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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
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135話 鉱山の下層

 暗く垂れ込めていた雲は、嘘のように快晴となっていた。

 夜の内に雨が降り注いだため、その日の作業は中止となる。


「(鉱山の中は、探索しないでいいのか?)」

『えっと。あれを探索すると、えらいのが出てくるんだけど』

「(えらいのって何だよ)」


 疑問はある。空間転移を妨害されるような存在を放置したままでは、ユーウの覇権に差しさわりがでてしまう。空間転移が出来ないという事は、モンスターに出会った場合かつ強敵で勝てそうもない敵であれば逃げる事もままならない。


 ユウタにしてみれば、是非ともに観察したい事案であった。


『DDに決まっているじゃない。彼女は、竜の中でも特に強い力の持ち主だからね。えっと、ユウタの所じゃヒヨコみたいにちびっこいけど。あれ、僕とやりあった結果ああなっているんであって。彼女の本体は、こっちに出てこれないんだよ


「(なんで?)」


『んと、デカすぎるから。この鉱山からは、色々な金属がでるんだけれどその中でも魔法銀ていうのがあるんだよね。でもってその物質もレアリティの高い物だから、どうしてもこの鉱山一帯の採掘には彼女を排除する必要があるんだけど・・・・・・』

「(けど?)」

『今の僕の力を以ってしても彼女とやりあうには危険すぎるんだ。まあ、論より証拠かな』


 ふーん。としか言いようがない。

 ユウタにしてみれば、DDは何時でも肉食獣の餌になってしまいそうなヒヨコなのだから。

 父であるグスタフの容態が安定次第帰る予定であったが、生憎の雨で馬車も帰り道が困難な具合である。元々が細い男だったのである上に、鉱山での労働が身体を枯れ木の枝の如くしてしまっていた。


 栄養失調である事は間違いなく、ユウタも無理に魔術で回復していては生命力の枯渇を招く恐れがある為控えている。


 なので、ユーウは鉱山の内部を調べるようだ。

 というのも、此処一帯を鉱山業だけである。

 見渡すかぎりの岩山と、剥き出しになった地表には何一つ生えていない。それは、少々不可解な事であった。そして、一体なぜこの地がこうも変容しているのか。それを確かめるつもりなのだ。

 内部に何かが潜んでいる事は確実で。それが何なのか今のユーウにはわかっていない。


 探索をすれば、DDに会うという事は不味い事なのか。ユウタにとっては味方であり、そうそう人類の敵というカテゴリーに追いやるのは難しい。そこの所をユウタはぶつけてみるのだが。


「(DDってそんなに危険なのか? ちょっと怪しいだけのヒヨコなんだけど)」


『あはは。そりゃあ、猫かぶっているからね。彼女の本質は、そうかもしれないけれどさ。戦うのは・・・・・・お勧めできないよ。DDは竜種の中でも特に巨大な力を持つ神龍種。ドゴスギガースの奴は古龍種に属する火竜だけど、両者を比べるべくもないくらいDDの力は隔絶した物があるんだ』


 そううそぶくのでユウタとしても、DDに会う事はしたくないのだが。

 鉱山の中に、アルと一緒になって探索する事になってしまった。




「本当に、いいんですか」


「本当も糞もない。だいたいだなあ、俺がここまできたのに放っておくというのはどういうつもりだ」


「それは、当然です。大体、この中は雨で地盤がぬかるんでいますよ。崩落の危険が、非常に高い。って聞いてください」


 ユーウがそう説明している間に、アルはどんどんすすんで行く。内部には、モンスターの気配を感知させる為かユウタにしてみれば危険極まりないここで囚人たちを働かせるのには疑問であった。


「わかっているさ。しかし、お前一人で中に進ませる訳にはいかない。鉱山の最下層には、あれも居る事だしな。どうせ中の地図やら、仕組みについて知らないのだろう? 先導役が必要だ」

「そう言われればそうですが。危なくなれば、アル様だけでも帰しますよ」

「お前がいるのだ。大丈夫だろう?」


 ユーウはそれきり黙ってしまった。ユウタにとってみれば、丸わかりだ。どうやら照れている様子である。アルはそう言うが。『泡』を使って探知を進めれば、内部の構造は丸わかりなのだ。しかし、ここで言い合いをしてみてもアルが決して引く事はしないだろう。それを理解しているユーウも殊更に抗弁はしない。


