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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
151/709

0.?話 異世界からの侵略者たち5 (ロシナ、エリアス)

 町に灯りが、ない。


「(電力を売るかねえ)」


 核攻撃の余波で、日本中で電気が使えない。電力会社に電話すら繋がらない混乱が起きている。ロシナは、探しに出かけた。しかし、適当な場所でロートヴァントを置いて人探しにも困った。何しろでかい。15m級のロボットは目立つのだ。都市部を飛行させても、地上にいる人間は驚きで上を見上げていた。なので、そこら辺に下ろすわけにもいかず。


 小型機で、移動したのだけれど。今度は、移動する手段が自転車くらいしかなかった。自動車は、どこもかしこも渋滞だったりするのだ。というのは、信号機が電気で動いているせいだった。すぐには電力が回復しないせいか。電気をフォトンドライブで発電して、それを売るなどという血迷った考えが浮かんでくる。


 電気を売れない事はない。きっと儲かるだろう。日本だけでも19兆円程度の需要が見込めるのだ。電力がただとなれば、生産活動も活発になるだろうし。日本の復興、設備の復旧には力になること請け合いである。ただーーー


「(アルーシュ様は、やらせんだろうな)」


 馬鹿な事を言ったり、やったりする少女だが。フォトンドライブという自らの生命線のような物を売り払ったりはしないだろう。もしも。もしも、フォトンドライブを日本に売り払おうなどという事をアルーシュが言い出せばどうなるか。暗殺者に襲われる事はないとしても、批判を受けること間違いなしである。


 フォトンドライブの力で、日本に攻め込まれるか。あるいは、その特殊性をミッドガルドが失って亡国の憂き目を見るか。それくらいの想像ができないようでは、王族とはいえない。よほどのお花畑でもフォトンドライブを日本に売り渡そうだとか譲ったりなどしないだろう。


「(ユークリウッドと引き換え。とか? ないな)」


 あるかもしれない。それくらい、重要だ。そもそも、それで見つかれば探す必要もなかった。日本に、異世界に攻め込む必要もなかった。探せ、はい。で終わりだ。電力を売るというのは、いい案なのだが電力会社やそのエネルギー資源関係から刺客がくる事は間違いない。こないと思うほうが、難しいくらいだろう。


 ロシナは、山奥にロートヴァントを置いて移動しようとしたが引き返した。結局、都市部に置いたほうがよほど監視が見込める。それに、ユークリウッドの方から接触があるかもしれない。彼が、気がついていないとは思えないが。連絡が無いところを見るに、変な魔術でも使って身を隠している可能性がある。記憶を失うだとか。そんな感じの。


「(都市部でこれから降りて、単独で探す? 意味がないな。うーん)」


 人1人でどうにかできる人口ではない。それこそ、警察の力を使った方が効率よく捜索できるだろう。人海戦術になるけれども。あとは、魔力探知機を設置して包囲網を絞り込んでいくだけだ。探知機を飛ばして範囲を絞っていけば、自ずと結果が出るだろう。浮遊タイプの魔力探知機を発射しつつ、場所を探る。


「ロシナ。聞こえるかしら」

「ん。どうした」


 通信だ。発信主は、エリアスのようだ。レンダルク家の長女で、次期当主という噂の大器でもある。彼女は、西欧を担当するアルトリウスについているはず。長距離を物ともしない通信には、困ったものだ。


「そっちに居そうなのかしら。それが知りたいのよ。こっちには反応がないし、そっちに居そうだっていう話じゃない」

「もしかして、セリアとも連絡とったのか」

「そうよ。彼女の見立ててでも、十中、八九は日本にいるだろうって話だもの」

「そうか。そうなると、セリアももしかしてこっちに向かってるのか」


 セリアに来られるのは困る。彼女だと、地上をうろうろして大事件を起こしかねない。普通では、見かけることのできない美少女だ。それだけに、痴漢や乱暴を考える人間は引きも切らないだろう。そうするとどうなるか。新聞の一面を飾りそうな大量虐殺事件が発生しそうだ。そうだ、ではなくそうなるが正しいか。


