表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
135/709

131話 焼き肉

「どうしたのだ?」


 声をかけるセリアに、ユウタは立ち上がりながらズボンをはたく。


「どうもこうも、セリアが戻って来るのが遅いぞ」

「そ、そうか。やはり遅かったか。すまない」


 きつい言葉を吐いたユウタは、幾分苛立たしげであった。鎧化のスキルであるスラッシャーから変えてピンポイントで打ち抜く照射型スキル【フラッシャー】を使ってみたものの、敵の展開する防御シールドを打ち抜けずに終わった。

 味方に見つかるのを免れるように放つそれは、目立たないという点で使い勝手はいいのである。が、収束点に向かって熱量が集まるスキルなだけに敵が機体全周に展開する偏向シールドには弱い。

 

 であるが為に、敵が後部シールドを下げてくる所を打ち抜いたくらいである。しかし、爆発炎上を期待していた。敵機の後部貫いたにも関わらず、それは確認出来ずじまい。撃てば、石だろうが溶かすだけの熱量があるのである。大気の状態が左右しないスキルなだけに、当たって当然とも言えた。


 黄色いヒヨコは、ぱちぱちと拍手を打ってくれただけに情けない気持ちが、水瓶に溜まるが如しだった。


 そうして、セリアたちと別れたユウタは、ゴブリンの要塞と見られる地点に歩き出していたのだ。中に篭るゴブリンは少なくない数であるが、圧倒的な破壊力を見せつける蜥蜴二体に対しては無力で。ユウタの傍では、こんがりと焼かれた肉を頬張る赤毛の女が胡坐をかいて座っている。

 

 本来であれば、先頭を切って中に突入する筈の前衛がそこに居る事に訝しんだセリア。ユウタにとっては、意外な表情を浮かべる彼女に違う一面を見た気がしている。

 更には他人に対してそれ程拘らないように見えていた少女が、


「ユウタ。どうしてドス子は、肉を食っているのだ? いや、腹が空いていたというのは知っているが。その、今、食うべきなのか?」

「お腹が空いたってうるさいんだよ。どうしようもない位、駄々をこねるから。しょうがない」


 美味しそうにこんがりと焼けた肉を頬張るドス子は非常に嬉しそうであった。

 それとは、対照的なのが要塞に突入した冒険者たちである。外に出て来ては、胃の内容物を吐き出していた。中ではどのような事が起こっているのは、ユウタには想像もつかないのであるが。冒険者たちのそれからして、とても良い事とは思えない様子だった。


 ユウタの持つ豚の肉に魔力を込めると、風船のように大きくなる。それを木から削り出した串に突き刺し焚火を起こしてこんがりと焼く。それだけであるのだが、ドス子は涎をだらーっと垂らしながら頬張っていた。


 それを見つめるセリアも、


「ふむ。私も一つほしいのだが」

「後でな。とりあえず、中がどうなっているのか確認してからだ。どう見ても碌でもない事が起きているのは間違いないからな。あっ、こら」


 間髪を入れずセリアはユウタが焼いている肉を奪い取る。と、一齧り。タレは着いていないのであるが、狼耳を振っているので表情とは裏腹に美味しいというのがユウタにも伝わって来る。次いで、雪城に手渡し。肉を見つめる雪城が、それを食した。

 

 憤懣やるかたないといった表情で二人の少女を見るユウタは、


「不味くはない。けどタレとかソースが無いのによく食えるな」

「これは、豚肉か。悪くない。オークの肉を魔力で膨らませているというところか。ユーウの奴が使っていた生体増殖魔術の一つだったような気がする。ついでに言っておくと、ソースとタレは邸宅に買って来てある。味のない料理程不味い物はないからな」

「そっか。そりゃありがたい。帰ったら肉料理と生きたいけけど、中の状況次第だな」


 ユウタたちは、城塞の中に入るのであるが入口脇にちょこんと座り込んでいる蜥蜴が二匹。その横でエメラルダとユミカの二人が顔色を悪くしていた。ユウタが声をかけようとするのであるが、二人はショックを受けている様子だ。ゴブリン要塞の中からは、鼻が曲がりそうな匂いが流れてくる。

