13話 村にリターン! (ユウタ、セリア、モニカ、アーティ、ロイ、ロクド、ゴメス、村長、ゴブリン)
この状況を考える。ゴブリンメイジは2かアーチャーも2。
弓矢対策・数と引っくり返す・魔術対策ここらへんしないと死ぬ。
魔術が鬼門なんだけどなあ。魔術防御力がまずないとこが・・【サンダー】の電撃とかうけたらどうなるんだ。死ななきゃいいが。
魔術対策がバフだけという、【アースウォール】の土壁がどの程度か。
ゴブリンメイジがひっくりかえってくれりゃ勝ちなんだが。
うまいことねらうしかないなこりゃ。
村人たちも全滅したわけじゃないし。
セリアはともかく、俺とモニカは魔術を受けたら死ぬ可能性大だ。
MPの回復を待つべきだったろうか。
いや、それでは間に合わなかったと思う。
走りながら考える。
「先にいかせてもらう、ご主人様。」
なんだかセリアは妙にテンションが高いな。いやいいんだやる気あるっていいことだし。
ホブゴブ連中が背後にせまる俺たちに気がつく。
【ウィンドウォール】をホブゴブリン連中の前に張って、その間に間合いを狭める。
杖を構えた二匹のゴブリンメイジが放ってくる炎が風の壁に阻まれた。なんとか【ファイア】は防げるようだ。
ゴブリンアーチャーの弓が【ウィンドウォール】の見えない壁にぶつかって弾かれる。
ゴブリン達の攻撃にお返しとばかり【サンダー】の電撃で一匹倒した。
ゴブリン達が風の壁に気がついた所で【アースウォール】を使って土壁に切り替える。連中を崩してから勝負だ。
ってセリアは【ウィンドウォール】飛び越えてた。もこもこと盛り上がっていく土の壁【アースウォール】もできるがまだ【ウィンドウォール】は解けない。
ホブゴブ連中を大きく分断できているが、こちらもセリアと分断された。
村の中ではゴブリン達にダメージの期待できる【ファイアウォール】が使えないのが痛い。
風壁は不味い。風の壁で火が勢いをまして、炎が燃え広がって屋敷や周辺に移ると村人と俺とモニカは熱で死ぬな。
MP回復薬を飲む。
ワンドをもつゴブリンメイジに剣投げをしてみる。
【ウィンドウォール】の効果か?まったく違うアーチャーホブゴブリンに剣がつき刺った。
これは味方誤射をしかねないな。フレンドリーファイアはしたくない。
風の壁を乗り越えたセリアが次々にホブゴブリンを斬り倒していく。縦横無人の無双状態だ。またも、セリアに頼ってしまう。押されていた村人達もどうにか体勢を回復して持ち直したようだ。勢いを取り戻した村人達はホブゴブたちとやりあっている。
セリアなにかわだかまりがとけたんだろうか。動きがさらに速いような。
好転した状況を見て安心しきっていたんだろう。魔術のダメージがどんなものか実体験することになった。
残ったゴブリンメイジにサンダーを放つと同時に、相打ちでゴブリンメイジのサンダーをもらう。
っていうか多分もらった。見てからよけるとか無理だし! 凄まじい衝撃だ、静電気なんてもんじゃない、鎧の上から直でくる。落雷をうけたことはないが、こんなもんなのか。
自分に【ヒール】だ。やばい死ぬ。ってさらに【ヒール】に【リジェネ】を自分に掛けながらと【アースウォール】を目の前に出す。
さらに【サンダー】をもらったら死ぬ。死んじゃう。よけたらモニカがゴブリンメイジの【サンダー】の餌食だし。
【アースウォール】が出来るまでにさらに撃ち合う。ばばば、自分でもなにいっているのか。棒立ちしてちゃなあ・・死ぬのか俺。
ゴブリンメイジは倒せただろうか。
生きてたら対魔術用の盾でも・・装備はもちっとましなものにしたい。
なにか呼ぶ声が聞こえる。これが冥界なのか? 三渡の川か。お花畑が。
口になにか流しこまれるような。HP回復薬だろうか。
「ご主人様しっかりしてください。大丈夫ですか?」
おお、生きてるって素晴らしい。モニカの唇の感触は・・全く記憶にないのが残念だ。本当に。
「なんとか生きてるよ。死んだかとおもった。ありがとうモニカ、助かった。」
