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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
112/709

108話 刺突剣+トカゲは白状する。(闘技場+主人公)

 全天候型の円形闘技場。

 ここで、学園に通う生徒達は武を競う。

 円形に広がる闘技場では、今も試合が行われている。


 セリアとモニカが対戦する相手は、女性六人だった。

 二人が魔術車で出会った者達が含まれている。

 フィナル、センカ、ヘネシー、キチェ、アマネ、リリン。皆、学園生であった。

 

 それぞれ武装しており、男子ばかりの出場者を相手に初戦を勝ち抜いたのである。

 女子ばかりで、チーム戦の初戦を勝ち残る事は稀であった。 


 ヘルム型のプロテクターに縦巻きロールをしまうフィナル。

 同じように後ろに髪を結い上げたリリンは、片手に盾を装備している。

 二人は、長いスカートが特徴な騎士風の装いをしていた。

 身長の方は、セリアと同程度だ。

 

 黒髪でおかっぱのセンカは、露出部がほとんどない重戦士風だ。

 口元を三角のスカーフで隠すヘネシーは、砂漠のアサシンといった風の軽装である。

 フードを被るキチェとアマネは、魔術系らしいローブ姿であった。

 

 全員その服装に、上から貸与のプロテクターを装備している。


「セリア様ごきげんよう」


「フィナルおめでとう。初戦は、楽に勝ち抜いたようだな」


「ええ。貴方に追いつき追い越す為に、修練を積んで参りましたから」


「ほう。では、見せて貰おうか」


「両者よろしいか」


「ええ。よろしくってよ」「ああ」


 審判員が両者に同意を取ると、開始の笛が鳴る。

 互いの距離は、二十mほどだ。

 これ以上あれば、魔術が使える者が多い程有利とされる距離であった。


「------」


 先手を取るように詠唱に入ろうとしたアマネであったが、そこにセリアの肘が腹部にめり込んだ。

 八極拳の如き、肘による攻撃が見事に魔術士を捉える。

 アマネが、前もって張ってあった無属性防御魔術(シールド)

 それは人狼の突進(タックル)だけで、卵の殻の如く割れていた。

 肘を貰い、軽く浮いた女魔術士の身体は、ゆっくりと崩れていく。

 瞬きするほどの時間で相手との距離を詰めたセリアの攻撃は、アマネを戦闘不能にした。


「くっ」


「うそっ」


 アマネは、呻き声を上げて倒れる。

 信じられないといった叫びを上げたのはセンカだ。

 動揺するPT。そんな彼女達に襲いかかるセリアの攻撃は、容赦がない。


「旋脚!」

  

「あっ」


 飛び込んだセリアに反応できたのは、フィナル、センカ、リリンの前衛組だった。

 しかし、それでも後衛組を守り切れない。

 ついで襲ってくる蹴りによる衝撃波は、後衛組の身体を捉える。

 

 前衛組は、避けるので手一杯であった。

 ヘネシーは、キチェを守ろうとしていた。

 だが、彼女の行動は裏目に出る。つまり、スキルによる衝撃波で纏めて薙ぎ払われた。

 衝撃で吹き飛んだヘネシーとキチェは、プロテクターを赤くして地面から動かない。


 この時点で、三人。


「リリンは左。センカは牛乳娘の相手をしなさい」


「了解」「はい」


 フィナルとリリンは同時に、セリアに向かっていく。

 二人掛かりでさえ劣勢なのは、はっきりとしていた。

 しかし、諦めるのは二人の中にない。


 互いの呼吸を合わせて、連撃を放ち続ける。

 刺突剣を構えるフィナルの攻撃は手早く、また懐に入ろうとするセリアを牽制するリリン。

 二人の連携の前に、さしものセリアも手をこまねいているように観客達には見えた。

 

 劣勢か優勢かでいえば、防御一辺倒になっているセリアの方が押されている。

 そのように見えるのだ。

 が、当の本人達には余裕が一切ない。


 一瞬で倒された味方の事は、忘れられない。

 闘技場には、舞台となるリングはない。

 だが、戦闘不能となった学生が邪魔になるという事情はあるのだ。


 モニカを任せれたセンカだったが、こちらも間合いを詰める事に失敗していた。

 投げつけられた鉄球を大盾で防ぐ。

 そして、間合いを詰めようとした所にもう一つ鉄球が襲い掛かって来る。

 