 肉の焼けた匂いなのだが、どこか人の鼻には合わない。


 ユウタは、他のメンバーを置いておこうとするのだが。


「この程度、どうという事もないな。なあ、雪城」

「う、うむ。そうなのじゃ。妾は、うー、やはり遠慮しておきたいのじゃが」


 ドス子にセリアが顎で合図すると、二人に両腕を抱えられる恰好で雪城は捕まえられた。

 中に入って行くと、そこは地獄絵図としか言いようのない惨状である。そこかしこに散らばるゴブリンたちの死体と人体のちらばった何か。それが何なのかユウタにもわかるが、それよりも目につくのが山を積み上げられたゴブリンの死体で作られた緑色をした山だ。


 一目で冒険者たちの憎悪が、オブジェとなって形作られたそれ。

 ゴブリンたちは、一体どのようにすればこれ程の憎悪を集められるのか不思議な位である。

 ユウタは、そこでセリアに聞く。


「セリアは、ゴブリンが何故これほど憎まれるのか知っているのか?」

「ん。ユウタは知っている筈だが、んん? 成程な。教えておくが、ゴブリンは男の冒険者を倒すと大抵それを食ってしまう。女の冒険者であれば、強姦して繁殖用にされてしまうからな。あれを見るといい」


 セリアが指さす方向には、助け出されたと思しき女性が腹を膨らませていた。ユウタの口は、からからに乾き始めている。精々、雑魚モンスターのイメージしか持っていなかったユウタにとっては、自身の持つ精神がダメージを受けている。

 

 ユウタは黙り込む。老若容貌様々な女性が、一つの建物から連れ出されていく様を静かに見つめた。


 ゴブリンの死体が山と積み上げられている様子に、ユウタは憐憫の情を抱いていたのである。それも、もうすっかり失せていた。この地上から、ゴブリンを抹殺しなければならないと思うほどに。


「ユーウが、昔話をしてくれた事がある。冒険者はリスクが高すぎるとな。一獲千金と言えば聞こえはいいが、その実こういう風になる事はある。学園を作って、冒険者を育成してみてもそれでも敗北しこのような目にある事は不可避の出来事だったりするのだと。農業をして、食っていけるならそれが一番いいとな。平和に穏やかに生きていけるならそれが一番なのだと。しかし・・・・・・」

「しかし?」

「奴は、その言動とは裏腹にやる事成す事過激な事ばかりでな。最初にやったのは、父親を嵌めた貴族たちの粛清だった。ついでに、アルーシュ姉と組んで王国の改革に乗り出したのだ」


 そういうのであるが、ユウタにはそんな記憶がない。そして、鉱山に行ったはいいがその後の事も不明だった。それを振り払うように周りを見た後で、ユウタはその場を後にする。何時までもそこに居ては、精神がおかしくなってしまいそうであった。人もゴブリンもまるでゴミのように扱っているそこでは等しく平等なのであろうが、ユウタとしてはまだ自分が正気であると信じてやまない。

 

 それを見つめるセリアがユウタに冷静な声で告げる。


「いつもやっているように、ゴブリンの死体は回収しないのか?」

「うーん。なんだかなあ。ここまで来ると、嫌になるというか。そもそも、自分で倒した相手じゃないから綺麗に掃除するのも気が引けるというかな。ま、回収するより奥に逃げたであろうゴブリンキングの追撃する方が重要だろうという事にしておいてくれ」

「ふむ」


 ぽんと手を叩くセリアは、ユウタの姿を見て得心がいった様子である。ユウタとしては、不本意ではあるがさりとて人間の丸焼き等を何時までも見ていたい気分ではない。壁には、人面相などが作られていて。ここのゴブリンキングの人格を垣間見る事が出来る。


