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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
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0.?話 異世界からの侵略者たち3 (ロシナ、ガーフ)

 ロシナは、眼下に広がる地球を見下ろしながら思った。どうして、戦争なんてしているのだろう、と。それも一方的な戦争なのだ。敵は、敵足りえるから戦いになる。同格の装備と技術を持っていればこそ、戦争だ。地球を取り巻く宇宙空間から、一方的に地上を掃射できるロシナの機体は強すぎた。光学兵器にしては、破格の威力。


 大気で減衰しているといっても、射角に隙がない高度から射っていれば負けようがない。大気圏外から地上を狙い撃てるロートヴァントは、元日本人のロシナから見てスーパーロボットの部類だろう。防御も隙がない。


「アルーシュ様は、一体この世界をどうするつもりなのだ。戦争をふっかけて、和平を押し付けるつもりだ。どう思う、ガーフ」

「はっ。私が思いますところ、そのままの意味では?」

「少年1人を探すのに戦争かよ」


 正直にいってありえない。痴話喧嘩で、戦争をふっかけられる日本。頭が痛い。


「戦いに勝っても、和平を押し付けるよりは占領した方がいいのでは?」

「それだと、あいつと戦う事になりかねない。それに、和平といっても相手が納得しないと和平は結べないぞ」

「勝てば、無理やりにでも席につかせる事はできましょう」


 できるかもしれないが、自衛隊を含めて少なくない人間が死んでいる。和平など、無理がある。賠償金の問題などが生まれれば、天文学的な慰謝料等を考えなければならないのだ。無視することは間違いないであろうが。和平を誠実なものとして結ぼうと思えば、相手もそれを望んでいなければならない。アルーシュの事である、勝てばよかろうと楽観視しているのは確かだ。


「私には、浮遊城をつかった質量攻撃をしないのが不思議です」

「あーあれなあ。やっちまうと、あとがな」


 浮遊城を使う。


 上昇と下降を使って、大地にぶつければどうなるか。それは核よりも酷い攻撃だ。地表に居る人間を殺し尽くすというのなら、それもありだろう。相手に、これをやってしまった場合は後戻りなどできない事は確実だ。


 相手に感情がないのなら。


 確かな手ではある。人間を殺し尽くして、生きていたのなら困る。それが、ユークリウッドであろう。この世界には、魔術を良くするものもほぼいないようだ。フォトンドライブやマナコンデンサ等の神秘的な動力を扱うものもいないのであろう。


 フォトンドライブで、電力が無限に作れる。これだけでも別格。


 特に、浮遊城を稼働させているフォトンドライブの動力はアルーシュが担っているというのだ。無尽蔵のエネルギーを発揮するフォトンドライブ。これがあって、現代風の社会に負けるはずがない。別に、交渉のつもりなのだから上手くいくはずだ。戦争とは、外交の一端であるという言葉を思い出した。


 ロートヴァントから眺める地上を見て、ため息がでた。


「私は、早く戦わせて欲しいのですが」

「俺ので何とかなってしまう弱さだからなあ。無理だろう」


 ガーフは、ロシナに代わって国会議事堂で待機している。接近戦に特化しているガーフの機体は、この戦場に出しても良いことがないだろう。というよりも、ロシナの機体で、24時間も攻撃した結果。敵であろう地球上にある兵器や基地といった施設群は沈黙した。盛大な炎を上げて、赤い光点になっている。それでも戦おうというのなら、大したものだ。


「私には、ユークリウッド様を追いかける王子の気持ちがわからないのですが」

「ああ。まあな」


 いつも、好き好き言ってこなかったのが悪かったのか。それとも、こき使うばかりで労ってこなかったのが悪かったのか。アルーシュに、ユークリウッドは苦手意識を持っているくらいだ。だから、いきなり好きだとか言われても困るだろう。「こいつ、何いってんの」とか。思っていそうだ。


「仮に、見つけたとしても戻ってくるとは思えませんよ」

「そう、なると。地上を殲滅してでも戻らせるだろ。あの人、マジだから」


 アルーシュは、ユークリウッドの事になると基地外になる。いや、他の王族もそうなのだから基地外といっては不敬だ。だとしても、そうなのだからそういう感想しかでてこない。余人には、言えないが。アルーシュもロシナがそう思っているとかいう事は、薄々感じているのではないか。もっとも、フィナルやエリアスからするとおかしい事ではないらしい。