【ウィンドウォール】で先制は不味かったかなあ。しかし、視界がなければ【アースウォール】を当てるのも難しい。というか無理で。
死んじゃおしまいじゃい。すべて気合で乗り切った世代じゃけど。親父達は竹槍で戦闘機戦車相手にするんだっけ。
手が震えてる。やっぱ弓で援護すべきだったか。足がガクガクいってうごかない。
【サンダー】には麻痺効果付属してるのか・・? 神経がイかれたのか。麻痺解除薬でものんでおこう。
セリアとモニカでペアしてもらうどころか。モニカと俺でペアだ。
【アースウォール】を避けてこちらにくるホブゴブリン。
壁の横からでてきたところに銅の槍をだして、串刺しにする。
倒れそうになりモニカに支えてもらってしまった。
体はたたないが別の所はたちそうだ。
情けないことだが、このまま倒れたら起き上がれそうにない。
さらにこちらに飛び込んでくるホブゴブリンを刺すが勢いがなくよけられってしまった。
上段からくる剣を銅の槍で受ける。横からモニカがそれを援護して斬り倒す。
そんな連携を2回か3回繰り返してどれくらいたったろうか。一瞬だったのか数瞬だったのか。
5分か10分たったのだろうかもうわからない。
壁の向こうで歓声があがった。勝ったんだろうか。
◆
某日某時刻 村
森からまたゴブリンどもがやってきてる連絡をうけて万全の体制を敷いているはずだった。
アーティやほかの女子供は屋敷の中にいれているし戦える村人は全部でてきている。
ホブゴブリンどもはこちらの3分の1もいない。楽勝だ。
その考えが崩れるのもすぐだった。
ゴブリンメイジにアーチャーそしてホブゴブリンたちは武装を強化していた。
ホブゴブリンが盾になり後ろからメイジやアーチャーの攻撃で村人たちはやらていった。
どんどん削られて、そして村の屋敷まで押されてしまった。
村人もうさっきの半分だ。けが人を中にいれても。
「ゴブリンどもめ、くらえ!」
懸命に敵の攻撃を防ぎ銅の槍で手傷を与えるも相手にはゴブリンクレリックがいて傷を直してしまう。
位置が悪くて弓が届かないのも痛い。もっと手前にゴブリンクレリックでてこいと思う。
そもそも農夫ばかりでほとんど弓を射ることがない。
こちらには魔術士も治癒士もいない。正面からでは3倍の数もまったく意味がなかった。
もっとひろいところでやるべきだったんだ。取り囲むように、包囲して。
全く同じやり方で勝てるとみなおもっていた。僕もそう思った。
「ロイ君最悪の事態になれば女子供は悲惨な目にあうだろう・・・彼女ら皆を逃がしてくれ。」
「ロクドさん、そんな・・まだいけます!」
アーティのオヤジさんだ。村長にかわってみなをまとめてくれる好人物でもある。
「残念だがここが最後のラインだ。逃げられるかどうかわからないが。女子供の半分だけでも逃がしたい。連中が半分に別れればどちらか逃げられる可能性もある。全員捕まるよりはマシだろう。」
「でも!」
それでもみんなを見捨てて逃げる?・・そんな馬鹿なことできない。
「アーティの事を頼みたいんだ。君にしか頼めない。」
ダメだ、目の前から涙が溢れてくる。
「ロクドさんこっちにある馬車の準備はおわっているぞ。ロイ坊や、みんなの子供達を頼むよ。逃がしてやってくれ。」
ゴメスさん・・・馬車で早く逃げろってことなんですか。
「ロイ君、君にしかできない。君にしか頼めないことなんだ。娘を小さな子供達を頼む!」
ああ・・・二人とも死ぬ気だ。あの二人を盾に逃げるのか僕は。
急いで邸宅の中に入る。みんな不安そうだ。ああ・・さっきから涙が止まらない。
「ロイ。みんなはお父さんたちは?」
「アーティ、ロクドさんが・・逃げろって。子供たちだけでも」
「そんな・・・嘘だよね」
だめだ・・・逃げるなんてできない。君を子供を連れてほかのひとは置き去りにするなんて。
「アーティいいかい。外に馬車が用意してある。それで子供達を載せて逃げるんだ!」
ああ、そうだ。逃げるのはアーティ達女の子達だ。最後まで諦めない!
