100話 後始末
「なんだと!? 我が軍が敗北しただと? そんなばかな」
「は。信じがたい報告ですが、ハイランド方面軍は潰走し、戦力のほとんどを失ったという事です」
豪華な執務室で優雅な一時を楽しんでいた男は報告する部下に目を剥くように見開く。
つい先ほどまでは、帝国軍優勢だったはずであった。跪く部下の顔は見えない。
机上の上では一時間もあれば勝利する勢力差である。
淡々と報告する部下は気が狂った様子ではなかった。
地形の差、個々の戦闘力の差も異世界からの兵器で補い一場面では苦戦も想定されていたが。
それでもである。
最終的には兵力差が物をいって押しつぶす想定であったのだ。
「どうしてそのような事になったのだ。航空部隊は? 鉄騎兵はどうした。戦車も揃えていただろう。竜騎兵を含めた地上兵力も敵国の六倍は揃えていたのだぞ? 負けるはずがない」
「で、ですが。現実に負けているとの報告が・・・・・・なお追撃を受けている兵士達は怪異に襲われているそうです」
現場から報告を上げる部下も苦しい。予想だにできなかった結果に、部下自身も信じられない。
戦力の集中に半年、質の向上も大きく上がった軍の敗北には軍首脳とて落胆を隠せなかった。
帝国第三皇子ヴィルは呻くように告げる。
「ええい。もういい。撤退だ、態勢を立て直すぞ。一旦ハイデルベルからは手を引くしかあるまい。王国内部の攪乱が甘かったか」
「そのようで。草共はまだ健在です。じっくりと攻めるしかありますまい」
「クソッ王国兵は化け物か!」
ヴィルに返事を返す男は片膝をついたまま顔を上げる。
戦力の大半を失うとはただ事ではない。
ヴィルは立て直しを図る為の人材リストに目を通していく。
しかし、これという将官が見当たらなかった。
あの新進気鋭の軍ですら歯が立たなかったのだ。
かといって、大きく各地から兵を引き抜くのは雪上に立てた楼閣となる恐れもあった。
パラパラの分厚い資料をめくっていくヴィルの顔には思案に暮れる皺が寄る。
「決めたぞ。ハイランドにはセプテンダーセブンを向かわせろ」
「よろしいのですか。帝国各地の治安を維持する彼らを向かわせても」
決断を下したヴィルに確認を取る部下。
皇子が言うセプテンダーとは天に輝く七つの星をとってつけられた帝国騎士の事である。
古の言語ではセプテントリオンとも呼ばれたそれはいつしか帝国の将星を意味するようになった。
その彼ら彼女らは、各々が新規に獲得した領土の治安を預かる領主の補佐をする役目を担っている。
「一部だ。動かせる奴でいい」
「わかりました。早急に手を打ちます」
そそくさと出ていく部下を見ながら、立ち上がっていた事に気が付いたヴィルは椅子に座る。
傍らに立つ女性士官に呟くように息を吐く。
「全く、ままならない物だな」
「ええ殿下。敵は強い過ぎれば、腹立たしい物ですね」
「歯ごたえがなければないで、実感がないのも業という奴だな」
花のような笑顔を見せる女にヴィルは相好を崩す。
普段の好男子も傍に付き添う女の前では形無しであった。
女の入れた珈琲を堪能しながら、資料に目を通していく。
「帝国の未来の為、ハイデルベルを含む西方世界は何としても手に入れなければならん」
「そうですわね。帝国の為に、いえ殿下の為に」
「フッ、そうありたい」
男の野望は止まらない。それは王国に巣食う草と同種の物であった。
◆
アル様の機体を回収してハイデルベルの首都に戻る事となった。
しかし、雪原を歩きで戻るのには時間がかかる。
ヒロさん率いる王国軍に合流する為移動する事になったが、歩きでは寒い。
そういえば、馬があったな。イベントリから馬を取り出す。
「アル様。これにお乗りください」
「うむ。気が利くな。しかしな。鐙もない上に、この馬傷だらけだぞ。少しは労わってやれ」