 エリアスは、ともかく。フィナルは、達磨にするのに嬉々として賛成しそうだ。


 フォトンドライブの稼働は、良好だ。無尽蔵にエネルギーを生み出すから、いくらでも攻撃できる。周囲に接近する敵もいないので、軌道上には敵の姿もない。地上ですら、同様であるけれども。


「殲滅したほうが、早いのでは?」

「滅多な事をいうな。漫画が読めなくなるのは、俺も困る」

「そんな理由で…冗談ですな?」

「本気だぜ。この点では、王子と同意見だ」


 不思議な事ではない。音楽、漫画、アニメ、小説、映画。どれも人類の生み出した最高の文化だ。どれ一つとっても何かしら素晴らしいと、人を感動させる代物がある。フォトンドライブは、無尽蔵のエネルギーを生み出す。これをそれらのために使えば、この現代風の世界は一変するだろう。だが、そこには大きな問題がある。


 無尽蔵のエネルギーを供給するフォトンドライブ。これが、石油会社や産油国を崩壊させるのは想像に硬くない。その上、それによって支配する事が可能となってしまう。フォトンドライブを持つミッドガルド王国と持たない日本。共存が可能かといえば、一方的な関係しか成り立たないのだ。


 例えば、交易。


 ミッドガルドは、エネルギーコストを無視した生産が可能である。もう一方の日本はどうか。コストが必ずかかり、それが国を崩壊に導くだろう。電力はタダ。とかいう事にでもなれば、生産力がまるで違う事になる。電力会社はすべて潰れるし、原発もゼロになるだろう。日本という国家が崩壊して。


 100円で作られる物が、10円で作られたら戦いようがない。

 

 アルーシュに交易しましょうだとかいったら、馬鹿にされた。ロシナは、脳髄が破裂したような衝撃で頭が真っ白になったものだ。フォトンドライブがある限り、そのような非道をしてどうなる、と。殴られなかっただけ良しか。


「ユークリウッド様。出てきませんね」

「そうだな」


 厄介だ。様子を見ているのか。それとも、本当に気がついていないのか。腸が煮えくり返っていないようなのが、幸いだ。にしても、おかしい。飛んできそうな奴なのだけれど。


 意外と、元の世界に戻っている可能性もある。


 そうなると、ただばたらきだがアルーシュは小躍りするだろう。仲裁してやらないといけない。


「王子は、昔からユークリウッド様の事を好いておりましたから。諦めないでしょうしなあ」

「言い寄られるあいつは、ホモ扱いされてるのに困ってたな」


 傍からみると、ホモにしか見えない。ユークリウッド自体、衆道の小姓といった風だ。アルーシュは、あっちにふらふらこっちにふらふらという事がない。ユークリウッドの周りに女が集まるので、怒っていたくらいだ。「先に会ったのは、私が一番だ!」とか。口癖のようにいうが、隣の家に住むオデットやルーシアも一緒である。


 帰っても。ルーシアは、無言でいきなり刺しそうだ。オデットは「にゃはは。大変でありましたな」とかいって許しそうだ。


 岩石地帯もなく障害物のない軌道上は、静かな物だ。軍事衛星はとっくに流れ星になって地上に消えていた。敵が居ないというのは、寂しい。折角、駆っている機体の攻撃も見る人間がいないければ華がないという物。圧倒的な射程と攻撃力がある光線(レーザー)はやはり過ぎた兵器か。光速で迫る攻撃は、防ぎようがない。最初からバリアでも張ってない限り。


「して、姫様はなんと」

「あいつか。あいつは…妾を狙ってるからなあ。逆に、知らずに腐ってるぞ」


 ロシナには、弟たちに妹たちがいる。年の近い妹が、ユークリウッドに熱を上げているというか。事ある毎に連れて来いだの遊びに行くだのと。16歳を過ぎると、行き遅れの世界だ。20歳を越えようものなら、何か問題でもあると言われるようで。ロシナは、嫁が沢山いる。力があって、家門は権勢がある方だ。


 スキルと能力を抜きにしてもロシナに言い寄る女は多かった。が、増やす気は全くない。嫁たちに搾り取られるのも限界だ。やりすぎて、子供が5人も6人もいる状態。やりまくっているので、更に増えそうだ。ユークリウッドが16歳でロシナが17歳という事を考えても、児童福祉法に引っかかる事案だろう。が、異世界にはそんな法律はないので安心だ。


