105話 気付き
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項目増えてます。何故か主人公が一位になっているので・・・・・・
王都ヴァルハラに存在する宮の一つで、二人の男女が会話をしていた。
豪華な椅子に腰かけたアルトリウスとロシナであった。
黄金の鎧に身を包んだ少女は、神具を取り出すと地図を起動させている。
二人以外の護衛は、待機室の中であった。俯瞰するかのように碧色の線が、ペダ村とその周辺を形作っていく。赤い光点は、アルトリウスが危険と判断する敵の傭兵団。青い光点は、ユウタと村人を含んだ防衛勢力。
先ほどまでは、経済的な話がリサージュを含む文官となされていた。
今は、ロシナだけである。文官達が去った後、赤の騎士はよく通る声で。
「宜しいですか」
「何だ?」
アルトリウスは、物憂げな表情をロシナに向ける。
「ユウタ殿の事です。あのような事を仰せられては・・・・・・。皆、困惑しております。アドルやクリスは、信じているようですが・・・・・・。本当に、本人なのか、血液鑑定、魂魄診断等色々するべきでは? 本人だとすると、彼の周りには五月蠅い娘が揃ってますよ。ステータス等も見る影のない貧弱さですし、今少し調査をしてからでも遅くないのではないでしょうか」
「そうだな。それもいいだろう。が、そうしている間にもシグねえやアルーシュに持っていかれかねん。速さが重要だ。ロシナは、ユーウの空間魔力炉についてどの程度知っている?」
淡々と話すロシナは、偽物の危惧を覚えていた。
焦る必要はないと、アルトリウスに伝えたいのであろう。
アルトリウスはロシナの言葉に軽く頷く。そして、空間魔力炉という単語をロシナにぶつける。
「それは、噂でしか聞いたことがありません。しかし、世界を破滅に導く程の魔力量を蓄えている物だとか。正直に言って、信じがたいのですが」
金髪の青年騎士は、軽くこめかみに人差し指を当てながら答える。
「なら断言しといてやろう。それは、事実だ。空間転送器を作ったのも奴だからな。何故俺がこれ程強いのか。秘密はまさにそこにある。奴が敗れるのはヘタレだからなのだが、殺される程追い詰められるのは解せん。ユーウがやられたとみられる森は、ヘルの支配する冥府への門があるせいで、はっきりとした事はわからんのも痛いな」
虚空より突然現れる白い輝きを放つ大剣。立ち上がり、それを握ると、軽く体を震わせる。
ロシナに見えた剣線は一筋だが、この少女は十閃を超える斬撃をしてのけるのだ。
敵が、サイコロのように切り刻まれた際には、青年の口から呻き声すら出なかった。
一振りで無敵。少女が、戦場にでる事は稀である。
大剣をどこかにしまい、椅子に座る少女の息はまるで乱れがない。
「周辺の様子が掴めないのは、やはり魔力の相互干渉が原因ですか」
少女は、豪華な椅子の横に置かれた酒瓶を手に取ると、硝子で出来たコップに中身を注ぐ。
芳醇な香りを鼻から吸い込むと、少しだけ飲む。
そうして、ゆったりと顎を引く。
「ああそうだ。おかげで、奴の手駒であるゴブリンやオークといったモンスター共の動きが掴みづらい。ルナが遅れを取るのも、そこら辺にある。だが、セリアを失ったのは特に効いたみたいだな」
鎧を軋ませる少女は、碧の線が滲んだような映りになる黒き森周辺に、苛立つような声音であった。
「なるほど、それで何日も捜索に手間取ってしまったと。セリア殿の件、アルトリウス様も一枚かんでらしたのですか」
「・・・・・・ルナの取る金融政策は、非常にうざい。ばら撒き型の政策等、市場経済を後押しする物のようだが、王家に領分に手を突っ込んでいる事を理解出来ていない。まず、マリア姉に相談だろう。セリアや四騎士が纏まると、大抵実現出来てしまうからな。根回しをしない、あ奴が悪い。援軍の件はしらんぞ。好色豚どもが這いずり回っているようだな。色気を振りまいているから、ああなるのだ。む、不味いな」
ルナと呼び捨てにするアルトリウスの表情は一転して、硬い物になった。
一貴族が、王政を掻き回す事に苦い物を味わっている様子である。
一気にまくしたてる少女は、豚という言葉で我に返る。