 センカが手に持つのは、槍だ。

 その間合いにさえ入れば、センカのターンになるはずであった。

 しかし、現実は鉄球をガードする。

 少女は、大盾を左手に持ち進む。

 そして、進めば、その分だけ相手は下がって投擲。このパターンに嵌っていた。


 円を描くように逃げられると、打つ手がない。

 程なくセンカは、中央で戦うフィナル達と合流していた。


「センカ!?」


「申し訳ございません。仕留めきれませんでした」


「頃合いだな」

 

 倒れた選手達が、戦闘に巻き込まれないように回収役の生徒によって場外へと移されていた。

 それを確認したセリアは、静かに息を整える。

 セリアの横からモニカは、フィナル目がけて鉄球を投擲した。


「させませんよ」


「そこだ」

 

 鉄球をガードするセンカ。しかし、そこにセリアの攻撃が決まる。

 『北天狼神拳』甲冑殺。実体は盾や鎧といった防具を貫通する内頸気功の一種である。

 手加減されたとはいえ、全身を貫く衝撃。

 盾越しであったが、それに襲われた戦士の身体は、落雷に撃たれたように膝をついた。


「ハァッ」


 倒れる仲間を他所に、フィナルとリリンはセリアを挟みこむ。

 二人の剣先がセリアのプロテクターに触れる瞬間。

 スッとセリアの姿が、二人の前から消える。

 リリンはすれ違いざまに放たれた側面からの掌による一撃で、地面に転がった。


「フィナル。お前一人になった。どうする?」


「無論ですわ! これで!」


 フィナルは、一人になった。果敢にセリアを攻めたてる。

 しかし、少女の攻撃は全く銀髪の戦士に触れる事が出来ない。

 突いて、突いて、引いては突く。


 モニカは、ここで観戦モードになっていた。

 倒れたリリンを場外に出してやる余裕すらある。

 フィオナの刺突は、徐々に激しさを増していく。


 顔面以外に鋭い連撃を見舞っていくのだ。

 対するセリアは、縦の動きで躱している。

 閃光のように伸びる剣。

 だが、【回し受け】をするまでもないのか。敢えて回避する方針のようだった。


 前に前に。フィオナは、更に攻撃の速度を上げる。

 時折セリアが装備するガントレットに火花が走った。

 フィオナの剣を完全には避けきれなくなったという事である。

 

「まだまだ! 決まれハーケンスタブ!」


「むっ!」


 好機と見たフィオナは大きく踏み込むと、身体を舞わせる。

 セリアの上を取るように飛ぶ少女。

 その身体から放たれる刺突が下に位置するセリアに襲い掛かった。


 身体を沈め、咄嗟に床に伏せると、転がって避ける。

 空中からの連続刺突スキル。

 これがフィオナの決め技であった。しかし、セリアは野生の感でそれを躱した。

 セリアを飛び越えたフィオナは半回転して着地。両者の位置が入れ替わる。

 立ち上がるセリアに、落ち着いた眼差しを向けるフィオナ。

 少女の長いコートのような裾が、風に揺れる。


「やるな、フィオナ。また一段と腕を上げたようだ」


「またご謙遜を。わたくし、まだ一つも攻撃を入れられませんのよ」


 セリアが珍しく他人を褒める。だが、褒められたほうは、剣先を手に嫣然と微笑む。

 フィオナの青い目は、笑っていない。

 今も、相手に踏み込むタイミングを計っている。


「そうだとしても、今の貴方に勝てる相手はそういないのではないかな」


「御冗談はおよしになってくださいまし。わたくしは、セリア様の本気を一部でも出させたなら本望ですわ」


「ふっ。なら少しだけ――――――いくぞ!」


 攻守を変えて先手を取ったのはセリアだった。

 銀髪の少女。

 その左拳を警戒するよう上段にレイピアを構えるフィオナは、自身に【シールド】をかける。

 そこに、セリアの拳弾が見舞われた。

 雨というよりは、正に暴風雨。拳によって生み出される空気の塊がフィオナに飛ぶ。

 それは、フィオナに回避出来ない速度と密度であった。


 【シールド】は直ぐに打ち破られ、中のフィオナもダメージを受ける。

 そこに、追い打ちをかけるセリア。


「縦・横波弾!」


「くっ。浮闘術【浮雲】!」


 蹴り上げた足が、生み出すのは空気による縦方向の衝撃波。

 縦に広がるそれと、連続して横薙ぎに放たれる回し蹴り。

 さらには、中空から放たれる連続技であった。


 走る空気は刃となってフィオナを襲う。

 蹴りのモーションを見てから動いては、遅い。

 フィオナは、初動で回避運動に入った。


 横に、上に飛び。足裏に生まれた力場でもって空を駆ける。

 地面があるかのように飛び跳ねるフィオナ。

 少女を、前に進ませないとばかり飛来する連続攻撃だ。

 全力で身をよじって、回避するしかない。

 上から下に避け、空中を蝶の如く飛翔する。

 

