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カンガルーポー/不思議

薬指におさまるシンプルなシルバーリング。

ベットの上に横たわりそれを頭上に掲げてそれを見つめる。蛍光灯の光をあびてキラキラと輝くリング。

それに比べても劣らないくらいわたしの心も輝いている。

わたしの愛しい人からの突然のプロポーズ。

一度目のプロポーズはわたしから。

二度目のプロポーズは菫ちゃんから。

小さい頃は素直に出せていた気持ちも大人になると恥じらいという壁が邪魔をして表に出す事が難しくなってきて・・・心のなかで少しだけ不安だった。

贔屓目を抜いたって菫ちゃんは眉目秀麗、文武両道という言葉が当てはまる才色兼備の子。

きっと女の子にだってもてるに違いない。

だから、大人になったたくさんの景色をみえるようになった菫ちゃんはわたしなんかおいて他のどこかにいってしまうんじゃないかなって。わたしのことなんてだた近所のお姉さんとしか思わなくなって・・・

だけど、菫ちゃんはわたしに証をくれた。

隣にいていいよ。っていう証。

菫ちゃんは「安物だけどどうしてもあげたかったんだ。・・・社会人になったら買いなおすから。」と困ったように笑いながらいってくれた。

菫ちゃんが安物だと言った指輪。

わたしにとってはどんなに高級なダイアモンドよりも世界一の指輪。

わたしは薬指のそれにキスをひとつ落とすと微笑む。

すごく幸せだ。



・・・・・・。

・・・・・・・・・・・。―ま・・・。


「まー・・・。」


「ん・・・?」


「まー!!」


「ん!?」


「まー、おかぜ、ひゅく!!」


ゆさゆさと揺さぶられて目を覚ます。

容赦のない揺さぶりに今だぐわんぐわんとゆれる頭を抱えながら目を開けるとわたしの身体の上に乗っている小さな身体。

ぷにぷにの柔らかいもみじの手にきらきらと輝く瞳。バラ色のモモみたいなほっぺた。



じゅるり・・・。



「まー?」


はっ!ヤバイ!ヤバイ!

いつもの病気が!!(自覚症状あり。)

だって・・・このコ、半端なく小さい頃の菫ちゃん(3歳前後!)にそっくりなんだもん!!

唯一の違いといえば菫の場合、髪は暗い栗色だがこの子はさらさらの黒髪だということぐらい。


かわゆーい。


ふらふらと誘われるようにその子の髪の毛をぐりぐり、ほっぺをつんつんするとポカンとしていたその子は半眼になってわたしを見る。


「まー、またぼくをみて、ぱぱをおもいだしてたでしょ?」


「え?パパ?」


「ぱぱだよ。ぱぱ。もういいでしょ。はやくおきて、せんたくものいれないとしっけすうよ?」


小さい子らしからぬことをいう小さな菫ちゃんはそういうとわたしの上からさっさとおりてとてとてと走っていく。

その後姿がまた可愛いのなんのって・・・。じゅるり。


・・・ってそうじゃなぁーい!!


あの子、今なんて言ってた!?

パパ!?パパ!?って言った!?

慌てて立ち上がって辺りを見回すけれど全く身に覚えのない部屋。

足元に敷いてあるえらくふわふわの絨毯。触っただけで高いってことがわかる深緑の皮製のソファ。

ドシンと置かれたガラス製のテーブルの上には『ももたろう』と書かれた絵本や、小さなミニカーが置かれている。

これはきっと小さな菫ちゃんの持ち物だろう。

小さな赤いミニカーを手にとって眺めていると「まー!!」とわたしを呼ぶ声が聞こえる。

慌てて声のするベランダだと思われる場所に駆けていくと自分の背よりもずっと上に手を伸ばし、背伸びをしているミニマム菫ちゃんがいる。

ミニマム菫ちゃんは微妙に涙目になりながらわたしに助けを求めるようにこちらに顔を向けるとわたしの手にミニカーが握られているのを見て可愛いまん丸の目を三角にする。


「なにをあそんでるの!!せんたくもの!」


「・・・すみません。」


思わず謝ってしまった・・・。





洗濯物を入れたらふたりでいそいそと畳む。

ミニマム菫ちゃんが畳む洗濯物はお世辞にも上手だとはいえないけれど頑張って畳んでいる姿が可愛くて黙っていた。

そして、中には見慣れないババシャツや、男性者のパンごにょごにょ・・・があって驚いた。

思わず手にとってそれを呆然と眺めていると再び半眼になったミニマム菫ちゃんに「はやくたたみなよ。へんたい。」って言われた・・・。

変態ってあなた・・・。(ちょっと落ち込み。)





夕食はカレー。

ぐつぐつと具材を煮込むわたしの横で流し台にもたれながらミニマム菫ちゃんは「カレーカレー♪」とオリジナル曲を口ずさんでいる。

はて。

わたし・・・なじみすぎじゃない?

普通ならもっとこう、混乱していいものなのに何故かわたしは落ち着いてちゃっかりカレーなんか作っちゃってる。

壁のフックにかけてあったピンクのストライプのエプロンをつけておたまで中身をぐるぐる。

隠し味にお塩をを少々。

クビを傾げていると玄関の方でカッシャン・・・と誰かがドアを開ける音がする。

その音を聞いた瞬間、ミニマム菫ちゃんは瞳を輝かせ「ぱぱだ!!」と言いながら走っていく。

慌てて、コンロのスイッチを切ってわたしもその後を追う。

まるでそれが毎日の習慣のように。


「おかえりなさーい!」


「・・ただいま。」


先に着いたミニマム菫ちゃんが彼の足に飛びつくと、長身の彼は腰を屈めてミニマム菫ちゃんを抱き上げて顔を覗く。

そして頬にキスを一つ。

さらさらと揺れる暗い栗色の髪。

わたしの視線に気づいた彼がほほえみ、口をひらく。


「ただいま・・・」





・・・・。

・・・・・・。


・・・る。

ひ・・・る!!


「光流!!」


名前を呼ばれて目を開けると目の前にいるのはえらく心配そうなあの人の顔。


「名前呼んでも返事しないからびっくりしたよ~!・・・でさ、僕、今日ずっと考えてたんだけど・・・あの明日休みだし・・・で、デートとか・・・。」


寝ぼけてぼうっとする頭でわたしは彼の首の背に手を伸ばすといつものように引き寄せ口付けを落とす。


「・・・!?」


「おかえりなさい・・・。」





あ な た・・・。




ぐー・・・。


「え!?、ちょ!?光流!?放置!?えぇ!?」


ん~・・・眠い。


「ちょっ・・・まじ?!!光流~!!!!」








次回は遅くなるかもです・・・。

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