「どうなされました」
「見ろ。村人の死体が増え過ぎだ。取り囲んで、優勢に戦って、それでもキルレシオ負けか。ペダ村の住人はゴブリンやら魔獣と戦って敗れた村落の生き残りだった筈だな。しかし、傭兵相手では荷が重かったようだ」
青い光点で、作られた人型が仰向けに倒れたアイコン。それがどんどん上に積み上がる。
傭兵達と村人では、身体能力からして大きく隔たりがあるのだ。
むしろ、負け戦になってもおかしくはない。
そんな村の状態に、ロシナは心配そうな声を上げた。
「ユウタ殿のSAN値がピンチですね」
「なんだSAN値とは。ああ、正気度だったか。この程度でふらつく精神力ではない。しかし、肉体的にはどうも限界が近いみたいだな。このままでは、サムソンに敗れる」
この青年騎士ロシナは、異世界からの転生者である。よって、ユウタが日本人であった事も把握していた。異世界日本から現れる異世界人達。その管理を一手に引き受けているのは、ロシナである。
ロシナが関わった日本人で正気が保てていた人間は少ない。色々な意味で人間の本性が剥き出しになるのが、この世界だ。特に、平和ボケとも言われる日本人には殺す覚悟というモノが試される。
ユウタは、とてもひ弱な日本人の少年とは思えない程、タフであった。
つまり・・・・・・と結論づけた。
最初に影より報告を受けた時点で、ロシナには疑問の灯がいくつも点滅していた。
ロシナはアルトリウスに同意して、敵の赤点を見つめる。
「でしたら。そろそろ仕掛けますか。傭兵達の捕縛についていたアドルやクリスを回しましょう」
「うむ。仕上げに掛かるか。罠にかかったのが、一匹だけとは情けない有様だが。潰すにしてもそれ相応の理由が欲しいところだな」
敵の転移対策に回していた青の騎士団は見事に任を果たしていた。
凡そ、アルトリウスにとって満足のいく結果である。
でなければ、酒で喉を湿らせたりはしない。
少女に対して、貴公子然とした男は提案する。
「でしたら、ユウタ殿でいいのでは?」
「アルルが何と言うかだな。マリア姉に、アルルの事を頼まれて断れないからな。順番的には明日は俺なのだが、ユウタは寝ているだろうし一回休みか。ん? むむ! これはひょっとして添い寝イベントじゃないか!? これは楽しみだぞ」
急に電波を受信したかのような少女に、青年は顔を青ざめさせる。
この一点さえなければ、間違いなく少女は次期女王として振る舞えるに違いない。
アルル、アルーシュ、アルトリウス。多少の幅の違いはあれど、似た者である。
狡知も極まれば、馬鹿になるという。
ロシナはそんな視線を少女に送るが、一向に気にした様子はない。
「まだ、終わってませんよ。火竜の11日は始まったばかりですが。あの・・・・・・仕方がありません。(レンダ、アコ、ユイ準備は出来ているかい)」
「「はい」」
「アルトリウス様、作戦を開始します(では作戦を開始する。レオンハルト様と同士討ちにならないように森は無視だ。包囲する敵兵を殲滅せよ。)吉報を期待するってアルトリウス様聞いておられますか?」
「フッ。もちろんだとも。お前に抜かりはないだろう?」
「はい。では、お任せ下さい」
受け流すように息を吐いたアルトリウスは煩わしそうに頷いた。
視線は少女の神具を見つめていたが、予知夢に旅立ったかに見える。
心配そうにロシナは、アルトリウスを見ると一礼して退出した。
「完璧である面と、反比例した残念度か。おっといけない。作戦指揮に移らないとっ」
ロシナは傭兵団に止めを刺すべく指令を下す。
そして。
澄み渡る星ではなく、慌ただしい人間達の鬨の声がつい先ほどまで木霊していた傭兵達の本陣。
鬱蒼とした森林の陰に、それはあった。
今やトーマスとレインハルトだけになった天幕である。
「何故だ」
「うん?」
「何故敵は待ち伏せできていた? どうしてなんだ」
トーマスは、自らの頭を手で掻き回す。
戦力は十分。村を落とせるだけの数は用意していた。だというのに失敗である。
「それは、浸透出来た味方の数が予想以上に少なかった事かな。それはどうしてだろうね」
