表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

十二支英雄見聞録・第一章・陽組編第三節

 己の意識が覚醒した時、まず感じたのは左腕の痛みだった。

 重い瞼を開けて、目を覚ました戌月は左腕から伝わる鈍痛と、全身が軋む様な痛みに表情を歪めた。うっ…、という呻き声を上げ、開けたばかりの眼を細める。

「ここ……は…?」

 自分は公園に居た筈だ。そう記憶にはっきりと残っているのだが、今自分が居るのは見覚えのない部屋だった。将人の部屋より広く、畳の床に敷かれている布団に、戌月は寝かされていた。眼だけを動かし、周りを観たところ家具の類いも、どこか古めかしい。戌月はなんだか、昔の主人の家を思い出した。

 上半身だけ起こし、軽い頭痛がする頭で状況を整理する。まず自分は将斗に追い出された後、ショックを受けながらフラフラし、公園に辿り着いた。そこで、豚の狐狗貍と遭遇しズタボロにされ、気を失った。

 ならば何故ここに居るのだろう。誰かが運んでくれたのか、その線は微妙だ。あの時の自分は今同様、特殊能力者、契約者、同類以外に見えない筈だ。同類等ならまだしも、何も知らない第三者が助けてくれるなんて考えにくい。更にはあの狐狗貍、一体どうなったのだ。

 そして、大怪我を負った自分の躰に張られている絆創膏や包帯。骨を粉々にされ、肉をぐちゃぐちゃにされた左腕には戌月が見たことの無いギブスで覆われていた。更に、この服はなんだ。今戌月が着ているのは今までの服ではなく、なんだか表現しづらい服だった(戌月にとって)。

 だんだんと混乱してくる頭を無事であった右腕で押さえた時、部屋の襖が開き、二十代くらいの女性が入ってきた。戌月と眼が合うと、にっこりと微笑んだ。

「あら、眼が覚めたのね。良かったぁ〜」

 見たことのない女性に、反射的に戌月は警戒体勢を取ろうとしたが、躰が言うことを聞かず、傷による痛みが駆け巡った。

「ぐぅ……!」

「大丈夫!? 貴女、人間だったら死んでる傷なのよ、無理しちゃダメ。ちょっとまってて、寅果ちゃん呼んでくるから」

 痛みで苦しむ戌月を心配しながら謎の女性は、戌月より少し長いくらいの髪をなびかせながら、急ぎ足で部屋を出た。

 苦痛の中で、女性が口にした名前を反芻する。その名前は、あまり実感がないが、約三世紀ぶりに聞く懐かしい姉妹の名前。

 女性は直ぐに戻ってきたのか、足音が聞こえてきた。だが足音は二つ、寅果という人物を連れてきた様だ。今度部屋に、最初に入ってきたのはとても懐かしい人物だった。

「……ひさしぶり、戌月」

 間をおいたのは、戌月に異常がないか確認した為である。

 戌月の名前を呼び、女性と同じように微笑みを向けた。

「寅果…姉様……」

 寅果の後ろには、先程の女性も立っている。姉との再会を喜びたいが、その女性が気になって警戒を解けない。人が良さそうな顔をしているが、人は見掛けによらないとよく言う。

 寅果が戌月の視線に気付いたようで、説明をしてくれた。

「ああ、この人? この人は理音さん。ボクの契約者の姉だよ。分かってると思うけど、〝見える〟人だから」

木嶋理音きじまりおんです」

 理音が会釈した後、寅果に何か食べ物を持ってくると耳語をして、また何処かに向かった。寅果もお願いします、と言い彼女を見送ると戌月のすぐ近くに腰を落ち着かせた。

 邪魔者……というのは些か失礼だが、理音が居なくなったお陰で戌月の警戒が解け、表情が柔らかくなる。

「お久しぶりっス、寅果姉様」

 あまり実感が湧かない、懐かしさを漂わす姉の姿を一瞥する。

 金髪の頭部から、戌月と同じように猫、もとい虎のような耳が生えている。そして尾も。しかし容姿は変わらないが、服装がだいぶ変わっていた。昔は戌月と似た格好をしていたが、今はライトイエローを基調とし、黒いストライプが入ったジャージを着ている。十二支守護獣、寅を司る者、寅果。