 この鉱山は、地下に進むにしたがって何かしらの手が加えられてある。


「気が付いたか?」

「はい」

「大丈夫だ。というのは何もモンスターという意味合いの他に、構造を補強している魔術の強度は最高クラスのものがある。モンスターが囚人を襲わないように、坑道には正道と支道という物があってそれに仕掛けがほどこされているのだ。ま、魔除けの呪いだがな。脇道に迷い込んでしまうと出れなくなるほどこの鉱山は広い。定期的にモンスターの駆除もされているからそうそう心配するような事態にはならないのだ」


 この日のアルは、何時も通り黄金の鎧に黄金の兜を被っている。足取りは軽く、ユーウの前を先導するようにして進むのであった。


 中には、人の気配がしない。ともすれば水の魔術で内部を探査するのも悪い手ではないのだが、ユウタにとってみれば遠隔操作系の魔術もこの空間系の探査魔術も想像を絶する物がある。


 ユーウは、余裕しゃくしゃくといった風に最下層まで行き着く。この手の炭坑には、モンスターの襲撃が大体において標準装備なのだ。けれども、ユーウの空間支配が絶対なのか。最下層にいたるまでモンスターと言えるような相手は現れなかった。


 そして、最下層には広い大広間のような空間があり、そこでは採掘がおこなわれていない。


「あそこに見える扉は何なんですか。どう見ても何かある、そんな感じですよね」


 ユーウが指さした向こう側には、巨大な扉が存在している。何者も通さない。そういった趣のある金属製の扉であり、それは一目して魔術による制御がなされているという事を看破した。


「あれは、な。とある竜を封じる為の扉だ。ここが採掘場の最下層にあたるが、横に広がっていく感じで採掘がおこなわれている。竜を避ける為だな。採堀をすすめていて、竜が出てきましたでは話にならない。で、調査の方はいいのか」

「はい。竜が相手では、倒すのも難しい。そんな危険を冒してまで戦う意味は余りありませんから」

「そうか。なら上へと上がる事にしよう」


 本当にいいのであろうか。ユウタにとってみてもDDに会うのは、嬉しい事なのだ。従って、扉を開けて先に進みたいのであるが。それをユーウは理解していない。当然である。ユウタが先取りする形で知りえる未来も彼には知りえない情報なのだから。そして、ユーウに話を振ってみても以前と同じく反応がない。

 

 ユーウとユウタは同一体だからなのか。それが、どういう効能なのか不明である。

 とはいえ、ユウタ自身が話をしているのか。それとも、ユーウが話をしているのか。己自身との境目があやふやになって来るほど、一体感があるのだ。


 ここが選択肢なのかは、ユウタにとって判断しがたい場所である。ユーウが言うように、あえて戦う必要のないモンスターと戦う意義もない。そして、ユーウが転移門を開いた次の瞬間。


「なんだこの地鳴りは?」

「アル様中に入ってください。外に出られますのでっ」


 地鳴りが止まない。ユウタとしても未知の状況に心臓が高鳴っている。

 二人して落盤の起き始めた坑道から転移門に飛び込む。

 外に出た所で、鉱山の崩落が顕著になっていく。

 

「一体何が起きているんでしょうか」

「わからん。が、碌でもない事は確かだ。鉱山が閉鎖される事になれば、囚人たちをここに置いておく理由がないからな。というよりも、囚人にメシを食わせてやるだけ無駄という話になってくる」


 鉱山の労働が囚人たちの食事として換算されているのは確かなのだ。崩壊すれば、また採掘を開始したとしてどれ程の期間がかかるのか。ユウタとしても計算しがたい。

 鳴りやまない地震で、鉱山の山肌が割れて中から何かがせり出してくる。


 それは水の塊であった。鑑定では、竜と示されている。


「こいつは、まさかスライム型の?」

「ミッテルポルテか。水系の竜にちがいない。あれを倒すには、火系の魔術が有効だがいけるか?」

「無論です。迷宮と違い、威力を押さえる必要がありませんからね。鈍重な奴は、蒸発させてしまいましょう」


 ユーウは既に魔術を行使していた。言葉が終わらない内に放たれた火炎の奔流は、スライム状の身体を飲みつくしていった。

 炎竜巻(ファイア・ストリーム)

