やっつめ。
いったいなにがどうなっているのやら。
ジィンとカッツェは難しい話を続けていて。
軽食を平らげたあと、暇そうにしていると、ジィンが気を利かせてくれて頼んでくれた甘くてふわふわしたかわいらしいお菓子。ケーキとかいうらしいふわふわとした生地に、生クリームとかいう白くてやわらかくて甘いものをたっぷりとつけて食べると、この上なく幸せな気分になれた。
それはまぁいい。
問題はいつのまにやら意識が飛んで、眠っていてしまったことと。
カッツェとジィンの姿が消えていることだ。
「えっと……」
きょろきょろと辺りを見回す。
というか、ここはどこ?
そこは小奇麗な小さな部屋で、本棚と小さな机とソファだけがおいてあった。
ジィンとカッツェの姿はなく、ソファで寝こけていたキアラには、上質の毛布がかけてある。軽くてふわふわとやわらかくて、このまま毛布を抱きしめてもう一眠りしたくなるような気持ちのよさだ。
毛布の誘惑に頑張って打ち勝ち、キアラはそっとソファから滑りおりた。
そっと毛布をソファの上に戻し、もう一度あたりをきょろきょろと見回してみる。
小さな窓がはまっていて、そこからは、真っ白なお城を望むことが出来た。
「あれ?」
そこで気がついて、キアラは首を傾げる。
自分は一体どのくらいの間眠っていたのだろうか。
酒場に入った時は、確か夕暮れ直後だったと思うのだが、今空は青く澄んでいる。
まだ低い位置に太陽は輝いていて、とても不思議な心持がした。
「ジィンもカッツェさんもどこにいったんだろう……?」
わずかに室内に残っている匂いから、自分をここに運んだのは、ジィンとカッツェで間違いなさそうだが、肝心の本人たちの気配が微塵もない。
とりあえず状況把握を優先すべく。
壁にそっとたてかけてあった大剣を背中に背負い。
ドアノブに手をかけて、キアラは思わず眉根を寄せた。
ノブは、回る。
でも、開かない。
内側に、鍵はない。
つまり。外から鍵がかけられていると、そういうことだろうか?
一体どういうことだろう。
わずかに唇を尖らせて、キアラは状況を分析しようと試みた。
寝ていた自分、消えた二人の姿。かかっている鍵。
閉じ込められた?
同族の兄相手に、それはないと思うのだが、なんにせよ、ここはキアラが知っている常識の通用しない王都である。
「……とりあえず、マーリを探さないと」
一人ごちてキアラは一度背負った大剣をはずし、両手で体の前へと構えなおした。