 攻撃を避けられる為、緩急をつけるセリアの攻撃。

 そこにフィオナは、活路を見出す。地面を舐めるような低さでセリアの懐に飛び込んだ。


「これで!」


「来るか。だが!」


 並の冒険者であれば、足にヒットの判定を貰うであろうレイピアによる攻撃も空振りに終わる。

 同じように、空中に飛び上るセリア。

 止めとばかり、隙だらけとなったフィオナの頭上を襲った。


 地面からバネでも身体についているように、足で空中からのセリアの蹴りを受け止める。

 しかし、プロテクターは真っ赤に染まった。

 迎撃したのはよかった。

 けれども、装着者の戦闘力や防御力といったステータスがプロテクターに加味されているのだ。

 自然と、受け止めた足及び腰はダメージ判定が敗北を示す赤に染まる。

 プロテクターでなければ、足は砕け腰までぐしゃぐしゃになる。そういう判定だった。

  

「つっ。やられましたわ。これを使う事もできませんでしたし」

 

 短い痛みの声を漏らすとフィオナは降参を告げた。

 後ろの腰に下げているのは、両刃のついた剣である。


「ん。そうだな。身体を鍛える事も必要だ。上達著しいので、見違えたぞ」


「次こそ、勝ちますわよ。あっ」


 倒れたままのフィオナをセリアが抱きかかえる。

 抵抗したフィオナであったが、無駄だと感じたの様子である。

 


 顔を真っ赤にしながら、闘技場の上から連れ出されたのだった。 

 

  









 ペダ砦(仮称)を出た俺は、カズさんの忠告を聞いたものの黒い森に向かう。

 

 天気は快晴。向かおうとした所で何かが引っかかった。

 小屋といった感じのダンジョン入口は、扉を開錠している。

 しかし、少し引っかかりを考えて早まった事に気が付く。

 なので、札をかけておく。『準備中』と。


 せっかくの牧畜マップなので、乱獲されたり、占領されたら困る。

 MMOやったやつならわかると思う。プレイヤーが、ポップ待ちするあれだ。

 馬とか高いわけですよ。捕獲待ちされそうだ。

 モンスターとしての馬が、どういうのを出されてくるのかわからないけどな。


 村人でなんとかしてもらうしかない。

 戦う村人が、キャッチフレーズに浮かんだ。めざせ最強の村人かな。


 俺は砦から森前まで移動する。

 転移門から外を伺うが、大丈夫のようだ。

 味方というかペット一匹と俺だけというのは、少々寂しい。


 【隠形】を使って、森の中に入る。

 相変わらず鬱蒼とした雰囲気の森だ。

 上を見るのが、億劫なくらい高い木が生えている。

 モンスターからも見えない筈だ。

 

 今日は、マッピングの為にひたすらアーバインの町の方まで、探索する事にした。


 道らしい道もなく、【隠形】状態で森を歩いていく。

 途中、蜥蜴の叫び声や冒険者達の戦う姿を見る事ができた。

 少しの間、見学していた。数が多くとも戦えるようだったので、手出しはしなかった。


 冒険者達にいる魔術師の使っていた魔術が目を引いた。

 【アース・ボール】土の塊を飛ばして敵を倒す魔術だ。

 これを上手く使って倒していた。土が、傍にある分魔力の消費も少なく作れるからだ。


 【アース・ジャベリン】これも中々だ。

 下から生えるタイプで、大き目の蜥蜴をこれで倒していた。

 地面から串刺しにするので、強力だ。

 ちょっと絵面がエグイけど。串刺しにして、【ファイア】で炙ると蜥蜴肉の出来上がりだ。


 敵をやりすごすのに、【高跳び】が非常に役立ってくれる。

 【隠形】だけでは、やはり心配だし。

 【壁歩き】なんてスキルもある。これを併用すれば、背の高い木であっても何とかなる。

 職業:下忍を持っている訳で、木から木に飛び移っていきたい所だ。

 

 黒い森ならぬ蜥蜴の森は、かなり上の方にしか枝がない。

 忍者スキル【飛び移り】は、少々危ない。練習したい誘惑はある。

 今は、一人なのだ。

 従って、スキルの練習を兼ねて行動する事が出来る。

 PTだと、どうしても単独で使用するようなスキルは使いづらい。

 