 一応。


「止めることは、できないか。セリアが来たら、捜査が難しいだろ」

「と、思ったのだけど。彼女もせっかちだから、すぐに何かしでかす可能性というのはあるわよね」

「止めろよ。やべえよ」

「私が言って、止まると思う?」

「アルーシュ様に言えば、止まるかもしれないだろ」


 困った事に、セリアを止められるのがアルーシュだけだったりするのだ。アルルだと、押し切られる。シグルスだと説得しようとしてできなくて、時間が経過するだけだ。見つけるというのに、強引な手法を取るのがセリアという少女。彼女は、暴力の化身だ。どうにかして、痴漢男が肉塊になるのを防ぎたいがーーー


「無理ね。そもそも、アルーシュ様もこの件に関してはすぐにでも捕まえろという指示でしょ。日本人が死んでも、私はまったく困らないし。アルーシュ様の大好きな漫画が読めなくなっても、それほどの事もないでしょう。さっさと帰って、魔術の勉強でもしたいのだけれど?」

「そりゃ、俺だって帰りたいさ。けど、彼女は壊すだろ。人も物も。事件になるぞ」

「だから?」


 だからって。エリアスは、全く意に介していないようだ。事件になろうが、平民がいくら死のうがどうでもいいと。エリアスには、そういった選民思想がある。そして。つまるところ、魔術が使えるならどうでもいいような。フォトンドライブを運用しているのは、エリアスの魔術結社が深く関わっている。それを利用すれば、魔力探知機を設置するのも楽なのではないか。


「探知機の設置を手伝ってくれ」

「生憎と、私は忙しいの。他の人を当たって頂戴。人を貸してほしいなら、その旨を伝えればいいじゃない」


 面倒なのだ。魔力探知機を設置していると、それを運用するのは難しい。


「魔術師を貸してくれるだけでも、助かるんだが」

「そんなのは、貴方のところで育成していないのが悪いんじゃないかしら」

「そう言わずに、なあ。あ、わかった。本屋で、魔術関係の本を探しておくから」

「んー。時間、頂戴。すぐには、無理よ」


 何かあるようだ。ロシナには冷たい。エリアスとは、仲が悪い訳ではないが。ユークリウッドの関係だろうか。魔術の本でエリアスを釣ってみたが、効果の方はあったようだ。エリアスの担当する方面は、終わったのだろうか。


「西欧への攻撃は、いいのか?」

「殆どの基地は、貴方が攻撃したじゃない。私たちの方は、その後始末をしているくらいよ。それに、アルトリウス様は無駄な戦闘は避けたいから、浮遊城を戻すって言ってるわよ」

「なるほどな。だったら、尚の事さあ。こっちを手伝ってくれて、いいんじゃないか。セリアが来るより、エリアスが来てくれたほうが穏便に行きそうだ」


 通信機から、すぐに反応がある。


「でしょうね。知らない人でも殴って吐かせるとか、彼女ならやりかねないものねえ。でも、時間がかかるわ。そもそも、ユークリウッドが逃げた原因をアルーシュ様が作っているらしいじゃないの。その責任は軽くないわよ」

「だから、誤解だって。アルーシュ様が、思い込み激しいの知ってるだろ」

「だったら! だったら、どうしていっつもこうなのよ。達磨は言いすぎよ。アルーシュ様の事が好きだとか言ってたわけでもないでしょ。クリスに乗り換えたとかいうのでもないのに。可哀想だとか思わない訳?」


 とばっちりが、飛んできた。このままだと、エリアスの勘気を誘ってしまう。


「わーかった。わかったって。見つけたら、エリアスに一番に知らせる。これなら、文句はないだろ」

「ふうん。話がわかるじゃない」

「いや。ん。ちょっと待てよ。フィナルの奴は、こっちに来てないのか」


 ユークリウッドの事で、火がつくのはアルーシュだけではない。達磨には、同意しそうな奴ではあるが。フィナルは、それはそれで燃え盛る火事場になりかねない少女だ。


「あの子ね。知らせてないわよ。それどころか、クリスとの事も知らせてないわ」

「あー。いいのか? 後で面倒はご免だぜ」

「知らないなら、知らないで幸せじゃないの」

「だといいけどな。刺されないといいけどなあ。ユークリウッドも災難だな」


 エリアスは、ユークリウッドの事が好きなのか微妙な所だろう。フィナルは、変態の域にある。クリスとアドルはアルトリウスと一緒にいるはずだ。2人がいれば、エリアスはお役ご免というところか。ロシナの前には、敵がでてこない。エリアスの所も、同じように敵がいないようだ。そもそも、幼馴染のクリスを巡ってアドルとユークリウッドが揉めてもおかしくないのだけれど。