「はっ」
盗賊から奪った馬にアル様を乗せると、かっぽかっぽと移動していく。
帝国兵が潜伏していると不味いが・・・・・・不意をついた銃による狙撃ほど怖いものはない。
自身にはそれを防ぐ【シールド】をかけられる。しかし、他人に物理障壁を展開するには重戦士や聖騎士のスキルが必要だ。なんだったか、そう【ブロック・バリア】だ。魔術には【シールド】があるが、他人にかけられる魔術は中級以上である。
「アル様。お聞きしたい事があるのですが宜しいでしょうか」
「うむ、いいぞ。それとな、先ほど迂回したヒロ達は見事敵を撤退に追い込んだな。敵は転移石で逃げ出した。こればかりは手の打ちようがない。ああ、それでなんだ? その聞きたい事とは」
ハイランド軍は潰走し、襲ってきた忍者に敵のロボと残存兵は撤退したか。
雪原を夕暮れの陽射しがオレンジ色に染め上げている。
アル様は眩しそうにして、こちらを見下ろす。
「そのアルルとかアルトリウスとか一体誰なんですか?」
「秘密だ。知りたければ、自分で確認する事だ。名前で呪詛をかける等色々と問題があるからな。敵国に知られると不味いのは言うまでもない。ちなみに私の隠名はアルーシュだが、他人には秘密にしておけよ」
「はい」
歩いていると夜になってしまいそうだな。雪原にモンスターはいないのか。
「(ユウタ。左の森を見て! 何か来るよ)」
「ん」
DDの言葉に反応して左に顔を向けた。遠目に見える森から駈け出してくる物体がある。
人でも戦車でもない。狼だ。毛皮は真っ白である。
レクチャー屋で魔術書の他にモンスター図鑑もよく見ておくべきだった。
スノーウルフとでも呼ぶモンスターだろう。
「ユウタ」
「はっ。ご心配には及びません」
接近してきた白い狼達はこちらをぐるりと取り囲んで様子を伺っている。
こちらは二人。対する魔物の数は三十以上だろう。従って餌になるしかない。
そう狼達は考えているに違いない。
俺は【アース・ウォール】を指定した範囲に発動させる。俺とアル様は狼に届かない位置まで上昇すると攻撃を開始した。今までは魔術を発動させるだけで精一杯であったが、威力の調節やら範囲までコントロールが可能になりつつある。いつも土壇場で練習するハメになっているが。
上から【サンダー】の電撃を降らせてやると狼達は一網打尽であった。素早く的が小さい分、弓矢で狙うには手間がかかるしな。とはいえ、電撃は避けられない。
狼達が動かなくなったところで土壁を降下させる。
村の売り物にする為、狼達はイベントリに回収していく。
「急ぐぞ。ここはまだ戦場だ。いつ敵兵が現れるとも知れん」
「はっ、すいません」
そうだった。ここは戦場で、何時敵が現れるとも限らない。
アル様が声をかけてくれなければ、延々と回収作業をしていただろう。
「まあ、来ても全く問題ないのだがな。それよりお前後ろに乗るのだ」
「よろしいので?」
「構わん」
馬に乗るアル様の後ろに跨ると、腕を回して抱き着く恰好になる。
「変な所を触るなよ。触ったら責任とってもらうからな」
「了解であります」
普通は逆なんじゃないだろうか。そして、打ち首か貼り付けの刑を予感して冷や汗がでてくる。
アル様が馬を走らせると景色が流れていく。やっぱ馬車くらいイベントリに入れておくべきだろう。
手持ちの金が増えたらそうしたい。
「こいう状況になれば、襲うのが男というモノではないのか?」
「はあ。そういうのは下種の極みですよ」
「そうか。私の身体に魅力がないせいか・・・・・・」
男前がっくりと肩を落とす。アル様が変になっている。いきなり襲うとかありえない。
二人で走っている内に、空からはぽつぽつと小雪が降り始める。
ぶんぶんと頭を振るアル様。大丈夫なのか?