 その名前通りの見た目であり、さく裂した後にはスライム状の竜の姿は見えない。

 湯気がもうもうと上がっているそこに一人の女が横たわっている。


「あれは、竜人だと思いますか?」

「恐らくは、死んだふりだろう。寄って行けば食らいつく。そのつもりでいけ」


 ユーウが近づいていく。

 女は素っ裸であり、ユーウは杖でちょいとつつくが。

 ぴくりとも反応はしない。よって、ユーウは魔術で出来た縄を取り出すとそれで縛り上げる。


「それは、なんだ」

「この縄は魔術的に竜の変身能力を封じ、その魔力を吸い取る仕組みです。ついでに、まだ鳴りやまないこの振動の方が気になります」


 一撃で仕留めたユーウにユウタは驚きを隠せない。魔術師としてもLVを格段に上げている。

 ファイア・ストリームは中級魔術だが、ユウタには扱いきれない。洞窟や迷宮といった場所で使うには自殺行為と言えるそれの威力には驚くしかなかった。

 

 まさに炎の川といっていい。それをまともに受けるスライム状の竜は、障壁を展開したのだろう。けれども、それすら飲み込む威力は易々と障壁をぶち抜いた。本来であれば、丸焼きになるほどのダメージで。それも竜ともなれば気絶で済むのか。ユウタには判断がつかない。


 アルの配下が、水色の髪をした女を運んでいくのを横目にみながら、


「まさか。封印の効力が弱まっていたというのか。ユーウ、気をつけろ」

「竜が上がってくるのですか。興味がありますね。僕の力がどこまで通用するのか。わくわくしてきますよ。何より、あの貴族をぶちのめすつもりだった鬱憤晴らしにはちょうどいいです」


 驚いた表情で、アルはユーウの顔を眺める。

 勿論アルは、ユーウに対してDDの危険性を語ったつもりであった。戦えば、十中八九は死ぬであろう。それ程の相手であり、アルとすればまともに戦う事は有りえない。そういう視線がユウタには見て取れるのだが。


 強烈な振動が、轟音とともに山を崩す。

 もうもうと立ち上がる土埃の後から姿を現したのは、金色をした巨大な蜥蜴の頭であった。

 山をくりぬいて現れたそれは、周囲の岩山をも破壊して出現しようとしている。

 しかし、そこにユーウが放った魔術がさく裂していく。


 魔術を防ぐ障壁を解除しながら、相手にダメージを与えていく戦法であった。


「あー、なんだその。頭全部出せないまま終わらせる気なのか?」

「無論です。ブレスなど吐かれたら、このサイズじゃ町とか消し飛びますよ。勿論僕らもです」


 頭を押さえるように土魔術で縛りを入れてから、怒涛の攻撃魔術を放つ。

 そうして竜の無力化をしようというのであろう。その攻撃は、確かに頭だけの竜の口先にダメージを与えている。


 DDだ。


 ユウタは、それでDDが終わるのかどうか心配になってくるのだが。

 口先がズタズタになってくると、見ていられなくなってユーウの魔術を妨害する。


 不意に魔術を止めるユーウ。自らが構築していた式に乱れを感じた為か。ユーウは、一旦手を止めればそこには巨大な竜の姿はない。代わりに、妙齢の女が立っていた。


「人間にも、出来る奴がいるんだねえ。死ぬ前に、名前を聞いておこうかな」

 