それだけ言うと元の所に走りだした。
ああ神様、みんなをお守りください。
こんな村にだれも助けに来やしない。町に助けを求めにいくには遠すぎるんだ。
力が。力があれば皆を守れただろうか。後悔したくない。
「ロイ坊やどうして戻ってきた!」
「すいません、ゴメスさん。僕も戦います! 後悔はしたくないんです。子供達はアーティに任せました。
守りきって勝ちたい! 勝って生き残る。死ぬために残るんじゃありません!」
「そうか・・・生き残るか。決意は硬いようだな。」
見るとみな矢傷などで負傷して下がった村人を除いても半分ほどになっている。
死亡したほとんどの村人は魔術で即死だった。
それでも。生き残る!。
ゴブリン達の後背になにかが現れたようだ。
そしてそのひとは現れた。
「・・・おお! 勇者様だ。勇者様がきてくれたぞ!」
だれがつぶやいたのか。まるで銀の髪はマントのようだった。
多分冒険者か・・・何かだとおもうけれど。なんでこんな村にこんな時間にこんなタイミングで。
その手の剣が、闇夜にあって炎の光を反射して煌めく度にゴブリン達は倒れていく。ああゴブリンメイジがアーチャーが狙っている。
「危ない!」
思わず叫んでいた。同時にゴブリンメイジとアーチャーの足元が持ち上がり壁のようになる。
「いまだ! みんなチャンスだぞ! 」
そうだった。混乱しているゴブリン達。いまこそが好機だった。
皆ぶつかるように突撃していく。無力感だったんだ。
もうダメだと、皆どこか諦めていた。
魔術で灼かれ、矢で貫かれ、ゴブリン達にはかなわないと。無意識のうちにそう思っていた。
「うおおお! つっこめええ!」
「おー!」
ゴブリンメイジの攻撃が来ない。あの人が倒したのだろうか。
周囲を見ればゴブリン達は潰走していた。土壁の後ろでゴブリン達は倒れる。
あの人の味方がいるんだな。なら、やはりこの人は勇者様なのだ。
皆の歓声が上がる。勝ったんだ。生き残ったんだ僕らは。
◆
壁から這い出していくとセリアが囲まれていた。
「ありがとうございます勇者様」
「このままわしらは、もう全滅するだけだと思っとりました」
【ウォーター】を使って水を放出すると家から吹き上がる炎を消していく。
なんかやりきれない。おかしいな。あはは。あれ、違うよな。
「よかっただー。ところで勇者様お名前を教えていただきたい。」
淡々と火事を消す。
「セリアだ。あと勇者ではない。勘違いだ。」
周囲の村の火事を消しに行く。村人に囲まれるセリア。まだまだ、話と歓声は終わりそうにない。
「あのーご主人様、よろしいのですか?」
ああ、セリアのことかな、それとも囲まれていることなのか? 俺に休めってことなのか。
「ああ・・・あれくらいは。いいんじゃないかな、実際大活躍だったし。セリアにしか出来ないことだから。モニカはモニカで頑張ったよ」
あんな突撃はさせられないからなモニカには無理だ。
「あのご主人様・・・ありがとうございます」
なんだかとっても嬉しそうだ。唇の感触の記憶がないのが残念すぎる。もう一回してもらいたい・・・
「おお、ユウタ君。君も・・・まさか来てくれたのか」
振り返ると、そこにはゴメスさんがいた。
キューブステータス サナダ・ユウタ 16才 冒険者
装備 鉄の剣 チェインアーマー 銅のメット 硬い皮のブーツ 木のバックラー 銅の篭手
邸宅有り セリア 人狼 モニカ 鍛冶士
スキル テレポート PT編成
特殊能力 なし
冒険者LV24市民36村人33戦士31剣士31弓士29勇者31狩人33魔術士26
商人23薬剤士23騎兵22弓騎兵22格闘士22英雄22治癒士24料理人21魔獣使い21
付与術士15錬金術士15
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