よっつめ。
「いまさら、そういわれたところで、どうしようもないな」
そう思ったのは、おうじさまも同じようだった。
「それもそうだな。けれど、ほかにどうしようもない。さすがに時間は巻き戻せないし、君が欲しいものを差し出すわけにも行かない」
肩をすくめたジィンはそう言って、軽く息を吐き出した。
おうじさまは、ただジィンに視線を向けていて、その表情は動かない。
「ところで、ロータス王。マーリがどこに行ったか知っているか」
唐突な、ジィンの問いに。
おうじさまは少しばかり眉を寄せただけだった。
ジィンはおかしなことを聞くと思った。
話の流れから行くと、おうじさまの敵はマーリで。
マーリが逃げていた叔父というのは、おうじさまのことにほかならないだろう。
マーリの行方がわからなくなったと言うのは、おうじさまに捕まったか、あるいは逃げ続けているのかのどちらかだ。
とはいえ。
たとえ血がつながっていたとしても。
敵対しているのなら。
その敵対者の味方に、彼の身柄を拘束しているかどうかなんていうことは、普通は教えたりはしないのではないだろうか。
「王都をでたところで、行方がわからなくなったんだ」
ぽつりというジィンに、おうじさまの眉間の皺が深くなる。
「君たちは、敵対しているようだけど。以前にマーリから聞いていた話だと、君たちは仲がよかったと言うから。もし、マーリが不慮の事故で、予期しない場所にいるというのは。君にとっても不本意じゃないかと思ってね?」
回りくどい言い方で。
ジィンはおうじさまにマーリの行方を問うている。
おうじさまは、ひとつ深く息をついて。
じっと、こちらをみつめてきた。
「マーリは、そなたらと一緒にいるのだと思っていた」
「残念ながら、おれたちも探しているんだ」
「そうか。ならばわたしは知らぬ」
淡々とした口調でおうじさまはいったけれど。
そのまなざしが沈むのを、確かに見たと思った。