「(ねえねえ。ちょっと聞いてよ)」


 いきなり、DDの声が響いてきた。

 一人になったので、狙ったかのように話しかけてきやがったよ。

 何故、普段は喋らないのか。


「(何だ。俺は、今忙しいんだけど)」


 蜥蜴が、森の中をあちこち闊歩している。

 見つかれば、あっという間に群がって来るだろう。


「(えっとね。・・・・・・ごめんなさい! この空間結界を開いたの僕なの! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいー)」


「(マジかよ。で、それは置いといて。これどうやれば、閉じるんだ?)」


 セリアに聞かれたら、こいつが焼肉になりそうな話だ。

 こんな事を、彼女やアル様には聞かせられない。


「(それは、その。ほっとけば、魔力が切れて結界の維持を出来なくなると考えていたんだけど。えへへ、そのね。んと、ドゴスギガースか他の竜将もしくは竜王の連中が出張ってきているみたい。だから、維持している魔道具を破壊するか、ボスを倒せば解けると思うよ)」


「(それは何処にあるんだ。ボスがいる場所はわかるか)」


 またいい加減なヒヨコだった。何とかなるのか。

 蜥蜴の森を一人と一匹で進でいる。相手に気がつかれないまま移動出来る利点は、でかい。

 MMOでもありがちなスキル:ハイドで、普通にありえない位置まで移動できるそうだ。

 

「(んっとね。魔力が大きい竜種のいる場所はわかるよ。案内できるけど、どうかな。多分そこに、結界維持の為に作られた装置があると思うよ。守る竜種はとっても危険だろうけど)」


「(やばくなったら、逃げればいいか。それじゃあ案内を頼む)」


「(了解だよ!)」


 森の中には、色んなタイプの蜥蜴がいる。

 大きさから形まで様々だ。

 俺は、手乗りサイズなDDの案内に従って暗い森の中を移動していく。

 偶に、【高跳び】なんかを使ってリザードマンの集団をやり過ごす。

 

 ハイド状態だと、移動速度が若干落ちるなんてのもあるのだ。

 ソロで動いている蜥蜴やリザードマンを棍棒で仕留めながら、俺は移動していった。

 棍棒で仕留めるのは、鱗を剣で裂けるとは限らないからだ。

 

 鉄を斬れるほどの剣。そんなのなんてそうそうない。

 ハイド状態から棍棒の一撃で頭部を叩くと、蜥蜴もリザードマンも一撃だった。

 後に死体を残さず、イベントリに入れるのも忘れない。


 やがて、ごつごつとした岩が広がる場所にでた。

 森の中の筈なのに、不思議と境目のようにその地点から先には岩場があった。

 そこに草はない。灼熱の溶岩でも溢れてきそうだ。

 

「(ここかな。気をつけてね)」


「(わかってる)」


 岩場の入口には、見張りが立っている。

 どうするべきか。蜥蜴が二足で直立している。

 これまではやり過ごしてこれたが、ここでも同じようにスルーしていけるとは限らない。


 迷っていてもしょうがない。試しに少しずつ近寄ってみる。

 蜥蜴の見張り役は、気がつかないようだ。

 鼻が悪いのは、奥から流れてくる硫黄の匂いのせいか。

 

 そっと、脇をすり抜ける際には緊張した。

 何せ一噛みで、こちらは即死しそうな図体だ。

 びっしりと生えた緑色の鱗は、剣など受けつけそうにない。

 見張りはきょろきょろと、辺りを見回している。


「(ふー。気が付かなかったか)」


「(そうだね。こっちだよ)」


「(わかった)」


 安い返事を返す。しかし、俺の手は汗でべったりとしている。

 無数の蜥蜴がそこかしこにいるのだ。中央には、何かが積み上げられている。

 それは残骸だ。人の。死体だ。原型すら怪しいが。


 食料にでもしようというのか。蜥蜴共め、ぶっ殺す。

 だが、そんな俺の心情を見抜いたかのようにヒヨコなトカゲが、穏やかな声で話しかけてくる。


「(落ち着いてユウタ。そんなんじゃ目的を達する事出来ないよ)」


「(俺は落ち着いているさ。ただ、頭にくるのは仕方がなくないか)」


「(そうだね。でも、この世は弱肉強食だよ。弱ければ死に、強ければ生き残る。適者生存の法則からは、どんな者も逃げられないよ。僕だって、下僕である蜥蜴がやられるのは、心穏やかじゃいられないんだから)」


