107話 鉄球+迷宮。まだ名前はない(闘技場+主人公)
「調子に乗りやがって。この女ぁ」
「たああ」
少年の振るう剣の間合いにまるで入れない。
それどころか相手の鉄球を躱すので精一杯という様相だった。
相手である少女の振るう武器の間合いが、広すぎた。
現在学内にある円形闘技場で行われているのは、学園内で開催されているチーム戦である。
ランキング戦とは別に、チームを組んで参戦する訳だ。
そこで少年ルーデは、仲間と共に参戦していた。
そして、初戦から苦戦である。
相手は二人。ルーデ側は六人だった。
学園内の派閥は、ベルンハルト派に所属するルーデは勝てと言われていた。
しかし、現実は言うほど上手くいかない。
既に、ルーデ側は一人しか残っていない。
周りには、打撃を受けて昏倒するPTメンバーばかりである。
開始から10秒持たないのだった。
武装は、特に問われない。
だが、身に着ける一定の打撃又魔術を受けると変色化する防具プロテクター。
これが、特殊な物であった。
かなりの防御力を誇る為、切ったりする事は凡そない。
そして、ダメージを受けた人間には気絶を誘発させる仕組みがある。
これによって、戦闘をより実践形式にしている訳だ。
元より誤って死亡させてしまったとしても、【蘇生】が可能なように神官か僧侶が待機している。
対人戦闘も対モンスター戦闘も出来るように訓練するのが、この学園のやり方であった。
ルーデは、かなりのダメージを受けつつある。
前面のプロテクターは、死亡を指し示す赤ではない。
だが、黄色からオレンジに変色しつつある。
回復魔術もある為、通常のチーム戦では延々と回復合戦になりがちだ。
盾、遊撃、妨害、回復魔術、攻撃魔術、強化魔術。
こういった役で固められる。
陣形も大抵は、魚の鱗のような陣形がとられる。
盾役をどう切り崩すかがポイントになるチーム戦なのだが、そこに常識を覆す存在が乱入してきた。
セリアとモニカの二人である。
ルーデの持つ剣は刃を潰していない。
しかし、相手の鉄球を受ける度に刃こぼれして、まるで刃引きをしたかのようだ。
ボーイッシュな髪型をヘルメットに隠した少女の鉄球がルーデに襲い掛かる。
拳大の物であったが、速度が速すぎた。
ルーデ自体は、中級の魔術も使える魔術剣士であった。
ルーデの得意とする間合いは、至近距離である。
対する相手の間合いは、二十mを遥かに超えるリーチなのだ。
「糞っ!」
悪態をついてしまうのも無理はない。
【ファイア】や【サンダー】といった魔術を打ち込んでみるが、相手の盾で防がれダメージが浸透しない。そして何より問題なのが、魔術障壁である【シールド】を破壊して飛んでくる鉄球の速度だ。
仲間は倒れた。援護も期待出来ない。
銀髪の最強が見守る中で、少女の振るう鉄球を避けつつ、一撃を見舞わねばならない。
そんな剣士の動きを縛るように鉄球は動きを変えた。
「何だと!」
あり得ない動きだった。物理法則を無視した鉄球と鋼線が、ルーデの動きを縛る。
全身の力を込めたように、ルーデは暴れた。
だが、解けない。稲妻を鋼線に流してみる。
盾と一体になった鉄球の鋼線は、電気を盾まで伝えた。
途端に、怪しい光を盾が放ち始める。
(しまった――――――)
ルーデは観察が足りなかった。
相手の盾が、ルーデの火炎、稲妻を受ける度に微かに輝いていた事を。
初見で、少女の動きはぎこちなかった。
故に、セリアのお荷物でしかない。鉄球にメイスを持つ鈍重な戦士。そう見えたのである。
強化魔術【ブースト】
少年が唱える。それは、筋力を強化する魔術である。
次にルーデが取った行動は、力で振りほどく事であった。
そんなルーデの考えを無視するように、間合いが詰められる。
(近寄るか。むしろ好都合!)