 ユウタは、残虐非道もここに極まるといった鬼人の王に戦意を高めるのであった。


 ゴブリン要塞の外へと移動したユウタは、一路ゴブリンキングを追いかける。しかし、先頭の方では依然として戦闘が起きており味方が邪魔で進めない有様だった。更には、罠に引っかかり怪我をする冒険者たちや補給の為に引き返す者も出て、ユウタたちは味方の手当てをしながら進む事になる。

 

 焼いていた肉を食わせてみたり、手当をしている内に時間がどんどんと過ぎていく。それに傷を負った冒険者たちが集まってきてしまえば、さながら野戦病院と化す。

 

 冒険者たちの手で倒された見られるゴブリンの死体が森のあちこちに積まれているのだが、反対に冒険者の死体と言えば殆ど見当たらない。


「それにしても、手応えがないゴブリンだよな。凄い弱いんだが、何でだ?」


 ユウタの問いに、雪城がヒールで手当てをするユウタの顔をまじまじと見つめ、


「そうなのかえ。ゴブリンにしては強いと思うのじゃがな。妾のいたハイデルベルのゴブリン共よりもずっと高LVなゴブリンファイターやシールド持ちが居ったのじゃ。ご主人様が強いせいじゃないじゃろうか」


 ユウタが頬をぽりぽりと指で掻く。

 そして、ユウタの視線が上を向く。と、同時にセリアの拳が余人には見えない速度で雪城の鳩尾を痛打する。


「ぶふぅっ」


 雪城は、豚のような悲鳴を吐いた。

 鳩尾にまともに入り、空気を求めて地面で走るような動作をする雪城。

 ユウタは、突然倒れた雪城に仰天して背筋を伸ばす。


「おっ、おい。どうしたんだ雪城っ?」

「どうもしていない。どうやらゴブリンの攻撃で疲労が溜まっていたようだ。私が看病しておくから、先に行ってくれ」

「本当に大丈夫なのか? エメラルダをつけようか」

「いや、いい」


 倒れた雪城に、セリアが首筋に手刀を見舞う。大人しくなった狐な少女にセリアは満足したような素振りは一切見せず、ユウタに向かって断りをいれる。

 不承不承であったが、ユウタとしては何が起きたのか判断できない。一瞬の隙をついた知覚出来ない一撃であった為、雪城が突然倒れたようにしか見えなかった。その場にセリアと雪城を残し進むのである。が、疑念を隠せないユウタはドス子に向かって問いを投げる。


「なあ、ドス子。まさかとは思うが、セリアが何かしたのか? お前は見ていないか」

「う、うん、なのだ。我は何も見ていないのだ」


 がくがくと立てに首を振るドス子にユウタは溜息を吐く。


「うーん、そうか。ならいいんだが、まさか仲間を殴っていたりしないかと心配になってな。まさかセリアがイジメをしていたりしないかなって、はは。まさかなあ」


 そのまさかである。それが、ドス子にして返事に懊悩していた様子を見せる。豪快な戦い振りとは裏腹にびくびくっとした小動物のような反応をするドス子。そこで、ユウタは訝しんでいた。セリアたちの方へ戻るべきか迷っていると、傷を負った冒険者たちが戻って来るので回復魔術でフォローをする事になる

 そうしてユウタは、主に魔術師たちの援護に回っていたのだが。


 ゴブリンたちの掃討が続く中で、セリアたちがユウタの所へと追いついてくる。雪城の顔色は相変わらず悪いので、ユウタが回復魔術をかけてやろうとすると。

 極寒の眼差しといった風でユウタに向かって声を出し、


「何をするつもりだ? ご主人様」

「雪城の具合が悪そうだし、回復をかけておこうか」

「いや、腹痛らしいからな。回復をかけた結果、雪城が漏らしたらどうするのだ?」

「そうなのか・・・・・・漏らしちゃうのか。その雪城。具合が悪かったら戻るか」

「大丈夫だと言っていたぞ」


 素っ気なく返事を返すセリアにユウタは疑惑の目を向けるのであるが、当の本人は素知らぬ顔で鼻歌を歌いだす有様だ。

 