直前に移動しようとした、トーマス配下の傭兵達は冒険者ギルドの転送器を使用して移動する手筈だった。だが、それが裏目に出た。ペダ村に大量に移動しようとするのを怪しまれて捕まったのだ。
勿論、その事をトーマスや他の傭兵団は知らない。
敵が待ち構えている等、想像するだけの頭は持ち合わせていなかったのである。
「やけに落ち着いているなレインハルト。何かいい案でもあるのか」
憔悴した表情を浮かべるトーマスは心に余裕がなくなっていた。
だから。
「そうだ。ここはもう終わりって事だ」
「何だって? うぐっ。レ、レインハルト?」
仄かに殺気を貯めていた男の剣を、避ける事すら出来ずに受ける。
トーマスは、自分の胸に刺さった剣を信じられないといった表情で見ていた。
「因果応報って言葉が東方にはあったらしいな。今どんな気分かな、村殺しのトーマスさん。お前は決して逃がすなとの命令だ。死体として連れ帰ってやるよ」
「がはっ、き、貴様ぁ・・・・・・」
血を吐き倒れるトーマスの死体。それを素早くイベントリに収納する。
天幕内部での悲鳴を聞きつけた兵士が入ってくる。
「何事で・が・・・・・・」
「御無事ですかレオン様」
無言で頷くレインハルト。
最後まで言えずに倒れる兵士を横にすると、同僚を刺した兵士は入口を見つめる。
レインハルトが外に出る頃には、既に始まっていた。傭兵団対傭兵団の戦いである。
多くの兵士が隣に居る者に襲いかかるのは、異様な光景だ。
合言葉を決めた。それとは別の物を使うのがレインハルトの兵だ。
符牒を作ったのも、見分ける為だ。
「計画通りだな。破綻しようが、しまいが関係ないという処があの方らしい」
傭兵団達の終わりは近い。
本陣は、盛大な炎を上げている。
◆
ペダ村の空には、満点の星が輝きを放っている。澄んだ空気が、肺に心地いい。
素晴らしい光景とは裏腹に冷えてきた。
それで俺は、村の路地で汚れた服を交換をしようとしていた。
「あれ?」
脱いだ服がない。
どこいったんだろう。地面で転がるDDを見る。
黄色いヒヨコは、すっと立ち上がり首を横に振った。
わかってるじゃないかこやつ。喋らないと可愛く見えるのは素材が良いせいか。
俺と接触した人物と言えば? あいつしかいないわけだけど。
何時の間に持って行ったんだ。男の服をスリ取る趣味でもあったのか。
窃盗は犯罪だぞ! ゲームだろうが、盗むを人にかけるなんて事・・・・・・俺だって使えたら女の子に使ってみたいよ! でも、普通に捕まって牢獄で人生終えそうだ。
別に大事な服って訳じゃないが、どうしてくれようか。
ゲームじゃばんばんモンスターから盗んだり、剥ぎ取ったりしていたけど。
あ、こっちでも盗賊さんとかモンスターから剥ぎ取りしてました。スティール欲しいなあ。
盗賊のジョブとか持っていなかったっけ。もっともパンツとかブラとかスティールしたら、俺死んじゃうだろうけどな。やれよ、今でしょってのはなしで。
久しぶりにキューブを確認してみる。
固有能力( 人形使役、人形化 、幽体離脱、生命操作、力吸収、ダンジョン生成、竜化鎧化)
使う事の出来ない能力多過ぎだ。ダンジョンさんが使っている有り様。
まともに使えているのが、なんとダンジョン作成であった。あと、鎧になるの位か?
自分の能力なのに、まともに使えないのは何故だ。失った記憶と関係があるのか。
使い方のわかっているスキルと特殊な能力。それ以外が、まるで故障でもしているかのようなのはどうしてだ。おかしいなあ、ロシナさんから貰った本にはCP、SP、APなるポイントシステムがそれぞれあるはずなのに。俺には実装されてないっていうのか? 強さだって、まるでLV1から動いていないような身体能力だ。取り立てて早くなるわけでもなし、多少腕力はついてる。でも、魔術の力が強まるわけでなし、魔力量はかなりあるみたいだけど。
何より・・・・・・ステータス値が確認出来ないってどういうことだよ!
ロシナさんの本にはステータス値の項目があったのにだ。
ステータス魔術を使えば、相手のステータスが確認できるとある。
普通の人、例えば人族だと筋力1.0速力1.0生命力1.0知力1.0技力1.0幸運力1.0とかそんな感じみたいだ。そこを基準に上下する感じなのらしいが?