好機であった。ルーデの魔術はそこそこの腕。
むしろ、鉄球を受け止めるだけの剣士としての技量こそが本分。
全力で走り出そうとした足が、鋼線にからめとられた。
転倒したルーデをなおも引きずる。
そのまま戦闘は終わりをみるかと思われた。
が、態勢の立て直しを図るルーデは地面を蹴る。
空中からモニカの頭上を取り、斬撃を見舞おうとした。
ルーデの剣先が少女に届く事はなかった。
空中で一回転。
しかし、剣を受ける事なく間合いを離したモニカは、ルーデを振り回し始める。
(駄目か。しっかし、この女胸デカ過ぎ。何食ったらこうなるんだよ)
地面に叩きつけられるルーデは、試合終了の合図を耳にしながら気を失った。
◆
11日目の朝だ。空は馬鹿みたいに青く澄んでいる。
肺に吸い込んだ空気が心地いい。
掃除に洗濯を終えた俺は、DDを懐に入れて出かける事にした。
傭兵集団に襲われたペダ村は、人で溢れていた。
道端で寝ている村人もいる。騎士に、冒険者に、村人が祝っているようだ。
ペダ村に転移した所で尋問を受けたのは、ショックだった。
すぐに解放されたけど。
転送小屋をでて、宴会場と化した広場を抜ける。
道具屋に向かって歩いていくと、ロクドさんやドスさんの酔った姿が見えた。
無事だったようだ。
道具屋の扉を開ける。
中には、恰幅のいい商人ゴメスさんがカウンターに座っていた。
買い物をする複数の冒険者達の姿も見える。
「こんにちは、ゴメスさん」
「おや、ユウタくん。もう動けるのかな」
「ええ。村の状態を聞きに来たのです。話を聞かせてもらえませんか」
「わかりました。おーい、サラ。店番を変わってくれ」
店の奥から代わりに、東方風の奥さんが出てきた。
他にいた冒険者達もさらさらな髪の奥さんに、目が釘付けだ。
暑苦しいゴメスさんには、不釣り合いだよ。
しかし、ゴメスさんですら結婚しているのだ。
俺にだって、春がやって来る筈である。
アルトリウス様がいるじゃないかと言われるかもしれない。
だが、待ってほしい。四六時中監視されているようだと、息苦しくないだろうか。
あと、浮気しないでもいきなり後ろから刺されたり、監禁されて達磨にされそうな気がする。
気のせいならいいのだけど。
俺とゴメスさんは外に出る。裏の家で話をするようだ。
ヒヨコがもぞもぞと動く。くすぐったいのでやめてほしい。
中かと思えば、庭だった。
「さ。座ってください」
太い指に傷だらけの腕が、木製の椅子を差し出す。
大分苦労しているんだな。
「ありがとうございます」
「さて、村の現状でしたな。何から聞きますか」
「では・・・・・・」
村は何とか守られた。しかし、肝心の麦が焼かれた為、財政的に相当厳しいみたいだ。
生きていくので手一杯というのが現状らしい。
そして、麦酒を出しているのも頭が痛い事なのだとか。
着任して、早々に税金回収不能だ。3公7民どころか、0公に。
俺は頭を抱えるしかない。しかし、実際頭を抱えたりはしないが。
またデブに嫌がらせをされると、詰んじゃうな。
こっそり始末するか?
奴が怪しいとはいえ、この状況でやればどう見ても怪しいのは俺だ。
いや、村人に疑惑が降りかかるかもしれないが。
事故に見せかけてやるか。出来るか否かで言えば、出来るだろう。
デブがやったという確証がないままやるのは、気が引ける所だ。
だが、このままやられっぱなしだと、早晩村は滅びる。
そんな俺の思考を他所に、ゴメスさんは元気なようだ。
村では麦が焼けたが、食い物は売れている様子だ。
道具屋でもポーション類やら傷薬が大量に売れているとか。
悪い事もあれば、良い事もあるということで。
麦の改良とか、ニ毛作に手を出してもいい。塩田を開発するのは無理か。
生産系に手を付けるのも有りだな。
小さい村なのである。何時の間にか三百人超えてるけど。
村人を飢えさせず、尚且つ短期で金になりそうな物と言えば?