 ユウタは、雪城の方を見るとどう見ても肩を貸しているセリアに負ぶわれているような気がして仕方がなかった。ともあれ、駄々をこねるドス子に対応したり。セリアが帰って来るの待っている時間が長く。ユウタが後方支援に回っている内に、ゴブリンキングは討たれてしまったようである。


「先発隊がゴブリンキングを討ち取ったんだってよ」

「何だって? 一体誰が討ち取ったっていうんだよ」

「それが、ドスとかいう重戦士のパーティーらしい」

「本当なのかよ。糞っ。百万ゴルの賞金を狙っていたのになあ。腹いせにモンスターでも狩って帰るか」


 そんな声が前線の方から波が寄せるように聞こえてくるのだ。ユウタはパーティメンバーを集めると、口元を平坦にして帰る事にした。ふと、ユウタは首を東の方へと向ければ、そこには天を衝くような樹が見える。それはどこまでも天上へと続き、雲を貫く程の高さを誇っていた。先端がどこにあるのか判別しがたいそれを見て、セリアに質問する。


「あれは、何なんだ?」

「ん、あれはユグドラシルの枝だな。といっても、アースガルドへと続くダンジョンが内部にある・・・・・・。ああ、ユウタはユーウの記憶が封印されているのか? 固有魔術『全て掌の中』と『泡』を使えるようになっているのに不思議だな。封印が解けているようでもないのにな」


 封印? とつぶやくユウタは、セリアの顔をまじまじと見つめる。それに驚いたのはセリア自身であったかもしれない。気安く、重大な秘密を漏らしてしまった事にしまったという顔を作っているのは明らかで。ユウタは、そんなセリアに簡単な質問をする。


「封印って何の事なんだ? どうも俺には何か知らない間に事態が進展しているような事がある。なので教えてくれると有難いのだが」


 何しろ事は重大だった。思い返せばセリアやモニカを奴隷として購入したのは、肉奴隷としての下世話は考えだったのだから。そして、今ではまるでやる気になれなかった。むしろ、戦っているほうが楽であるような風になりつつある。奴隷など購入していなければ、もっと気軽だったのかもしれない。

 そう考え始めている。


 その際たる者が、ユウタの隣を歩く竜、人のような赤毛の女である。美女には間違いないのであるが、齢にして数千歳とかそんな風に感じられる風格。どうみてもババアな年齢を地で行っていそうな狐耳をした風体は少女な残念なババ子。魔術師組は、百合ペアっぽくノーマルなユウタにとっては鬼門とも言える存在だ。


 反抗的になりつつあるセリアには、はっきりいって持て余し気味になりつつある。とはいえ、何でも聞いてくれそうなモニカとであれば物足りなさを感じる事が予想できる。つまり、ユウタは倦怠期に差し掛かっているのかもしれないと自嘲した。


「知っては・・・・・・いる。だが、事情があって話せないのだ。どうしても聞きたいのなら、アルーシュ姉かアルトリウスの奴に確認とってからにしてくれ。でないと私としても口を割る訳にはいかない」


 ユウタたちはミハイルの隊から抜ける旨を伝えている為に、少人数だった。しかし、只ならぬ雰囲気に耳目を集めている。精悍な顔つきの少年を取り囲むように少女たちが立っているのであった。周りの目を気にするだけの余裕がユウタにはあり、沈黙を続けるセリアに向かってまなじりを上げて詰め寄る事はしない。


「うーん。それじゃあ、アルのどっちかに了解を取ればいいんだな」

「そうだ。もし、私に勝てたら答えてあげてもいいぞ」

「それは、勝てる筈がないと馬鹿にしているのか。いや、確かに勝てそうもないけど。そう考えると」


 このクソアマ~、ほざいたな。

 などという言葉を放つ勇気はユウタにはなかった。

 