俺にはSTR、AGI、VIT、INT、DEX、LUK表示無しなのか。HPとMP、SKPはかなりありそうだけど。訳がわからないよ。それとも、あれこれ職業を得る弊害なのだろうか。
才能の項目も見れないなあ。ゲームだとしたら酷いもんだ。
そうログアウト出来ないデスゲって落ち。
あまりぼやいてもしょうがない。考えると頭痛もしてくるし、職業を見てみるか。
▽
[冒険者]市民、村人、戦士 、剣士 、弓士 、勇者 、狩人 、魔術士 、商人 、薬剤士 、騎兵 、弓騎兵、格闘士 、英雄 、治癒士 、料理人 、魔獣使い 、付与術士 、錬金術士 、木こり、下忍 、神官
なんだかピカピカに光っている。転職できるよって事なんだろうか。
ぽちってみると、分岐みたく二択三択が出てくる。しかし、慌てて決める事もないな。
下手すると弱くなる可能性も捨てきれない。
人形使い、死霊王、生命王、闘技士、騎士、槍士 、村主、 竜人、ダンジョン生成士、使徒、■、■ ■、
後半の方は白文字で変化がない。伏字のなんかでてるし。
普通は何でも出来るようになって、俺の時代キターになるはずじゃないのか?
おかしいよ。誰かの陰謀か何か見えない力を感じるなあ。
セリアをぶちのめして、ひいひい言わせる日はいつになったらくるのか。
最も、ひいひいも力ずくだと・・・・・・ガチの殺り愛になってしまいそうなのですが。
そんなことを考えつつ、俺は村中央の広場で会議をする事に。
敵の浸透勢力は倒しきったので一安心だ。
広場には男衆が集まっている他、門の方に向かっていたり、巡回していたり忙しそうだな。
「難しそうな顔をしているな」
「皆さん、お疲れ様です」
中央広場に椅子とテーブルを用意して、座って貰うと冷えた水を木のコップに入れて差し出す。
ゴメスさんとドスさんだ。まだ、ロクドさんは送って行っているようだ。
二人共座ると、コップを手にごくごくと喉を鳴らして飲む。
「西門は苦戦したらしいね」
「はい。何とかなりましたが」
思い返すと全身が筋肉痛に襲われた。
痛いが顔に出して心配されるのも良くない。
テーブルに村の地図を出すドスさんは的確に人数を割り振っている。
「それは良かった。こちらは鎮圧も済んで、今から各所に応援をする予定だ」
「休憩はされないのですか」
「そうだな。交代で仮眠を取る事も想定しておくべきだな。只、転移対策の為に見回りの数を増やす必要がある。それと同時に、ユウタくんは魔術で外壁の強化をしてくれ。敵が投石機を出してきた場合、村は最大の危機を迎えるが、そこまで用意のいい傭兵団というのは中々ない。とも言い切れないのでね。後は負傷者の手当てはこちらで手を打っておこう」
うっ休憩したいな。しかし、外壁強化は急務だ。
俺しか出来ないんだろうか。回復までやる羽目になったら倒れるが、そこまではないようだ。
「わかりました」
「よろしく頼むよ」
「それでは・・・・・・」
色々決まった事は多い。途中からロクドさんも加わって意見を出し合ってみた。
外の麦は諦める方向でいくとか。残念だが、無理だよなあ。
回収の見込みはなく。燃えたらそれまでだ。
俺は外壁を強化する。MP回復薬を飲みながら、幅と高さを大幅に増強だ。
弓矢だけではない。魔術や対物理を想定した立派な奴を作ってみた。
派手な音を立てて土壁と石壁を量産していく。
そうやって外周を回っていると。
村の中に転移してくると想定して監視を立てていたら、普通に敵が光る門から出てくる。
少数の傭兵が飛び込んでくるので、吹き出しそうだった。
【ゲート】で一気に全軍突入とかされると厳しいと考えていたからな。
が、出てきた相手をボウガンでさくさく処理してしまえるのには笑いが止まらない。
こちらが警戒しているのがわからなかったのか?
