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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
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109話 懲りない男(主人公)

 皆さんは、行き倒れを見つけたらどうしますか?

 1、無視する

 2、介抱する

 3、やっとく


 どれでしょうか。

 ま、俺は行き倒れた経験があるので2だった訳です。

 只、それがまた問題を引き起こしそうな予感で頭が痛くなりそうです。

 落ちているからといって、安易に助けたりすると大変です。


 敵だとわかっていれば、さっくりヤッテしまうのがベターでしょう。

 しかし、その全知という訳ではないので、素性を確かめようなんてすると泥沼です。

 とにかく、お荷物で動けなくならないように気をつけましょう。


 おまいうといわれそうなのですが! 

 女の子だと、俺の性格上殺せないので大ピンチなのです。

 良く考えて行動しないのは俺の欠点です。









「はあ。マジ疲れたわー」

 

 返事を返してくれる相手がいない。でも、一人だから吐き出せる愚痴というのもある訳で。

 ちょっと寂しいけれど。何だって俺は森の中を一人で特攻してみたのだろう。

 ま、一人の方が色々スキルを試せていいのだけど。

 逃げる分には困らないし。行きたい所にいけるのは、開放感がある。

 ただ、森のトカゲを排除するのは冒険者ギルドでクエストでも受けてするべきだった。


 一ゴルの得にもならない。よくよく考えて行動しないとなあ。 


 村に戻った俺は、ハイデルベルで拾った樽に座って休憩している。

 村人達のお祝いはまだ終わっていなかった。まだまだ酒盛りは続いていた。

 森の様子が気になるので、森の前まで戻ってみる。

 

 どうやら、以前抜けた時のようになっていた。

 あの山みたいなのが出てこられたら終わっていた。

 破壊工作してから、気が付いたんだが。


 こういうのって、冒険者が依頼を受ける形でこなすもんじゃないのかと。

 ふー。だけど、村の為にあれを放って置いたら詰んじゃいそうだったし。

 しゃーなしだな。


 森の入口で、俺は人が倒れているのを発見した。

 近寄ってみると、全裸の人だ。

 赤い長髪の人らしいのがポイントでうつ伏せに倒れている。


 近寄ってみるか? しかし、如何にも怪しい。

 だいたい、先程までトカゲが跋扈していた森なのだ。

 取りあえず介抱してみるか。


「大丈夫ですか?」


「・・・・・・」


 返事はない。どうも昏睡状態のようだ。

 その女の子でした。抱きかかえると、全裸だったので胸が丸見えです。

 周りには誰もいない。俺は自然と唾を飲み込んだ。


「(今でしょ!)」


「(どうした)」


 そういえば居ましたね。一匹ですが。


「(ついてるよ。チャンスだよ。そいつを奴隷化の魔術で下僕に変えちゃおうよ)」


「(は? 何で?)」


「(わかるでしょ。そいつドゴスギガースだって事さ。多分君を追いかけてきたんだろうけど、空間を越えてこっちにきた上に人化で昏倒しているみたいだね。ささっ。やっちゃおう)」


 いいのかな。いや駄目だろう。

 寝ている人の唇を奪うとか。鬼畜だぞこのヒヨコ。

 懐から出ると、地面を跳ねて俺と女の子の周りを回る。


「(無茶をいうな。この女の子はどう見ても人だぞ?)」


「(ふーん。いいの? 村が滅んでも? この子が目を覚ましたら手に負えないと思うよ。セリアと同格とまでは行かないにしても、かなりの戦闘力だよ。ボクのいう事聞かないで、後から炎系の竜言語魔術で村丸焼きにされて泣かないでよね)


「(本当なのか?)」


「(ボクはいつも君の味方をしているのだけどね。信じて貰えないのは悲しいなあ。・・・・・・ああっもうまだるっこしいね。さっさとキスをするんだ。後はボクが何とかしてあげるよ)」


 周囲を回りながら何か魔術でも使っていたのだろう。

 地面が光だして、魔術的な文字が浮かび上がって来る。

 俺がなんやかんやでキスをしないのに痺れを切らしたDD。

 手乗りサイズなのに、ぐいぐいと頭を押して来る。なんか妙に力が強い。

 そして何か妙だ。凄くテンションが高いような?