 竜の頭が変化した姿なのであろう。その体には、黄金の布といったマントを羽織っている。どことなくアルと趣味が合いそうだという感情がユウタに伝わって来た。


「DD。久しぶりだな」

「あれ、この感覚。もしかしてペンドラゴン? だとしても、人間となれ合っているってどういう事なんだい。あれ・・・・・・」

「やる。というのならここにいるユーウが相手になるだろう。DDは大人しく竜界に戻ってもらう」


 アルがそう啖呵を切るのだが、DDは何かに気が付いたようである。

 片膝をつくと、上目使いで。


「ご主人様。幾久しく。また、お会い出来た事をこのDDは感涙に耐えません。たあっ」


 一瞬で、掻き消える。そして、二人は何処に行ったのかと探すのだが。

 ユーウの肩には、一匹のヒヨコが乗っていた。


「っ、ユーウ。これは、一体どういう事なのだ」

「いえ、僕にもわかりません。この竜は、一体どういうつもりなのか」


 すりすりと肩から頬にすり寄って来るDDに、ユーウは不信顔をつくっている。

 アルも当然ながら、どうしていいのかわからない状況に戸惑っていた。それもその筈である。竜と言えば、人類にとって敵に当たるモンスターに属する事が多い。蜥蜴も然りであって、強大な力を持つ竜からしてみれば、人間等ゴミクズも同然で。それが餌である事は竜にとっては自然な形なのだ。


 それが、人間のペットのようになる等有りえない。


 ユーウにとってみてもそれは、異常な事なのだろう。捕まえようと手を伸ばすのだが、ちびっこいそれは瞬間移動でもするかのような素早さである。加えて、魔術で作った防壁を如何なる手段を使っているのか無効化していた。普通ならば、ユーウの持つ強固な魔術スキル【シールド】に阻まれる。


 半時ほどDDと二人は格闘するのであるが、ついに諦める事になった。

 余りにも素早いヒヨコを捕まえるのは、労苦に合わない。ついでに、時間の無駄である。そうして、敵であったDDのしでかした鉱山跡を片付ける事になった。


 手を胸の前で組むアルは、鼻息も荒く。


「ユーウ。この被害は大きすぎるぞ。DDがペットとして配下になるとしても、額が大きすぎる」


 兜を取ったアルが怒りの感情を声に乗せて言うのももっともで、ユーウは頭を抱えそうになる。

 それも当然であった。採掘場を一から採掘可能に変えるには、時間と金が凄まじく。それをチャラにするにはアルでも無茶というものであろう。ユーウには、ご愁傷様という他にない。

 そこに、ヒヨコが口を挟む。


「んと、ボクが何とかしてあげるよ。元はと言えば、ボクの責任だしね。でも、アルトリウスにもボクの事を黙って置いてもらわないといけないよ。そこの所はちょっと協力してくれないと困っちゃうかも。で、具体的にどうするかといえば・・・・・」


 結局は、魔術でどうにかする。そういう事であった。

 崩落した土砂をDDが魔術で掻き出し、それを建築用土砂として周囲に保管。

 穴になったそこをすり鉢状の坑道に仕立て上げるという物だ。最下層に至るまでのエレベーターを建築する事が非常に難しい。そういうモノだが、それもDDが何とかするのだという。


 ユウタにとってみれば、DDがユーウを見ているというよりはその中に居る自分を見通しているようであった。そして、その視線から不気味なモノと暖かいモノを味わうのだが。


 DDの口はどういう発声器官なのか。爬虫類のようでありながら、表皮がふさふさと黄色い毛のような物が生えている。飛び回るスピードといえば、音速すら超えているのか突風が起きる程だった。旋回に滞空も余裕であり、そのサイズに合わない硬度である。


「あっっとボクにそんな熱い視線を向けちゃって・・・・・・恋に落ちたとか?」

「それは、ないです」

「がーん」

「そのがーんって止めましょう。なんというか、その口調。君にあわないよ」


 ユーウの言葉に、ヒヨコは二重の意味でダメージをうけた様子だ。

 が、鉱山の再開発は、待ったなしである。


 なので、ユーウは必死になって土砂を片付けていく。肩には、DDがへばり付いたままであった。件のスライム竜は、DDが竜界に戻すという案で落ち着いた。同時に多額の金塊がアルの元へと渡る事になり、それでこの鉱山の町を改善しようという動きがでる。


 主には、囚人たちの待遇改善と町の周辺での耕作についてである。

 水を手に入れる事が非常に難しい高地なので、それもまた治安の悪化させる原因となっていた。そこで、DDの眷属にいる土蜥蜴を使って水脈を引き当てると同時に土壌の改善を行う。どれもこれも非常に時間のかかる作業なのだった。