 寅果が着ているジャージが、今自分が着ている服と似ている事に戌月は気付いた。

「君の服、色々と汚れていたからね。それにその大怪我だ。……あと糠臭かったし。勝手に悪いけど、動きやすい格好にさせてもらったよ」

「それはいいんっスけど…姉様が私を助けてくれたんっスか?」

 戌月の問いに、寅果は首を横に振った。

「戌月ちゃん拾ったのは私だよーん。んで、あの豚は私の契約者が殺したから、そこんとこ安心してヨロシコ」

 狙ったかの様なタイミングで、スナック菓子の袋片手に別の兄弟が現れた。

 二人とは対象的に、長い黒髪を携える頭には動物の耳ではなく、金の角が二本生えている。十二支守護獣、辰を司る者、辰雷。

 辰雷の服装もかなり変化しており、翠色のチャイナドレスを着ていた。チャイナドレスには通常より深いスリットが入っていて、黒いショートパンツがのぞいている。

 袋から菓子を取り出し、口に放り込み咀嚼しながら話し始める彼女はどうやら行儀が悪い、ずぼらな性格のようだ。

「つーか戌月ちゃん、それ愚問でしょ。左腕がない寅果ねーちゃんが、大怪我してる君を運んでくるのはキツいよねー?」

 そう言った直後、二人の視線が寅果の左腕があるべき場所に集中した。確かに左腕の部分のジャージに膨らみは無く、ぺっちゃんこになっている。肩すらもなく、左腕全体が消失していた。

 彼女の左腕は先の闘いで、狐狗貍の攻撃から契約者を庇い、切り落とされてしまったのだ。十二支守護獣は人間より丈夫な躰を持ち、高い生命力を有している。契約者の身に危険が迫れば、身を挺して守るのが彼女らの闘い方とも言える。十二支守護獣は、いわば契約者の生きた剣や盾の様な存在でもあるのだ。

 寅果が苦笑いしながら、失われた肩を右手で撫でた。

「すみません……」

「いいよ、謝らなくて。ボクがヘマしてこうなっちゃったんだし。寧ろ、謝るとしたら人の家のお菓子を貪り食べてる辰だと思うんだけど」

 後方に立っている辰雷をジト眼で一瞥したが、本人はケタケタ笑うだけで反省の色がまったく見えない。

「じょーだん。ワイがあくたれついて、謝るわけないでおまんがな」

「……この娘はどこでこんな性格になっちゃったんだろ。てゆーかさ、物食べながら喋らないでよ。さっきからカスが飛んでるんだけど」

「だからそーゆーのが愚問だって言ってんじゃん! 飛んでるんじゃない、飛ばしてるのさ! どやぁ!」

 辰雷の性格上話していても埒があかないので、無理矢理会話を打ち切る事にする。そもそも辰雷に口喧嘩や言い合いで勝てる奴は、兄弟の中でもいない。恐らく契約者のあいつだけだろう。

 軽いため息をつきながら、戌月に意識を戻す。

「大変……だったみたいだね」

「え……あっ…はい」

 最初、狐狗狸との事を言っているのかと思ったが、直ぐに自分と将斗の事を指しているのだと気付いた。あの事を思い出すと、ぶたれた頬の痛みがぶり返した気がして、頬を擦る。気持ちが沈み始めた瞬間、違和感を感じた。

「なんで…知ってんスか…? 御主人様の…」

 あの場面に居たのは自分と将斗だけの筈だ。なのに、何故知っているのか。それは見えざる二人が、どこかで覗いていたから。

「あー、そ・れ・は・ねぇ。私が戌月ちゃん事、目覚めてから気絶するとこまでストーキングしてたからさっ! いやぁ、修羅場みちゃってごめんねぇ」

 軽い調子で謝罪する辰雷を見て、戌月は直ぐに納得した。なるほど、彼女の契約者に与えられる〝力〟なら、距離は関係ない。今の時代、宇宙から覗き見されている言われるが、彼の眼はそれと並ぶ。後は盗聴等をすれば、簡単に会話の内容と映像が手に入る。