 ユウタはそこで、ある考えが頭の中に浮かんでいた。ユーウである己がここまでセリアを鍛えたのである。ならば、当然勝ち方もユーウが知っているのではないかと。そして、最悪なまでに愚劣な手段ではあるが過去でセリアの弱体化を図る等という卑怯極まりない手がある。しかし、狼少女が果たして弱くなるかは定かではない。ユウタが向こう側にまた行けるかどうかも未定だった。


『泡』と『全て掌の中』について知るセリアは、ユウタのスキルをどの程度把握しているのか不明である。魔術でセリアを倒すのが一番なのである。スピードにパワーを兼ね備えたタイプであり、魔術も不明ではあるが使いこなすようにユウタにはわかりつつある。


 セリアが使う一つの魔術は影を使った影魔術であった。『影分身』『影移動』といったスキルは移動力に回避力まで補助する魔術であり、手数と攻撃にも使える非常に優れたスキルである。


 とはいえ、実際にセリアと相対した場合ユウタは勝てる気が全く湧き上がらないのは異常な事であった。少なくとも、誰と戦っても敗北する予感は得ないのある。それが、セリア自身の戦闘力なのか、はたまた何らかのスキルのせいなのであるか不明であったけれども。


 今この時点でもユウタは絶えず『泡』に魔力の貯蓄を行っている。それをセリアは見破っているのであるのか。ユウタにも知りえない秘密を、セリアは握っている事になる。仮にも飛行機に追いつく速度で空を飛べる事を隠していたのだ。それともに、セリアに対する疑念が雲のように湧き上がって来る。来るのであるが、ユウタはセリアを責める気持ちにはなれない。


 誰しも秘密の一つや二つは、持っているモノである。


 ロシナが寄越してくれた本には、封印魔術などは見当たらない。各種スキルの強化方法などは、載っているのだが。同様に『泡』『全て掌の中』といった魔術についても記載はなかった。とはいえ、考えてみればセリアの使っていたスキルも不明である。

 

 絶大な威力を見せた魔槍技 絶槍雷神。

 キューブログから魔槍技というスキルは確認されているのであるが、それとて魔剣技を持つ魔剣士というジョブとは別個のジョブのようである。


 つまりは、流派なのかスキルなのか。不明にも甚だしい。


 野戦病院と化した場所に戻ったユウタは、近くで肉を焼き始めた。

 ゴブリン相手にスラッシュを試し切りなどしてみるのであったが、その効果はロシナの記載している効果よりも遥かに高い性能を示していた。メインのジョブは冒険者から冒険家へと上がっている。上級職かと思いきや、只の二次職という現実が待っていたのであった。それを置いておくが、こうして肉を焼いているのもその実肉料理の練習である。


 ユウタが持つジョブである料理人のスキルを使う事で熟練度を上げるという事だ。ドス子を召使いとして前衛としてこき使う筈が、こうして肉を焼いては焼肉大将しているのもメシ使いするのもやはり何か納得のいく好感が欲しいが為。何かあやふやなままに関係を結んでしまった七人とも、きっと良好な普通の友達としてのようなそんな関係を結べる。と愚にもつかない考えを始めていたのであった。


「ほい」

「む」


「できた」

「ああ」


 気が付けば、ドス子が食べる筈のそれを。


 隣に座る狼耳の少女が尻尾を振らしながら、食いついている。出会った頃の慎ましさが懐かしくなるほどの傲慢さであった。セリアの隣には雪城。対面に腰を掛けるドス子やエメラルダ、ユミカといった面々は物欲しそうに見つめるのだ。ユウタは堪らず、セリアに声をかける。


「セリア食いすぎだぞ」

「いいや、ここは戦場だ。食えない者は、食わないのに等しい。姉上も言っていたしな」


 本当にいいのか。と周りに視線を投げるユウタは、それが杞憂に過ぎない事を知った。

 あれであった。周りの女子は、大人しそうに見えた。という奴である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