ふたつめ。~Side:ジィン
「力、ね」
言葉を口の中で繰り返しながら、するするとなぞが解けていくような気がした。
ロータス王も、若い時は多分。マーリのようだったのだろうと思う。
純粋に、理想を求めて。
叶えられるだけの、力を求めて。
誰かを幸せにしたいと祈って。
自分も幸せになりたいと願って。
その思いを、一体誰が責められるというのか。
ただ。
ロータス王は、手段を間違えてしまっただけだ。
けれど、大地の民は。ロータス王が求めた手段が、正しくないことさえ。教えはしなかったのだ。
それならば。
彼の咎のいったんは、自分たちにもあるのだろうか?
「君が求めた力の、予想はつくよ。その〈力〉を、まだ――求めているのかい?」
彼が。森に求めた〈力〉――
なんの特別な力も持たないキアラが危ぶまれた理由。
長老たちは多分。
キアラが、盗むと思ったのに違いない。
キアラが恋した人間の男が。たったひとつ求める、森に眠る〈力〉
何も知らず、無垢な娘だったからこそ、長老たちは危ぶんだに違いない。
その〈力〉がもたらすものをしっていれば。
持ち出そうなんてことは、決してしないのだから。
もっと年のいった、おとなたちだってそうだ。
詳しいことを知らずとも、大地の民がもつ本能が、〈力〉に近づくことさえ厭うに違いない。
まだ未発達の、危険にさえ疎い子供だったから。
長老たちは、森を閉ざすことにしたのだろう。
大事な一族のこどもを護るために。
――ひいては。〈力〉から。世界を護るために。
ロータス王はほんのりと目を眇めてこちらをみつめた。
「……おまえは、わたしが求めたものをしっているようだな」
低く響く声が、妙な威圧感をはらんでいる。
びくりと腕の中で一瞬身をすくめたキアラの背をなだめるように撫でてやりながら、ただじっとロータス王をみつめ返すことにする。
神子の神殿の、一室で。
しんと静まり返る中に、いやな緊張感が増していく。
「予測はつくよ。キアラと違って、大人だからね」
「……ジィン」
軽く肩をすくめて。からかうような口調で言えば。
ロータス王の表情は険しくなり、腕の中のキアラが抗議するように口を尖らせた。