 だが、戌月はそれより気になった単語があった。

「あの、辰雷姉様、すとーきんぐってなんっスか?」

「おほ、気になっちゃう? ストーキングはねぇ、好きな人の事を知ろうと頑張る行動ことなのだよ!」

「へぇ、なんだか一途な言葉っスね」

「おいおい」

 ストーキングは、自分が一方的に関心を抱いた相手にしつこくつきまとうこと、簡単に言えばストーカー行為である。他にも釣りで、魚に気付かれないように接近する技術という意味もあるのだ。

 戌月はまた一つ、現代の言葉を間違えて覚えてしまった。年中無休でふざける妹が、様々な意味で馬鹿な妹に嘘を教える姿を見て寅果はまた苦笑した。あながち間違ってるわけではないから、完全に否定はできないのだ。犯罪か、純情な気持ちかで変わってしまうが。

「そうそう、戌月ちゃんが少年君と喧嘩して追い出されてぇ、狐狗狸に負けて気絶してから、今日で丁度一週間なんだよね」

「…………一週間!? マジっスか!」

「マジっスよ。君、寝るの早いくせに起きるのいっつも遅いよね。今回目覚めるの一番遅かったの君だよ? 私なんて一年前、寅果ねーちゃんはニ年前、我らが長男様なんて十四年前に起きたのだよ」

「マ…マジっスかぁ……」

「マ…マジっスよぉ……」

 辰雷は戌月の言葉を真似て遊んでいるが、当の本人は結構ショックを受けたのかうなだれている。

 あはは、と笑いながら寅果が励ますように戌月の頭を撫でた。気分が落ち込んでいるためか、尻尾が微かに反応しただけだった。

「落ち込んでいるところ悪いんだけど、実は悪い知らせが三つあるんだ」

「悪い…知らせ?」

「一つは君に深い関わりがあり、残り二つは兄弟全員に。さあ、どれから聞きたい?」

 自分に関わりがある悪い知らせとはなんだろうか。見当もつかなかったが、少し考えたら思いついた。今の自分に関わりがあるとしたら、将斗関係の事だろうか。兄弟関係も気になるが、彼女にとっては将斗関係の方が気になる。

 どちらにするかは決まったが、まだ確証がないので自分に関わりがあるという方がなんなのかを聞いてみる。

「あの、私に関わりがあるって、もしかして御主人様が関係してるんスか?」

「おっ、察しがいいね。その通りだよ。じゃあ君のから聞くかい?」

 予想通り。だったら答えは決まっている。はい、と戌月は小さく頷いた。

「君は自分の契約者に疑問を持っている筈だ。さあ、声に出して言ってみようか、君が一番疑問に思っていること」

「疑問………あっ、記憶……」

「そう。辰から聞いてるけど、君の契約者は記憶が戻っていない。これは異例の事態だ。本来転成した契約者は、ボク等(十二支守護獣)との接触で記憶が蘇るようになっている。引き継ぎを繰り返した記憶に、〝劣化〟はあるものの、蘇るのがここまで遅いのはまずあり得ない。君はそう思ってる筈だ。そうだよね?」