パンやセメントに手を出している。だが、まだ足りない。
紙? 他所でもやっている可能性は非常に高い。
異世界人は、俺だけではないのだ。当然先に訪れた奴らの方が有利だ。
「という事でして、村の損害は大きいです。その、今季は・・・・・・餓死者を出さないようにするだけで精一杯かもしれません。何とかユウタくんの力を貸して頂きたい」
「わかりました。まかせてください」
二つ返事だった。
何とも軽く安請け合いしているな。
うーん。まあ、何とかなるでしょう!
と、言えたらいいのだが。簡単に出来る家庭内手工業でいくしかない。
ならば、裁縫か或いは陶器。物を作る事で何とかしよう。
その為には、鉱山で堀るしかないな。
ふと、近寄って来る気配がある。
背後を振り返ると、水色の髪をしたちびっこが慎重に歩いてくる。
「ユウタお兄ちゃん。これあげる」
「! ありがとう」
アクアが運んできたのは、一杯の麦酒だった。
少女が見守る目線が俺に突き刺さる。
正直いって、俺は常識人だ。従って、二十歳未満で酒を飲むのには抵抗がある。
硬い事いうなって? 飲んでも酔わないからなあ。水と同じなのだ。
「じー」
「どうしたのかね。酒は駄目なのかな」
しかたがない。一口飲んでみた。
不味い。こんな物を良く飲んでいるなあ。
日本で飲んでいたビールとは雲泥の差だ。糞不味いといっていいだろう。
どう不味いっていうかというと、そのとても酸味が強く、炭酸がない。
抜けきっているというLVじゃあない。黒いし、人の飲む物とは思えない。
これは、製法が不味いのだろうか。
皆気持ちよく飲んでいる訳だが、流石ファンタジーだ。
飲んだ所で、ゲロを吐いてしまった。
当然、隠れて吐いたのだが。アクアがニコニコしているので、不味い顔を出来なかった。
オカワリを持って来られる前に撤退しよう。
シルバーナが残っていないかな。
「それでは失礼しますね」
「そうかね。また来てくれたまえ」
俺がその場を離れようとする。
暫く歩いた所で、ヒヨコが暴れ始めた。
懐から飛び出すと、またもどこかに案内をするように翼を振る。
「(おいDD?)」
返事が無い。どう見ても知性の光が動作にあるのだが。
ぴょんぴょん、と飛び跳ねて移動するヒヨコの後ろをついて行く。
このヒヨコなトカゲが後ろをつけている相手は、なんとアクアだ。
どういう事なのだろう。
トレーを抱えた少女が、村長宅に向かって歩いている。
そこに、男の子供が三人現れた。何やら声をかけている。
だが、アクアは取り合わずに取り囲む三人の脇を抜けようとした。
子供の一人がアクアの足を引っかけて倒したのだ。
なんて事しやがるんだ。
勿論黙って見ている俺ではない。
子供のいじめ? 糞食らえだ。
「おい、君たち」
「やべえ。大人がきた。ずらかるぞ」
「待ちなさい」
「待てといって、待つ奴がいるかバーカ」
おのれ、クソガキ共め。まあいい。
狭い村の中だ。あえて追う必要もないだろう。
後で、キツイお仕置きが必要だな。
魔術や弓を使って、怪我をさせるのも大人気ない。
が、反省の色がないようなら尻叩き十回位は必要だ。
「大丈夫か」
「うん。平気」
「そうか。いつもこんな事されているのか」
「大丈夫。乗り越えるから。心配しないでね」
「そういうが・・・・・・」
足を擦りむいている。ので、【ヒール】をかけてやる。
淡い光が傷口に流れ込んでいく。
血が出ていたが、止まった上に皮膚まで元通りになった。
【ヒール】万能すぎるなあ。
「元通りだ。痛みはないかな」
「うん。ありがとうお兄ちゃん」
「そっか。それじゃあ。またな」
少女は割れたトレーを手に立ち上っている。
俺は、見送られながらその場を後にした。
村長宅に先行する。
村長さんは、いきなり現れた俺に驚いた様子だった。
壁ドンする勢いでまくしたてた俺は、自分でも何を言っているのか。
よく覚えているのだが、周囲がドン引きする内容であった。