「(待て待て。あっ・・・・・・)」


「(・・・・・・)」


 軽く唇が触れてしまった。柔らかい感触だったが、女の子には悪い事をしたなあ。

 DDがピィピィと言っている。周囲に展開した魔術による魔陣が回転し始めた。

 地面の光が、少女に吸い込まれていく。

 

 事が済んだのか。

 俺はイベントリからローブを取り出す。

 女の子なのだ。何時までもマッパで置いておく訳には、いかない。

 誰かに見られたらどう見ても襲っているのは、俺だ。


 胸の感触がちょっともったいなかったが我慢だ。

 誰が見ているとも限らない。

 水桃のようなふんわりとした感触で、どこまでもめり込んでいく。

 というのは誰にも言えないだろう。後、この子が気が付くまで揉みしだきたかったなんて!


 暫く待ってみる。しかし、目を覚まさない。

 しょうがないので、お持ち帰りする事にした。

 ここで待っていて、ゴブリンやらオークと鉢合わせするのも不味い。

 人? を背負いながら戦える程の強さは俺にない。

 

 見ちゃ不味いと思いながら、女の子にローブを着せる。

 探索も少し位するべきか迷った。が、背中の重みがそれを許してくれない。

 背丈の方はセリアと同じくらいか少し大きかった。

 全体的にやけに筋肉質だ。


 村に戻って目が覚めるまで待つか? いや、もう時間があまりない。

 レクチャー屋に飛ぶ事にした。

 一度は村に戻った方がいいんじゃないかとは考えたのだ。

 けれど、あらぬ噂が立つのは面白くない。


 王都にあるレクチャー屋だが、どうやら繁盛している。

 南国風の果樹が植えられた店の前には、学生が頻繁に出入りしている。

 今日開催されるとかいう武闘大会が、関係しているのかもしれない。


 入口から入っていく。店内は、涼しげな空気な流れていた。

 カウンターを見れば、ココナツさんがこちらをじっと見ているような?