「・・・・・・まだ聞きたい事があるのではないか? 丁度いい機会だ。存分に尋ねるがいい」
「では、お歳は幾つになられるのでしょう」
「十三だ。むうう、歳のわりに胸が無いと言いたいのか! 他の二人に比べようというのかあ? いっ、いずれ大きくなるのだ。今少し待って欲しい」
胸とか聞いてないんだけどな。何故だか、アル様の豊胸講義が始まった。
「・・・・・・という訳だ。私も頑張っているのだが、いかんせん膨らまないのだ。ユウタはアルルの胸を揉んだりとかはしていないだろうな?」
「めっそうもない。天地に誓ってそのような事はありません」
「そうか。だとすると・・・・・・」
アル様はぶつぶつと何か内にこもり始めた。
このアル様はどうやら相当胸を気にしている様子だ。話から検討すると三人なのか? 影武者とかもいるとすると実際何人いるのやら。
他にも重要な話を聞きたかったのだが、胸の話しかできない。
取り止めの無い胸話をしている内に、ヒロさんの率いる王国軍の姿が見えてくる。
こちらに気が付いたのか偵察兵が向かってきた。
モンスターと会ったのは一度きり、帝国兵と出会わず合流できたのは良かった。
俺は勢いよくアル様の後ろから馬を降りる。王族と平民が一緒に乗っているの見られたら斬首なんてあり得るし。
「アル様ご無事でしたか」
「うむ。この通り何ともない。ユウタもご苦労だったな。うん、粗方片付いているか。この後は好きにしていいぞ。しかし、私が呼べば来るようにな。それと、お前の村の件はこちらでも対処しておく。そろそろ貴族共の膿を出す時であるし、今日は休息と準備を整えておけ。首都に戻るも良し、村に向かうも良しだ」
「はっ」
ヒロさんが率いる軍隊には黒い鎧をつけた兵士達がひしめきあっている。忙しく騎馬が陣を出ていくので包囲しつつ攻撃しているということだろう。
村の事を把握しているという事は、忍者から報告を受けているという事か。
こちらを虫か何かのように見ている節があったし、悪知恵を働かせてくるに違いない。
天幕が張られた一角にアル様が入っていくのを見送る。
入れ違いで端正な顔をした青年騎士が歩いてきた。横にはピンク色の髪をした美女が同行している。
どこかであったような?
「こんにちはユウタ君。大活躍ですね」
「こんにちは、えっと・・・・・・」
言葉に詰まった俺に、不思議そうな顔を見合わせる二人。
ああ、といいった感じでポンと手を叩いたのは男の騎士だった。
「ヒロさんに紹介してもらったきりでしたか。詳しい自己紹介してませんでしたね。私はミギワ。こちらはワウと申します。普段は黒騎士団員として働いています。又、ヒロ様と共にダンジョン等に潜る冒険者をしております。非常時には、トラッシュさんと共にヒロ様の配下として、黒騎士団の騎士を務めさせて頂いております。因みに未だ、黒騎士にはなれていなませんが」
「大丈夫だって、ヒロ様も努力していればなれるって言ってたじゃん」
「そういいますが、ね。ともあれこれは関係ない話でした。こちらが報奨金となります。お確かめ下さい」
「ありがとうございます」
ズシリとしたいつもの袋を手渡される。
イベントリに入れると、暫く話をして戦況とか聞く事ができた。
敵の機械兵を退けているが、被害も甚大だという感じだ。正直ガトリング砲とかチートすぎる。
鎧化した騎士しか太刀打ちできないだろうし。一体誰があんな物を持ち込んだのか。
背の高い女騎士と黒いローブを羽織った魔術師風の二人組がやってくる。
「トラッシュ隊長が呼んでいる。そろそろ出撃の準備をしよう」
「ダルさん。もう少しユウタ君と話がしたかったのだけど、そうもいかないか」
「じゃあまたね」
エリシスさんとダルさんだったかな。負け戦のような展開だったのに、生き残っていたみたいだ。