処理を手伝い、全周を回りながら壁を増強し、高さと幅も積み増しをしていく。
【テレポート】は分からない。しかし、【ゲート】の欠点として、人が出てくると、その後一定時間硬直しているのである。出てくる所を観察した事は無かったが、出た際に一瞬でも硬直があるなら戦闘でアニメやラノベのような短距離移動的使い方は出来ないな。
狭い村で、暗い村に光る門が出たらすぐにばれるとわからないのだろうか。
二十人程度転移してきた敵を処理すると、相手も失敗を悟ったのか転移門が閉じた。
最初に飛び込んできたような鳥頭みたいなのがごろごろいたらやばかったが、そうそういないようだ。
ともあれ、【ゲート】の転移先は村の外で統一するべきだな。
空間転移法なんてものがないのだろうか。街中にぽんぽん敵兵が飛び込んで来られると落ち着かない。 結界石なる転移妨害装置みたいなモノがあるそうだが、値段が高そうだしなあ。
もっとゴルがあればな。建物に塗り込むタイプの妨害素材もあったっけ。転移に失敗させて、壁のなかにめり込ませる奴だったか。
あれをちょっと考えないといけない。
ゴメスさんやロクドさんドスさんを交えた会議で決めた事がある。
村人と冒険者に仮眠を取らせる。転移対策の見回り。水の確保。といったところだ。
交代で仮眠を取らせないと疲労で戦えない。転移対策は、いい感じだった。
外壁から見回りを増やすだけで良かったし。
村には井戸と水を貯めた貯水槽がある。毒を投げ込まれないようにしないといけない。
とにかく、防御側もやる事が多くて気が抜けない。
村の女子供が集まっている村長宅の警備も手が抜けないし。
食糧庫を焼かれると厳しい事になる。外の麦畑を焼かれても村の未来が暗い事になる。
どれもおろそかにできない。困ったもんだ。
どうせ、援軍が来るまでの辛抱だ。そう考えていたら、外の敵が動いたようだ。
「(敵に動きがあります)」
「(どうしたんだ)」
モニカの念話だ。返事を返す。
「(傭兵さん、大砲を持ち出してきました)」
「(そうか。扉が不味い事になったら連絡してくれ)」
「(了解しました)」
壁は強化してある。北側同様に全周を更に分厚く、弓矢が降り注がない域まで高くした。
魔術師ギルドから送られてきた術者の魔力も無限ではないからなあ。交代で張ってくれていたとはいえ、疲労で今は休んでいる。本部と連絡を取っている術者がいたりして、ちょっと安心感もあったり。
敵に投石機を持ち出されると不味いが、そこまでの準備はしてないか。
只の村を襲撃する感覚でいたのだろう。打つ手を悉く潰される相手が取るべき行動はなんだろうか。
モグラか、はたまた凧でも飛ばして来るとか考えられる。
大砲は囮で、モグラの計が本命かなあ。それとも、思考停止状態になってしまったか。
壁はともかく、扉狙いで強引な攻撃を仕組んでいるんだろう。
そう考えるとわかりやすい。
最も、壊した所で石壁が待っている訳なんだがね。
そうこうしていると壁にデカい音がし始める。
これは、寝られない。子供たちが不眠症になったら、どうしてくれるんだ。
西門の外壁にはシルバーナ他盗賊達が詰めていたが、大砲を恐れていた。
全員外壁に隠れるよう伏せていた。ま、普通そうだよな。
「どうしたのさ」
「どうしたもこうしたも、相手の大砲はどんなもんなんだ」
「大分距離があるからねえ。命中精度が低いのが救いだね。この五月蠅い音が強敵かもね。あっユウタも耳栓いるかい。耳が馬鹿になっちまったら困るからねえ。難聴じゃあたしがね」
外壁で伏せているのだが、シルバーナの顔が近い。
花火が打ち上がるように、壁には爆発音が響いている。
手渡された耳栓をつけると、壁にぶつかる玉の音が和らいだ。
いつ終わるともしれない攻撃に危機感を覚える。
終わらないと思った攻撃が中断したみたいだ。
音が止んだので、外壁から相手の陣がある方向を見ると、火の手が上がっている。
村の外にあった酒場も勢いよく燃えていた。
「どういう事なんだ?」
「アルトリウス様の仕業だろうね。速さこそ何よりの力さ。でも、朝方まで待つ事なく殲滅に乗り出したのは、大砲のせいだろうね。壁を壊すよりも中の人間目当てに変更されたら、あんたのココロが不味いからだろう」
「そんなに俺はやわじゃない」
「けど、あの子共が死んでもまともでいられるかい? いられないと思うね。あんた柔らかい所があるからねえ」
そう言う盗賊娘の目は昆虫のようだ。そこにヒヨコがかじりついた。
何すんだこいつみたいな事を言っているが無視だ。ヒヨコと大人気なく少女は格闘していたが。
俺は恐怖で顔に汗を大量にかいている。俺もそれを考えていた。
大砲から出る玉が自分の身体にぶち当たるよりも、村長宅にいいのが入る方が不味い。
どれほどの被害になる事か。村人の女子供は殆どあそこに避難しているから猶更である。
魔術で家は出来ないからなあ。
村の外では、騎士と傭兵の戦いが始まったみたいだ。
ユウタ:財布がピンチずら
モニカ:本気が!?
セリア:疲れた様子
シルバーナ:ピンチはチャンス
エリアス:お休み
アル:大魔王からは逃げられない!?
DD:沈黙は金らしく
閲覧ありがとうございます。
はあはあ、戦闘やっと終わりそうです。
デブことギニアスさんを何とかしないと!