ふたつめ。
「え、ちょ……っと、待ってください?」
今のは聞き間違いかもしれない。
友達というか、知り合いがつかまっているかもしれないのに、のんびりお菓子を食べている人はあまりいないと思う。
自分の考えに納得して肯き。
キアラは軽く息を吐き出した。
「すみません、ちょっと聞きまちがえちゃったみたい。もう一度いってもらえます?」
「だから」
カッツェは困ったようにわずかに眉をよせ。
キアラをみつめて、ゆっくりと言葉を繰り返した。
「ジィンは多分、神殿兵に捕まっていると思うよ」
「なんで?!」
繰り返されたその言葉に、キアラは今度こそ疑問の声を上げた。
「なんでと言われても。私は肉体労働系は苦手なんだよねぇ」
少なからず咎める響きも混じっていたと思うのだが、カッツェは平然と肩をすくめるばかりだ。
「眠り男の本領発揮というべきか。追われている最中にいきなり眠いとか言い出すもんだから参ったよ」
「眠いって……」
「まぁ、眠り男だから、仕方がないといえば仕方がないんだけどねぇ」
「そんなあっさり……。ジィンは一度眠いとなると、もう起きていられないんですか?」
こうなってくると、どちらを咎めるべきかということも、いささか迷う。
見捨ててくる方も見捨ててくる方だが、眠いといって非常事態に寝るほうも寝るほうだ。
命がかかっているとなればいくらか我慢もききそうなものだが、と問うたキアラに、カッツェは器用に片眉をあげただけだった。
「意志の力でどうにかなるものだったら、眠り男とは呼ばれていないだろう」
あっさりといってくれるが、はたしてそれだけで片付けていいものなのだろうか。