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忘らるる神の欠片~眠り男の英雄譚~  作者: rit.
あくと1. 王都は怖いところ?
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とおと、ひとつめ。

「えっと……」


 そんなマーリをみつめながら、キアラは軽く頬をかいた。


 直接相対したことがない敵がいる場合。

 まず、しないといけないことはなんだったか。


「ねえ、マーリ。誰に追われているの?」


 すべきことは、常にひとつ。

 情報を集めること。

 だれが、いつ。どこでなんのために。どのような手段をもって。


 ゆっくりと問えば、マーリのまなざしは瞬間泳いだ。

 隠したいことがある顔つきだ。


「……言えることだけでもいいんだけど、私は何もしらなすぎるから」


 たとえば、そう。

 森の中で魔獣に出くわした時に。

 その魔獣が何を苦手とするのか、何を好むのか。それを知っているだけで、生存確率はぐんとはねあがる。

 情報は、多ければ多いほうがいい。

 敵よく知ること。

 己にできることとできぬことを、きちんと理解すること。

 それがすべての基本なのだから。


 本来ならば、雇い主との間には、強固な信頼関係も有ったほうがいい。

 けれど、自分とマーリの間にそんなものがないことは、きちんとわかっている。

 たまたま、その場に居合わせた人物。

 それ以上でも、それ以下でもなくて。

 たまたまお互いにその相手に、ほんのちょっとの利用価値を見出したに過ぎないのだから。


 マーリは少しばかり迷っているようだった。

 けれど、ほどなく腹を決めたようで。

 夏色の青い瞳をこちらに向けた。


「おじさん、なんだ。追って来てるのは、おじさんの私兵」

「おじさん?」

「うん。おじさんは、ぼくが邪魔なんだ。だから、ぼくをいないことにしてしまおうとしてるんだ。町の中で何かをされることはないと思うけど、つかまったら、ぼくはたぶん。殺されてしまう」


 そう語ったマーリの口調は淡々としていて、とくに悲壮感も何もない。

 諦めている、というのか、なんというのか。

 うまくはいえないけれど、そのことについて、格別な悲壮感なんかは抱いてはいないようだった。


「ぼくの姉さんが神殿で巫女をしているんだ。だから、姉さんのところに行こうと思ったんだけど、だめだった。神殿はすでにおじさんが掌握したあとだったんだ」


 大人びた口調で、マーリはさらに言葉を継いだ。

 小難しい言葉を使っても、マーリはまだ幼いのに。

 その背伸びをした様子はなんとなく切なくて、キアラは思わず眉根を寄せた。

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