(諦めて、姫様と結婚しちまえばいいのにな。そしたら、後で側室を増やしていけばいい。最初の子供ができるまで我慢を要求されるかもしれないけど)


 自衛隊に動きは、ない。

 待っているのも、億劫なので漫画を取り出して読みだす。今月号で、見るのは恋愛物だ。バトル物もいいが、主人公が苦戦する物は苦手だった。


「ロシナ様」

「なんだ?」

「話は、変わるのですが」

「うん」

「どうして、日本の宰相を処刑しないのですか。首を落として、見せしめにする必要があるはず。負けたのですから当然、そうであってしかるべきでは?」

「まあな。でも、まあそうはいかないんだわ」

「?」

「容貌はすぐれないけど、あれで首を落としたりすれば後始末が大変だって事なんだよ。日本には、敵対国家の宰相辺りを血祭りに上げるなんて風習はないからな」

「では、責任というのはどこにあるのですか」


 言われてみて、はっとなった。ミッドガルドでなら、敵対する国の王族か宰相を処刑して見せしめにする事が多い。それで、手打ちになるか莫大な賠償金を要求するか。だ。責任がどこにも追求できないのが、日本だというのならミッドガルドはわかりやすい。アルーシュの首をあげればいいのだ。こちらの方は、ロシナたち臣下が絶対にやらせなどしないが。


 替りの貴族ならいくらでもいるが、アルーシュやアルトリウスの替りはいない。


 フォトンドライブを稼働させているのが、アルーシュの力なのだからそれを失っては異世界の日本で路頭に迷う事になる。何より、元の世界に戻れない。核兵器を使った国に攻撃は、集中している。軍事施設の悉くを破壊して、そこにいた人間もかなりの人間が負傷か死亡したことだろう。それで、和平を結びましょうといったところで相手が納得するか。


 責任の所在もそうだが、一方的な宣戦布告である。


「王子にあるだろ。それで、相手の場合だと行政のトップなんだろうけどな。戦争を止めて久しいからな。この世界」

「は?」

「理解できんのも無理ないんだろうが、この世界には魔術もなければ魔物もいない。迷宮もなければ、神だっていやしないんだぜ」


 神がいない。というのは、違うかもしれないが。少なくとも魔術士やらスキルなんて物はないのだろう。いれば、ロシナがロートヴァントで攻撃した際にあらわれて妨害してくるはず。でてこないのなら、いないと言っていいだろう。力がある魔術士が居ないだけなのかもしれない。そして、アルーシュの方で話をつけているのかもしれないが。


「それは、憐れな世界ですな」

「…かもな」


 神がいないという事は、逆に言えば人間たちの世界だとも言える。奇跡はないのだろうけれど、人間が物事を決めて何者にもとらわれずに自由に進める世界。神という絶対者がいるのも、良し悪しだ。特に、昨今では教会の力が強まっている。ロシナは、宗教裁判など絶対に反対だ。魔女狩りなど、許せるものではない。


「暇です」

「…」


 本気で、暇だ。テロリストくらいいてもいいはずなのに、国会議事堂に特攻しようという日本人はいなかった。テレビが放送されていないので、事情もよくわかっていないのであろう。ネットも駄目になっているようだ。そこから始めないといけないのか。核攻撃の余波で、地上はめちゃくちゃだ。主に、生産系の能力は致命的なダメージを受けている。


 原子力発電所が電磁波攻撃に対する対策を怠っている場合、メルトダウンが予想されるのではないか。しかし、3.11の教訓もある。そのような事にならないと考えているが、物事はなんでも上手くいくと思ってはいけない。順調すぎる侵略に、不安が頭をよぎった。


 通信が入る。


「おい。何時まで、そこにいる気だ」


 アルーシュだった。


「はあ。しかし、ここを押さえておくのは必然では?」


 光学兵器を搭載しているのは、ロシナだけではないがそれでも替えの機体を配置するには時間がかかる。その上、過剰な戦力ではないか。だというのに。


「もう帰投してよしだ。貴様には、首相にあれこれと強制する役を担ってもらう。まずは、消費税の廃止だな。それから、赤字国債の発行を取りやめさせて…」


 何やら、NAISEIをやろうというらしい。ユークリウッドへのあてつけに見える。

 良くいえば、ポイント稼ぎか。

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