 また戌月はこくりと頷いた。

 数世紀ごとに眠りと目覚めを繰り返し、何度も出逢いと暫しの別れを経験したが、記憶が蘇らないという事態は初めてだ。今でも困惑している。

「記憶が蘇らない理由は、恐らく彼自身にある。そして君にも」

「御主人様自身…と…私?」

「狂愛の末に、ってね。愛に縋り、哀に蝕まれるのを恐れ、破滅した。前の彼は、君を愛し過ぎたのさ」

 相変わらず菓子を口に入れた状態で喋る辰雷が、会話に割り込んできた。

 彼が自分を愛し過ぎた、という言葉に戌月は顔を赤らめた。嬉しいと恥ずかしさが共同した様なこの感情を、どう自分が識る単語や言葉で表そうか。

 頬を紅潮させる妹を見て、辰雷は甘酸っぱい表情をした。

「ボーイミーツガール……いいねぇ、甘酸っぱいねぇ。初キスはストロベリー味だねぇ」

「何言ってんだか。君がそれを言うかな。最初の彼と君は……ふふ」

「あ゛ーあ゛ー聞こえなーい゛ー! そんな昔の事は覚えてにゃーだぁ! 蒸し返すな掘り返すな、そんまま埋めといてよ記憶の底に!」

 今度は辰雷が喚きながら菓子の袋を手放してから耳を塞ぎ、戌月より顔を紅く染めた。過去になにかあったのか、それを寅果は知っているようでニヤニヤと笑っている。

 なんとも和やかな雰囲気の中で、戌月が先程の会話を思い返し、ある単語の存在に首を傾げた。聞くのが少々恐かったが、勇気をだして口を開いた。

「あの…破滅って?」

 戌月がその単語を発した時、和気藹々とした空気が氷付いたかの様に静まった。二人の姉の表情も、引き締まったものになっている。場の空気が一変した事に、戌月は困惑し、なんだか怖いという気持ちになった。

 寅果は言葉を探しているのか、数分間沈黙していた。こうやって焦らされると、聞く事が怖いが早く知りたくなってしまう。怖いもの見たさ、という奴だ。寅果の沈黙に、戌月も沈黙で返していたがついに我慢の限界に達した。

「あの…その……破滅って――」

「自殺だよ」

 同じ質問を繰り返そうとしたが、辰雷の言葉に遮られた。

 自殺。

 その単語が山から返ってきた山びこの様に、戌月の中でリフレインする。単語の意味を理解した時、胸の奥が抉られ、ぽっかりと穴が空いてしまったかのような感覚に陥った。

 何かがプツンとちぎれ、躰を支えられなくなった。脳が筋肉に送る電子信号すらストップさせ、自殺、この漢字ニ文字、ひらがな三文字で構成された単語の事を考えた。あの人が自殺? いつ?

 倒れそうになったが、一番近くに居た寅果が残った右腕で支えてくれた。妹が激しい心的ショックを受けた様子だが、辰雷は構わず続けた。

「自殺したんだよ、彼は。君が眠りについて直ぐに、自殺した。危ない感じがしたから私の前の契約者が見張ってたんだ。止められなかったらしいんだけどね。私の妄想だけど、君が居ない半生なんて考えられなかったのかな、君が憑依した石を抱いて死んでたらしいよ」

「恐らく…なんだけどね。人間の記憶・情報に精通している丑夜ちゅうや様が、自殺によるショックで引き継がれるべき記憶が失われたんじゃないかって……」

 自分で己の命を断つ。どんなに覚悟をして自殺をした人物でも、生命の脈動を止めた時の顔は、筆舌難い表情だという。しかし、彼の死顔はとても安らかだったと、寅果は語った。

 眼を開き、黙っている戌月が何を考えているのか、二人の姉には分からない。否、理解しようとはしていなかった。簡単に理解したふりをし、安い慰めの言葉を贈るのは馬鹿がする事だ。安易に慰めたい、可哀想と思い行動するのは、相手を見下す行為である。相手を格下と見下している事の裏付けなのだ。簡単に手をさし伸ばしてはいけない。

 生物皆一人。

 人間は一人じゃ生きていけないと言って、甘やかしてなんになる。どんなに手をさし伸ばしても、結局は、立ち直り、決断を自分一人でしなくてはいけない。助けがなくては生きていけない。分かっている、生物はヒトが買い被っているほど強くない。だが、最終決定は全て自分でしなくてはいけないのだ。

 心が沈み、激しく揺れている時に必要なのは、蜜の様に甘く、虫毒性が高い優しさなんかじゃあない。熱っせられた鉄のように、心は叩かれて強くなる。つまりは更に心を揺さ振り、殴り付ける言葉。

「君が与え過ぎた愛で、御主人様は毒されて死んだのさ。御主人様の弱さが自分を殺した。君の愛毒が、御主人を殺した」

 現代に目覚めてから心的ショックが多い戌月は、心がボロボロになっている。だからここで、このショックに打ち勝って強くなってもらわなければ。闘いが今まで以上に激化するのだ、今までどおり、いちいち心的アップダウンされてショックを受けられていたら、話にならないのだ。