本陣だった元の砦を逆に攻める形を取っている。
とはいえ、この地点はアル様と俺がハイランド軍を退けている事を前提にしている。
ハイランド方面から侵攻してきた敵軍に後方を突かれれば、あっさり潰走しそうな態勢であった。
そこのところ危うい感じがしたけど、連携を取っていたという事なんだろう。
この後はどうするかな。アル様は好きにしていいといっていたが。
MP回復役を飲んだり、武器の手入れからキューブの確認でもして、呼び出しがかかるまで過ごすか。
ダンジョンさんの確認をすると、また内容が変わっていた。
――――――名無しの迷宮 4層
LV7
経験値・・・50/1000
迷宮スキル 魔力生成 モンスター製造 罠設置 宝箱生成 迷宮拡張 施設設置
捕獲モンスター 黒鬼 サムライ 機械兵 忍者 銃兵 戦車 装甲車
SP 62/70
mp 1000/1000
ますますカオスなモンスター構成になっている。
捕獲モンスターが、どう見ても初心者用に使えるのがいない。
どういう造りになっているのかを含めて探索する必要があるな。
生物とかだと、設置したら食料を巡って戦いがありそうだ。
「(もしもし、ダンジョンさん聞こえますか)」
「・・・・・・」
ダンジョンさんに呼びかけるが反応がない。ピーと言う音が聞こえてくるのだが、返事なのだろうか。
更に迷宮拡張をポチっておく。モンスター製造にしろ施設設置にしろ保留にしとこう。
最初に配置するべきは、スライムとかゴブリンと相場が決まっている。
ゾンビも結構厳しい気がするし、出来るならウサギ系とかノンアクティブなモンスターを設置したい。
一階からベリーハードで初心者殺し満載とか、誰も入らないダンジョンにしかならないからな。
「(もしもーし)」
「・・・・・・聞こえますマスター。何か御用でしょうか」
「(応答がないので気になったんだけど、大丈夫?)」
「ピー・・・・・・それはご自身の近くに大量の魔力をため込んでいる■■が居るせいです。魔力嵐が起きておりますので、こちらとの魔力回線が乱されております。ピー・・・・・・ご理解ください)」
「〈わかったよ。ありがとう)」
「ピー・・・・・・では、失礼します」
聞き取れなかったのが気になる。回線をかく乱するようなのがいるのか。
もし見つけたら、しばき倒してやりたい所だ。
懐からDDが出てきて地面でころころと転がって遊び始めたので、一緒になって転がりたくなった。
が、地面は冷たい雪が積もっている。
転がる訳にも行かず、備蓄用に置かれた樽に腰かけた。
空から夕陽が消えようとしている。
本陣があった筈の方向を見ながら、エリアスやベルティン様がどうなったのかを考えていた。
ベルティン様はかなりの深手を負っていた筈、助かったのかどうかもわからない。
エリアスは無事だろう。そうして考えていると、突然幻視を見る事になった。
突然真っ赤な炎に包まれる艦橋らしき場所で敵と戦うと言った白昼夢だ。
シルバーナの胸から血が溢れて止まらないという悪夢だった。
恐ろしい物を見てしまったが、幻覚を見るとかどうも疲れているのかな。
「おい、黄金の機械兵が飛んでくるぞ」
「馬鹿、あれはアル様の物らしい。攻撃するなよ」
「すげえな。あれ、どうやって飛んでいるんだ?」
「飛行魔術じゃねえの? それしかねえけど、馬鹿みたいに魔力を食うからなあ。何か仕掛けがあると思うけどな」
兵士達が何か騒がしい。西の空、本陣のある方角を見る。
空をゆったりと飛んでくる黄金の機体が見えた。
降りていくのは大分外周の人がいない場所のようだ。
流石にデカイから倒れたりすると洒落にならない。
体型は、なんというか。足がめっちゃ太い。上半身が非常に小さい。
腰に戦闘機が刺さっている感じで、上半身は西洋鎧姿だ。
