だから俺は!」

「てめえ、どこの、も…」


 思い出したように、少年は目を向いた。青い目が血走っている。綺麗に並んだ歯が、ぐいっと見えた。

 気分を害したのか。熱い。それが、耳に発生してぶらりと目の前に下げられた。耳だ。

 

「あ”あ”あ」


 次は、指だった。枯れ木でも折るように、手馴れた手つきで逆に曲げていく。

 鳩尾と呼吸困難と痛みがぐるぐると回って、海老反りになる。

 反撃に、蹴りを少年に見舞う。が、太い足は何かに阻まれた。

 反対に、突きが口に突っ込まれた。


 骨が折れ、歯も折れた。痛みが、口に生まれる。


「思い知れよ。いい男になったじゃねえか。なにか喋りたくなったか?」


 獲物は、沢渡だった。嬉々とした色が、目にある。

 沢渡は、諦めた。反撃すればするほど、少年を喜ばせるのだ。

 

 そして、何もかもぶちまけるしかなかった。

 悲鳴が、大気を震わせる事になる。

 もっとも、彼が最も嫌悪し憎悪する類だという事まで知らなかったわけだが。

 日本の法律を無視してきた沢渡が、それ以上に無視する相手を知った時には全てが遅かった。


 数時間後、沢渡と仲間の縁者を含めた人間の首が道路に並べられる事になる。男は、一物を喰わされた格好で。女は、刺青を入れられたという。  

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