 ユークリウッドもアドルと張り合おうとしないので、戦いにならない。クリスはアドルにべったりだし、ユークリウッドがつけ込む隙が全くなかった。だからか、その周りの人間はやきもきしたものだ。今では、その三角関係も決着がついていると見ている。ユークリウッドが、クリスに接近しようとしても今回のようにアルーシュが嫉妬でおかしな事をやりだす。


 やりだした結果。異世界に失踪だとか。ろくでもない事になった。


「災難なのは、私の方よ。実験もできなくなったし、魔力核の製造が止まってしまって大損害だわ。この責任だって、誰が取るというのよ。誰も取らないというようなオチがつくのは、嫌よ」

「フォトンドライブの核部品だっけ」


 製造できないとは。ちなみに、フォトンドライブ。これは、アルーシュなら遠隔停止操作が可能だ。


「そうよ。製造には、ユークリウッドの能力が不可欠なの。あいつがいなきゃできない事が結構あるのよ。あ、そこんとこわかって探しているんでしょうね。殺したりしたら、大変よ?」

「いや、話合えばいいだろ。なんで、そうなるよ」

「どうだか。アルーシュ様やアルル様から遠ざけようとする勢力は、少なくないわよ」


 殺す、とか。ロシナが妹に殺されてしまう。いや、そうでなくてもロシナはユークリウッドに借りしかない。負債を抱えたまま、死なせるとか。どんな悪党でもやれないような悪行だ。この負債は、ユークリウッドから金を借りた時にできた物。どんどん膨れ上げって行く一方で、返すに返せない。しかし、日本の負債も酷い。


 怪しい奴。といえば、ゼンダックくらいだ。死んでいる。


「ゼンダックか? あいつ、死んだろ」

「ゼンダックと組んでたビスマルクとか怪しいわよねえ」

「まー、な。でも怪しいからって、殺してたらきりがないぞ」


 ゼンダックは、元宰相。一族ごと、謎の死を遂げた。ユークリウッドがやったのではないかという噂がたった。が、噂でしかない。仮にも宰相だったので、捜査は入念に行われた。すると、出てくる出てくる。悪行の数々が。アルーシュにも国王にも仕えて、その座に座っている期間は長かった。よって、アルーシュがゼンダックを死刑台に登らせるのには、それなりの理由が必要だ。


 手間を省いた。とも言えるが。


 直近では、ソル公子を抱えるエッフェンバッハ家やキルギスタン家が宰相に食い込もうとした。しかし、宰相というのは難しい。


「理由ね。幾らでも作れるでしょ。今のアル様なら」

「そりゃそうだが。やっぱ、大義名分てのは必要だぜ」

「ふうん。で、もしかして困った日本人に電力を売ろうとか考えてないでしょうね」

「…なんでわかる」


 ばれているのか。そんなつもりはない。といっても苦しいだけだ。


「ユークリウッドも考えそうよね。でも、駄目よ。フォトンドライブなんて魔導科学の粋を敵に渡したら、それでミッドガルドが滅びかねないわ。装備にロボットに差があって、初めて勝っているでしょう。それが無くなったら、地球側からミッドガルドに攻め込んで来かねないわよ。脳味噌の具合なんて、大差ないんだから」


 それは、わかる。早くも、ロシナの目論見は頓挫した。恩を売って、ユークリウッドの捜索に協力してもらおうだとか。相当に難しい。仮に、ロートヴァントが奪われるだろかすると強制停止すれば済むが。フォトンドライブを解析したり、魔改造されたりすればどうなるか。誰でもフォトンドライブを起動できるようになる。とか。


 非常に、危険だ。


「ユークリウッドが、そいつを日本人にやるとか。考えられるか?」

「本気で言ってるの? 確かに、彼ならやりかねないけど。敵が誰だかとかいう以前に、それくらいは分別がつくでしょ。フォトンドライブで利敵行為なんてやらかして、ミッドガルドに戻って来れるとか。冗談じゃないわよ?」

「まあ、そうだけど」


 ユークリウッドの捜索は難航しそうだ。出てきてくれれば、話をするだけで収まるのだけれども。それで、すぐに出てくるかといえばそうでもない。フォトンドライブを搭載した機体をユークリウッドも持っているが、それを出してこないというのなら。


「(セリアとガチの戦いとか出来んだろうし。どうすればいいんだろうねえ)」


 結局。上空からビラ撒きをした。すごく原始的だ。





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