話終えた俺は、「何分子供のする事です。ユウタ様。よく言って聞かせますのでご容赦を」と、言う村長の言葉で我に返った。
我ながら脅迫じみた事を言うとは、反省しないとな。
そそくさと、退出する俺を止める村人はいなかった。
詳しい事が省かれているのは、俺がついカッとなっちまったぜ状態だったからで。
多分あのガキ共は、アクアに好意があったから絡んだのだ。
思い返せば、村長さんに人格を疑われそうな罵声を浴びせていた。
鼻息あらすぎたなあ。
気を落ち着かせた俺はシルバーナを探してみる。だが、手下共々どうやら帰ってしまった様子だ。
見当たらない。PTが一人と一匹か。これは不味いな。
しかし、居ない者はしょうがない。俺は、一人で村の西側にある砦もどきまで移動する事にした。
森の入口にある砦もどきまで転移門を利用して移動する。
中には、冒険者とか騎士達が駐留していた。
当然いきなり現れた俺は、尋問を受ける事になる。
以前出会っていたカズさんが、いなければどうなっていた事か。
「傭兵かと思われて、危なかったな」
「はい。助かりました。しかし、中は凄いですね。何と言っていいか」
「まあな。誰も止めない事いい事に勝手に住居を作りまくってる。本来なら、区画整理とかして建てるべきなんだろう。ユウタが森に向かう為ここにきたってんなら止めた方がいいな」
「というと?」
「見ればわかるな。ちょっとこっちにこい」
つれていかれた先は、砦の外壁だ。
遠目に見える森は静かだ。黒髪黒目の青年カズさんは下を指さす。
堀だ。そにはトカゲの死体が大小無数に埋まっている。
「これは攻められているんですか」
「そうだ。村が傭兵に襲われてるのに冒険者の数が少なかったのは、こいつらのせいだったんだ。森に攻め込むって話もあるんだ。丁度よく、騎士団もいるしな。早めに掃除して、空間接続型の結界を解除或いは破壊しないといけない。ってのが魔術師達の見立てだ。この空間接続・・・・・・」
長い。
カズさんはオタっぽいなあ。何というか、解説好きのようだ。
ともあれ、森の状況は良くないみたいだな。それにしても結界なんて不思議な術はあるんだ。
話が脱線して、空間束縛型、弱体型、生命力や魔力吸収型等、色々あるみたいな話になる。
解除するには、術者を倒す。もしくは接続魔術を発動している魔道具を破壊する。
という事らしい。科学じゃ説明つかないよな。
結界。
この人慣れなれしい。そして、日本人のような気がするのは気のせいか。
やたら、薀蓄を披露したがる所がそれっぽい。それに黒髪黒目だし。トリップした人かも。
親が異世界人って線もありえなくはないかな。
カズさんの話は、長い。
アイテムボックスがチートだとか。概念の流用でオリジナル設定等皆無ゲーだとか。
イベントリじゃねえ。インベントリだろだとか。
カズさんの話を聞いていると、内容が脱線しまくっている。
訳がわからなくなりそうだ。
追及はせずに、きりのいい所で別れよう。
「それじゃあ。カズさん俺はちょっとゴミ処理場所を見てきます」
「お、おお。そうか。まだまだ話足りなかったんだがな。そうだ。ユウタも俺らのPTに加わって探索しないか?」
「すいません。時間がないもので」
「残念だな。森の探索は、一人で行くのは無謀だぞ。フルPTで行った方がいいと思う。気が変わったらまた声をかけてくれ。君とは話があうようだ」
「ありがとうございます」
時間がないのは、本当だ。これやってあれやってが沢山ある。
学園に見学しに行かないのであれば、一緒についていってもいいのだ。
ただ、気が合うかどうかは微妙だ。延々解説しまくるからなあ。この人。
カズさんと別れる。外壁の堀を見ていると、トカゲの死体が焼かれていた。
食料にでもされるのだろうか。同族であるはずのDDは大人しい。
怒らないでってこれの事か? いやなんか違うような。
馬鹿みたいに晴れた空。
