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忘らるる神の欠片~眠り男の英雄譚~  作者: rit.
あくと5 閉ざされた森とかけらの話
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よっつめ。

「いまさら、そういわれたところで、どうしようもないな」


 そう思ったのは、おうじさまも同じようだった。


「それもそうだな。けれど、ほかにどうしようもない。さすがに時間は巻き戻せないし、君が欲しいものを差し出すわけにも行かない」


 肩をすくめたジィンはそう言って、軽く息を吐き出した。

 おうじさまは、ただジィンに視線を向けていて、その表情は動かない。


「ところで、ロータス王。マーリがどこに行ったか知っているか」


 唐突な、ジィンの問いに。

 おうじさまは少しばかり眉を寄せただけだった。


 ジィンはおかしなことを聞くと思った。

 話の流れから行くと、おうじさまの敵はマーリで。

 マーリが逃げていた叔父というのは、おうじさまのことにほかならないだろう。


 マーリの行方がわからなくなったと言うのは、おうじさまに捕まったか、あるいは逃げ続けているのかのどちらかだ。

 とはいえ。

 たとえ血がつながっていたとしても。

 敵対しているのなら。

 その敵対者の味方に、彼の身柄を拘束しているかどうかなんていうことは、普通は教えたりはしないのではないだろうか。


「王都をでたところで、行方がわからなくなったんだ」


 ぽつりというジィンに、おうじさまの眉間の皺が深くなる。


「君たちは、敵対しているようだけど。以前にマーリから聞いていた話だと、君たちは仲がよかったと言うから。もし、マーリが不慮の事故で、予期しない場所にいるというのは。君にとっても不本意じゃないかと思ってね?」


 回りくどい言い方で。

 ジィンはおうじさまにマーリの行方を問うている。


 おうじさまは、ひとつ深く息をついて。

 じっと、こちらをみつめてきた。


「マーリは、そなたらと一緒にいるのだと思っていた」

「残念ながら、おれたちも探しているんだ」

「そうか。ならばわたしは知らぬ」


 淡々とした口調でおうじさまはいったけれど。

 そのまなざしが沈むのを、確かに見たと思った。

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