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忘らるる神の欠片~眠り男の英雄譚~  作者: rit.
あくと3 回収作戦。
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いつつめ。~Side:マーリ

 どうしよう、と思った。

 厳選したはずの『会』のメンバーに裏切り者がいるなんて。

 いざという時の逃げ道である、姉のいる神殿までも手を回されて、芝居でもなんでもなく、本当にどうしようと思ったんだ。

 そんなときに、ふとひらめいたのが。

 資料館にいつもいる、灰色髪の大地の民の男のことだった。

 なにをしているのか、わからない男。

 姉の友人で、かわりもの。

 けれど、大地の民だ。

 戦闘に長けた民。

 ならば、あるいは。もしかして。助かるかもしれない。

 本当かどうかは知らないが、神の欠片を宿しているとか自称しているその男は、とりあえずいいやつだった。

 自分の外見に惑わされて、いるのかどうかはわからないけれど。いつもよく構ってくれるし、ごろつきから護ってもらったこともある。

 唐突に眠ってしまうのが玉に瑕だけれど。

 見つければ、きっと。なんとかしてくれるかもしれない。



 結構不純な動機から、ジィンを探して。

 でも、寝ていて。

 寝こけていたジィンの代わりに、大地の民の娘を雇うことにして。

 意外と使えた『ジィンの代わり』に逃がされて門のところまで逃げてきたのは夕方こと。


 約束の時間まではまだ少し猶予があるとはいえ。

 いつ見つかるかわからないこの状況――ついでにいうなら、護衛すらもないこの状況で、のんびり夕食をとる気にもなれはしない。


 くうくうと空腹を訴える胃をなだめながら、門に程近い木の上から様子をみていた、その時だった。

「……姉さま?」

 思わずこぼれた、自分の声にどきりとする。


 大きな門を出て行こうとする、簡素な駕籠(カゴ)。その、小さな窓からちらりとみえた、目隠しをされた女の横顔。

 ほんの一瞬しか見えなかったけれど、あれはまさしく。


「……どうすれば」


 たったひとりの、姉。

 神子の神殿の筆頭巫女――神殿で、神官長と同位の彼女が、何故今。この時期に、駕籠に乗せられて王都から出て行くのか。

 尋常ではない。


 ましてや、数日前に、姉が予知()た、砂禍の飛来。

 伝説の中に語られる忘れられた神――死すべき宿命の神子の欠片が、禍をまとって降ってくるという。

 そんな伝説級のトラブルがやってこようとしているこの時期に、筆頭巫女が目隠しをされて出て行く理由がわからない。

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