「(まさかDD。お前は、俺を裏切ってたりしないだろうな?)」


 色々怪しいトカゲだ。ドラゴンといったり、味方だといってるし、そう思いたい所だ。

 けれど、喋らなくなったり、ごろ寝してたりしてあまり役に立っていないけど。


「(それはないよ。僕がユウタの味方である事は、未来過去永劫に渡って確かな事さ。ただ、君が竜の側に立つべきだと考えているんだけどね。人に疲れたら、何時でも僕と一緒に人を駆逐しようよ)」


「(何を言っているんだ)」


 馬鹿な。人がいない世界なんて考えられない。

 DDの諭すような声で、ぐつぐつと煮えたぎるような怒りが収まってきた。

 こいつの狙いは、人の駆逐なのか。しかし、俺にそんな価値があるとは思えない。


「(人はすぐ裏切るし、つけあがるよ。そうして、君を散々利用したらお払い箱にするんじゃないかな。君を怒りと悲しみの日々から救い出せるのは、僕だけさ。ま、当分は好感度上げの為に導いて上げるけど)」


 どうも、聞いているとコイツは人類の敵なんじゃ?

 そうとしか思えないのだが。

 世界が弱肉強食である。なんて事は、言われずともわかっている。


 日本人だと、そこら辺はぼかして生きていきたいけど。

 世界は、優しくない。

 【蘇生】スキルが有るといっても、死ぬときは死ぬ。

 生き返る事が出来るのは、味方が助けてくれる時だけだ。

 何の役にも立たない前世だったから、今度は人の役に立てるよう働こう。

 なんて考えていたら、いいように使われるだけの人生だと?

 痛い処を突いてくるなあ。まだ、疲れて諦めるには早いだろ。


 偉い先生もいっていた。諦めたらそこでおしまいだって。


 うようよといる蜥蜴達を避けて、進んでいく。人の残骸は、諦めるしかなかった。

 一人で黙祷と合掌。

 そうして、半アーチ状になった広場を見つける事に成功した。

 遠目からでもわかる。黒く円形状の鏡のような物が奥にあった。


 壁を上って、上から破壊した方が良さそうだな。

 普通のMMOだと、ボスと戦闘しないといけない。

 しかし、ゲームと違うのは一匹と戦うと全リンク仕様だということだ。


 なんせ見晴らしのいい広場に群れがぞろぞろと待機している。

 この状況で、一匹ずつ倒すなんて無理だ。

 ただ、登れないような壁でも【壁歩き】で普通に上がれる。

 

 半円形をした壁の上まで上ると、見晴らしがいい。

 硫黄の匂いさえしなければ、観察するのも悪くなかった。

 黒い鏡のような物の前に、如何にも竜と言ったような小さいビルサイズの赤い奴が、居なければだ。


「(あれが、そうなのか)」


「(そうだよユウタ。急いであれの下に土壁の魔術を出すんだ。接近したら、気づかれちゃうよ)」

 

「(了解だ)」


 アーチ状の壁裏にトカゲ共はいない。

 不用心だが、こんなところまで人間が来れるなど想像もしていないのだろう。

 【ゲート】と【土壁】を順に発動させる。

 

 壁裏にできた光る門。

 盛り上がっている地面に押されて黒い鏡は、割れた。

 それと同時に、赤く巨大な爬虫類はこちらに気が付いた。


「(人間だと!? 馬鹿な!)」


 やばい。超怒っている。

 真っ赤な炎をこちらに放つつもりなのか。

 重い声だ。竜の念話がこちらに聞こえているのは、この際置いておこう。

 手乗りサイズのDDは焦ったような声を出す。


「(やっぱり、ドゴスギガースだよ。ユウタ! 早く逃げよう!)」


「(おう!)」


 返事もそこそこ。口を開けた瞬間に、俺は光る門に向けてダイブした。


 直後、炎が壁の上を薙ぎ払った。セーフだ。

 光る門の中に潜りながら、ほっとした。

 あんな化け物と戦ったら、すぐ死ぬわ。

 ネームドモンスターでも最上級といった感じだったしな。


「何とかなったか」 

 

「(上手くいったね)」


「(ああ、これで片付いてくれるといいが)」


 俺とトカゲは村に戻る。

 一つ問題が解決した。そう思いたいな。

閲覧ありがとうございます。


トカゲさんには、まだまだ裏がありそうです。

ボッチになるほど、強キャラぶりを発揮する主人公。

これでいいのか・・・・・・

ゴブリン、オーク、コボルトに亜人。他にも色んな魔物が待ち受けてます。

この先生きのこれるか。

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