 厳しい姉からの試練に、戌月は――。

「さあ、この事実を知って、君は御主人様を愛すかい?」

 何かを考えるように、俯いた。



 あれから一週間、将斗は戌月を探し続けた。朝九時に起床し、十一時に探索開始、午後四時に帰ってきて、夜九時には眠りにつく。この生活を一週間続けたが、肝心の戌月は見付からなかった。

 現代を知らないのだから、近くをふらついているだろうと思っていたが、予想が外れた。近くから、行ける範囲の遠くまで探したのだが、〝痕跡〟すら見つからない。人に、白髪の犬耳見なかったか、と勇気を出して聞いたが痛い眼で見られてしまった。

 お手上げといった様子で、将斗は自室でため息をついた。やはり、他人の為に頑張っても良い結果なんてでない、そう呟いて右手の甲を見る。シミは完全に文字となり、〝戌〟という字になっていた。

「獣印……でも、記憶は蘇らない…」

 契約者の証とも言える獣印が浮き出たが、記憶が蘇る感覚は一度もない。戌月観察手記を読んで、懐かしい感覚や、古い文字が読めたりと、断片的に思い出してはいるんだろうが、記憶そのものが蘇った事はない。手記によれば、とっくに記憶が思い出していてもおかしくない。なのに、何故か。

 考えに耽っている時、玄関のチャイムが鳴った。面倒だったので無視していたが、何度もチャイムが鳴る。どうやら相手は家に将斗が居る事を知っていて、出てくるまで鳴らし続けるつもりの様だ。将斗は舌打ちをして、玄関に向かった。 玄関のドアを開けると、そこには中性的な顔立ちをした、男か女かよくわからない奴が立っていた。髪型が短いポニーテールなので、女かもしれない。取り敢えず女性にしておこう。女性は怪我をしているのか、右手に包帯を巻いている。

 どちら様ですか、と少し高圧的に聞く。

木嶋詩織きじましおりです。あっ、僕男ですから。お間違いなく」

 女性ではなく男性だった。

「この髪型は姉の趣味であり、僕が好きでしてる訳ではないので」

「あ…あぁ、そっすか…」

 なんだかどうでもいい情報を与えられた。有無を言わさず押し付けるとは、詩織自身にとって自身が男という情報は重要な物らしい。いや、本当にどうでもいい。

「それで…詩織…さん? どういったご用件で?」

 できれば直ぐに切り上げて、部屋に戻りたい。

「まあまあ、そう急かさないで。ゆっくり自己紹介しましょうよ。僕達、〝同類〟なんですから」

 そういって詩織は、右手の包帯を解いて、掌を見せ付けてきた。そこには寅の文字が。位置と文字が違うが、将斗の獣印と同じである。

「!」

「改めまして、僕は木嶋詩織、現代に転成した寅の契約者です」

 現代で初めて会う、自分の同類。何故か緊張してしまう。たが、次の詩織の言葉に、緊張は吹き飛ぶ事になる。

「そして、現在戌月さんを預かっていますので」

 驚愕。そして納得した。なるほど、確かに人に保護されていれば見付けれる可能性は低い。捜し回って見付けられないわけだ。

 詩織が今の戌月の現状を教えてくれた。大怪我をして、寝込んでいると聞かされると、将斗の胸の奥がチクリと傷んだ。その大怪我は自分のせいなのではないか、と。追い出して、一人にしたから寝込む程の大怪我したんじゃないか。

 沈黙し、悩む将斗を見守っていた詩織が口を開いた。

「傷心中申し訳ありませんが、今回君のところに来たのは、彼女の事を報告しにきただけじゃない。もう一つ、用件があります」

 一旦言葉を切り、間を開けた。

「僕は僕達のリーダーからの命令で、君の〝神器〟を覚醒させに来ました」

さあさあ、どんどんキャラが増えてきています。まあ、陽組編はキャラ登場の回みたいなもんなので、仕方ないかな。


寅果の服装がジャージなのは、左腕が無いため、着るのが楽なジャージになりました。決して手抜きじゃないです。そう決してね!


次回も宜しく御願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