ぷろろーぐ
なるべくテンポよく、サクサク読み進める話を目指します!(予定)
たぶん。
こうなることは。
最初から、ちゃんとわかっていた。
※ ※ ※ ※
「ねえ。後悔してないの?」
「後悔って何を?」
こっちは、ちょっとした心臓に悪いドキドキ感を持ってそう聞いたのに。
やつは飄々とした調子で首を傾げた。
この先は、大広間。
吟遊詩人が謳う英雄譚で言うならば。
今はさしずめ、最終決戦のさいごのひととき。
緊張感も最高潮に、観客だって固唾を呑んで成り行きを見守る場面のはず。
それなのに、呑気にあくびなんてしているこの男はなんなのだ。
「だから!!! 私がもってきた厄介話に巻き込まれて、こういう成り行きになっちゃったことだよ!」
その事実に、少しくらいは反省してたし。
この男が、そんな責めるような言葉を吐くなんてことは思っていなかったけど、それでもあくびなんてしなければ。
ちゃんと、さらりとさりげなく。
ごめんねって謝ろうと思っていたのに……
おかげで、おもいっきり溜息ついちゃったし。
かみついちゃったし、怒鳴りつけちゃったし。
あくびなんて、この重要な場面でしなければ!!
……おかげですべてが台無しだ。
「ごめんだけどさ、そろそろ行かない? おれ、ちょっと眠いかも……」
少しくらいは空気読め!
内心の毒づきなんてそ知らぬ顔で、またひとつ。
やつは、ふあぁぁぁと盛大なあくびをかます。
「さすがにここでさ、睡眠とるのはまずいだろ?」
この期に及んで、能天気にそんな台詞を吐くもんだから。
申し訳ない気持ちなんて吹き飛んでしまった。
謝ろうなんて殊勝な心がけも、今ははるか彼方だ。
そんな事実があったことさえ認めたくない。
「あのね……」
「おれね、後悔はしない主義だから、安心していーよ」
さらに盛大な文句を浴びせようとした、その瞬間。
ぽん、と反則のように頭のてっぺんに乗せられた、その手。
でも、それは一瞬で。
次の瞬間には、先に立ってあるいていく背中が見えた。
楽しんでいただければ、嬉しいです!