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まんねんろう/私を思って

某高校の校門前。

学校が終わったのか生徒がぞろぞろと出て来る。

その、生徒の流れに身を任せながら菫は急ぎ足で歩いていた。

そんな、菫に声をかける命知らずがいた。


「植野~、今日遊んで行かねぇか?」


『バキ』



とてもいい音がした・・・。

菫が自分の行くてを塞いだ少年を殴り倒したのだ。



「急いでいるのがわかんねーのかよ!ちっ、無駄な時間過ごした。」



菫はそう言うと気を失っている少年を放置して帰宅を急いだ。






今日は母さんも光流のとこのおばちゃんも二人仲良く出かけて帰ってこない。

おまけに父さんもおじさんも出張に行ってしまっている。・・・ということは光流と二人っきり!!

デレデレになるのは仕方ないと思う。←人にはわかりにくいが・・・。

学校が終わったら俺は光流の家に行く事になっている。

光琉が買い物して帰ってくる前に家に行って、光琉が好きな学ラン着て、得意の笑顔で『光流ちゃん、ただいまぁ~』なんて言ったときの光流の照れた顔が見ものだ。

そんな顔を見たら襲ってしまうかも・・・。

まぁ、俺のほうが社会人の光流より、早く帰っているに決まっているのだけど。

・・・っといけない。

早く家に帰って光流を待たなきゃ。

ほっと息を吐き出して再び、菫は早足で歩き出した。

おっと、いけない、いけない。

慌てすぎて定期を落とす所だった・・・。

落とした定期を探して光流より帰るの遅くなったら意味ないし。

改札を通ったときだった。



「あれ!?植野くん?」



名前を呼ばれ、シカトして行こうとしたら今度は肩をたたかれた。

仕方なく振り向くと全然見覚えのない女が立っていた。

外見は光流にはかなわないが世間一般的には美人のほうだと思う。

だが、自分が美人だとわかっているのか媚びている感じがする。

はっきり言ってこういう女はうざいから嫌いだ。典型的なぶりっ子女だと俺は思う。

上目づかいに話され、聞いているこちらとしては気持ちが悪い。光流がやったら押し倒しているが。

嫌な感じの女にあったな~と内心ため息をつきながら逃げることにする。

肩をたたかれたのも気のせいだと早足で歩いていこうとすると今度は腕を掴まれた。

予想外に強い力だ。

本当にうざい、俺は急いでいるんだ!見ればわかるんだろ!



「ちょ、ちょっと、待って~こんな所で逢うの初めてじゃない~?」


「は・・・?」


「中学卒業して以来じゃん!!植野くん、同窓会とか来ないし~。みんな植野くんに会いたがっているよ~でも、一番会いたっがっていたのは私だから神様がご褒美くれたのかな~?」



この、間延びした話し方マジでムカツク。てか、本当に誰だよ。中学にこんな奴いたか?女がどこか媚びた笑みを浮かべながら俺に話す。

全然心あたりがないので俺は首をかしげた。



「あんた、誰・・・?」


「え!同じクラスにいた江本だよ~!!」



目が点となる。記憶にない。



「・・・それっていつのこと?」


「本当に覚えてないの!?私、美女コンでグランプリ取ったんだよ!あっ、もしかして覚えてない振りして私の気を惹きたいとか~?そういうことなら、そんなことしなくても植野くんは大丈夫だよ~」



なにやら、もの凄い勘違いをしながら俺の横で話ている。

俺がいつこいつの気が惹きたいと言ったのだろうか・・・?

この女マジでわかんない。

何だかよくわからないうちに俺の彼女になったらしく、『アドレス教えて~』なんて言ってやがる。

このままではこの女と付き合っていることになってしまう。それは、切実に遠慮したい。

菫はだんだん無表情になっていく、そして思い切って息を吸い込むと冷徹に言い放った。



「うざい。」


「はい?」


「誰があんたと付き合うって言った?うざいから、手、はなせ。」



だいたい、俺には婚約者がいる。まだ俺が法律上、結婚の許される歳ではないから待ってもらっているが就職して落ち着いたら結婚するつもりだ。

女はボー然として手が離れた。



「・・・そ、そんなふうに言わなくても・・・」


「うざいのをうざいと言ってなにが悪い。」


「ひ、ひどい・・・。」


「じゃ、俺急いでるから。もう、二度と話しかけないでね。あんたなんか本当に知らないし。」



俺はまだボー然としている女をその場に放置して、スタスタと歩いて行く。

余計な時間をくった。

光流が先に帰ってきていたらどうしてくれるんだ。本当にウざい女だったな・・・。

同窓会ね~そういえば、葉書きがきていたな~。

まったく、行く気がなかったから覚えたなかったな~。

そんなのに行くぐらいだったら光流と一緒にいるほうがいい。

ため息をつきながら俺は歩くスピードを更にあげた。



そして、光流の帰りを待つべく、目の前の見慣れた古い年期の入った壁と屋根の家に入っていった。






「ひ~かるちゃん!!おっかえりなさぁ~い!!」



玄関で光琉にしか見せない笑顔で笑う。

仕事の帰りと言う事で光琉はスーツ姿だ(コートを羽織っているが)、そんな光流を俺はにこにこと見る。


あ~本当に美人だな~ってか、かわいい!!