こけたらそれだけで大ダメージ受けそうだな。
腕も程々だが、下半身のデカさは安定させる為だろう。
背中に戦闘機の後部がくっついている感じでよくこれで飛んでいられたと思う。
武器もないし、まさかの素手で戦うタイプなんじゃ。いや、雷とか魔術を行使するタイプだった。
眺めていると、何時もの黄金の鎧を着たアル様がヒロさんと話している姿が見える。
どうやら、夜に入りそうなので野営の準備でもするのだろうか。
勝ち鬨の声を上げるようだ。出撃していた兵士達も戻ってきたのかな。
「王国の兵士諸君、ハイデルベルをよく守り通した。諸君らの働き見事である。ハイデルベルの首都に帰還した後、祝宴の準備に取り掛かる。急ぎ撤退をするように!」
「「ははっー」」
まあ、敵が居ないといってここで宴会するわけにはいかないよな。
古来より、勝った後に逆襲が来るなんてパターンは腐る程あるわけだし。
兵士達が、次つぎと転送器の門を通って首都に戻っていく。
ミギワさんとワウさんがこちらに駆け寄ってきた。出撃しなかったのかな。
戻って来るのは早い。まあ、【ゲート】とか【テレポート】があるから戻るのは早いよね。
「ユウタくん。君は祝宴に出ないで、ペダ村に向かった方がいい」
「どういう事ですか?」
「君と揉めた貴族がいるだろう?」
「はい」
そういえばそんなのも居たような。
こっちから襲ってやる予定だったのだが、予定が立て込んでいた。
「その者の手であるという確証はない。物証というには薄いが、急に周辺の都市で傭兵を集めている者がいてね。それが、どうにも臭うみたいなんだ。裏は取れていないから、叩く訳にもいかない。しかし、用心するに越した事はないからね」
「わかりました」
まさか、速攻襲ってくるんだろうか。私兵を使わずに足が付かないやり方かな。
人手が足りない。金と権力に物を言わせて来られると分が悪いな。
「そうだ。君にぞっこんな盗賊が居たな。人手が足りなければ、彼女の手下を使うといい」
「ありがとうございます」
うーん。盗賊の手を借りるのは気が進まない。借りを作るのも真っ平御免だ。
なんとか、村の人と力を合わせて切り抜けたいな。
「あと、レンダルク家からは感謝状が届くと思うよ。なんといってもエリアス様の命を救ったんだからね。魔術師達の力を借りる事も出来ると思うね。僕らも手伝って上げたい所なんだけど、後始末が大変なんだ。また、奇襲が無いとも限らないから王都で待機を兼ねた宴会する位だよ」
「エリアスは無事だったんですか。それは良かった」
しばらく、ミギワさんと話をした。ベルティン様も重傷だが、生きているらしい。しかし、ブリガンテスを使っての傷は早々に治らないとか。ベッドでの生活を余儀なくされるみたいである。
他にもいい情報が聞けた。
このハイデルベルの北部に広がる山脈には鉱山が多数あって、鉱石が取れるとか。
そこで取れる鉱石がなんでも氷精霊石に白銀鉱石だというのは重要だ。
防具がしょぼいし、買う金がないので素材から取ってこないといけない。
氷山とかした山には迷宮が存在してお宝がざっくざくとか。ただ、寒いらしい。
そして『氷獄石奇宮』とか物騒な名前を聞いて心配になる。
俺はまだ、ダンジョンのダすら入った事が無い訳で。
「ミギワ、そろそろ出発しないと間に合わないよ」
「もうそんな時間かい。それじゃあまた」
端正な青年ミギワさんは、ワウさんの言葉に返事を返すと手を振って離れていく。
ヒヨコなトカゲが懐に入り込んできた。もぞもぞと動いてから大人しくなる。
どうやら遊び疲れた様子だ。
シルバーナを迎えに行くとしますか。俺はハイデルベルに向けて転移する事にした。
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