ぎんばいか/愛のささやき
もうすぐバレンタインデー。
菫ちゃんは甘いものが好きだからこの時期はいつもにもまして気合が入る。
可愛い、可愛い菫ちゃんに半端なものは食べさせられない!!
『おいしいよ~光琉ちゃん~(にっこり)』その言葉、その笑顔を見るために私は頑張る!!
待っててね、菫ちゃん!!
某会社の昼休み、源 光流は険しい顔で雑誌を読んでいた。
「光琉・・・顔が怖いよ・・・何をそんなに睨んで読んでいるのわけ?」
「へ?ゆりあ?」
私が顔をあげるとそこには呆れ顔のゆりあが立っていた。
そんなに険しい顔をしていたつもりはない。ただ、ヴァレンタインの特集を読んでいただけなのに・・・。
ゆりあが隣に腰をおろした。そして、私の手元の雑誌を覗き込む。
「なになに?『バレンタインは有名パティシエのお店で決定!!手作りなんてもう時代遅れ!!』って、まさか・・・」
「うん・・・菫ちゃんに手作りを送ろうと思ったんだけど・・・これを見ると・・・」
「いや、手作りの方がいいよ、絶対!!」
ゆりあがやけに力を込めていう。心なしか顔が青ざめているように見えるけど・・・気のせいかな??小刻みに震えている??まぁ、気のせいだな。
「うん、でも菫ちゃんには美味しいものを食べてほしいし・・・」
「いやあの魔王には手作りがいいと思う・・・」
「え?なにか言った?」
「いや、なんでもないよ。うん。でも、好きな子からなら手作りでも嬉しいんじゃない?」
「そうかな~?」
「そうに決まっているでしょう。あ、もう昼休み終わりだわ。さぁ仕事に戻りましょ。」
「え、あっ待ってよ、ゆりあ」
よし!菫ちゃんにこっそり調査をしよう!!そのほうが確実だし!!
とは、言ったものの・・・具体的にどうすればいいのかな~??菫ちゃん、勘がいいしなぁ~まぁともかく菫ちゃんの家に行ってみるか~
光琉は昼間考えていた事を実行するために1分もかからない愛しの愛しの菫の家に向かって行った。
「おばさん、こんばんわ~」
「あら、光琉ちゃん?菫なら部屋にいるわよ~」
「えっと、ありがとうございます?」
なんで?なんにも言っていないのにわかったんだろう??
おばさんも勘がいいのかな??うらやましいなぁ・・・。
まぁともかく菫ちゃんの部屋へ!!
「・・・だよな~うん、そうそう」
菫ちゃんの部屋の前まで来ると中から声が聞こえる。
でも、部屋には菫ちゃんしかいないはず・・・電話かな??
とりあえず下で待っていようとしたとき中から聞こえてきた内容に光琉は足を止めた。
「うん、うん、手作りを持ってこられても困るよな~なんか、怨念がこもってそうだし~あぁ、確かに」
ま、まさか・・・チョ、チョコのことかな・・・?
私はいけないことと思いつつもドアに耳をあてて立ち聞きをしてしまう。
「ああ、手作りチョコとか貰ってもね~はっきり言って困るしな」
・・・やっぱり!!どうしよう!手作りはやめたほうがいい・・・よね??
うん、やっぱり手作りはやめよう・・・菫ちゃんには喜んでほしいもん!!
そう決心すると光琉は肩を落としながら菫の家をあとにした。
「ハッピーバレンタイン!!光琉ちゃん」
「ハッピーバレンタイン、菫ちゃん。」
あの後、決心がつかずお店で買ったものと作ったものを用意した。
作ったのを渡して菫ちゃんに厭な顔をされたら立ち直れなくなちゃうから・・・。
ゆりあに伝えたら呆れられたけど・・・。
私は早速、鞄から某有名店のチョコを出した。
「はい、菫ちゃん」
「わーい、ありがとう!光琉ちゃん!」
にこにこ顔でチョコを受け取った菫ちゃんの一瞬のうちにくもった。なぜか不満げにチョコに目を向けている。
菫ちゃんの好きなメーカーにしたけど嫌になちゃったのかな・・・??すると、菫ちゃんは可愛らしい唇を尖らして驚くことを言ってきた。
「光琉ちゃん、僕のチョコは?」
「え、それだよ?」
すると、菫ちゃんは納得できないのかほっぺたを膨らましている。
「だって、チョコ作ってたじゃん。僕のじゃないの?僕、光琉ちゃんの手作りがいい!!」
菫ちゃんは怒っているのか顔が真っ赤になっている。そんなところも可愛いけど・・・。
は!!そうじゃなくて手作りがいいって・・・私は、諦めがつかなくて一緒に鞄に入れたチョコを出した。
「はい!!」
見なくてもわかる、私の顔は今真っ赤かだろう。渡すつもりのないチョコを差し出しているのだから。
手作りなんかいらないと言われるのが怖くて渡さないつもりだったチョコを・・・。
「光琉ちゃん、ドッキリがしたかったの??僕、光琉ちゃんのチョコが貰えないかと思ってびっくりしちゃた」
緊張したためか嬉しいのか、わかんないけど涙が次から次へと流れてくる。
「ち、違うの!菫ちゃんにいらないって言われるのが怖くて・・・。」
「へ??僕、そんなこといわないよ~」
「だ、だって」
「『だって』じゃないの。はい、涙を拭いて」
菫ちゃんは優しくハンカチを差し出してくれた。
なんだか、安心したためかだんだん眠くなってきた・・・。
まだ、言わなくちゃいけないことが・・・。私は朦朧となる意識のなかで呟いた。
『菫ちゃん、大好きだよ・・・』
時期はずれもいいところですが強行突破ですw