 アルの配下にいる土豪リサージュ卿の協力なしには、これも前へとは進まない。


 そういう意味では、土地の貴族を排除出来たのは僥倖であった。

 件の彼はやりたい放題を土地の住民にやっており、それが何の抵抗もなく勢力の一掃になる。

 貴族の家族を粛清するかには、ユーウは異論を述べるのだった。それが、いかにも甘いとユウタの目には映るのである。ともすれば、彼らは怨念を抱きアルやユーウに対して逆恨みをぶつけに来ないとも限らない。それが貴族のやった結果だとしてでもである。


 という事情はあったものの。

 ユーウは、最初に貯水池を作る事にした。

 山をくりぬいた盆地にある町なので、そこに水を貯める恰好にするのである。

 貯水の概念が無かったのか、街には井戸があるばかりで溜め池がほぼない。雨が降れば、そのままその雨は山肌を伝って下まで流れていくという有様。木が生えていないのは、すぐに刈り取って薪にしてしまう為であった。


 リサージュとアルを交えてその点でも会議する事になるのだが、やはり二人は囚人たちの状況を改善するので手一杯のようなのであった。


 溜め池作りに、土壌改善。耕作地には、ジャガイモを植えていく。そういった作業を町の住民と共にしていくのにはあっという間の時間が過ぎていくのである。


「ねえねえ。思うんだけどさ。この土地って、ユーウの物じゃないんでしょ」

「そうだけど?」

「じゃあ、何でこんな事してるんだい? 一ゴルの得にもならないよ」


 言われてみればそうなのである。しかし、損得だけではない。ユーウはそういった部分があるので、ユウタにとってみても同感する部分がある。というのは、


「助ける事は悪い事じゃないよ。損得だけでは、決まらない事だってあるって事。竜は、別の竜を手助けしたりはしないの?」

「ボクらの世界は、弱肉強食が基本だからね。あまり面倒は見ないし、自分で食えない竜なんていうのはそういないからねえ。だって、竜はそもそも食事もあまりいらないし。蜥蜴が減る事もあまりないから、ただ寒くなるのは好ましくないからさ。気温の維持だったりするのには気を使うかな」


 どうやら、そうした気遣いというのはなさそうである。

 竜の世界には蜥蜴が下位の存在なのであろうか。ユウタにとっても未知数の世界で、行ってみたくはあるのだが、帰ってこれなくなりそうで踏み切れなかった。


「弱ければ、死ねっていう事ですか」

「そうだよ。ボクの持論だけど、生きるという事は戦いの連続だからね。ユーウには竜界の方が合っていると思うけど。どうかな」

「・・・・・・」


 ユーウは、無言になった。

 DDは、そうした目論見を持っている事は間違いない。なので、妙齢の美女を見てもそれでどうこうするという事はないのだが。ユウタにとっては、見た目どおりの中身とは考えていない。元より乙女心と秋の空。そういうことわざもあるくらいであるからして。


 DDの魔力紋を識別する事によって、空間転移が可能になる。

 それと共に、作って置いた魔導器を置く。

 作ったといっても、見た目は只の水晶球である。

 それを目印にして、空間転移のポイントを矯正するのだ。


 家との往復が魔術で可能になった事により、シャルロッテの安否も無事であった。それを確認してからユーウは町と王都の改善に乗り出すのであった。


 岩肌が剥き出しになった大地に薬草を植えてみたりする事で別の事業を立ち上げようとするも。

 そもそもの岩盤が如き大地には、鍬を立てる事からであった。土木魔術でそこは何とかするのであるが。それでも、そこから先に植えるのは一苦労である。


「そうだ。ユーウ、ミミズを貸してあげようか。土壌には、ミミズとか重要だよね」

「大丈夫かな。あまり凄いのだと、大変な事になりかねない」

「ボクに、任せておいてよ」


 DDが取り出したのは、何十匹といったミミズの塊である。

 ウネウネとしており、それが痩せた大地に撒かれるのだ。失敗すれば、DDを絞めあげる事を考えているユーウには短気だと確信する。兎に角、ミスを捨て置けない性分らしく。

 

 それが為に、何かが壊れてヘタレになる。

 

 そういった事を考えるのだ。


 ユーウは、事業をある程度形にし終えた段階で王都に帰還する事になった。

 

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