俺は、とあるダンジョンの入口である小屋の前に立っていた。
古ぼけた扉は引くと、ダンジョンさんの声が聞こえてくる。
「(ようこそマスター。名も無き迷宮においでくださいました)」
「(久しぶりに聞いたよ)」
「(まだモンスターの配置等されておりません。如何しますか)」
どうしようか。まだ、時期尚早のような気がする。
トカゲの問題に、ゴブリン、オークと片付いていないのだ。
加えて、村の貧困問題。
子供達が殺伐とした感じになるのも、食料の問題がそこにあるのだろう。
村長でもないのに、勝手に亜人を増やしてしまったりとか。
子供もやけに増えたし、縄張り争いでも起こしかねない。
人が三人集まれば、争うというしな。
「(まだ、配置はしないように)」
「(了解しました。マスター。キューブからダンジョンの情報をご確認ください)」
「(わかった)」
こういうゲームみたいな部分はあるのだ。
光る箱を出した俺は、それを手にする。
意識せずともコントロールできるようになるには、まだまだ練習が必要だな。
――――――名無しの迷宮 6層
LV9
経験値・・・600/1200
迷宮スキル 魔力生成 モンスター製造 罠設置 宝箱生成 迷宮拡張 施設設置
捕獲モンスター 黒鬼 サムライ 機械兵 忍者 銃兵 戦車 装甲車 傭兵
SP 60/70
mp 1000/1000
何だかLV一つすっとばして上がっているような気がする。
気のせいか。
周辺で戦闘があったせいなのか、MPは満タンだし。
経験値も、もりもりと上がっている。
迷宮の中は明るい。
扉の向こう側には天井方向が非常に高い空間が広がっていた。
何も無い訳ではない。床には草が生えており、一面が草原といった感じになっている。
何だか凄い変化している。
別段作った訳でもないのだが。
広いので、下の階段ポイントを探すのが大変だ。
「(マスター。ノンアクティブなモンスターの配置は如何でしょうか)」
「(へえ。ゲームっぽいね。どんなのがいるの?)」
「(キューブからリストをご覧ください)」
キューブを出すと、その上にリストが開かれる。
どういう仕組みなのかはわからない。しかし、光で出来ているようだ。
触ると、画面をスライド出来て便利だ。
リストには、ウサギのような奴とかシカみたいなのが映像付きで見る事ができる。
ラビとかディアーとかまんまの奴を配置する事にした。
牛、馬、鶏、羊も忘れてはいない。
他にノンアクティブモンスターで置ける奴はいないようだ。
牧畜マップな一層になりそうである。
草が生えている。だけど、それだけじゃ冒険者は来てくれないだろう。
という訳で、ノンアクティブモンスターを配置してみた。
後は、ボスモンスターと宝箱の設置等を考えないといけない。
他所のダンジョンを見学しにいくのもいいかもな。
只、ノンアクティブなんて狩りつくされて、リポップの心配があるような?
考えは、尽きない。トラップホールの出口はどこなのだろう。
下の階を回ってみようとしたら、まだ準備中らしい。
一面に広がる草の生えた平地にぽつんと小屋が立っているのだ。
すぐわかるけど。ヒヨコは走り回って、楽しそうである。
草食ってるし。雑食なのかな。
この下に降りる階段の小屋。
看板に下層行きの階段有りと書かれているのに、扉は閉まっている。
まだボスモンスターが配置されてないので封鎖してあるようだ。
マップの端から端まで行くには、相当な時間がかかりそう。
「(人が来てくれるといいな)」
「(迷宮の価値は、宝で決まるとも言います)」
「(わかった。また来るよ)」
「(是非、宝を持っておいでください)」
宝物か。要求が厳しいな。
『氷獄石奇宮』とか、凄い名前でなくてもいいのでつけてやりたい。
ま、名前なんて誰かが言い出す物だし。
気にしてもしょうがないか。入口を解放しておく。
そして、俺は名無しの迷宮を後にした。
閲覧ありがとうございます。