そんなのん気な事を考えていたら光琉が泣き出した。



突然、ほろほろと泣き出した光流に俺は狼狽する。

どうしよう、光流が泣いている・・・どうしよう、どうしよう

と、とりあえず、お、落ち着かなきゃ!



「ひ、光流ちゃん、大丈夫。」


「っひ・・・く。・・・す、すみれちゃ・・・。」


「と、とりあえず、寒いから中においでよ。ほら・・・コートも脱いでさ。」



俺は、光流の冷え切った手を自分の手で握りしめると中へ引き入れた。

コートを脱がせると、左手、スーパーの袋を握り、右手で光流の手を掴み真っ直ぐにリビングに向かう。落ちたらしい光流をソファーに座らせ、温かい飲み物を用意すべく光琉に背を向けて、俺はキッチンへ足を向けた。

いったい何があったのだろう?

こんな時、俺は学生という身分が疎ましい。

光琉と同じ歳、いやせめて社会人なら、光流を見守れるのに・・・。

俺はピンクと黄色と白のタータンチェックの光琉のカップを持っていくとソファーの前に屈み、光流の顔を見ながら差し出した。



「あたたかいレモンティー。・・・好きでしょう?」



黙ってそれを受け取ると光琉はゆっくりと紅茶口に含んだ。

微かに漂うレモンの香。

それを鼻をずるずるさせながら光琉は紅茶を飲む。俺は、何も言わずに、光琉のそばに居ることしかできなかった。



「・・・どうしたの?」



光琉は紅茶を飲み終わり少し落ち着いたようだ。

光琉を怖がらせないようになるべく優しく聞く。



「・・・ね、菫ちゃんはわたしを置いて・・・」


「ん・・・?」



俯いていた顔が勢いよく上がる。普段はきりりとした瞳が今は不安げに揺れている。



「・・・結婚しちゃうの?」


「は・・・?」



そう言った、光琉の瞳からは今にも涙がこぼれ落ちそうだ。

俺は彼女の言ってる意味の半分も理解できずにただぽかんと口を開いた。

自分で言うのも何だが今までしたこともない間抜け面だったと思う。



「そ、それって誰かが言ったの・・・?」



何とか光琉の言葉から持ち直した俺は光琉に向かって聞く。

黙って首を左右に振る光琉に俺は思わずはぁ・・・とため息を吐き出した。

そして、光琉の泣き出した理由を聞き小さく、こうべをたれて『なぁんだぁ・・・』と呟く。



「す・・・」


「俺は絶対に光琉を置いていかないよ。置いてくとしたら、それは・・・光流でしょう?」



俺は顔を上げ光琉を覗き込む。不安そうな瞳。

光琉はくびを傾げる。

俺は絶対に光琉を置いていったりなどしない、だけど光琉はいつだって前に行ってしまう。



「光流はどんどん綺麗になる。俺が焦るほどに。同い年だったらよかったのにって思うけれど光流が7つ上だって事はどうしても消せない事実だし。」



俺は思う。

俺が光琉と同い年だったらよかったのにって。一緒に教室で騒いだり、学校の帰り道に手を繋いだり。だけど、それは無理な話。どんなに願ったって叶わない。

俺は光琉の頬を優しく両手で包み込む。

これから言う自分の言葉にビクつきながら・・・。



「光流はもう、俺が大人になるのを待つの嫌になっちゃった?・・・俺と結婚なんてしたくない?」


「そ・・・そんなことないっ!!」


「よかった・・・。」



光琉の言葉に安心した、俺はゆっくりと光琉の顔に顔を近づけた。


ぎゅうっと閉じた目。


唇はとっておくか。俺は、苦笑いをしながら目標を光琉のおでこに変え、口付けをする。

光琉がぱっと目を開けると、ちょうど、俺と目が合った。

真っ赤になった光琉にいつものくせでえへへと笑うと立ち上がった。



「さぁ、夕食の準備でもしますかっ!」



そう言って立ち上がったのはいいが光琉があまりにもかわいすぎて顔が緩む。

俺は緩んだ顔を手で隠しながらキッチンへ向かう。



「か、かわいすぎる・・・。」



・・・次の目標は唇だ。









誤字・・・以下省略。


感想・・・喜びます。


では。。。

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