 近寄っていくと、次第に営業スマイルになった。

 しかし、ショートカットの髪が可愛らしい女店長の目は笑っていない。

 やはり、女の子を背負っている俺はとても怪しいのだろう。


「いらっしゃいませ。ユウタ様~本日はどのようなご用件でしょうか」


「こんにちはココナツさん。今日はステータス値について質問をしにきたのです」


「おや~。もしかして、最初に来られた際にはわかっておられなかったのですか~」


「お恥ずかしながらその通りです」


「そうですか~。では、ガンバルに案内させますね~。プチちゃん~ガンバルを呼んできて~」


 どうやら店内でレクチャーしてもらえるのか? 背中の人間はスルーされた。 

 背中の事は置いておくか。

 レクチャーしてもらえるのに疑問がある。どうやってステータス値を見るのか。

 今現在もステータス値は可視不可だ。俺としては、AGIよりはVITで行きたいところだ。


 AGIは脆いからなあ。一、二発で沈むのはいただけない。

 ま、世の中AGI主体といいながらVIT型よりもVIT型っぽい主人公もいたりするけど。

 黒い服を着た二刀持ちの人だったな。

 あの主人公はLUKもマックスじゃないかというツキの良さだったし。

 INTも含めて全て99位ありそうなチートキャラだった。 


 この世界ではどうなっているのか。STR=AGI型も捨てがたい。

 DEX足りずに攻撃がスカスカというのもあり得る。


 こういうの考えるとわくわくしてくる。

 この世界が、ゲームのように必中攻撃とかあるならまたバランスが崩れた物になるのだけど。

 何というか。パラメーターが全てという訳ではないようだ。


 そういえば、ダンジョン経営する許可をもらわなくてはいけない。


「あのココナツさん。お話が」


「はい~。何でしょうか~」


「ダンジョンを開きたいのですが」


「ええ!? それはおめでとうございます。何処に作っているのですか~」


 その後、ペダ村にある砦らしき場所に建設してある事を書類で書く事になった。

 審査は現状で牧畜マップのみのようだ。

 色々書いている内に、ガンバルが現れた。


「それでは、審査の方をしておきますね~。プチちゃんお願いね」


「わかりました」


 冷静な声でココナツさんに返事を返すプチちゃん。

 俺はガンバルと共にレクチャー部屋に移動する事になった。

 案内された部屋は、前使っていた部屋だった。

 どういう仕組みなのかわからないが、室内は清浄な空気が流れていて快適だ。


「ユウタさん」


「はい」


「その。背中の人はどなたなのですか」


「えっと。行き倒れのようです」


「そうなのですか。店長が不審がってましたよ。それでは、ステータス値の検査をさせて頂きますね。こちらの装置にお乗りください」


 背負っていた女の子をソファーに寝かせた。

 それから俺は、円盤の形をした石の上に乗る。

 ピリッととした電流が走ると、検査は終了したようだ。

 

 すぐに、解析結果が出るらしい。

 空中に描かれるフライトモニター。

 そう言えそうな物を見るガンバルは、残念そうな声で告げる。


「残念ですが・・・・・・何度見てもユウタさんの数値はALL1。ランクはHPとMPがEXな事以外最低のGを示しています。これは計測器が壊れていなければ、異常です。正確なステータス値が測れないのはこちらとしても残念なのです。総合的な評価はEとなります。それで、この後はどうされますか?」


「そ、そうですか。え、えーとステータスの割り振りとかどうなっているのでしょうか」


 ショックのあまり声がどもっている。ALL1!? ありえねえ。

 どうなってんだよ。


「それですが、ロックがかかっているようです。こちらではキューブに対して操作を行う事ができません。なお、異世界から来られた人は皆さん総じて成長力が高く、魔力等も優れた数値を示すの普通なのですが」


 モニターを眺めるガンバルは、淡々と事実を突き付けてくる。

 なんてこった。俺のワクワクを返せ。

 HPとMPが高い。まんまタンクとなるしかない。壁というか、補給用というか。


「あの、ロックは外せないのですか。あと転職とかあるようなのですが。効率のいいスキルとかあれば教えて頂きたいのです」


「それでしたら、転職の神殿に行かれてはどうでしょうか。成長に効率のいいスキルですか? 異世界人の皆さんが選ぶのは、【天賦の才】ですね。LVが上がる際に、ステータス値の成長力が1.5倍になる補正は強烈の一言です。必要経験値減少や獲得経験値UP等をつける方が多いですね。最も、【天賦の才】に関しては必要になるSPがかなり高めです。つけられますか?」


「お願いします」


 効率厨である俺は、勿論即答した。

 モニターを指で叩いているガンバルは頷くと、画面を不思議そうに見ている。


「あれ? おかしいな。才能の追加が出来ない。すいません。ユウタさんのキューブはどうも何か不思議な力で封印が施されているようです。こんな事は一度もなかったのですが、調査が必要ですね」


「そうですか~」


 がっくりと肩を落とす俺に慰めの言葉をかけてくれるガンバル。

 少年の顔が心配そうなので、俺もあまりのショックを受けた事が和らいだ。

 つーか、ありえなくないか。俺だけ。俺だけスキルの援助を受けられないとかさ。

 そして、ステータスは最低ランクという非情な結果が待っていた。


 ま、まあ絶望するには早い。色んな職業を取れる訳で、捨てたもんじゃないさ。


「えっと、良いお知らせもありますよ。剣術LV2、拳術LV2、魔術LV2、忍術LV2。これは結構な物をお持ちじゃないでしょうか。普通に、達人クラスの剣技や体技をお持ちなのですね。そう悲観なされずにスキルを磨いていくのが宜しいかと」


「ありがとうございます。それで、その封印解くにはどうしたらいいのでしょうか」


「やはり主神であらせられるオーディン様かトール様に解いてもらうというのが宜しいかと。ですが、大抵の場合に神の試練が待ち受けています。その難易度は押して図るべきでしょう」


 なんてこった。神様に目をつけられているのか?

 封印が神様仕様だと、自力で解くとか無理ゲーな予感がしてくる。

 愛され系ではなく、苛められ系のゲームかよ。

 

「それでは、他に何かご質問等はありませんか」


「ありますあります。じゃあ・・・・・・」


 とにかくQ&Aで解答を貰う事ができた。

 世界の事についてから今までの歴史のような話になった。

 帝国との戦争とか、この国の成り立ちとか。

 今更のようだが、暇がなかったんだよ。


 主神様はどうやら、天界に引きこもっているらしい。

 天界なんてどこあんのよといいたくなる。会いにいくとか、どうすりゃいいんだろう。

 天界にアースガルドとかあるみたいである。

 

 神殿で蘇生させる事が出来るのは主神であるオーディン様の権能らしいのだ。

 これが、その存在を証明しているみたいだ。


 長々と聞いていた。

 そうして聞いていると、すっかり俺は忘れていた。


「(ユウタ後ろ!)」


「------」


「えっ。危ない、ユウタさん!」


 振り返ると、首元で手刀が止まっている。

 ローブを着た行き倒れの女の子だった。どうやら目が覚めたようだ。

 しかし、いきなりこちらを殺そうとしているのか。

 ずいぶんと鼻息が荒い。ぷるぷると震える手には力が籠っている。


 そうした女の子の手を握ると、DDが念話で話かけてきた。


「(ユウタ! 命令するんだ! 殺すな、壊すな、勝手な事をするなって!)」


「おお。素性がわからないんだが。君、殺したり、壊したり、自分で勝手な行動をしては駄目だ」


「------」


 人語が喋れないのか。口から出てくる言葉は、どこか竜言語のようだ。

 あまり学習の度合いが進んでいないので、断定は出来ないが。

 首に突き付けられた手をそっと降ろしてやる。


 顔を真っ赤にしている。長身の美女だ。赤い燃えるような髪が特徴的な子である。

 しかし、従順とは言えない目の光でこちらを睨んでくる。

 トカゲのように縦割れたような青い瞳孔が、どこかあの山のような竜を彷彿させる。


 何かにあらがうような素振りだ。全身に力を込めていたのだが、やがて大人しくなった女の子。

 言う事を聞いてくれたのは何よりだ。

 黄色いヒヨコが女の子に体当たりをしている。全然効いている様子ではないけど。

 目線の位置が俺とほぼ変わらないので、背は高目か。


「あの。ユウタさん、店内での痴情のもつれは勘弁してくださいね」


「あっすいません。そろそろ出ます」


 痴情とかどこにあるんですか! どう見ても女の子にあるのは敵意ですよ。

 殺されかかっていましたよ! DDが使った奴隷化の魔術は成功のようだ。

 これは、いい。


「わかりました。それにしても、ユウタさんは色んな女の人を連れていて羨ましいです」


「あ~いや・・・・・・そう見えるのかな」


「そうですよ。でも、刺されないように気を付けてくださいね」


「ハイ」


 うわー。何気にグサッときました。

 ぶっちゃけ女の子と何の進展もないのですが?

 傍から見ているとそうなるのか。イイ事あってもいいもんなのだけどなあ。

 奴隷化できたからって、あれやこれやと無理やりする度胸はない。

 アルトリウス様との事がなければ、この後予定を全てキャンセル。

 そして、全力で家でしっぽりなのだけど。


 俺とガンバルは、ヒヨコと女の子がキャットファイトしているのを生暖かく見つめていた。

 俺に、何か思い出したかのように声を出したガンバル少年。

 

「あっ。最後にですが、ユウタさんには称号がついていますね。知りたいですか?」


 おや、そんな物があるんですか。

 MMOっぽい定番の奴かよ。まあ、聞くだけ聞いておこうか。


「はい」


「ユウタさんの現在の称号は『マゾ勇者』です。勇者がつくなんて、滅多にない事なんですよ。おめでとうございます」


「はあ。ありがとうございます」


 どう見ても、そのマゾって色んな意味が込められているよなあ。

 奴隷で、執事な便利屋になっているのですがねえ。

 勇者らしく、好待遇なんて事は殆どないし。

 女の子が群がってくるのが勇者だと認識している。しかし、俺には全くそういう事はない。

 

 時間を食いつぶす思考を止めた俺は、大人しくなった女の子と連れて店を出る。

 ヒヨコなトカゲは疲れたのか。懐でお休みだ。

 そろそろ神殿か学園に移動する事にしよう。

 

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